【吉田山田 インタビュー】
2022年に思ったことを
自由にどんどん歌にしていった
L→R 吉田結威(Gu&Vo)、山田義孝(Vo)
吉田山田にとって9枚目のアルバム『備忘録音』が完成した。先行配信曲の「焼き魚」を含む全11曲とボーナストラック「最後の歌」(※ボーナストラック盤のみ収録)を収録する今作は、自主レーベルから新たな一歩を踏み出す作品でもあり、アルバム冒頭の「Monster」など多くのチャレンジが感じられるものに仕上がっている。この作品が出来上がるまでの過程や作品に込めた想いなどをふたりに語ってもらった。
初めての体験は新鮮に感じたし、
刺激ももらえた
“備忘録音”というタイトルがいいですね。
吉田
今回は“2022年という一年を忘れないように”っていうほど大袈裟ではないんですけど、自分たちの備忘録として残しておきたいと思って曲を作っていったんです。2022年に思ったことを自由にどんどん歌にしていったものを集めたアルバムなので、最後に山田と話し合って“備忘録音”というタイトルを決めました。
今作は自主レーベルからのリリースになりますが、何か変化は?
吉田
ポニーキャニオンを離れて、自主レーベルからのリリースになったんですけど、制作に関してはそれによって大きく変わったというのはないですね。僕らの制作のやり方が大きく変わったのは7年前ぐらいかな? レコーディングするメンバーとライヴをするバンドメンバーを極力同じにしたくて、自分たちで選んで“この人たちとやりたい”と決めたのがそれぐらい前のことなんです。最初の頃はポニーキャニオンのスタッフの方にレコーディングに参加してもらうミュージシャンを紹介してもらったり、場所を用意してもらったりすることが多かったんですけど、同じグルーブを持ったチームでレコーディングもライヴも全部イコールにしたかったんです。その頃からそんなふうに自分たちで考えて変えていったので、今回特別に何かが変わったというのはないですね。
スタイルは変わらず、より自由に自分たちのやりたいことをやっているという感じでしょうか?
吉田
そうですね。以前はポニーキャニオンの制作スタッフの方が言ったひと言がきっかけでできた曲があったりしたんですよ。自分が良いと思ったものを否定されると腹が立ったり、プライドが傷つけられたりしますけど、逆に刺激的でもあります。自分だけだと客観視できず、良い悪いの判断ができないこともありますから、吉田山田がソロアーティストだったら結構大きな変化だったと思うんです。でも、僕らはふたり組で、いい意味で否定し合いながら“もっと良いものを作ろう”という反射があるからできたと思います。
山田
レーベルを離れたことでの変化というよりも、コロナ禍での変化かもしれないんですけど、僕らのルーティンが変わったことも今回のアルバムに影響していると思います。曲を作って、それをレコーディングして、リリースして、ツアーを回って、そのアルバムの曲を披露して、そこで歌ったことで“このアルバムではまだ言い表せないものがあったな”と感じて次のアルバムにつながっていくのですが、この2、3年はツアーがやれなかったから、吐き出すというか、確認する作業ができませんでした。ステージで歌うことで新たな感情やエネルギーをもらうんですけど、それがなかったことでルーティンが崩れてしまったんです。
確かにルーティンというか、それまでのサイクルに変化があったことは大きいですね。
山田
掘って掘って、いろんなものをもらって、また違うところを掘って…という流れだったのが、掘って掘って、また同じところを掘って掘ってというふうに変わりました。これは結構キツいんですよね(笑)。でも、そういうふうに二段階、三段階と掘っていったことで、その先にあるものを見つけることができたので、これはこれで良かったんじゃないかと今は思っています。“生きる”という言葉が多く使われているのは、掘っていった底のほうでカツンと当たったものが、ちゃんとアルバムに収めることができたからだと思うんです。今の時期のことをただネガティブな時期ととらえるのは嫌だと思っていたので、今回のアルバムがいい作品になって良かったと思います。
今作にはいろいろなタイプの曲が収録されていますが、曲順はどんなふうにして決めていきましたか?
吉田
今回は珍しく僕と山田で考えが違っていて、大きく2パターン作ってみて、なぜそっちがいいのかを話し合って、最終的にこの並びに落ち着きました。でも、作者としては正直言って、どの曲がどの順番で流れてもいいんですよ(笑)。“今の時代、曲順どおりにアルバムを聴く人ってどれぐらいいるんだろう?”って思ったりしますから。とはいえ、何かしら考えや想いを込められたらいいなと思って、頭を捻って考えました。この曲順にした大きな理由は「Monster」と「YADANA」から始めたいと思ったからです。「Monster」はオーケストラだけで構成されていて、アコギもリズム隊も入っていないんですね。そういう初めての体験は僕らも新鮮に感じたし、刺激ももらえました。これを最初に持ってくることで“新しいことに挑戦してるなぁ”とか“振り返るんじゃなく、前を見ているんだな”と感じてもらえたらいいなって。
確かに大きな変化を見せられるのが「Monster」ですからね。
吉田
「人間」「日曜日」「裸」「もしもの話」とか吉田山田らしい曲だと思ってもらえる曲も多いんですけど、冒頭ではあえて違う部分、挑戦した部分を感じてもらいたいと思いました。
新しい挑戦という意味では、「焼き魚」もそうなのかなと思ったのですが。
山田
これは曲だけじゃなくて、MVやジャケットのアートワークも自分で作ったんですけど、MVは年末年始に200時間くらいかけて作りました(笑)。誰かプロフェッショナルな人に委ねても良かったんですが、ちょうどデジタルで絵を描き始めた時だったり、いろんなタイミングが相まって、時間的にも余裕があったし、自分でやってみようかと。「もやし」(2018年10月発表のアルバム『欲望』収録曲)のMVを作ってくれたクリエイターとふたりで作業を進めて、途中経過をよっちゃん(吉田結威の愛称)にもほぼ見せずに作っていきました。なかなかできない体験でしたし、曲を作った時に浮かんだインスピレーションもちゃんと具現化できたので思い入れの強い曲になりました。
吉田
あっ! 変化というか、僕らにしては珍しい現象が起きていました。今回のアルバムにはボーナストラックを含めて12曲が収録されているんですけど、実は最後に作った2曲を収録していないんです。それは初めて“とっておきたい”という気持ちになったんですよ。これまでは“全部詰め込みたい”という気持ちでアルバムを作ってきたんですけど、今回はとっておこうと。最新の2曲を温存していて、さらにアルバムの発売前なのに次の制作に入っているんです。なので、このアルバムに関しては、僕らの中では“ちょっと前のこと”みたいになってるんですけど(笑)、僕はそれはすごくいいことだと思っていて。どんどん前進していく姿勢というのがそこにも表れていると思うので。
山田
その温存している2曲は違うフェーズに入ったのを実感した曲だったから、今回のアルバムに入れてもいいんでしょうけど、本当に次のギアに入ったのがすごく分かるものだったので、“とっておきたい”という気持ちになったんです。
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僕らのフィルターを通ってこの曲になったアーティスト
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