新国立劇場、プッチーニ「三部作」か
ら『修道女アンジェリカ』とラヴェル
のファンタジー・オペラ『子どもと魔
法』をカップリングして上演

2023年10月1日(日)~10月9日(月・祝)新国立劇場 オペラパレスにて、新国立劇場 2023/2024 シーズン オペラ開幕公演 ジャコモ・プッチーニ『修道女アンジェリカ』モーリス・ラヴェル『子どもと魔法』が上演される。
ダブルビル(2本立て)の第3弾となる本公演。母の子への愛情から生まれる贖罪の物語を描く『修道女アンジェリカ』と、子の母への愛が悪夢から醒める呪文となる『子どもと魔法』をカップリングして上演する。
『修道女アンジェリカ』(1918年)は、プッチーニ晩年の「三部作」の二作目で、ヴェリズモ的な悲劇『外套』、コメディの『ジャンニ・スキッキ』と対比を成す、宗教的、感動的な物語。ラストシーンの混声合唱を除き登場人物すべてが女声だけで演じられ、静謐で叙情的な空気に満ちた作品。修道女たちの穏やかな情景に始まり、上流階級にいながら未婚の母となり、ひとり修道女となったアンジェリカの過去が明らかになっていく、公爵夫人との緊迫したやり取り、アンジェリカの絶望と悲嘆へのドラマティックな展開、そして贖罪の思いと神秘的な奇蹟のシーンが、プッチーニならではの雄弁な管弦楽で一気に表現される。
一方、ラヴェルの『子どもと魔法』(1925年)は作曲家自身が「ファンタジー・リリック」と呼んだ、オペラとバレエの要素を融合させて作曲された作品。時代の寵児コレットの台本をもとに、いたずらっ子でお母さんを困らせていた子どもが身の回りの物や生き物たちに仕返しされる悪夢の世界へ追い込まれ、思わず口から出た「ママ」という言葉をきっかけに悪夢から解放される物語。子ども目線で展開する趣向も楽しく、子どもを取り囲む森羅万象がラヴェル得意の華麗な管弦楽や軽妙なリズムと和声、時にエキゾティックな節回しで息を吹き込まれ、活き活きと動き出す。
「人間の愛の中でもっとも純粋な“母と子の愛”」(大野和士芸術監督)をキーワードに、20世紀初頭ヨーロッパの彩り豊かな音楽を、ダブルビルならではの洒脱なコントラストで楽しむことができる。
指揮・演出は近代作品はもちろん、20世紀作品も得意とする沼尻竜典と、オペラの読み込みの名手、粟國淳の鉄壁のタッグが『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』に続いての登場。
沼尻竜典
粟國淳
アンジェリカ役には、トスカなどドラマティックな役柄でスター街道を駆け上がり、スカラ座、メトロポリタン歌劇場などを賑わすキアーラ・イゾットンが、21年『トスカ』以来の出演。公爵夫人には昨年『ファルスタッフ』クイックリーで圧巻の存在感を示した、芸達者なマリアンナ・ピッツォラート。『子どもと魔法』の子ども役には、同役を特に得意とし、世界中の歌劇場、オーケストラから引く手あまたのフランスのソプラノ、クロエ・ブリオが登場。お母さん役には情熱を秘めた毅然とした表現が好評を博す齊藤純子がフランスから来日する。
キアーラ・イゾットン
マリアンナ・ピッツォラート
クロエ・ブリオ
齊藤純子
そのほか、小林由佳、河野鉄平、三宅理恵ら近年重要な役で成功が続く歌手に加え、塩崎めぐみ、郷家暁子、中村真紀、伊藤晴、盛田麻央、十合翔子らオペラ界で注目を集めるフレッシュな歌手たちが華やかに揃う。
ダブルビルならではの洒脱な舞台、そして贅沢なキャストがシーズン開幕を華やかに彩り、一粒で二度ならず、何重何倍にも楽しめる『修道女アンジェリカ/子どもと魔法』に期待しよう。
大野和士芸術監督からのメッセージ
『修道女アンジェリカ』は、修道院の中での事件として登場人物が全員女性であるという、「三部作」の中でも特異な存在です。主人公のアンジェリカは未婚の母だったため、子どもと引き離されて修道院へと入ります。子を思い続けて過ごした彼女は7年後に息子の死を知り、悲しみのあまり息を引き取って昇天しますが、天国に迎え入れられる際の音楽はプッチーニのオペラのどの作品よりも、神々しさに満ち溢れています。
一方、ラヴェルの『子どもと魔法』は、いたずらをしたり、悪いことばかりしてお母さんを困らせていた子供が、いじめていた動物たちや壊した食器や時計など、自分が乱暴に扱っていたもの全てに仕返しを受け追い詰められるという「悪夢」の世界に追いやられていきます。そんな悪夢のような状況から男の子を助けてくれる呪文は、最愛の「ママ」という言葉でした。
今回のダブルビルは、人間の愛の中でもっとも純粋な“母と子の愛”をテーマにしています。
指揮には16年間びわ湖ホールの芸術監督を務めオペラを極めている沼尻竜典、アンジェリカには名花キアーラ・イゾットン、公爵夫人には気品を湛えたマリアンナ・ピッツォラート、また『子どもと魔法』の子ども役として世界中で引く手あまたのクロエ・ブリオ、そしてそれに加えて齊藤純子、河野鉄平、塩崎めぐみ、郷家暁子、小林由佳という日本の実力派歌手を揃え、粟國淳による堂々の新演出でお届けします。
<『修道女アンジェリカ』あらすじ>
夕暮れの修道院。礼拝を終え修道女たちは、アンジェリカは面会を待ち続けているのだと噂する。ついに面会の夫人が訪れる。アンジェリカの叔母の公爵夫人である。夫人はアンジェリカの妹の結婚のため、両親の遺産を放棄し妹へ与えるようにと遺産整理の手続きに来たのだ。
アンジェリカは未婚の母であり、そのために7年前、子どもと引き離され修道院へ入れられていた。妹の結婚を喜び、わが子の様子をおずおずと尋ねるアンジェリカに、公爵夫人が子どもは2年前に亡くなったと伝える。悲嘆にくれるアンジェリカ。深夜、アンジェリカはひっそりと薬草を煎じて毒薬を作り、息子のもとへ旅立とうと毒をあおるが、すぐに自殺の大罪を犯しては天国へ行けないことに気づき絶望する。罪を悔い、聖母マリアに祈りを捧げるアンジェリカに奇蹟が起こり、天使の合唱の中、アンジェリカは息子に導かれ息を引き取る。
<「子どもと魔法」あらすじ>
宿題がいやで文句だらけの男の子。お母さんは怒って、味気ないパンと苦いお茶をおやつに置いていく。男の子はポットやカップを割ったり、リスや猫をいじめたり、暖炉をかき回してやかんを引っくり返したり、壁に落書きしたり、時計を壊したり本を破いたりと暴れ放題。すると椅子が動いて「乱暴な子はまっぴら」とダンスを始める。時計も怒るし、ポットもカップも脅かすし、「悪い子を焼き殺そう」と火まで追いかけてくる。
壁紙から落書きの羊飼い、破れた本からおとぎ話のお姫様、そして教科書から算数の問題を出す妙なおじいさんまで登場。男の子が庭に逃げ出すと、寄り掛かった木が「お前がつけた傷だ」とうめくのでびっくり。トンボやこうもり、カエルと、いじめられた生き物たちも次々に集まる。
男の子が思わず「ママ」と叫ぶと、生き物たちが飛びかかって大騒ぎに。怪我してしまったリスを男の子が手当てすると、生き物たちは子どもの優しいところに気づいて、気を失った男の子を助けて家まで運んで「ママ」と声をかけ、「坊やはいい子になった」と言って消えていく。月明かりのもと、目を覚ました男の子が「ママ」と呼びかける。

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