YOSHIKIが映画「We are X」の主題歌
に託した 天国のHIDEとTAIJIへのメッ
セージとは

まさにX JAPANというバンドを物語っているかのような、ドラマティックで壮大なバラードの本作だが、歌詞は全編英語で綴られている。
いったいどんなことが歌われているのだろうか。
この歌に込められたメッセージを紐解いていきたい。



絶望の淵に立たされた人を励ますような歌詞。かつてのYOSHIKI自身がそうであったように、絶望に打ちひしがれ、この世から消えてしまいたいと思っているような、そんなファンへ向けた歌詞なのだろう。ドキュメンタリー映画についてのインタビューでも、YOSHIKIはこう語っていた。「X JAPANというバンドのストーリーが、ある人たちに対して勇気を与えることができるんじゃないか。人の命を救うこともできるんじゃないか」と。
だがこの歌詞にはファンへ向けてだけでなく、あともう2人、天国にいるHIDEとTAIJIへ向けたYOSHIKIからのメッセージが隠されている。歌詞の単語が指すもうひとつの意味を考えてみた。

歌詞の中の“roses”はX JAPANを、“rain”はバンドに降りかかる困難を、そして“flowers”は世界中のファンのことを指しているのではないだろうか。さらに“breath” はfeelに、“bring you down”の“you”はX JAPANに置き換え、再度訳してみたい。

「天国から見ててくれよ、俺たちX JAPANのことを どんな困難が降りかかろうとも、世界中のファンとともに俺たちは突き進んでいくから天国から感じててくれよ、2人への愛を世界が俺たちX JAPANを破滅させることなんてできやしないんだから」

冒頭と最後に歌われるこの歌詞は、YOSHIKIのピアノに合わせ、ボーカルTOSHIが囁きかけるように優しくそっと歌う。
絶望の中、もがき苦しんでいるファンへ、そして天国にいるHIDEとTAIJIへ、この想いが届くように。



このサビ部分の歌詞は、特に天国のHIDEとTAIJIに対するメッセージを強く感じた。
“loving you dear”の“you”はHIDEとTAIJI、世界中のファン、そしてX JAPANというバンド自体をひっくるめて指し、“from here to heaven”の“here”は、YOSHIKIが「ステージこそが僕の生きる場所」と映画のワンシーンでも言っていたように、ステージを意味しているのではないだろうか。また“I'll be the roses you tear”(君がちぎるバラの花になる)とは、犠牲になるということ、そして“It's the end of the world”(世界が終わるその時)とは、X JAPANというバンドが終わる時を意味し、これらのことをふまえ、再度訳していく。

「俺たちは死ぬまで、X JAPANというバンドとともにHIDEのこともTAIJIのことも、そして世界中の俺たちのファンのことも ずっと愛し続けていくよ
俺たちがこのステージから天国へと旅立つその時まで俺たちは死ぬまで、X JAPANの為ならどんな犠牲も厭わないだから悲しまないで、どうか安らかに
X JAPANというバンドが終わりを迎えるその時までは」

彼らのライブでは、メンバー紹介の時に、必ずHIDEとTAIJIの紹介がされる。亡くなった今でもずっとメンバーの一員。この歌詞にその強い思いが表れていると思った。



過去にバンド内であったことを思い出し、そのことを自分の中で戒めとしているような歌詞。だがそのことを嘆くのではなく、何か力強い意思を感じた。天国のHIDEとTAIJIには、きっとこんなふうに歌っているのではないだろうか。

「何もかも偽物で
形あるものはすべて壊れていく
きっと俺たちX JAPANもいつかまた壊れてしまうかもしれない
だけど2人には知っていてほしい
俺がX JAPANを再始動させ、世界進出した意味を(俺はX JAPANというバンドを全うする為に生まれてきたんだから)」

新曲「La Venus」は、X JAPANというバンドの壮絶なドラマと、ドキュメンタリー映画の制作にあたり、彼らがその過去と向き合ったことで、完成した楽曲なのだ。YOSHIKIにとっては、どんなに辛く、悲しいことだったろう。だが、そうして向き合ったことで天国にいるHIDEとTAIJIへやっと届けることができた想い。

この曲はYOSHIKIが天国にいるHIDEとTAIJIへ送った、決意表明と言う名の鎮魂歌であり、また今後バンドにどんなことがあろうとも俺たちは立ち向かい、突き進んで行くよ、だからみんなも負けないで、と世界中のファンへ向けた熱いメッセージが込められている。


TEXT : 中村友紀

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