【家入レオ】大人になろうと 1歩踏み
出せた“少年時代”が今

年齢的には子供から大人への架け橋となる19歳。微妙な、しかしとても大切なその成長過程で、彼女は明確に“大人になる”ことの決意を謳った。そして、それは永遠はないことを知る者の覚悟にも似ているーー。
取材:竹内美保

1stアルバム『LEO』を経ての蓄積や経験値などが表現にはっきりと表れたアルバムですね。

自分の中では本当に意味のある一枚で、このアルバムがないと私は大人になっていけなかった...まだなれてはいないんですけど、本当に今のリアルな自分をこの一枚に表現できたんじゃないかと思います。

大人の扉を開けて踏み出した、その証という感じ?

そうですね。私、大人が大嫌いだったんですけど、悲しいことに自分が子供のままでいると大切なものを守れないことが多い気がして。私はツアーのステージで観た景色...弱い自分を全部出した時に、そこに来てくださった方たちが自分のことを受け入れてくれているのを感じれた、その景色、それを守りたいと思って。それで“大人になろう”って決意したんです。おこがましいかもしれないですけど、私の歌を聴いてくださっている方の涙や笑顔をちょっとでも守っていければ、その方たちに元気を届けていけたら、と思いますし。そして、私が私らしく音楽をやっていくことは、自分の音楽を守っていくことだと思うので...そういう意味でも、すごく決意が詰まった一枚になりました。

大人になることは誰もが経験することですけど、それに対して肯定的になれるかどうかというのは、その後の人生に大きく関わってくる気がします。

でも、大人になろうって決意はしているんですけど、やっぱりまだなり切れていないんですよね。なんか…チャイルドでもアダルトでもない、子供時代でもなくて大人時代でもない、“少年時代”っていう言い方が一番ピッタリくる気がします、今の自分は。“大人になろう”って思って1歩踏み出せたところ。私、“声が少年っぽいね”と言われることが多いんですけど、声変わりする前の男の子の声って何とも言えない美しさがあると思うんです。明日かもしれない、明後日かもしれない、1年後かもしれない…そういう声変わりの時を選べない中で凛として立って、しかも憂いがある横顔って人の心を動かせるものがあると思うし、大人になろうって決意した時の横顔は誰もが美しいし。そういうところが全てリンクして、アルバムのタイトルを“a boy”にしたんです。

あぁ、タイトルはすごく気になっていました。シンボリックな印象を受けたので。

なぜ“boy”じゃなくて“a boy”…“ひとりの少年”にしたのかという理由なんですけど、人ってやっぱり“独り”だと思うんです、どんなにたくさんの人たちの中にいても。でも、それってすごく悲しく感じたりもするけど、私は神様が人間に贈った一番の愛が孤独だと思うんです。孤独を知らなかったら、喜びも悲しみも切なさも分からない。だから、ひとりの少年として、ひとりの人間として、いろんな感情を感じて生きていけたらな、という思いも込められているんです。

でも、タイトル曲の「a boy」からは他者に対する温かい眼差しが感じられたのですが。1stアルバムは自分自身を軸にした楽曲が中心でしたけど、今作は視線が外に向かっているというか、ともに歩いていく人たちと一緒に未来を築いていくんだ!というような気持ちが伝わってきましたよ。

本当にその通りですね。自分が軸じゃなくなりました。子供だった頃の自分と同じようにもがいている人たちのことを思い、言葉を届けていけたらいいな、と思った作った曲なので、「a boy」 という楽曲は。

かと思えば、「Free」みたいなヘヴィなナンバーもあって。短い曲ですけど、強烈なインパクトがありますね。

「Free」は最後まで周りのスタッフと入れるか入れないかで意見を闘わせた楽曲なんです。すごく反対されたんです、入れるのを。でも、この曲があって良かったと思います、このアルバムに。いい部分だけを見せていると、人って言葉をどんどん疑い始めると思うんです。だから、私はかっちりとしていると思われがち…それも嬉しいんですけど、でも音楽ではこういうことも書けちゃうんだよってことを伝えたかったんですよね。

エッジが効いていて、ちょっとインダストリアルミュージック風でもあって、カッコ良いです。

笑い声とかも、クレイジーな感じで。自分の中でもがいている楽曲なので、ねっとりとした歌い方をしていますし。この曲大好きなんです、私。あと、「Kiss Me」は結構際どいことも言ってま すし…。

ですね。歌い出しのところとか、ちょっとびっくり。

メロディーを仮詞で歌った時に出てきたもので、自分では意味がちゃんと分からずに歌っていたんです(笑)。でも、語呂がいいのでどうしても使いたい、って言ったら大反対されて(苦笑)。 それでも物議を醸し出すくらいがいいなと思ったので、そのまま生かしました。かなり挑発的なことを言いながら、心の中では“好きだと泣けたらいいのに”と思う、その矛盾した女性の心を描いた歌で、ロック調のメロディーに切ない思いを乗せたところが、すごく自分らしいと思っています。

「カーニバル」の映像的な世界観もすごく魅力的でした。個人的に好きなサウンドというのもあるんですけど。

「カーニバル」は私もすごく気に入っています。ある時、“ナイフと愛って同じかも!?”と思うことがあって。ナイフは誰かのために料理を作ることもできれば、人を殺めてしまう凶器にもなる。愛も人をやさしい気持ちにもさせるし、ひとつ間違ったら...というようなことを考えている時に、愛がいろんな顔を持っていることと、サーカスでいろんな芸を見せていく、その移り変わりがふっとリンクして、そこから生まれました。「カーニバル」、そして「Kiss Me」「Free」という3曲を入れることができたのは、本当に良かったと思います。きれいな曲だけでアルバムを作って大人の一歩を踏み出した、というのはやっぱり違う。ちゃんと自分と向き合って、リアルな今の自分の決意が表現できた一枚になったと思います。
『a boy』2014年02月19日発売Colourful Records/ビクターエンタテインメント
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • VIZL-641 3570円
    • 【通常盤】
    • VICL-64121 3045円
家入レオ プロフィール

イエイリレオ:1994年12月13日生まれ、福岡県出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、15歳の時に完成させた「サブリナ」で12年2月にメジャーデビューを果たす。光と影、希望と不安や葛藤など、精神面での深淵を綴った歌詞と表情豊かなヴォーカルで幅広い支持層を獲得。17年2月にデビュー5周年記念で初のベストアルバム『5th Anniversary Best』を発売し、4月には初の日本武道館公演を大成功に収めた。19年2月にはデビュー7周年記念で“Premium Symphonic Night”と題した大阪城ホール公演を成功させた。家入レオ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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