【majiko インタビュー】
ちゃんと自分というものを
分かってあげる
ちゃんと自分を大切にしてあげる
歌っている本人がよく分かってない
奥のコアな部分がきっとある
続く「魔女のルール」も何とも形容し難いナンバーですよね。物悲しい感じではありつつ、喜怒哀楽のどこにも属してない感じがあるというか。まぁ、それは「魔女のルール」以外にも感じられるんですけど。
あははは。話を「魔女のルール」に絞れば、一見、悲しい歌のように思えますが、ここにある感じは悲しみだけではないでしょ?
そうなんですよ。何かひとつの感情じゃない気は自分でもしてて、歌っている本人なのにまだよく分かってないというか、“それを決めていくのは聴いてくれる人なんだろうな”とか、時間が経って“あっ、この曲、このアルバムって、こういうテーマだったかもしれない”って、奥のコアな部分がきっと分かるんでしょうね。
なるほど。つまり、アルバム収録曲はまだmajikoさんの中からゴロッと出た状態で、そこにあるものを言語化できるような状態ではないということでしょうか。ただ、恐縮ながら、今ほど申し上げた喜怒哀楽のどこにも属してない感じは確実にあるとは思います。タイトルチューンの「世界一幸せなひとりぼっち」にしても、決して明るいだけの世界観ではないじゃないですか。かと言って、全然、後ろ向きでもない。不思議な位置にありますよね。
私は究極を歌いがちだということに、最近気づいて…何て言うんだろう? “自分が幸せにならないんだったら、世界なんか消えてしまえ!”って。「エンジェルナンバー」でもそんなようなことを書いてますけど、前作の「ひび割れた世界」でもその世界観が垣間見えてて、そういうのが自分には合ってると思ってるんですね。自分はそういう極端な考えの人間だから、そういうものが歌詞に出るんだろうなって思うんですけど、それだけじゃない気もするんです。分かんないけど(苦笑)。
さっき“時間が経って曲やアルバムのテーマが分かる”というようなことをおっしゃってましたし、現状ではなかなかはっきりとは言い得ないこともあるんでしょうね。それは分かります。ただね、ひとつはっきりしているのは、「Once Upon A Time In TOKYO」や「エスカルゴ」に垣間見える何かを破ろうとする意志…そういうブレイクスルーな気持ちはmajikoさんの中にあるわけでしょう?
あると思います。歌詞の世界観って自分にとっては曲ありきというか、曲のテンションで歌詞が決まっていくので、「エスカルゴ」も曲優先なんですけど、この曲ができた時、これはオラオラ系の歌詞が絶対に合うと思って、そういう歌詞が出てきたんですけど、ほんと歌詞って奥深くて! 深層心理につながっているところと全然思ってないこととがコロコロ変わったり、100パーセント言いたいものがあったりとか、それによって充実度も違うんですよね。それは“言ったったぜ!”っていう感覚だったり、“ちょっと皮肉っぽい言い方をしてやったぜ!”みたいな感じだったり。
「Once Upon A Time In TOKYO」では《押し破ってしまえよ!》って言ってますよ。
そうですよねぇ(笑)。「Once Upon A Time In TOKYO」って自分の中にあるオカマな部分で書いたっていうか、そうしたらすっごい楽しくて! 「Once Upon A Time In TOKYO」の歌詞を書いている時が一番楽しかったです。
まぁ、サウンドも楽しいですからね。
楽しい! あんな感じのサウンドを作ったのも初めてだったんで、すごい楽しかったですね。
今ここで結論付けるのは危険かもしれませんけど、音楽家として次のステップ、次のフェイズを目指したというような気持ちが、こうした歌詞に表れたのではないかと思うのですが。
ありがとうございます。きっと私なりに前向きになっている気はします。自分の気持ちとかテンション感がすごく曲に出るんですよ。鬱々とした気分の時は鬱々とした曲を書くし、“最高じゃね?”となったら“最高じゃね?”って曲を書くし。だから、“つらいから楽しい曲を書こう”という人はすごいなって。私は単純だからそういう書き方はできないんで。今回、元気な曲があったりするのは、自分の中に余裕があるんだなって思いました。
若干、俯瞰で見れるようになった感じですか?
そうですね。前までは自分を100パーセント投影したような歌詞が書きやすいからそうなっちゃってたんですけど、自分の中のもうひとりのキャラクターを何人か作って、それについて書くというアドバイスをもらったこともあって。“難しいな”って思ってたんですけど、ちょっとはできたのかなって。
なるほど。もしかすると、先ほど申し上げた“喜怒哀楽のどこにも属してない感じ”というのは、“自分の中のもうひとりのキャラクターを作っている”ということと関係しているのかもしれませんね。ここではこうだけど、別のところではそれとは異なるという。
それはすごいあると思います。日常生活でもそうで、日によって性格が違う面倒くさい女なんですけど(苦笑)、そういうのは出ていると思いますね。
ただ、アルバムのラストに収録された「エンジェルナンバー」では、そうしたところを否定するのではなく、全て包み込んでいるような印象があって、この曲が最後にあることで、アルバム全体に安心感があると思います。
“世界一幸せなひとりぼっち”という問題提起があるとして、まだ起承転結がどうなっているか分かってないんですけど、最後に“結”として《それでいいじゃない》という答えとして「エンジェルナンバー」を置いたので、そう言ってもらえると嬉しいです。包み込んでいる感が出てて良かった。
確かに起承転結がはっきりとしていないところはあって。「一応私も泣いた」辺りで一度答えが出そうな感じもあるんですけど、そうはならない。でも、「グリム」を経て「エンジェルナンバー」で締め括るという、この流れは素晴らしいんじゃないかと。
ありがとうございます…なんか照れますね(笑)。今回の制作はすごく楽しかったし、頑張ったと思います。チームのみんなも頑張ってくれたと思う…演奏メンバーの方々やエンジニアの方々とか、みんなの力で出来上がったものですね。
「エンジェルナンバー」の歌詞の最後の《Just be as you are》は、今作を通じてmajikoさんがしっかりと掴み取ることができた、かなり大事なワードではないかと思うのですが。
そうなんですよね。“あなたはあなたのままで”っていう言葉は分かってても、どうしても他人と比べちゃったり、自己嫌悪に陥ったりすると思うんですよ。でも、ちょっと元気な時に思い出してもらえればいいかなって。つらい時はそんなことを言ったって“何だよ? 全然分からん!”って思うけど、回復した時にでも“私は私だから”と言えるようになればなって。
この《Just be as you are》はリスナーに向けてのメッセージでもあると同時に、majikoさんがアーティストとしてこれから進んで行く上での重要な言葉でもあるように思うのですが、その辺はいかがでしょうか?
きっとそうだと思います。女の子なのでどうしても気分の浮き沈みがすごいんですけど、ちゃんと自分というものを分かってあげるというか、ちゃんと自分を大切にしてあげるというのは今後の自分にとってのテーマだと思います。
取材:帆苅智之
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『majiko ONE MAN LIVE 「世界一幸せなひとりぼっち達」』
マジコ:母親がヴォーカリスト/ヴォーカルトレーナーということもあり、幼少の頃からロック、ソウル、ジャズ、時には民俗音楽も流れる音楽の絶えない環境で育つ。2010年6月、"まじ娘"名義で動画共有サイトに自身の歌を初投稿。15年発売の1st アルバム『Contrast』を皮切りに、シングル「mirror」、2ndアルバム『Magic』をリリースし、16年には渋谷 WWW にてワンマンライヴを開催。17年2月にアーティスト名を "majiko"へと変更し、ミニアルバム『CLOUD 7』でメジャーデビュー。19年6月にはレーベル移籍後初のアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』を発表した。majiko オフィシャルHP
「世界一幸せなひとりぼっち」MV
『世界一幸せなひとりぼっち』
全曲クロスフェード