【フジファブリック
ライヴレポート】
『プレミアムアコースティックライブ
「FABRIC THEATER 2」』
2017年11月10日
at EX THEATER ROPPONGI

 フジファブリックがアコースティック編成で新旧の楽曲を演奏する『FABRIC THEATER』。2回目の開催となる今回もまた、遊び心あふれる演出に加え、ここでしか聴けないアレンジやカバーを交えたプレミアムな2時間半となった。

 タイトルで“THEATER”と謳っているだけあって、本編(フジファブリックの演奏)の前には映画館さながらに彼らの新曲「かくれんぼ」がテーマソングとなっているCanon『"This" is my life.』ショートムービー『僕たちは今日、お別れします。』の映像、来年2月に開催する全国ツアー『帰ってきた!!三日月ADVENTURE』の予告、さらには加藤慎一(Ba)と金澤ダイスケ(Piano)による「NO MORE 映画泥棒」の渾身のパロディー『NO MORE LIVE泥棒』が上映され、客席を沸かせた。そして、ライヴは山内総一郎(Vo&Gu)がアコースティックギター、加藤がウッドベース、金澤がオルガン、サポートのBOBOがパーカッションを演奏した「ペダル」でスタート。山内の爪弾きが印象に残るフォーキーなアレンジ。金澤がハーモニーを重ねる。

 “プレミアムなライヴにしますのでリラックスして、最後まで楽しんでください”と山内が客席に声を掛け、ライヴはそのまましっとりとしたムードで進んでいくのかと思いきや、金澤がピアノでラテンジャズのようなフレーズを加えた3曲目の「B.O.I.P」では金澤と山内がソロをリレーして、演奏の熱が一気に上がる。ステージの際まで行き、ギターを掻き鳴らす山内の熱演に観客が拍手を贈ると、“ありがとう。(今日は)こういうアレンジでもやります!”と彼はニッコリ。そして、オフィシャルモバイル会員で募ったリクエストに応え、「まばたき」と「若者のすべて」の2曲を披露。アコギの弾き語りに徐々に演奏が加わるアレンジが、曲が持つ美しさをドラマチックに描き出した「若者のすべて」を、観客がじっと聴き入る中、最後、熱唱で終えた山内は“このアレンジ緊張するなぁ。抜け殻ですよ(笑)”とひと言。確かに、それも頷ける渾身の熱演だった。“このまま終わってもいいぐらいパワーを使った” と笑いながら、山内はステージに置かれたソファーに腰を下ろして、そのまま『FABRIC THEATER』の見どころでもあるリクエストコーナーに――。わざわざローマから持ってきたという(もちろんジョークです)あの有名な石の彫刻「真実の口」の口から、このコーナーの司会を務める(?)金澤が手探りでリクエストカードを選んで決めた曲は、TOKIO「LOVE YOU ONLY」、フジファブリックがNHK Eテレの『メディアタイムズ』に提供したオープニングテーマ「1/365」、スピッツ「チェリー」、荒井由実「やさしさに包まれたなら」の計4曲。それをほんとにジャカジャカと、間にゆるいトークを交えながら、まるでセッションを楽しんでいるように演奏した。因みに4曲目の「やさしさに包まれたなら」は、あまりの楽しさに興に乗った山内の“もう1曲できないかな”というひと言から急遽追加されたようだ。あぁ、この人たちは本当に音楽が好きなのだな。

 終盤はフランメンコっぽいイントロからスウィンギーかつジャジーな演奏に雪崩れ込んだ「カンヌの休日」、BOBOのパーカッションが大活躍したラテンファンクな「バタアシParty Night」の2曲で大胆なアレンジとそれに挑戦できる音楽の引き出しの多さをアピール。客席を大いに沸かせた。アコースティックライヴと謳いながら、アコースティックという概念を超えるアレンジと演奏が楽しめるのが『FABRIC THEATER』の真骨頂。“来年いつになるか分からないけど、(『FABRIC THEATER』を)やっていもいいですよね? アレンジするのが楽しくなってきたんで”とこの日の演奏と観客の反応に大きな手応えを感じたのか、山内が『FABRIC THEATER』の年1レギュラー化を匂わせ(?)、本編は「LIFE」で終了。アンコールでは“ぐっと心に迫る名曲が生まれた”(山内)と配信限定の新曲「かくれんぼ」を披露。切ないバラードをしっとりと聴かせると、来年2月の全国ツアーで再会することを約束して、ブギ調のロックンロールにアレンジした「虹」で終演を賑やかに飾る。“東京!”という山内の呼びかけに応えた観客の合唱が天井の高い会場いっぱいに響き渡った。

撮影:木村泰之/取材:山口智男


セットリスト

  1. 1.ペダル
  2. 2.カタチ
  3. 3.B.O.I.P
  4. 4.透明
  5. 5.まばたき
  6. 6.若者のすべて
  7. 7.LOVE YOU ONLY(TOKIO)
  8. 8.1/365
  9. 9.チェリー(スピッツ)
  10. 10.やさしさに包まれたなら(荒井由実)
  11. 11.ホーランド・ロップ
  12. 12.カンヌの休日
  13. 13.バタアシParty Night
  14. 14.夢みるルーザー
  15. 15.LIFE
  16. <ENCORE>
  17. 1.かくれんぼ
  18. 2.虹
フジファブリック プロフィール

フジファブリック:2000年、志村正彦を中心に結成。09年に志村が急逝し、11年夏より山内総一郎(Vo&Gu)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(Ba)のメンバー3人体制にて新たに始動。奇想天外な曲から心を打つ曲まで幅広い音楽性が魅力の個性派ロックバンド。「銀河」、「茜色の夕日」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、『モテキ』TVドラマ版主題歌、映画版オープニングテーマとして連続起用された。数多くのアニメ主題歌も担当。18年には映画『ここは退屈迎えに来て』主題歌、そして劇伴を担当。19年にデビュー15周年を迎えアルバム2作を発表。同年10月に大阪城ホール単独公演を大成功させた。21年3月に11thアルバム『I Love You』を発表。23年には4本のツアーを開催した。24年4月にデビュー20周年を迎えるが、目前となる2月に12thアルバム『PORTRAIT』をリリースする。フジファブリック オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着