【Mrs. GREEN APPLE】10代だけではな
く、誰が聴いても受け入れてもらえる
曲を
初のホールツアーに挑戦中のミセスから届いた新作は、映画&ドラマ『笑う招き猫』主題歌、オープニングの2曲を含む豪華シングル。10代のメッセンジャーから全世代向けポップスへ、進化を続けるバンドの今を大森元貴(Vo&Gu)が語る。
取材:宮本英夫
映画とドラマ同時に主題歌を書き下ろすというのは、初体験ですよね。
はい。作品の一部になるというのは、めちゃめちゃやりたかったことなので、伸び伸びと書けましたね。映画の主題歌の書き下ろしは初めてだったんですけど、変なプレッシャーもなく楽しんでできました。
映画とドラマは、同じタイトルだけど中身が違うとか?
ドラマはコメディータッチのかなり新しい感じで、映画は思いっ切りヒューマンドラマで、すごく深いところまで描いていて。まったく違うけどベースの世界観は共通しているので、書いていて楽しかったです。
去年の暮れに、映画の撮影現場に行ったそうですね。
行きました。撮影を見せてもらって、監督とお話させてもらって。面白かったのが、“役者には、演じていても違うことを考えているようなお芝居をさせている”と言っていて。
え、どういうこと?
真剣な話をしてるんだけど、頭の中では“お腹すいたなぁ”とか違うことを考えているような自然な演技をしてほしいって。あと、こっちで太陽は昇っているけど、どこかでは沈んでいるように、ひとつのことを描くというよりも同時にいろんなことが起きている、“こうだ”とは言い切れない世界を作りたいという話をしていて。それは僕がインディーズの頃から書いている世界観なので、書きやすかったです。
それで出来上がったのが「どこかで日は昇る」。
Mrs. GREEN APPLEは基本的に10代にフォーカスして曲を書いていて、例えば「Speaking」は10代が聴いて初めて意味をなす曲でもあると思っているんですけど、今回はそうじゃないもの、誰が聴いてもちゃんと受け入れてもらえる曲を書きたかったというか。メジャーデビュー以降のミセスしか知らない人は新鮮に感じると思うんですけど、どちらかと言うとこういう泥臭い歌を歌うタイプなんですよ(笑)。
あぁ~、確かに。
狙いを絞って曲を書くということを始めたのは、メジャーデビュー以降なので。このタイミングでまたこういう曲を書くのは面白いと思ったし、しかも自分が成人式に行ったあとに書き始めた曲なんですよ。
そうなんだ。それはタイムリーな。
すごいタイムリーで、だからこそ書けた歌詞だとも思うんですけど。絶対に着飾っちゃいけない音楽だし、武装しちゃいけない音楽であるべきだなと思ったので。サウンドもすごくシンプルだし、BPMも速くないし、言葉数がたくさんあるわけでもない。“いい曲ってこういうのものなのかな?”というところを意識しましたね。人間味あふれる曲を書こうと思ってました。
曲調は展開の多いミドルバラードで、涼ちゃん(藤澤)の吹くフルートとか、アイリッシュなムードがすごくいいアクセントになっている。
ただ、いい曲だけで終わらせたくはなかったんですよね。いい曲っぽいものを書こうと思ったら、そういうギミックってあるんですけど、そこに絶対落としたくなくて。コード進行もめちゃめちゃなことになってるし、せっかく刺さるような映画だから、音楽も刺さらなきゃ駄目だと。でも、今までやってきたようなひねくれとかじゃない刺し方をしようと思って、すごく考えましたね。
カップリングの「スマイロブドリーマ」はMBS/TBSドラマのほうのオープニングテーマで。
ヒップホップテイストもあって、楽しい曲ですね。エンジニアを外国人の方にやってもらって、すごく新しいアプローチができました。スタッフにも“自由に遊んでいいよ”と言われたので、とことん遊び尽くしましたね。直観的で能動的な歌なので、作り方も録り方も能動的に作りました。
これ、涼ちゃんと髙野くんが演奏に参加してないと聞いたんだけど。
そうなんですよ。最初、髙野に“弾く?”って訊いたら“弾きたい”と言うので、合わせたんですけど、何か違ったんで。“多分思ってること一緒だよね?”“うん。やめる”って(笑)。涼ちゃんはプログラミングで参加していて、あとはほぼ自分のデモ通り。そういう意味では“曲作ったぜ感”がすごくありますね。バンドだと、5人で何ができるか?みたいな感じになるけど、そういうことをやってると絶対に限界が来るって、前から言ってるんですけど。それが活きてる曲ですね。
そして、もう1曲「SwitCh」はNHKの『ニュース シブ5時』『4時も! シブ5時』テーマソング。最初に聞いた時、ミセスがニュースの曲?って、びっくりしましたよ。
僕もびっくりしました。“一体、誰と間違えたんだ?”と(笑)。でも、“NHKのニュース番組というお堅いイメージをやわらかいものにしたくて、ぜひお願いしたい”と言っていただいて、率直にすごく嬉しかったですね。最初はどうしていいか分からなかったんですけど、僕らにオファーしてくれたということはきっとエネルギーが大事だと思ったのと、ひとつひとつのニュースを邪魔しないために、難しいことを歌っても仕方ないよなと思ったので、明るい曲を作ろうと思って。夕方の時間帯に主婦層が観る番組みたいなので、子供が帰ってきて夕ご飯の支度をする時にバチンとスイッチを切り替えられるように“SwitCh”というタイトルにしました。新しいことをしたいと思った時に僕らを選んでもらえるのは本当に嬉しかったし、そのエネルギーで書けた曲です。
3曲揃って、新たな挑戦のシングルになりましたね。
全部書き下ろしの新曲のシングルは今までに出したことがなかったので。自分としてもすごく新鮮で、前進した感じが強いんですよ。今のエネルギーが詰まった盤だなと思います。
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「どこかで日は昇る」2017年05月03日発売ユニバーサルミュージック
- 【初回限定盤(DVD付)】
- UPCH-89328 1836円
ミセス・グリーンアップル:2013年4月結成の5人組バンド。作詞、作曲、編曲の全てをヴォーカル&ギターの大森元貴が手掛けており、15年7月にミニアルバム『Variety』でメジャーデビュー。18年4月に発表した3rdアルバム『ENSEMBLE』はオリコン初登場3位を記録。アルバムを提げてのワンマンツアーはファイナルの幕張メッセ国際展示場2デイズまで全公演即日完売。シングルと同時発売で最終公演の模様を収めたDVD&Blu-ray『ENSEMBLE TOUR 〜ソワレ・ドゥ・ラ・ブリュ〜』をリリースする。Mrs. GREEN APPLE オフィシャルHP