【FUZZY CONTROL】ファジコンは曲に
よってどうにでも変われる
ニューシングルは夏をテーマに作られた一枚。バラードの表題曲に対し、カップリング2曲は痛快に弾け、まさに3曲3様の夏を描いている。また、“全員の音質がガラッと変わった”と語っていたのも特筆すべきところだろう。
取材:石田博嗣
今回のシングルは夏仕様なのですが、最初から夏をテーマにして?
JOE
それはありましたね。元気っていうか、夏のライヴで映えるような曲を作りたいっていう話はしてました。
SATOKO
ここに入ってない曲もいっぱいあったんですけど、どれも素晴らしくて…“やってしまったね”って(笑)。でも、ウチらのバンドのキャラからすると、バラードの「SUNSET」をリードに持ってくることはないかなって思ってたんです。シングルってことを考えるとアップテンポで“夏だぜ!”みたいな曲がいいのかなって思ってたんで。ただ、すごくいい曲だから、どこかに入れたいとは思ってたんですね。そしたら周りのスタッフが、“「SUNSET」がリードでいいんじゃないの?”って言ってくれたんで、満場一致で「SUNSET」に決まったという。
そんな「SUNSET」を作る時に意識したことは?
JUON
この曲はメロディーをすごく意識していて…デモの時点から映像が見えていたので、その映像に似合うメロディーにしたかったんですよ。今まではギターを弾きながらカセットテープに録音することが多かったんですけど、この曲はMTRを使いました。先にギターを録って、ベースとかも入れて、歌は歌だけに専念して録ったんです。
JOE
「SUNSET」はJUONが夕日を見ている姿が想像できましたね。場所も夏の海で。
JUON
あと、いつもなら夏のイメージって“やっと夏が来たぜ!”なんですけど、以前のように夏を感じれないっていうことを表現したいと思って。歌詞に“冬のコート着たまま~”ってあるんですけど、それは冬がすごく長く感じれて、夏が近づいているのに前のように夏を楽しむ気持ちになれないっていう。夕暮れの海でヘッドフォンで聴くと自分と向き合える曲だと思いますね。
歌詞は沈む太陽を見ながら、自分の生きかたについて考えているような感じで、どこかネガティブな感じがありました。でも、“全てを背負って生きて行く”と決心しようとしていますよね。
SATOKO
歌詞の面で言うと、普通こういうロックバラードって男女の恋愛を描いたラブソングになると思うんだけど、この曲は違う…ラブソングなんだけど、相手がいるラブソングじゃないんですよ。世の中にはいっぱいいろんな人がいて、みんな平等に夏が来るわけじゃないですか。だから、いろんな人がいろんな気持ちになっている“夏”っていうのをシングル一枚で表現したかったんですね。「SUNSET」は恋愛できる余裕がない人、深く思い詰めている人の気持ちにぴったりなのかなって。
アレンジはバンドサウンドうんぬんよりも、JUONくんの歌声を支えてますよね。音数も少なく、サウンドに隙間があるというか。
JOE
そうなんですよ。僕はずっと隙間に憧れていたんです。でも、“どうしたら隙間ができるんだろう? もっと頑張んなきゃ!”って逆にいろいろ弾いてしまってた。だから、ちょっと上手くなったのかなって思ってて。余計な音を入れなくても支えられるようになったんだと思います。いつもだったらもっと弾いていたところを弾かないでもやれた…JUONをちゃんと下で支えることができましたね。
JUON
きれいなメロディーってメロディーだけでは輝かないっていうか、絶対にそれを支えているものがあるんですよね。
SATOKO
でも、次におバカな曲が始まるという(笑)。
そんな次の曲、「CHAMP」なのですが…
JUON
これは夏のイケイケな感じで…とりあえずギターを歪ませたかった。
SATOKO
歌詞は経験談です。キャンプに行ったのに、お目当ての子が来なかったという(笑)。あと、この時期に全員の音質がガラッと変わったんですよ。「CHAMP」はそれが顕著に出ていますね。今までの快活な感じっていうよりもパノラマ感が出た…
SATOKO
そういうサウンドになりました(笑)。音が変わるとプレイも変わるというか。いつものファジコンっぽい曲になるのかなって思ってたんですけど、すごく新しい感じに仕上がったと思うんですよ。
前ノメリな感じでガツンとくるんじゃなくて、安定感がある上でガツンとくるロックチューンになってますよね。
SATOKO
さっきの“大地”の発言はなしにして、それにしてもらっていいですか?(笑)
JOE
でも、ほんとそんな感じでした。ウァ~って熱い気持ちでプレイしているよりも燃えてましたね。一発一発に重みが出たというか。
その「CHAMP」よりもさらに熱く弾けてるのが「hello」で。
SATOKO
半端じゃないですから(笑)。レコーディングが終わった後、ハーハー息切らしていたもんね。歌詞は楽しく朝の準備している感じがいいって言われてそういうものを書いたんですけど、歌のテンションを優先していたりするので、“こういう歌詞だったんです”という意味で歌詞カードに載せています(笑)。
JUON
でも、それをOKにしたのはふたりだからね。俺のせいじゃないから。
SATOKO
そうだね。ちゃんと歌ったバージョンもあるんですよ。でも、JOEくんが“すごいおバカになって歌ってみようか”って…すごかったよね~(笑)。
騒いだ者勝ちの曲だから、それぐらいじゃないと(笑)。そんな夏向けの3曲を収めた本作ですが、「SUNSET」の時も隙間ができていると言いましたけど、「あ・あ・あいやいや・あ・あ!」以降どんどんサウンドがシンプルになっている印象があるのですが。
SATOKO
昔よりもやっていることは増えているんですけど、とっ散らかってないからすっきりと聴こえるんだと思いますね。3人のグルーブ感ががっちりと固まってきたっていうのもあるし…ちょっとだけ大人になれたのかもしれない。でも、ファジコンは曲ありきだから、曲によってどうにでも変われる。JUONが作った曲が求めているものをかたちにした結果が、今回はこういうシングルになったっていう感じですね。
- 「SUNSET」
- POCS-21021
- 2010.07.07
- 1200円
ファジー・コントロール: ロックの王道を行くダイナミックな楽曲が特徴で、3ピースとは思えないエネルギッシュなライヴパフォーマンスが最大の魅力。メンバー個人のスキルが圧倒的であり、ミュージシャンからの評価が高いいわゆる”ミュージシャンズミュージシャン”との異名を持つ。数々のミュージシャンのツアーサポートを始め、SATOKOは執筆活動にも挑戦するなどバンド以外の活動も精力的に行なう。FUZZY CONTROL Official Website
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