ドラえもんへの敬意を忘れないBUMP
OF CHICKENの『友達の唄』

毎回のことですが、バンプはとにかくタイアップがうまいバンド。歌詞が見事に内容と対応しているのが分かります。自分達のカラーを守りつつ、タイアップ作品の本質をとらえる曲作り。ずっと第一線で活躍できるのも頷けます。
「遠回りしちゃったけど 友達になれたのかな」しずかちゃんとリルルの関係を歌っています。『のび太と鉄人兵団』は、鉄人兵団と呼ばれるロボット軍団が地球に攻めてくるストーリー。リルルは人間の姿をしたロボットで、スパイとして地球にやってきます。このリルルが、のび太やしずかちゃん達と交流していくうちに心を開いていくのがストーリーの要。遠回りしたけれど、最後の場面では友達になっている展開をとらえています。
「空の冷たかった手が 初めて掴んだ手に 消えていく暗闇の中 引っ張られて走った 帰り道を探して」この歌詞も映画内容と対応しています。冷たかった手はリルルがロボットであることを表現。
「どうかあなたと 同じ笑顔で 時々でいいから 思い出してね」この歌詞もしずかちゃんとリルルの別れの場面を表現。似たような台詞がクライマックスで出てくるんですね。「同じ笑顔で」というところがポイント。しずかちゃんは人間で、リルルはロボットであるので、本来は「同じ」ではないわけです。それがラストには同じ笑顔になる、というストーリーを短いフレーズの中で的確に表現しています。
“忘れないよ また会えるまで 心の奥 君がいた場所 そこで僕と 笑っている事 教えてあげたいから
信じたままで 会えないままで どんどん僕は大人になる それでも君と 笑っているよ ずっと友達でしょう”
この曲は途中までリルルの視点ですが、終盤でのび太の視点が入ってきます。「そこで僕と 笑っている事」と歌詞の中に「僕」が出てくる構成。普通に聴いているだけだと聞き流してしまいそうになりますが、変化をつけているんですね。「信じたままで 会えないままで どんどん僕は大人になる」の歌詞。のび太がリルルと別れてから大人になっていくことを表現しています。『ドラえもん』の世界では大人になったのび太も描かれています。のび太の視点を通して、別れを通して大人になっていく人生の過程を表現しているんですね。
MVの最初と最後は空撮で街を見下ろす視点の映像が入ります。これは1986年に公開されたオリジナルの旧作映画『ドラえもん のび太と鉄人兵団』のオマージュになっています。こういったところも嬉しいですね。
この映画を全く知らなくても、出会いと別れを通した友情の歌として成立している曲。卒業シーズンに聴きたいですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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