【遥海 インタビュー】
悲しい時、楽しい時、
ちょっとどん底の時も私は側にいたい
この曲たちを
側に置いておいてほしい
自然界で撮影したMVは迫力満点でした。
大変でしたよ〜。森の中は見たことがない虫がいっぱいいて(笑)。
アコースティック生配信YouTube LIVE『MUSIC TERRACE』で披露した「声」は作品よりもやさしい雰囲気がありましたよ。
歌い方が全然違いますから。レコーディングの時はいろんな人の想いを背負って歌うけど、ライヴはそれが例え生配信であっても、私はこの世の中で戦っている人たちに寄り添いたい、みんなの味方になりたい…その立場で歌うので。全然歌い方は違いますね。
リスナーに対して“あなたの味方だよと、寄り添うような歌を届けたい”という気持ちが根底にあるから、遥海さんは4オクターブの歌唱領域を持ち、圧倒的な歌唱力がありながらも、歌がスッと心の奥に入り込んできて、聴き終わったあとにその歌唱のすごさに改めて震えるという感じなんですよね。
嬉しい! 聴き手を圧倒するだけの歌は自己満足なんです。何年か前の自分はそれだけでした。私にも尖っていた時代があったんですね。でも、いろんな人と出会っていく中で、歌をみんなにシェアするとなった時、“私を見てよ!”だけじゃないと気づいて。私自身がいろんな曲に助けられたからこそ、歌で音楽に恩返しをしたいという感情になっていったんです。
遥海さんは自分の声、好きですか?
大好きです。小さい頃からきっとこの声は自分のものではないんだろうなと思っている私がいますね。与えてくれたものなんだって。レッスンとか何もしていないのに、楽しくて歌っていたら幼稚園の先生に“これ、歌ってみなさい”と言われて、初めてひとりで舞台に立って歌ったのが5歳の時だったんですけど、それを観たお母さんが“この子、歌えるじゃん!?”となったんです。最初から歌えていたってことは、この声は大事にしなきゃな、恵みなんだろうなって。私にはその声を使って歌うことしかできないので、この声が消えるまで歌っていたいですね。
ここからはカップリング曲について。8、9月にNHK『みんなのうた』でオンエアされていた「スナビキソウ」はサウンドもオーガニックで、歌も素顔というか。
そう。これは本名の自分、普段の自分の心に一番近い歌なんです。初めて聴いた瞬間、“これ、私じゃん!”って思いました。私のあんな経験、あの時に味わったどん底もこれを歌うためにあったんだと思えて。この歌は私なんです。
歌詞の一部がカタカナ表記になっているのは何か理由があるんですか?
そこはあえて訊かなかったんです。私の中では、自分が日本に来た時に日本語ができなかったからなのかなと解釈しています。レコーディングはギターの方と“せーの”で一緒に録ったからライヴ感もあると思います。これもサビの歌い方は全然変えていて。この曲はみんなと一緒に歌っているのを意識したかったから、最初は海辺でふたりだけで歌っているんだけど、2番ではみんなが入ってきて、手を左右にふりながら一緒に歌ってくれている感じです。この曲は頑張っている人には刺さる曲だと思います。
対して「ずっと、、、」は洋楽系のトロピックなサマーダンスチューンで。シティポップのようなラブソングも歌うんですね。
こういう恋愛をしてこなかったので、これは一番共感できなかったです(一同笑)。最初は本当に歌えなかったんですよ。“こんなの恥ずかしい!”ってなっちゃって(微笑)。自分が好きなことが相手にバレると恥ずかしいから、たぶん告白できないタイプなんですよね。だから、“こんなの恥ずかしくて言えないよ”ってなっちゃった。ただ、私は小学生の頃から韓国ドラマが大好きだったので、韓ドラのロマンスコメディー、そのキュンとするシチュエーションを思い出しながら、“韓ドラ好きじゃん! だったら歌えるよ”と本名の私がアーティストの遥海にエールを送ったら歌えましたね(笑)。一番共感できなかったけど、一番自分が憧れる恋愛かなと。
3曲全然違うタイプの曲ですが、リスナーのみなさんにはどんなふうにこのシングルを楽しんでもらえたら嬉しいですか?
全然タイプが違うからこそ、みんなのそれぞれの気分に遥海の歌がいられると思います。今落ち込んでいるという人には「スナビキソウ」がある。恋愛中なんだっていう人には「ずっと、、、」がある。何をしたらいいか分からない、自分の声も見失ってしまったという人には「声」がある。悲しい時、楽しい時、ちょっとどん底の時も私は側にいたいから、この曲たちを側に置いておいてほしいです。
取材:東條祥恵