L→R 大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gu)

L→R 大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gu)

【雨のパレード インタビュー】
一石を投じたいし、
音楽で“新しい!”って
感覚にさせたい

僕はそんなに悲観的な人間じゃないし
この中でもどう楽しめるか追求できた

ところで、意外と前作より生音が多くないですか?

あぁ〜…どうなんだろう? 印象としてはそうかもしれないですね。僕らってデジデジしいシンセはあんまり好きじゃなくて、ちょっとアナログライクな音色が好きなんですね。で、今回のレコーディングエンジニアは前作もやってくれた片岡恭久さんという方なんですけど、ハイファイな音も作れるし、アナログライクな音も理解されてて、むしろそっちのほうが好みの方なんです。今回はシンセの音を一度アナログのミキサーに通して、それをミックスし直したりとかいろいろやってくれてて。その段階でできるノイズみたいな音があるんですけど、自分らの好みの音になってると理解してるので、あえてノイズを残しながらやったりもして。それで生音が多いっていう印象になってるのかもしれないです。

なるほど、そういう理由なんですね。

だから、僕らの中では生音かそうじゃないかの境界がより意味を持たなくなってきてるというか。“この曲にはこれがいい”というのを考えてるだけなので。

先行して配信された「IDENTITY」ですが、これもストレートな歌詞ですね。

少年漫画原作のテレビアニメ『メジャーセカンド』のエンディングテーマにしてもらったので。僕はもともと原作のファンだったから、その主人公の気持ちになって書きたいと思って、なるべく主人公目線で書いた曲ではあります。

アルバムの中で聴くと《どこまでもいこうぜ》という歌詞がどこにも行けない時だったから、より渇望感が増すなと。

あぁ、それはそれでいいですね。

しかし、アニメのエンディングテーマでプリズマイザー(ヴォーカルに施すことを目的としたエフェクターの一種)を使うってなかなかないですよね。

あははは。僕はEテレが大好きなんですよ。NHKの大人たち…それは出演している大人も含めてですけど、すごい遊んでる感が伝わってくるんで。子供相手に大人が本気で遊んでるのが、子供の感性を育てると思っているので、逆にハードルを下げたくないというか、自分たちが、今、音楽的にしたかったこと…『BOREDERLESS』が終わってすぐだったというのもあったし、子供たちに全力で遊んだ音を聴かせたいっていう気持ちがあったので使いました。でも、あれはプリズマイザーっというか、アナログ機器で安いやつなんですけど、オートチューンとボコーダーで作ったんですよ。同じようなことを別の機械でやってみた感じなんです。

あと、面白かったのが8曲目の「partagas」のタイトルの意味は“葉巻”なんですね。

そうです。最近ハマってる葉巻の銘柄です。

この曲はピアノが新鮮ですね。

いいですよね。コードの和音も面白い感じになっています。ベースの大元のフレーズは僕と康介さんとで作って、そこから須藤 優さんにお願いしました。米津玄師さんの曲などを弾いてるベースの方なんですけど、前作に続いて今作も「IDENTITY」含めたら3曲弾いてもらいました。この曲はベースでめちゃめちゃ遊べる曲だったから、僕らの中ではサンダーキャットを意識して作ったんですけど、もはやベーススターでしたね。レコーディングはほんとヤバかったです。テンションが上がりました。“めっちゃうめー!”って(笑)。

じゃあ、実際にレコーディングスタジオでの楽しさも詰まってる曲なんですね。

そうですね。宅レコの段階で生かしてる音もいっぱいあって、そこもほんとシームレスに作れたというか。なんのエゴもなく、全部が全部どちらの音で録ったほうがいいというのを純粋に決められたかなって感じです。

一曲ごとの印象が濃いんですよね。「Flash Back」のラテンな感じも新鮮だし。

ほー、やっぱそういうふうに聴こえます? 全然そんなつもりはなくやってたんですけど、歌の3度下を乗せようとした時はめちゃくちゃラテンぽくなっちゃうと思って、そのやり方はやめました。オクターブ上の声だけを乗せるセクションがあったりしてるんですけど、リズムはラテンですね。

赤裸々な表現も多いアルバムですが、「Flash Back」の歌詞は少し感覚的ですね。

そうですね。僕的には他のインタビューで気づかされたんですが、雨のパレードを始めた当初から僕が歌詞で描くような景色だったり、原風景的で象徴的なもの…例えばこの曲だと《荒立つ水銀の津波》って歌詞とかにそういうものを感じるって言われて。で、Twitterで昔の曲の歌詞とかが流れてきた時に…

歌詞botで?

そうそう。その歌詞を見た時に、“あっ、なんかこの感覚ってちょっと薄れてるかもしれない”って気づかされて。僕の周りのミュージシャンとか友達は“その感覚はもう取り戻せないよ”って言うんですけど、僕はまだ表現できるんじゃないかと思って、「partagas」や「Flash Back」ではそういう抽象的な自分の中にある景色みたいなものを歌詞で表現することに、また取り組んでみたんです。
ー確かにそれは雨のパレードの持ち味のひとつですね。文章というか、アートに近いのかもしれない。
そこが歌詞として意味を持たせすぎてた時期もあったのかなと。自分の原点じゃないけど、最初に書こうとしてたもの、書きたいものが見つかってなかった時代の良さっていうものにまた向き合える時間があったので、そういう良さが出てたらいいなと思いますね。その曲たちに関しては。

そして、最終的に「Child’s Heart」に辿り着くと。これまでならこんなに素直に受け取れなかったかもしれないという歌詞なんですけど。

あははは!

すごくシンプルなところに辿り着きましたね。

単純にコロナ禍でも一緒にいた人ってみんなにいて、そういう人たちに愛を伝えるきっかけになる曲が書けたらいいなと。僕自身で言ったら、親とかに冷たくしちゃうところがあるんで、そういう人たちに愛を伝えられたらもっといい世界になるのかなと思って書きました。

福永さんのお話を聞いてると自分と向き合う時間はあったにせよ、虚脱してる暇はなかったんですね。

そうですね。すごい楽しめてました。やっぱりサバイブしてる感じはしたし。僕はそんな悲観的な人間ではないので、“この中でどう楽しめるか?”っていうのは追求できたと思ってます。

取材:石角友香

アルバム『Face to Face』2020年12月23日発売 SPEEDSTAR RECORDS
    • 【初回盤】(CD+ボーナストラック)
    • VICL-65458
    • ¥3,000(税抜)
    • 【通常盤】(CD)
    • VICL-65459
    • ¥3,000(税抜)

『ame_no_parade LIVE 2020 "Face to Face"』

12/25(金) 東京・Zepp DiverCity TOKYO

雨のパレード プロフィール

アメノパレード:2013 年に結成、2016年メジャーデビュー。80'sPOP、インディR&B、エレクトロハウス、アンビエントなど様々なジャンルと洋邦の枠を超えた音楽性と、アナログシンセやサンプラー、ドラムマシーンなどを取り入れた、バンドという形態に拘らないサウンドメイクを武器に新世代のポップスを提唱する。2019年に入り現在の3人編成となり、シングル「Ahead Ahead」を携えて雨のパレード第二章の幕を開けた。続けて7月に「Summer Time Magic」、9月に「Story」を配信シングルとしてリリース。その枠にとらわれない音楽性に、アジアを中心に海外からの注目度も高まっている。2020年1月22日には4枚目のアルバム『BORDERLESS』を、さらに同年12月には5枚目のアルバム『Face to Face』をリリース。雨のパレード オフィシャルHP

「IDENTITY」MV

「Child’s Heart」Teaser

OKMusic編集部

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