「どうする家康」(C)NHK

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「どうする家康」第31回「史上最大の
決戦」 家康と秀吉の決戦を盛り上げ
る松本潤とムロツヨシの名演【大河ド
ラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。8月13日放送の第31回「史上最大の決戦」では、織田家後継者の座を巡って、信長の息子・信雄(浜野謙太)を味方につけた主人公・徳川家康と、柴田勝家を破って勢いに乗る羽柴秀吉の争いが描かれた。
 この家康と秀吉の決戦の行方を盛り上げたのが、家康を演じる松本潤と秀吉役のムロツヨシの名演だ。
 ひ弱だった昔とは打って変わって、このところすっかりたくましさと冷静さを身に付けた家康。この回、秀吉との決戦を控えた信雄が、父・信長の重臣だった池田恒興(徳重聡)に裏切られ、「なぜ池田はわしを裏切る!?」とうろたえていたが、その姿はかつての家康を思い出させた。だがここでの家康は、信雄を「総大将がうろたえるな!」と叱責(しっせき)し、改めてその成長を実感させた。
 それは同時に、家康にしたたかさももたらした。この回、重臣・石川数正(松重豊)に贈り物を持たせて秀吉の下へ挨拶に向かわせ、出方を伺う駆け引きを見せたくだりは、その好例だ。これまではひ弱さゆえ、「白兎」と呼ばれてきた家康だが、もはやその面影はない。むしろ、おなじみのあだ名「狸オヤジ」へとつながる道筋が見えてきたようにも思える。
 さらに、その変化を引き立てたのが、時折見せる柔和な素顔だ。この回でも、側室・於愛の方(広瀬アリス)と一緒のときの穏やかな表情は、家康の根底にある優しさが失われていないことを実感させ、さりげないコントラストで軍議の場での険しい表情を印象付けた。
 内面の一貫性を保ったまま、家康の成長を実感させる。その松本の演技は見事だった。
 一方の秀吉を演じるムロツヨシ。ライバルとして家康とは対照的に、相変わらず喜怒哀楽激しい猿っぷりを見せていたが、この回注目したのは、周囲が秀吉を評した言葉だ。
 例えば、家康に秀吉との面会の報告をした際の石川数正の「何もかも芝居のようであり…。いや、何もかも、赤子のように、心のままにも思える…。得体が知れん」という言葉。
 さらに、秀吉との決戦を決断する徳川方の軍議の場で、本多正信(松山ケンイチ)が語った「今や誰もが秀吉にひれ伏しながら、されど腹の底では“この卑しき猿が天下人とは笑わせるな”と多かれ少なかれ思うておる」という言葉。
 いずれも秀吉の「得体の知れない」人柄を絶妙に伝えている。だが、この言葉が説得力を持つには、せりふを言う本人よりも、言われた秀吉を演じるムロツヨシが、その言葉にふさわしい演技を見せられるかどうかにかかってくる。
 芝居のようでもあり、赤子のように素直にも見える。なおかつ、「卑しき猿」と周囲に思わせる…。これを体現するのは、並大抵のことではない。
 だが結果はご存じの通り、ムロは見事にその言葉を具体的な演技に昇華してみせた。改めて見てみると、これらの言葉とムロの演技の間に、ギャップを感じないことに驚かされる。
 数正の「猿を檻に入れましょう」という言葉通り、家康は秀吉の増長を阻止できるのか。物語の行方と共に、演者たちの芝居からも目が離せない。

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