動画共有サイトでその歌唱力とコンポーズ能力の高さが話題となっていた、マルチアーティストmajikoがメジャー進出。デビュー作『CLOUD 7』は既存のアーティストとはひと味もふた味も異なる、まさに新進気鋭と呼ぶに相応しい作品だ。
    取材:帆苅智之

    メジャーデビュー作品『CLOUD 7』はミニアルバムながら、いわゆるギターロックあり、ジャズあり、オルタナあり、オリエンタルな雰囲気なものもあれば、何と形容していいか分からないタイプもあって…

    うわぁ、嬉しいっ!(笑)

    すごくバラエティー豊かな作品になっていると思うのですが、これは意識的ですか? それとも結果的にバラエティー豊かになった感じでしょうか?

    この他にもいっぱい曲を書いていて、その中から選んだんですけど、曲は常にずっといろいろなものを作っていたので、だからこそ選べたのかなと思います。で、“CLOUD 7”という世界観だったら?ということで楽曲を並べてみて、“うん、これかな”とはまった感じです。

    曲作りに関しては難産なほうではないのですか?

    難産ではないですね。ワンフレーズできて、またワンフレーズできて、またワンフレーズ…というのをつなげていって。“今はかたちにできないけど、未来の自分がこれを仕上げてくれるだろう”って、昔に作っておいたものもありますし。

    例えば、あるメロディーがあって、それを広げていく感じですか?

    実はそれができないんですよ。歌のメロディーから作れなくて。だいたいオケを完璧に作ってから歌を作ってるんです。

    ということは、楽曲全体の世界観の構築を先に?

    先ですね。歌いたい気分によって使うコードを決めています。例えば、明るいコードを使っちゃうと“私、元気が出るかもしれない”という方向だけになっちゃうから、“今、私はどういう状況?”という空想から始まって、それがすごいどん底なのか? ちょっと希望を持っているのか? それとも光は当たっているけど下を向いているのか?というのをまず決めて、そこから色付けしていく感じですね。

    その作り方は興味深いですね。『CLOUD 7』を聴く限り、確かにmajikoさんの歌ってメロディアスはメロディアスなのですが、決して開放的ではない印象がありました。例えば、M4「昨夜未明」。ダイナミズムあるオルタナ系サウンドなのですが、歌は突き抜けた印象が薄い。かと言って、籠っているだけでもなく、沸き上がる情念のようなものも感じられるという、かなり面白い楽曲だと思います。

    嬉しいです。これ、実は当初はもう少し大人しかったんですけど、“もっと遊んでやろう!”と思ってアレンジを大幅に変えたんです。私、システム・オブ・ア・ダウンが好きで、もともとそういうふうな音作りというか、邪悪なのがすごい好きなんで(笑)。

    majikoさんが描きたい世界観というのは、少なくとも“明るく開放的に”というものではないのですね。

    誰かを救えるような曲は今は書けそうもなくて。自分の過去を清算するような曲を書くので精いっぱいだし。それを聴いて共感してくれたら、それはそれで嬉しいですけど。

    楽曲には自分自身の内にあるものを落とし込みたい?

    はい。私は深いことを語れる友達もあんまりいないし、かと言ってSNSとかに不満不平を垂れ流すこともできないし。となると、鬱憤というか、そういうものが溜まっていって、それをどこで吐き出すかとなった時、私には音楽を作ったり、歌を歌ったりするしかないので。

    逆に言うと、一番素直な自分を出せるところが音楽であり、歌であるということでしょうか?

    はい。その通りです。

    「ノクチルカの夜」に《Please rescue me from here こんな歌が何になるんだ》という歌詞があります。随分と衝撃的ですが、これはものすごく素直な心境の吐露なのですね?

    歌詞は正直に書いていいって自分自身を解放しているので、この歌詞は完全に今の私が書いた歌詞だなと思います。多分、年齢を重ねても思うところがある歌詞だなと思うくらい…まぁ、全部の歌詞がそうですけど、特にこの歌詞は自分を詰め込んでいると思いますね。《こんな歌が何になるんだ》って皮肉なんですけど、言っちゃえば、ここまで聴いてきてくれた人を一度突き放したいというか、“たぶん、何人かはそう思ってるんでしょ? そう思ってるなら、それを歌ってあげましょう”みたいな…私、超性格悪っ!(笑) やばっ!(苦笑)

    (笑)。でも、主人公を俯瞰しているのをさらに俯瞰しているような作り方は、決して都合の良い物語だけを紡いでいるわけではない様子も伝わってきて、とてもいいですけどね。

    この曲で主観を綴っている人が、この歌詞の主役というわけではないんですよ。街を歩いていてカップルを見かけたり、家族を見かけたりする…それに似ていると思うんです。サビの《今頃誰かは猿芝居に まんまと騙され眠りにつく》というのは、私の中での皮肉なんですよ。そうやって永遠の愛を誓っているふたりを皮肉に見ているという。…そういう人ですね、私は(苦笑)。

    しかも、そんな歌詞がブラス入りのジャジーなサウンドに乗せられていて。これは誉め言葉と受け取ってほしいんですが、かなり奇妙な楽曲に仕上がってますね。

    嬉しいっ!(笑) ジャズになっているかどうか分からないですけど、そう言ってもらって嬉しいです。私、分かりやすいのよりは変なのが好きなんですよ(笑)。

    しかし、どうしてmajikoさんの世界観は開放的な方向へ向かわないのでしょう? ご自身ではどう思われます?

    “ありきたりじゃん!?”と思っちゃうんですよね。開放的なものが多くの方に求められていることはよく分かってるんですけど、まだ自分は受け止め切れなくて。だから、“majikoはこれから成長していくんだな”って生温かい目で見守ってほしいと思います(笑)。
    『CLOUD 7』
      • 『CLOUD 7』
      • PCCA-04473
      • 2017.02.15
      • 1620円
    majiko プロフィール

    マジコ:母親がヴォーカリスト/ヴォーカルトレーナーということもあり、幼少の頃からロック、ソウル、ジャズ、時には民俗音楽も流れる音楽の絶えない環境で育つ。2010年6月、“まじ娘”名義で動画共有サイトに自身の歌を初投稿。15年4月に1stアルバム『Contrast』を発表すると、プロデュースにストレイテナーのホリエアツシを迎えた初のシングル「mirror」を同年11月に、さらに2ndアルバム『Magic』を16年1月にリリース。そして17年2月、アーティスト名を “majiko”へと変更し、ミニアルバム『CLOUD 7』でメジャーデビューを果たした。majiko オフィシャルHP

    OKMusic編集部

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