LACCO TOWER主催のロックフェス「I
ROCKS 2019 」のクイックレポート 
いよいよグランドフィナーレ - 6月9
日(日) -

5月にSUPER BEAVERとのリベンジ対バンからはじまった、LACCO TOWER主催のロックフェス「I ROCKS 2019 stand by LACCO TOWER」が最終日を迎えた。初の4日間開催となったチャレンジの6年目。LACCO TOWER・塩﨑啓示(Ba)による前説では、「みんな幸せな気持ちで帰ってもらえたら、それがI ROCKSの成功だと思います」と伝えていたが、およそ10時間にわたるフェスティバルの全行程が終わったあと、会場には、その言葉を体現するように、たくさんの笑顔が溢れていた。以下のテキストでは、そんなI ROCKS 2019、4日目に出演した全13組のライブの模様をレポートする。多くの出演アーティストが「LACCO TOWERが好きです」と口を揃え、LACCO TOWERとのエピソードを楽しそうに語った、そんな愛に溢れた会場のムードが伝わればと思う。
mol-74(I STAGE)

mol-74 Photo by Masanori Fujikawa
最終日のトップバッターは、雨模様で正直、ハイテンションにはなれない体調に優しく寄り添ってくれるようなアクトーー偶然にしても初登場のmol-74が飾ってくれた。ブルーのバックライトに佇み、4つの楽器が鳴った途端、寒い国の自然、森や風の匂いが立ち上がるようだ。武市和希(Vo/Gt/Key)のジェンダーを意識させない声質、単音を丁寧に紡ぐ井上雄斗(Gt/Cho)、高橋涼馬(Ba/Cho)、坂東志洋(Dr)のアンサンブルのセンス。ホールという良い環境で、バンドの意図するところが聴ける贅沢。フロアも静かに佇み、音に体を委ねている。

「エイプリル」や「瞼」では武市が弾くピアノがバンドの個性を際立たせる。音の隙間があり、バランスも良いので歌詞もまっすぐ耳に入る。静謐な音像に乗せて届けられるバンドの意思は芯のあるもので、「エイプリル」では、「代わりのない僕自身の基準で生きていたい」というフレーズがはっきり聴こえた。昼一から自分と向き合えるようなライブが見られるとは……これもI ROCKSの多面性なのかもしれない。
mol-74 Photo by Masanori Fujikawa
「さっき裏でトップバッターはめっちゃ大事なんで盛り上げてと言われたんですが、僕らこんな感じで静かな音楽をやっているんですが、楽しんでもらえてるなら嬉しいです。なかなか群馬にライブをしに来ることはないし、ホールという環境でもできないので、この機会をもらったLACCO TOWERに感謝しています」と、平熱感たっぷりのMCで自己紹介した武市。いやいや、耳も心もナチュラルにチューニングしてくれるようなmol-74で今日を始められて良かった。
ポストロックや、もっと言えばシガーロスやレディオヘッドなどを通過してきたアンサンブルと、日本の今の若者のメンタリティを持つ彼ら。今日体感した、ホールでも通用する表現力を近い将来、また味わいたい。
Sourire(YOU STAGE)
Sourire Photo by 鈴木公平
最終日、YOU STAGEのトップバッターは、昨年、歴代のI ROCKS出演者のなかで最年少となる群馬発の高校生バンドとして衝撃的なステージを見せたSourire(スーリール)。全員が黒の衣装に身を包んだ彼らは、女性ボーカルami(Vo)がアカペラで歌い出した「サンカヨウ」から、深遠なる心の世界へと聴き手を引きずり込んでいった。

Ryuki(Gt)、Tomoya(Ba)、Ryuga(Dr)が繰り出す変拍子のリズムと呑み込まれそうな轟音。そのなかで何かに救いを求めるような切実なボーカルが胸を打つ。中盤、新曲として届けた「有能」はヘヴィなイントロにはじまり、切り裂くようなボーカルが圧巻だった。
Sourire Photo by 鈴木公平
MCでは、amiが「LACCO TOWERが作るこの空間が温かくて大好きです。この気持ちを忘れずに、これからも好きなものを好きと言う、嫌いなものを嫌いって言う、泣きたいときに泣く、会いたい人には会う、それを忘れずにいたいなと思います」と伝えると、「あなたたちが明日後悔しないように、笑顔でいられるように」と願いを込めて、ラストナンバー「いつかのあの日」へ。
Sourireとは、フランス語で「笑顔」という意味だ。傷だらけの日々を愛そうと、最後に歌った全肯定のラブソングは、その意味を噛み締めたくなる締めくくりだった。

感覚ピエロ(I STAGE)

感覚ピエロ Photo by Masanori Fujikawa
「俺たちにできることはLACCO TOWERという大先輩が、感覚ピエロをI ROCKSに出して、マジで正解だったなと言わせることです!」と、横山直弘(Vo)が宣言したとおり、I STAGEに最高の遊び場を作り上げた初出場の感覚ピエロ。人生の岐路をテーマにした最新ナンバー「ARATA - ANATA」からスタートすると、「A-Han!!」では滝口大樹(Ba)が軽やかにステップを踏みながら踊るようなプレイで魅了。

アキレス健太(Dr)が繰り出す重たいビートがお客さんを一斉にジャンプさせた「CHALLENGER」のあと、タオルまわしの花が咲いた「A BANANA」では、手数の多いギターを炸裂する秋月琢登(Gt)がステージ袖で見守っているであろうLACCO TOWERも煽るような動きも見せる。強烈な個性を放つメンバー。その4人の総合力で魅せるステージは、結成5年にして二度の47都道府県ツアーをおこなう、ストイックなライブバンドのタフさを証明するものだった。
感覚ピエロ Photo by Masanori Fujikawa
MCでは、念願のI ROCKS出演が叶ったことに感謝を伝えると、「このステージに立たせてもらってるときは、(LACCO TOWERも)先輩・後輩関係なく仲間だと思ってます。仲間がこんなに素敵なイベントをやっている以上、俺らはここに魂を置いておこうと思います」と、彼らの代名詞とも言える最高におバカで楽しいナンバー「O・P・P・A・I」を投下。LACCO TOWERの聖地とも呼べるこの場所で、「おっぱい!」でバカ騒ぎできるバンドは感エロだけだ。
メリー ガラ、結生(新宿ブルース)(YOU STAGE)
メリー ガラ、結生(新宿ブルース) Photo by 鈴木公平
薄いパープルグレーのハットにボウタイブラウス、その肌の白さが自然光でも際立つガラが現れると、YOU STAGEの空気が一変する。それでいて低姿勢。「アコースティックで何曲か歌います」と、結生のアコースティックギターに乗せて始まったのは、「恋哀交差点」のセルフカバー。一気に昭和歌謡スナック感が立ち上がり、夜に見たい!と思ってしまう。

ハスキーさの中に艶を含んだ声で世界観に引き込んだかと思えば、「僕は群馬出身で、BOOWY、BUCK-TICKの血統を引き継いでいます」と、群馬のバンドマンに脈々と流れるイズムを強調。いやいや、言われなくてもこの日の出演者の中でも最も直系でしょう、と心の中で突っ込んでしまった。
メリー ガラ、結生(新宿ブルース) Photo by 鈴木公平
LACCO TOWERとはガラが同郷であることをきっかけに去年のLACCOの周年ライブへコメントを寄せたり、「音楽性や歌詞に共感する」と、出会った必然を語り、その縁に感謝して「薄紅」のカバーを披露する一幕も。ワンコーラス歌っただけで自然と拍手が起こったのはなかなか美しい光景だった。確かに女心も男性目線の歌も歌うメリーにとって、単に感謝だけでなく、深い共感を伴って歌える曲なのだろう。歌いながらボウタイの結び目を緩め、熱唱するガラに漂う色気。くどいようだが自然光で見てもその存在感は際立つ。
ラストはオリジナルの「最後の晩餐」で、ロックバンドのボーカリストが見せるブルースや歌謡曲、シャンソンといった表現力の深みを堪能させてくれたのだった。

WEAVER(I STAGE)
WEAVER Photo by 鈴木公平
ブルーに染まったステージ。ステージ下手から、奥野翔太(Ba)、杉本雄治(Piano/Vo)、河邉徹(Dr)が一列に並ぶかたちでスタンバイしたWEAVERは、サポートを加えず、ギターレスの3人編成でライブを繰り広げた。1曲目は「管制塔」。クラシカルなピアノと、キレのあるリズム隊のグルーヴのみで奏でられるサウンドは、よく「ポップな」と形容されることも多いWEAVERのイメージとは一線を画して、むしろ鋭くロックな雰囲気が際立っていた。

カラフルに彩られたステージから、一緒に踊ろうと誘い出すような「Shall we dance」から、切れ目なくつないだ「くちづけDiamond」へ。WEAVERが鳴らす開放感に満ちた音楽はI STAGEの高い天井によく映える。今回が初出場ということで、「ずっとTwitterを見ながら、本当にみんなに愛されるフェスだというのがひしひしと伝わってきてました。出られてうれしいです」と伝えた杉本。去年、初めてLACCO TOWERと共演できたことを伝えると、松川&真一ジェットとの弾き語りライブは「漫談みたいだった(笑)」と言って会場を和ませた。
WEAVER Photo by 鈴木公平
スペイシーな世界観のなかでロマンチックな物語を描いた「最後の夜と流星」、ウォーウォーという多幸感に満ちたシンガロングを生んだ「Free will」のあと、ラストを締めくくったのは「カーテンコール」。包容力のあるメロディにのせて、運命を変えようと歌う楽曲には、今年デビュー10周年を迎えるバンドの新たな決意が刻まれていた。

ircle(YOU STAGE)
ircle Photo by 鈴木公平
河内健悟(Vo/Gt)が凄まじい声量で「あふれだす」を歌い出すと、YOU STAGEからは一斉にこぶしが突き上がった。「よっしゃ行こうぜ、I ROCKS、重いもん全部出していけよ!」。もはや絶叫に近い、河内の叫び声に呼応するように、ショウダケイト(Dr)、仲道良(Gt)、伊井宏介(Ba)も、激しく体を揺り動かしながら衝動的な演奏を繰り出していく。「心を腐らせるなよ!」とを伝えた「セブンティーン」では、河内の歌に合わせて、伊井もまたマイクを通さずに汗ダクで歌っていた。言葉こそ持たないが、楽器隊も伝えたい想いは同じだ。

MCでは、「(LACCO TOWERは)心をもって接してくれる人、生き物。だから、俺らもこのバンドでひとつの命として4人の心臓を鳴らしにきました」と語りかけた河内。さらに、「もうこの場所で鳴らせないやつもいる。そのぶんは無理だけど、その心をもって、俺らは鳴らす」と続けた。それが誰か明確には言わなかったが、そんな言葉のあと、大きな喪失のあとにも、遺された者は生き続けなければいけない、という意思を綴った「ばいばい」を届けたのは、とてもircleらしい選曲だったと思う。
ircle Photo by 鈴木公平
最後の「本当の事」では、河内が「おい!生きてていいだろ!?あんたも!俺も!」と、真っ直ぐにフロアを見据えながら、渾身のちからで訴えかけて、終演。そうだ、私たちは誰が何と言おうと、生きていい。

サイダーガール Photo by Masanori Fujikawa
メディアに顔を出さないトリオ、炭酸系、ニコニコ動画界隈やボカロPが活動の背景にあるetc……など、謎が多いが音を聴けば彼らが90年代の王道ギターロックを背景に持っているのは明白だ。実にI ROCKSには様々なニューカマーやネクストブレイク候補も登場するものだと感心する。ちなみに両者の縁は群馬で開催されたライブでの共演。Yurin(Vo/Gt)もフジムラ(Ba)も丁寧に「I ROCKSに御誘いいただきありがとうございます。ライブで出会って、お声がけしてもらい光栄です」と、初めての場所とLACCO TOWER、そしてオーディエンスに感謝を述べる。

しかし演奏はなかなかタフだ。安定したYurinの地声と知(Gt)の印象的なリフ主体のギターロックである「エバーグリーン」など、彼らのイメージを代表する曲が確かなプレイで届けられる。加えてバックビートとファンキーなリフが大人っぽいムードの「化物」も曲そのものの完成度が高い。しかもAメロはYurinのモノローグ調の歌唱で、淡々と心象や抽象が表現され、それが堂々とした印象に繋がっている。
サイダーガール Photo by Masanori Fujikawa
終盤には「これからもI ROCKSとLACCO TOWERにたくさんの幸せがあったらいいなと、そういう想いを届けます」と、新曲「クローバー」を演奏。ポップスとして開かれたメロディを持っており、ストレートに上昇していくサビに、静かなるバンドの内なる野心のようなものも感じた。決して爽やかなだけじゃない、この内に秘めた感じは確かにI ROCKSでも痕跡を残したはずだ。
NUBO(YOUSTAGE)
NUBO Photo by 鈴木公平
2ボーカルが特徴的で、パンク、ロックンロール、ファンク、ラテンなどをNUBO流としか言いようのないバランスでハイブリッドする5人組。出演者の中ではLACCO TOWERと最も長い付き合いで、途中のMCで一成(Vo)が「I ROCKSには毎年出してもらってるというか、勝手に出てるというか」という言葉からも親密さが伝わる。最近ではNUBOの4月のツアーファイナルにLACCO TOWERが出演しているので、ファンや地元の人々には両者の関係はおなじみなのだろう。加えて初見の人も巻き込む「ブチ上げ切り込み隊」的な立ち位置なのは、彼らのステージを見れば一目瞭然だった。

アンセミックなパンクを聴かせたかと思えば、Wakai(Gt)、マツシタジュンジ(Ba)、サブ(Dr)がグッとジャジーなアンサンブルを作り上げたり、決まったジャンルにこだわるより臨機応変に場を温めるための様々な武器を持ったバンドという印象。ハイトーンで主旋律を歌うtommyと、張りのある男っぽい声でコーラスをつけたり、ラップしたりする一成の二人のボーカルがいることで、MC的なアドリブも間髪入れずどんどんぶち込んで行けるのは強みだ。YOU STAGEの後方まで人が埋まり満足げな二人だが、「まだみんなバンドとして参加してない」と一成が「?」なことを言えば、すかさずtommyが「バンドじゃねえし」とツッコミ、観客を含めた2ボーカルが高く手をあげ「ただいま!」というのを合図にバンドが演奏をスタートするっていうのはどう?と提案。これが功を奏して後方まで一体感が生まれた。
NUBO Photo by 鈴木公平
ファストな8ビートやサンバなど、リズムもカラフルに変化させつつ、終盤の「THREE TWO」では一成がブルースハープで色を加えたり、ラストの「Circle」では前方にいたファンがサビで自然とサークルを作ったり、手を挙げる人の数も増え、各々がこの巻き込み型バンドを好き勝手に楽しんでいた。

Rhythmic Toy World(I STAGE)
Rhythmic Toy World Photo by Masanori Fujikawa
「最高の時間にしようぜ!」。内田直孝(Vo/Gt)の声で幕を開けたRhythmic Toy Worldは、ヘヴィで骨太なバンドサウンドにのせて、「フレフレ」「僕の声」というストレートな応援歌でライブをスタートした。

中盤、今年で5年連続5回目の出演ということで、「何かスペシャルなことをやりたい」と届けたのは、ボーカル内田のソロ曲「電影少女」だった。彼らが、この曲をバンド編成で届けるのは初めての試み。バンドの持ち曲に、ほとんどラブソングがないリズミックが届けた、ドラマチックなラブバラードのバンドカバーは、I ROCKSという特別な場所だからこその粋な演出だったと思う。
Rhythmic Toy World Photo by Masanori Fujikawa
MCでは、LACCO TOWERについて、「デカい背中を見せるだけじゃなくて、ときには自分のことをそっちのけにして助けてくれる、すげえ先輩。I ROCKSがどんどんデカくなるのは、そういうふうに助けられた仲間が集まってるからだと思う」と伝えると、LACCO TOWERへの感謝の歌として「ユメイロ」を熱唱。ふつうのフェスやライブハウスでは、アグレッシヴなアップナンバーで会場を根こそぎ湧かせることも多いリズミックだが、そんなときに欠かせない「波紋シンドローム」も「いろはにほへと」も、今日は演奏しなかった。
最後までLACCO TOWERへの信愛の気持ちを伝えることに終始した誠実なステージ。たまには、こんなリズミックも良い。

I ROCKS 2019スペシャルバンド(YOU STAGE)
I ROCKS 2019スペシャルバンド Photo by 鈴木公平
昨日に続き、後半戦に向けてのブレイクタイムにLACCO TOWERに加え、この日の出演バンドから選抜メンバーで送るスペシャルバンドの演奏。

ラインナップはボーカルに松川ケイスケ。杉本雄治(WEAVER)、内田直孝(Rhythmic Toy World)、ギターに細川大介、結生(新宿ブルース)、Ryuki(Sourire)、ベースに塩﨑啓示、伊井宏介(ircle)、ドラム&パーカッションに重田雅俊、ショウダケイト(ircle)、小松謙太(ハルカミライ)なのだが、一成(NUBO)の役割は不明。松川曰く「また雨が降ってきそうだから、なんか用があったら出てくるんじゃない?」と、軽くあしらわれている。が、長年通いつめているファンは大方、想像がついているようだった。
I ROCKS 2019スペシャルバンド Photo by 鈴木公平
演奏する曲は祈りも込められているのか、LACCO TOWERの「雨後晴」だ。フロントは杉本と内田が任され、遠慮がちながらも内田が健闘。杉本の透明感のある声で聴く「雨後晴」も新鮮だ。聴きどころは、新宿ブルースではアコースティックギターでの出演だったメリーの結生が本領発揮とばかりにソロをしっかり大人なフレージングで決めてくれたこと。思えばめちゃくちゃ年齢層に幅のある共演なのだが、この日のラインナップに有望な若手バンドが多いことがこのセッションでよく分かった。
I ROCKS 2019スペシャルバンド Photo by 鈴木公平
さて、想像通り一成は白塗りのてるてる坊主姿で登場。そのためだけの渾身の仮装が盟友NUBOの一成らしい。残念ながら、てるてる坊主の効果は芳しくなかったが、登場するだけで場を盛り上げ(凍らせ?)る期待度というかハードルは上がることだろう。
Halo at 四畳半 Photo by Masanori Fujikawa
I ROCKSにも何度か出演しているバンドはLACCO TOWERへの感謝だけでなく、リスペクトや共感を自らのライブを通して、さらに言えばオーディエンスも通して、この日だけのアクトを作り出すのだなーーHalo at 四畳半の今年のライブを見て実感した。シンセや鐘の音など打ち込みを導入しても違和感のない、バンド自体のプレイアビリティを1曲目の「ユーフォリア」から体感させ、ボトムの安定感があるからこそ成立する早いBPMの「ステラ・ノヴァ」へと、成長著しいバンドの今を見せていく4人。齋木孝平(Gt/Cho)、白井將人(Ba)、片山僚(Dr/Cho)の楽器への理解と愛着、渡井翔汰(Vo/Gt)の臆せずステートを発するフロントマンとしての覚悟が自然と醸成されている。

冒頭の印象は渡井が具体的に言葉にしたことで鮮明になったのだが、まず初の4日開催を完売したことを祝福した上で、彼流の「きれいと美しいの違い」を語る。「(LACCO TOWER)のメンバーは会場でも目にしたと思うけど、I ROCKSの間中走り回ってて。で、あの人たち打ち上げで泣くんですよ。1年、ボロボロになってやってきて。僕らはライブやるぐらいしかできないけど、LACCO TOWERに『ただいま!』って言うこの時は1年で一番美しいと思います」と、この空間すべてに対するリスペクトを少なからず彼ら自身も受け継ぎながら活動している印象を残したのだ。
Halo at 四畳半 Photo by Masanori Fujikawa
それでいて言葉じゃなくて信号のようなもので相手に何かを伝えていこうとするロマンチックな物語を綴る「モールス」をラストにセットしたのは心憎い。明確にこのフェスで得た音楽がなし得る帰ることのできる場所作りのバトンを確実に彼らは受け取っている。もはやI ROCKSはただのフェスじゃない。

Ivy to Fragment Game(YOU STAGE)
Ivy to Fraudulent Game Photo by 鈴木公平
6年連続、I ROCKS皆勤賞となるIvy to Fraudulent Gameは、今年初めて立つYOU STAGEでトリを任された。昨日、群馬の若手バンドoldflameから始まったYOU STAGEを、この場所から大きく羽ばたいた群馬期待のバンドで終わらせる。そこにLACCO TOWERが故郷に寄せる強い想いを感じながら、開演を待つ。
ライブのオープニングを飾ったのは「trot」。ロックボーカリストとして圧倒的な存在感を放つ寺口宣明(Vo/Gt)の激情を孕んだ耽美なボーカルに、キレ味の鋭いバンドサウンドが加わる。バスドラの深いリバーブが脈打つ生命力を感じさせた「Memento Mori」では、「生きてるやつ!?」という呼びかけで、フロアにハンドクラップを巻き起こると、その絶景に寺口は「言葉にならない……!」と、最高の笑顔で喜びを噛み締めていた。
Ivy to Fraudulent Game Photo by 鈴木公平
MCでは、6回目のI ROCKSに寄せて、「ちゃんと1年間、前に進んでこられたかなって振り返る日です。少しずつしか前に進めてないけど、それでも前を向いて生きることが美しいって、俺は信じてます」と伝えると、その不器用な生き様を託した、新曲「blue blue blue」へとつないだ。
ラストは「低迷」。優しく紡ぐ音像のなかで、“明日だって 生きていくから”と、ひときわ力を込めて歌い切る、渾身のフィナーレ。孤独や感傷、虚しさという繊細な感情を炙り出すアイビーの歌だが、それを希望に塗り替えるのではなく、傍らに置いたまま生きようとする儚さが、とても美しい。
ハルカミライ(I STAGE)
ハルカミライ Photo by Masanori Fujikawa
I ROCKS初登場にしてI STAGEのトリ前を任されたハルカミライに託されたものは、いい意味での混乱という、チャレンジだ。1曲目の「君にしか」を演奏しながら橋本学(Vo)は「椅子の前にいなきゃいけないってルールはあるんですか?」と煽るというより、自分が楽しみたいように映ったのだが、みるみるステージ前方に観客が密集。前方を上手・下手に走ったり、傍にあるスペースで歌うだけでは飽き足らず、マイクのシールドが続く限りの距離まで、客席に降り、ステージを見ながら歌う。そして奔放なのは橋本だけじゃない。ステージを見ると積まれたスピーカーに乗って、コーラス用のマイクスタンドを伸ばせるだけ伸ばして関大地(Gt/Cho)が歌っている。ライブハウス慣れしている観客の方がむしろ椅子席のルールに反した行動に盛り上がっていたかもしれない。

よくブルーハーツと比較される彼ら、というか橋本のステージングだが、確かに奔放だが、ちゃんと観客がついてこれるようにコミュニケーションを図り、ボーカルスタイルは良質のメロディを、「巧い」と言える歌唱できっちり届けているのが、2020年代も間近なバンドの基本ラインなのかもしれない。
ハルカミライ Photo by Masanori Fujikawa
シンプルなロックンロールに乗る歌詞がまたいい。どんなに無茶なアクションをしながらでもロマンチックで切実な恋の歌「世界を終わらせて」はクリアに聴こえて、集まる観客の熱を上げていくし、「眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ」、そして「眠れない夜に私 涙は流さない」という歌詞が世代を超えて突き刺さる「アストロビスタ」も素晴らしい詞だ。
橋本は「巧いとかかっこいいバンドは山ほどいる。ずっと好きなバンドって、俺は音楽ってとこじゃないと思ってる」と、自分たちが選ばれたことの理由を自分たちの感性で伝えていた。ライブが終わったとき、もう誰もただ彼らが無茶をしていたとは思っていなかっただろう。I ROCKSにおけるスーパーノヴァを見た。

LACCO TOWER(I STAGE)
LACCO TOWER Photo by 鈴木公平
メンバーが一人ずつステージに現れる瞬間から、早くも会場はグランドフィナーレのような空間が出来上がっていた。ここまで4日間にわたり、30組のアーティストがつないできたバトンを受け取ったLACCO TOWERは、「薄紅」と「喝采」からライブをスタート。真一ジェット(Key)が奏でるクラシカルなピアノが絡む重厚なバンドサウンドにのせて、松川ケイスケ(Vo)が全身を大きく使い、そこにいるすべての人を包み込むようにメロディを紡いでゆく。「どうだい、良い日になりそうかい?」「楽しんでますか?」。お客さんの気持ちが、果たして自分たちと同じかどうか、何度も問いかける松川の姿が印象的だ。
LACCO TOWER Photo by 鈴木公平
LACCO TOWER Photo by 鈴木公平
白から黒へ。中盤は、ふたつの顔をもつLACCO TOWERの世界観が、漆黒のほうへと妖しく突き進んでいった。お立ち台に立つ細川大介(Gt)の華やかなギターから突入した「傷年傷女」では、真一ジェットがショルキーを抱えて客席へと乱入。続けて、「今日まで、すげえ大変で、地獄のようでした。でも始まってみると、天国のようで。そんな今日にピッタリの新曲をお届けしましょう」と、「地獄且天国」を披露。変則的なリズムが入り乱れ、ぶつかりあう5人の個性。曲中で、真一ジェットから重田雅俊(Dr)、塩﨑啓示(Ba)から細川へと華麗なソロまわしを決めると、「林檎」では、塩﨑がステージの端から端まで猛ダッシュして、袖で見守っているのであろう出演者たちを楽しげに盛り上げていた。
LACCO TOWER Photo by Masanori Fujikawa
ラスト1曲を残したところで、松川は「I ROCKSを家みたいにしたいって言ってるけど、“家”って何やろう?って考えるんです」と、6年目のI ROCKに向けて、少なからず抱いた迷いを明かした。だが、その答えは、この4日間を通して、お客さんが見せてくれた表情そのものだったという。「(この場所で)みんなが“もうちょっと笑えるかな”って思ってくれることが、いちばんだなと思いました。だから自信をもって、“おかえり”と言って、自信をもって“いってらっしゃい”と言わせてください。そして、また自分がどうだったか、答え合わせをしに来てください。俺らもがんばるから。かっこ悪いバンドにならないように」。
LACCO TOWER Photo by Masanori Fujikawa
そんなメッセージを届けたあと、ラストソング「雨後晴」では、松川は何度も涙を拭いながら、語りかけた。「がんばってかっこ悪いことなんてない。笑うやつがいたら、笑い返してやる。俺が見てるから!」と。そのステージを見て、LACCO TOWERが、ふるさと=群馬に作りたい“家”とは、ただ仲間同士で慣れ合い、慰め合うだけの場所ではないのだと思った。お互いがかっこよく生き抜いた先で辿り着く、約束の場所なのだ。
LACCO TOWER Photo by Masanori Fujikawa
アンコールでは、メンバーがそれぞれの言葉でI ROCKSを締めくくった。「今日出てくれたバンドは誰が欠けてもダメだったと思います」と感謝した重田。「このフェスを幸せだと感じてくれたなら、関わってくれた人みんなのおかげです」と、何度も噛みながら話した細川。「俺たちもこの舞台にふさわしいバンドになっていかなきゃいけない」と決意を新たにした真一ジェット。
LACCO TOWER Photo by Masanori Fujikawa
そして、リーダーの塩﨑は、「去年のI ROCKSが終わったときは、6年目のI ROCKSをやろうって軽々しく言えなかった……」と言葉を詰まらせたあと、「2020年4月にやるから!」と、来年の開催を力強く宣言。メンバーの覚悟に、会場から大きな拍手に包まれると、最後はI ROCKSのテーマソング「星空」で、お客さんがスマホのバックライトで美しい景色を作り上げて、I ROCKS 2019は幕を閉じた。すべての演奏を終えたあと、メンバーがそのままステージに倒れ込む、完全燃焼のライブだった。
I ROCKS 2019 stand by LACCO TOWER
LACCO TOWER Photo by 鈴木公平
取材・文=秦理絵:Sourire、感覚ピエロ、WEAVER、ircle、Rhythmic Toy World、Ivy to Fraudulent Game、LACCO TOWER 石角友香:mol-74、メリー ガラ、結生(新宿ブルース)、サイダーガール、NUBO、Halo at 四畳半、I ROCKS 2019スペシャルバンド、ハルカミライ

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • the Homeground
  • Key Person
  • 気になるワードでディグる! 〇〇なMV

ギャラリー

  • Tsubasa Shimada(PRIZMAX) / 「Wet Crate」
  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • Yun*chi / 「Yun*chiのモヤモヤモヤ」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • 魔法少女になり隊 / 「魔法少女になり隊明治のあったりなかったり」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • 嘘とカメレオン / 「猫を抱いて蝶と泳ぐ」
  • エドガー・サリヴァン / 「東京文化びと探訪」