INTERVIEW | moeki「一つひとつの価
値観を音楽に変換したい」──北海道
在住・新鋭SSWが紡ぐ”僕と君の物語
” 「一つひとつの価値観を音楽に変
換したい」──北海道在住・新鋭SSW
が紡ぐ”僕と君の物語”

「最近、リスナーからInstagramのDMで恋愛相談を受けるんです」──そう話すのは、北海道に住むSSWのmoekiだ。
2018年からSNSに、カバー楽曲やオリジナル楽曲の投稿を始めたmoeki。落ち着いた優しい声で淡々と歌い上げるその姿は、見る者に穏やかなインパクトを残す。近年、彼女がテーマとするのは“僕と君”という関係性。11月15日(水)にリリースされた1st EP『Between us』では、ポップスやR&Bを基盤としたメロディに、多種多様な恋愛のストーリーを詰め込んでいる。
おそらくmoekiのもとにリスナーからの相談が絶えないのは、彼女の紡ぐストーリーが誠実で、誰の心にも寄り添えるものであるからだと察する。では、なぜ彼女はそういった物語を創り出せるのだろうか。また、そもそもなぜmoekiは恋愛について歌うようになったのだろう。
今回は北海道の自宅にいるmoekiにオンラインでインタビューと撮影を実施。彼女自身が音楽に目覚めるまでの軌跡とともに、クリエイティビティの源泉について話を訊いた。
Interview & Text Nozomi Takagi(https://twitter.com/n_takagi67)
Photo by 遥南碧(https://harunaoi.wixsite.com/harunaoi)
音楽を通じて友達が増えると感じた高校時代
――moekiさんが音楽に興味を持ったきっかけは?
moeki:自発的に興味を持ち始めたのは小学校3年生の頃です。でも遡ると、幼稚園の頃にはチューリップの「心の旅」を歌っていた記憶があって。
――渋いチョイスですね。どなたかの影響ですか?
moeki:一緒に住んでいたおばあちゃんだったと思います。演歌が好きなんですよ。ボロボロのカラオケ・セットが家にあって、「心の旅」もそのカラオケ・セットで覚えた記憶があります。
ただ、父から受けた影響の方がもっと大きかったです。父が洋楽のコピー・バンドを組んでいて、The Rolling StonesThe Beatlesを弾き語りするのを観ていたんですよね。時々レコードも一緒に聴いたりしていました。
――自発的に音楽に興味を持ち始めた小学生の頃には、どういう音楽を聴いていたんですか?
moeki:たまたまYouTubeでMVを観て、Justin Bieberに最初ハマりました。徐々にライブ映像など、他の動画もチェックするようになって、そこから数珠つなぎにどんどん洋楽を聴くようになりました。今の音楽活動につながる、iriさんやBillie Eilishといったアーティストを好きになったのは高校生のときですね。
――彼女たちのどういったところが気に入りました?
moeki:インタビューなどで発している言葉や、人柄に惹かれたのかもしれません。もちろん曲調や歌声の好みもあります。でも、私が特定のミュージシャンを好きになるとき、ファッションやキャラクターも含めた全体像に憧れることが多いんですよね。深掘りするほど魅力がわかるような人が好きなんだと思います。
あと、ちょうど彼女たちのことを好きになったのと同じ時期に、SNSでもアコースティック・ギターの弾き語りをアップするようになって。尊敬するアーティストのカバーなどを、少しずつやるようになりました。
――現在ではTikTokにも投稿されていますし、moekiさんの活動の原点ですね。
moeki:当時は今のようにコンスタントにアップするわけではなく、本当に年に1本程度でした。しかも下手っぴだったから、当時の動画はもう非公開にしています(笑)。ただ、音楽に本腰を入れるようになってからもコンスタントに続けている、大事な活動のひとつになります。
@moekiisme エイリアンもびっくりしちゃったり👽🪺🌀 オリジナル曲の"Demo1"をちょっぴりお届けさせてください🧠 いっそ宇宙でならキスは可能?🌎 #moeki #オリジナル曲 #弾き語り#おすすめ #fyp ♬ オリジナル楽曲 – moeki
――最初に動画を公開するようになった動機はどのようなものでしたか?
moeki:高校に入学してから“音楽をやっていると友だちが増える”と強く感じるようになって。それこそ好きなアーティストの話題や、好きなジャンルの話で盛り上がれたり。そこから自分が歌う動画をアップすることで、高校だけじゃなく、北海道、日本、海外……と広く発信して、より多くの人と繋がれるんじゃないかって思いました。それで、影響を受けたアーティストの曲を中心にカバーをするようになったのがきっかけです。
実は高3のときアコースティック・バンドを組んだのも、動画の発信がきっかけでした。SNSで私の弾き語りをチェックした友だちが「一緒にアコースティック・バンドを組もう」って言ってくれたのが発端だったんです。
――バンドではどのような曲を演奏していたのでしょうか?
moeki:その当時はRADWIMPSクリープハイプMy Hair is Badなどをアコースティック・バージョンでカバーしていました。バンド活動経由で知った日本の音楽にも、強く影響を受けていると思います。
リスナーからのコメントが曲作りのエッセンスに
――moekiさんのSNSアカウントでは、カバー曲だけでなくオリジナル曲もアップされてますよね。曲作りを始めたのも高校時代からですか?
moeki:本格的ではなかったものの、いわゆる“作り溜め”みたいなことは、常日頃から行なっていました。バンド活動の影響が色濃かったから、Jロックの要素が強い曲が多かった気がします。今はもう少しポップにまとまっていると思うんですけど。
――曲作りの方法は、当時と今であまり変わらず?
moeki:ほぼ変わらずですね。基本的には歌いたいテーマや歌詞のフレーズを先に思いつき、そこから歌詞に当てはまるメロディを考えていくことが多いです。あくまで歌詞が中心なので、アレンジャーさんにも一番伝えたいフレーズが映えるような編曲をお願いしています。
ただ、その“伝えたいことありき”な曲作りは変わらないのですが……最近ではデモが完成してからブラッシュアップするまでの過程に、ワンクッション入るようになりました。
――それは具体的にはどのような工程なのでしょう?
moeki:デモの段階で弾き語りをSNSにアップして、どんなレスポンスが来るかをチェックするようになったんです。ありがたいことに、最近は動画を投稿すると、コメントをくださる方が多くて。
たとえば「マイガール」も、曲のテーマ自体は最初から決まっていたんです。ただ、デモをアップしたときに、テーマへ共感するコメントだけじゃなく、テーマに関連する体験談を寄せてくださる方もいらっしゃったんですよね。頂いたコメントを読んでいるうちに、歌詞やタイトルをより突き詰めて考えるようになって。そうやって皆さんのリアクションを通して完成に至った曲は、「マイガール」に限らず、今後もたくさん生まれると思います。
――先ほどアレンジのお話もありましたが、「かわいい」は%C(TOSHIKI HAYASHI)さんがアレンジで参加されています。%Cさんには何かアレンジのオーダーをされたんですか?
moeki:大好きなアーティストさんだからこそ、もうほぼ全てをお任せするつもりでした。元々デモの段階から、歌詞にも“新橋”という地名を入れたりして、ムーディさの中にも可愛らしさのある曲に仕上げたかったんです。
それで蓋を開けてみたら、自分が想像していた“東京っぽさ”が広がっていて……鳥肌が立ったし、涙が止まらなくなりました。歌詞からも情景を汲み取ってくださったんだな、と感動しました。ちょっと背伸びした恋愛が、アレンジの力で的確に再現された一曲だと思います。
――1st EP『Between us』は恋愛をテーマとした楽曲でまとまっていますよね。この傾向も、リスナーからの反応と関係が?
moeki:確かに『Between us』に収録されている曲に限らず、ここ最近で作った楽曲を並べてみると“恋愛”が主題なんですよね。最近、InstagramのDM経由で恋愛相談を受けることが多いんです。それこそ「かわいい」をリリースした頃からかな。いつも“私でいいのかな”と思いながら返信しているのですが、そういったDMが増えているということは、相談役として信頼できる曲を出せているってことなんですかね(笑)。
――きっとそうだと思います。
moeki:そうやって誰かに音楽で寄り添えるようになるのは嬉しくて。なるべくテーマは明確にしつつも、歌詞の中身に関しては広く、様々な解釈ができるような曲を作ろうと意識しています。あと、“いろんな価値観を肯定したい”とも思っていて。たとえば「かわいい」は“年の差”をテーマとした1曲だし、アートワークも女の子2人が手をつないでいます。そういう曲作りをしているうちに、それぞれの曲に登場する“僕”や“君”の形も多様になっていきました。
――moekiさんの曲に登場する“僕”って、ご自身のことではなかったんですね。
moeki:実は歌詞の内容自体、フィクションの方が多いんです。それぞれの曲で自分とは別の主人公を立てている感じですね。
――では『Between us』の中で、ご自身の価値観に一番近い楽曲は?
moeki:「マイガール」です。世界にはいろんな愛の形があって、誰かの言葉やちょっとした行動だけで、それをもっと表現しやすい世の中になると思うんです。そういった普段からの考え方が一番反映されている、という意味で「マイガール」に登場する“僕”が一番近いのかな、と捉えています。
――様々な“僕”を登場させることで、いろんな悩みや考え方にフィットできるようにしているんですね。その上で『Between us』はどういった人に届けたいEPになりましたか?
moeki:居場所がないように感じてしまっていたり、表現のしようがない感情に悩んだりしている人に届けたいです。私の作る歌が必ずしも100%正しい答えを導き出せるとは思っていないです。でも、“こういう考え方もあるよね”と、ひとつの解釈を提示できたらいいな、と思っています。
人同士の化学反応を考えていきたい
――moekiさんにとって、ファンの存在は本当に重要なのだと、お話を聞いていて思いました。
moeki:とても大事です。可能ならば私個人にメッセージをくれた方、一人ひとりに1曲ずつ作りたいくらい。それほど身近に感じています。基本的には若い人が多いのですが、中には年上の方もいて。いろんな世代の方に聴いてもらえるアーティストになりたいので嬉しいです。
あと、東京とかでライブをすると、配信やSNSでの“画面越し”のコミュニケーションではなくなりますよね。ステージ越しでも、目と目で通じ合えていると感じる瞬間は多々あります。もっとファンの皆さんが住んでいるところへ足を運んで会いに行けるよう、活動の幅を広げていきたいです。
――それこそ、12月にはmoekiさんの活動拠点である札幌で、初めてのワンマン・ライブも開催されますよね。準備は順調ですか?
moeki:準備は順調……だと思います。ただ、あまりにも緊張しすぎていて(笑)。初のワンマンなのですごくドキドキしています。対バンとは違い、全員が自分を観に来てくれるわけじゃないですか。曲に込めたメッセージだけじゃなく、今までの感謝の気持ちも込めてライブをしたいなって思います。なるべくお客さん一人ひとりの目を見ながら伝えたいです。
――1st EPのリリース、そしてワンマンが控えているなかで、先の予定を聞くのも時期尚早かもしれませんが、次に出すEPやアルバムはどういった曲が多くなっていくと思いますか?
moeki:今はジャンルに囚われずにさまざまな楽曲に挑戦したい気持ちが強くて、意識的にいろんなタイプの曲を聴いて勉強しています。たとえば最近、英会話の先生に教えてもらった、フィリピンのMAKIさんというシンガーが特にお気に入りで。
moeki:そうやってインプットは増やしている一方、自分の原点であるR&Bにも今一度立ち返りたいなと思っています。今回のEP、個人的にはポップにまとまったと思っているんです。でも、初期の頃にリリースした「Crazzyy」や「A Rainy Night in NY」などに比べると、R&Bが薄まっている気がしていて。新しい音楽にも挑戦しつつ、同時に原点も忘れないように、いろんな要素がミックスされた音楽に挑戦していきたいです。
――では、『Between us』の軸となっていたテーマ“恋愛”も、今後は変化していくと思いますか?
moeki:もともと『Between us』というタイトルは“2人の間だけのこと”とか“2人だけの世界”といった“秘めごと”の意味合いで名付けたのですが……この“2人”のことは、もう少しだけ曲にしていきたいなと思いました。
ちょうど制作期間中、ディズニー映画の『マイ・エレメント』(原題: Elemental)を観たんですよ。火、水、土、風といったエレメント(元素)が暮らす世界を描いた作品なのですが、作中で火と水が恋に落ちるんですよね。彼らは両想いでもお互いに触れることはできなかった。でも、最終的には抱きしめ合って、愛を伝え合えるようになるんです。そうやって、“人同士の化学反応”について、これからも考えていけたらと思いました。
今、現在進行形で新たな価値観に触れる機会はどんどん増えています。その一つひとつの価値観を音楽に変換し続けていきたい。次にリリースされるEPは『Between us』の続編になるかもしれないですね。
【リリース情報】
【イベント情報】
■ チケット詳細(e+)(http://eplus.jp/moeki/)
■moeki: X(Twitter)(https://twitter.com/moeki0328) / Instagram(https://www.instagram.com/moechandesu/)
「最近、リスナーからInstagramのDMで恋愛相談を受けるんです」──そう話すのは、北海道に住むSSWのmoekiだ。
2018年からSNSに、カバー楽曲やオリジナル楽曲の投稿を始めたmoeki。落ち着いた優しい声で淡々と歌い上げるその姿は、見る者に穏やかなインパクトを残す。近年、彼女がテーマとするのは“僕と君”という関係性。11月15日(水)にリリースされた1st EP『Between us』では、ポップスやR&Bを基盤としたメロディに、多種多様な恋愛のストーリーを詰め込んでいる。
おそらくmoekiのもとにリスナーからの相談が絶えないのは、彼女の紡ぐストーリーが誠実で、誰の心にも寄り添えるものであるからだと察する。では、なぜ彼女はそういった物語を創り出せるのだろうか。また、そもそもなぜmoekiは恋愛について歌うようになったのだろう。
今回は北海道の自宅にいるmoekiにオンラインでインタビューと撮影を実施。彼女自身が音楽に目覚めるまでの軌跡とともに、クリエイティビティの源泉について話を訊いた。
Interview & Text Nozomi Takagi(https://twitter.com/n_takagi67)
Photo by 遥南碧(https://harunaoi.wixsite.com/harunaoi)
音楽を通じて友達が増えると感じた高校時代
――moekiさんが音楽に興味を持ったきっかけは?
moeki:自発的に興味を持ち始めたのは小学校3年生の頃です。でも遡ると、幼稚園の頃にはチューリップの「心の旅」を歌っていた記憶があって。
――渋いチョイスですね。どなたかの影響ですか?
moeki:一緒に住んでいたおばあちゃんだったと思います。演歌が好きなんですよ。ボロボロのカラオケ・セットが家にあって、「心の旅」もそのカラオケ・セットで覚えた記憶があります。
ただ、父から受けた影響の方がもっと大きかったです。父が洋楽のコピー・バンドを組んでいて、The Rolling StonesやThe Beatlesを弾き語りするのを観ていたんですよね。時々レコードも一緒に聴いたりしていました。
――自発的に音楽に興味を持ち始めた小学生の頃には、どういう音楽を聴いていたんですか?
moeki:たまたまYouTubeでMVを観て、Justin Bieberに最初ハマりました。徐々にライブ映像など、他の動画もチェックするようになって、そこから数珠つなぎにどんどん洋楽を聴くようになりました。今の音楽活動につながる、iriさんやBillie Eilishといったアーティストを好きになったのは高校生のときですね。
――彼女たちのどういったところが気に入りました?
moeki:インタビューなどで発している言葉や、人柄に惹かれたのかもしれません。もちろん曲調や歌声の好みもあります。でも、私が特定のミュージシャンを好きになるとき、ファッションやキャラクターも含めた全体像に憧れることが多いんですよね。深掘りするほど魅力がわかるような人が好きなんだと思います。
あと、ちょうど彼女たちのことを好きになったのと同じ時期に、SNSでもアコースティック・ギターの弾き語りをアップするようになって。尊敬するアーティストのカバーなどを、少しずつやるようになりました。
――現在ではTikTokにも投稿されていますし、moekiさんの活動の原点ですね。
moeki:当時は今のようにコンスタントにアップするわけではなく、本当に年に1本程度でした。しかも下手っぴだったから、当時の動画はもう非公開にしています(笑)。ただ、音楽に本腰を入れるようになってからもコンスタントに続けている、大事な活動のひとつになります。
――最初に動画を公開するようになった動機はどのようなものでしたか?
moeki:高校に入学してから“音楽をやっていると友だちが増える”と強く感じるようになって。それこそ好きなアーティストの話題や、好きなジャンルの話で盛り上がれたり。そこから自分が歌う動画をアップすることで、高校だけじゃなく、北海道、日本、海外……と広く発信して、より多くの人と繋がれるんじゃないかって思いました。それで、影響を受けたアーティストの曲を中心にカバーをするようになったのがきっかけです。
実は高3のときアコースティック・バンドを組んだのも、動画の発信がきっかけでした。SNSで私の弾き語りをチェックした友だちが「一緒にアコースティック・バンドを組もう」って言ってくれたのが発端だったんです。
――バンドではどのような曲を演奏していたのでしょうか?
moeki:その当時はRADWIMPSやクリープハイプ、My Hair is Badなどをアコースティック・バージョンでカバーしていました。バンド活動経由で知った日本の音楽にも、強く影響を受けていると思います。
リスナーからのコメントが曲作りのエッセンスに
――moekiさんのSNSアカウントでは、カバー曲だけでなくオリジナル曲もアップされてますよね。曲作りを始めたのも高校時代からですか?
moeki:本格的ではなかったものの、いわゆる“作り溜め”みたいなことは、常日頃から行なっていました。バンド活動の影響が色濃かったから、Jロックの要素が強い曲が多かった気がします。今はもう少しポップにまとまっていると思うんですけど。
――曲作りの方法は、当時と今であまり変わらず?
moeki:ほぼ変わらずですね。基本的には歌いたいテーマや歌詞のフレーズを先に思いつき、そこから歌詞に当てはまるメロディを考えていくことが多いです。あくまで歌詞が中心なので、アレンジャーさんにも一番伝えたいフレーズが映えるような編曲をお願いしています。
ただ、その“伝えたいことありき”な曲作りは変わらないのですが……最近ではデモが完成してからブラッシュアップするまでの過程に、ワンクッション入るようになりました。
――それは具体的にはどのような工程なのでしょう?
moeki:デモの段階で弾き語りをSNSにアップして、どんなレスポンスが来るかをチェックするようになったんです。ありがたいことに、最近は動画を投稿すると、コメントをくださる方が多くて。
たとえば「マイガール」も、曲のテーマ自体は最初から決まっていたんです。ただ、デモをアップしたときに、テーマへ共感するコメントだけじゃなく、テーマに関連する体験談を寄せてくださる方もいらっしゃったんですよね。頂いたコメントを読んでいるうちに、歌詞やタイトルをより突き詰めて考えるようになって。そうやって皆さんのリアクションを通して完成に至った曲は、「マイガール」に限らず、今後もたくさん生まれると思います。
――先ほどアレンジのお話もありましたが、「かわいい」は%C(TOSHIKI HAYASHI)さんがアレンジで参加されています。%Cさんには何かアレンジのオーダーをされたんですか?
moeki:大好きなアーティストさんだからこそ、もうほぼ全てをお任せするつもりでした。元々デモの段階から、歌詞にも“新橋”という地名を入れたりして、ムーディさの中にも可愛らしさのある曲に仕上げたかったんです。
それで蓋を開けてみたら、自分が想像していた“東京っぽさ”が広がっていて……鳥肌が立ったし、涙が止まらなくなりました。歌詞からも情景を汲み取ってくださったんだな、と感動しました。ちょっと背伸びした恋愛が、アレンジの力で的確に再現された一曲だと思います。
――1st EP『Between us』は恋愛をテーマとした楽曲でまとまっていますよね。この傾向も、リスナーからの反応と関係が?
moeki:確かに『Between us』に収録されている曲に限らず、ここ最近で作った楽曲を並べてみると“恋愛”が主題なんですよね。最近、InstagramのDM経由で恋愛相談を受けることが多いんです。それこそ「かわいい」をリリースした頃からかな。いつも“私でいいのかな”と思いながら返信しているのですが、そういったDMが増えているということは、相談役として信頼できる曲を出せているってことなんですかね(笑)。
――きっとそうだと思います。
moeki:そうやって誰かに音楽で寄り添えるようになるのは嬉しくて。なるべくテーマは明確にしつつも、歌詞の中身に関しては広く、様々な解釈ができるような曲を作ろうと意識しています。あと、“いろんな価値観を肯定したい”とも思っていて。たとえば「かわいい」は“年の差”をテーマとした1曲だし、アートワークも女の子2人が手をつないでいます。そういう曲作りをしているうちに、それぞれの曲に登場する“僕”や“君”の形も多様になっていきました。
――moekiさんの曲に登場する“僕”って、ご自身のことではなかったんですね。
moeki:実は歌詞の内容自体、フィクションの方が多いんです。それぞれの曲で自分とは別の主人公を立てている感じですね。
――では『Between us』の中で、ご自身の価値観に一番近い楽曲は?
moeki:「マイガール」です。世界にはいろんな愛の形があって、誰かの言葉やちょっとした行動だけで、それをもっと表現しやすい世の中になると思うんです。そういった普段からの考え方が一番反映されている、という意味で「マイガール」に登場する“僕”が一番近いのかな、と捉えています。
――様々な“僕”を登場させることで、いろんな悩みや考え方にフィットできるようにしているんですね。その上で『Between us』はどういった人に届けたいEPになりましたか?
moeki:居場所がないように感じてしまっていたり、表現のしようがない感情に悩んだりしている人に届けたいです。私の作る歌が必ずしも100%正しい答えを導き出せるとは思っていないです。でも、“こういう考え方もあるよね”と、ひとつの解釈を提示できたらいいな、と思っています。
人同士の化学反応を考えていきたい
――moekiさんにとって、ファンの存在は本当に重要なのだと、お話を聞いていて思いました。
moeki:とても大事です。可能ならば私個人にメッセージをくれた方、一人ひとりに1曲ずつ作りたいくらい。それほど身近に感じています。基本的には若い人が多いのですが、中には年上の方もいて。いろんな世代の方に聴いてもらえるアーティストになりたいので嬉しいです。
あと、東京とかでライブをすると、配信やSNSでの“画面越し”のコミュニケーションではなくなりますよね。ステージ越しでも、目と目で通じ合えていると感じる瞬間は多々あります。もっとファンの皆さんが住んでいるところへ足を運んで会いに行けるよう、活動の幅を広げていきたいです。
――それこそ、12月にはmoekiさんの活動拠点である札幌で、初めてのワンマン・ライブも開催されますよね。準備は順調ですか?
moeki:準備は順調……だと思います。ただ、あまりにも緊張しすぎていて(笑)。初のワンマンなのですごくドキドキしています。対バンとは違い、全員が自分を観に来てくれるわけじゃないですか。曲に込めたメッセージだけじゃなく、今までの感謝の気持ちも込めてライブをしたいなって思います。なるべくお客さん一人ひとりの目を見ながら伝えたいです。
――1st EPのリリース、そしてワンマンが控えているなかで、先の予定を聞くのも時期尚早かもしれませんが、次に出すEPやアルバムはどういった曲が多くなっていくと思いますか?
moeki:今はジャンルに囚われずにさまざまな楽曲に挑戦したい気持ちが強くて、意識的にいろんなタイプの曲を聴いて勉強しています。たとえば最近、英会話の先生に教えてもらった、フィリピンのMAKIさんというシンガーが特にお気に入りで。
moeki:そうやってインプットは増やしている一方、自分の原点であるR&Bにも今一度立ち返りたいなと思っています。今回のEP、個人的にはポップにまとまったと思っているんです。でも、初期の頃にリリースした「Crazzyy」や「A Rainy Night in NY」などに比べると、R&Bが薄まっている気がしていて。新しい音楽にも挑戦しつつ、同時に原点も忘れないように、いろんな要素がミックスされた音楽に挑戦していきたいです。
――では、『Between us』の軸となっていたテーマ“恋愛”も、今後は変化していくと思いますか?
moeki:もともと『Between us』というタイトルは“2人の間だけのこと”とか“2人だけの世界”といった“秘めごと”の意味合いで名付けたのですが……この“2人”のことは、もう少しだけ曲にしていきたいなと思いました。
ちょうど制作期間中、ディズニー映画の『マイ・エレメント』(原題: Elemental)を観たんですよ。火、水、土、風といったエレメント(元素)が暮らす世界を描いた作品なのですが、作中で火と水が恋に落ちるんですよね。彼らは両想いでもお互いに触れることはできなかった。でも、最終的には抱きしめ合って、愛を伝え合えるようになるんです。そうやって、“人同士の化学反応”について、これからも考えていけたらと思いました。
今、現在進行形で新たな価値観に触れる機会はどんどん増えています。その一つひとつの価値観を音楽に変換し続けていきたい。次にリリースされるEPは『Between us』の続編になるかもしれないですね。
【リリース情報】
【イベント情報】
■ チケット詳細(e+)(http://eplus.jp/moeki/)

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