L→R 大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gu)

L→R 大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gu)

【雨のパレード インタビュー】
一石を投じたいし、
音楽で“新しい!”って
感覚にさせたい

『BORDERLESS』に続いて、2020年2枚目のフルアルバム『Face to Face』をリリースする雨のパレード。内にこもる期間が増え、以前以上に社会問題になったSNS上での誹謗中傷について自分なりに表現したり、近しい人への愛情を伝えたり、赤裸々な気持ちが綴られ、サウンドや音像も3人体制になり、より深度を増した。フロントマンの福永浩平(Vo)の心境に迫ってみた。

何が一番喜んでもらえるか考えたら
音源を届けることが一番だと思って

あらかじめアルバムを年に2作も作ろうと思ってたわけではないんですよね。

そうですね。『BORDERLESS』(2020年1月発表)の全国ツアーを回ってる最中に新型コロナウイルスの影響によりツアーが中止になってしまったので、ファンのみんなに何をしたら喜んでもらえるのかをすごく考えた結果、音源を届けたいという気持ちが強くて。配信ライヴも行なったんですけど、音源が一番喜んでもらえるだろうと、シングルでもミニアルバムでもなく、フルアルバムを出したいと思って作りました。

自粛期間は精神的にキツかった記憶が個人的にはあるんですけど、いかがでした?

詰め詰めで『BOREDERLESS』を作って、ツアーのモードに入れてたんですが、そういうことになったんで、僕はいい休暇じゃないですけど、結構自分のやりたいことが家でできた期間だったと思います。

ミュージシャンは自宅の制作機材をアップデートしてる人が多かった気がします。

うん。僕らもかなり買いましたね。オーディオインターフェイスとパソコンを買ったので、かなり出費が…(笑)。

今回のアルバムの内容自体は赤裸々なもので、『BORDERLESS』はこれからを示唆する陽のイメージがあるアルバムだったから、すごく対照的な感じがあります。

そうですね。前作で蔦谷好位置さんと5曲一緒にさせてもらって、すごくいろんなことが学べて。その時期に蔦谷さんを入れてなかった曲っていうのは、実はネタの段階では亮ちゃん(2019年に脱退した是永亮祐の愛称)がいた頃の曲たちだったんです。なので、3人だけでゼロから作るのは今作が初めてで。前作で自分たちがものにできた技術とか、制作の新しいやり方みたいなものを身につけて、この作品でいろいろ遊べたという感覚ですかね。

ダウナーでダークな曲調も手法が活かされた結果?

音に関しては、マインド的にガラッと変わってる部分はなくて。アップグレードされているというか、以前はスタジオのセッションで構築していたから自分たちの手の本数しか楽器を鳴らせていなかったんですが、DAWを前作で学べたことで、より自分たちの好きな音であり、音楽をゼロから作れてる感覚はありますね。

構築していく際の濃度が高い感じですか?

そうですね。前作はいい意味で僕の中では“大人の言うこと聞くようにしてみよう”みたいな時期だったんですよ。あと、前作はみんなで歌えるものを意識して作っていたんですけど、ステイホーム期間はいろいろ考えられる時間がすごくあったので、やっぱり自分にしか歌えないものを歌うべきだと思ったし、音楽って日頃生きてる中で思ってても言えないことを代わりに言ってくれるものなのかなというところに行き着いたんですね。今作はそれをかなり意識して書いたつもりです。

確かに1曲目の「scapegoat」は一番しんどいところから始まりますね。

やっぱり一石を投じたいって気持ちは今でも持ってますね。音楽で“新しい!”っていう感覚にさせたい気持ちはすごくあるので。それはサウンド面でもそうですし、さっき言ったみたいに言えないことを言ってやりたい気持ちも強いので、1曲目はこれ以外に考えられなかったですね。

どういうタイミングで書きました?

サウンド面を最初に作り始めて…7月の頭だったんですけど、作ってる中で声の和音を切ったり貼ったりしていて。5年ぐらい前にソンってアーティストを聴いて、自分もそういう手法をやりたいと思っていたんです。その時期もサンプリングパッドに録音したものを入れて、叩いてやってみたんですけど、当時の僕らは同期とかをまったく使ってなかったんで、“バンドでこれを演奏するのはつらいな”と思って諦めてたんですよ。でも、今年の頭だったかな? マック・ミラーのアルバムを聴いたら、同じような手法で声の和音が聴こえてくるリズムの音があって、やっぱりやりたいと。もう今は自由に曲が作れるし、やりたいことをやれる状態なので、そこから自宅で自分の声で和音を重ねて、“こういうコード進行にしてみよう”みたいにやっていく中で、“次はゴスペルにしたいな”とゴスペルにしてみたり。

そうそう。曲の中でメロディーのニュアンスが変わるのもいいですね。

うん。そこから歌詞を書いていく時期だったんですけど、その時期にSNSの誹謗中傷の話題がすごいあって。僕も感じるものがあったから曲にしたい、するべきだろうと思って、そのテーマで書いていきました。Aメロの和音の自分の声も、サビで重ねてる僕のゴスペルのコーラスも全部ひとりでやってて、ひとりの人間が多くの人間の声を装ってるところとか、このテーマにも合ってると思ってます。
L→R 大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gu)
アルバム『Face to Face』

OKMusic編集部

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