齊藤工監督が本名で作品づくりに向き
合った、窪田正孝主演の映画『スイー
ト・マイホーム』への思いとは

齊藤工が監督を務め、窪田正孝が主演した映画『スイート・マイホーム』が全国で公開されている。「第13回小説現代長編新人賞」を受賞した神津凛子の小説が原作で、新居に引っ越した家族が、理想の「家」の中で、次々に恐ろしい出来事に見舞われる姿を描いたホラー・ミステリー。東京・六本木で2日に開催された公開記念舞台挨拶後に、取材に応じた齊藤監督に見どころなどを聞いた。
ーー構想から完成まで4年以上をかけた映画の上映が始まりました。
俳優が監督をするということに対してのノイズを懸念していましたが、役者やスタッフの素晴らしい表現が払しょくしてくれました。僕が1番観たい映画を完成させてくださった方に感謝したいです。
9月2日に東京・六本木で行われた舞台挨拶の様子(写真左から)齊藤工監督、奈緒、蓮佛美沙子、窪塚洋介
ーー先ほどの舞台挨拶で、「映画は観てもらうことで完成する」とお話しされていました。映画は6月に中国で開催された「第25回上海国際映画祭」、7月にはアメリカで行われた「第22回ニューヨーク・アジアン映画祭」でも上映されました。上海では「思わぬところで笑いが起きていた」と明かされていましたが、本日の会場の様子はどのように受け止めましたか。
スクリーンをじっと見つめている様子を感じました。舞台挨拶は映画の上映後に行うことが決まっていたので、恐ろしいことに手を染めていたキャストの方たちを目にすることで、(映画の光景が)フラッシュバックしてくれたらいいなと。恐ろしいものを目にした後で、春風のように爽やかなキャストが登場することは、最低で最高のサービスだなと思いました。
ーー映画は神津さんの小説が原作です。読まれたとき、「他人事が我が事になる感覚があった」そうですね。
物語には残酷な場面が多く描かれています。そこに繋がっていく「始まりのほころび」に心当たりがありました。ルールに反すると分かっていても蛇の道に足を踏み入れてしまう。本人の意識を超えた何かに操られて、一線をまたいでしまうこと。もしもなりえた自分を想像するだけでも、後ろめたさを感じてしまうような。それは人間であるという確認でもあると感じるのですが。映画の中では窪田くん演じる(清沢)賢二が不貞を働く場面に、そういう感覚がありました。
映画『スイート・マイホーム』の1場面。写真は主演の窪田正孝。     (c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社
ーー2022年1月末から3月初旬にかけて行った撮影では、齊藤監督が続けている“腸活”も導入されました。「腸を守りたい」と役者らに“腹巻き”を贈られたそうですね。
腸は第2の脳でもあります。その環境を整えることは、良い現場づくりにもつながると考えました。最初に予算が削られてしまいがちな弁当も、玄米などオーガニックな素材を使ったものや、温かいみそ汁などを用意していただきました。現場の効率を上げるために、役立ったと感じています。
ーー冒頭では俳優が監督をすることへのノイズについてお話してくださいました。その懸念があっても、本名の齊藤工監督として作品づくりに向き合い続けるのは、なぜなのでしょうか。
僕が監督をする作品には(アーティストの)福山雅治さんが出資をしてくださっています。今作もそうで、福山さんは「メジャーでメジャーをやることの意味深さ」を誰よりも説得力を持ってつついてくださる。僕のような監督は自主的にインディーズにいくこともできるけれど、それはメジャーで勝負をすることを避けることでもある。今作は日活と東京テアトルが製作を支援してくれました。商業的な所でしっかり勝負すること、そこに身を投じることこそ意味がある。僕が前例を作ることで、(後進の)選択肢が増えることに繋がれば良いですね。
撮影中の指示をする齊藤工監督     (c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社
ーー映画界を取り巻く環境を変えて行きたいという思いもあるのですね。
この業界に身を置いていますが、かつてから不健全さを感じていました。生まれた我が子にも会えず働きづめのスタッフ、出産や育児のためにキャリアを閉じることを選択する女性もいました。仕事と何かを天秤にかけるようなことをしなくても良いように、現場に託児所を設けるなど、働きやすい環境も大事にしました。「齊藤工が現場に託児所を作ってた」ということが話題になるうちは、まだ一般的ではないですよね。コロナ禍を経て、ルール改編の時期に来ていると感じるので、僕が出来ることに取り組み、若い人たちが憧れを持てるような業界になればと思います。
取材・文・撮影(一部)=翡翠

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