『スカパラ登場』に見る
国内最強のバンド、
東京スカパラダイスオーケストラの
スタンス
これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
ニュースが豊富な2018年のスカパラ
まぁ、ライヴやイベント出演が多いバンドは他にもいるので、この規模が普通だとは言わないまでも、驚くほど珍しくはないかもしれない。驚くのはここからである。他アーティスト作品への参加とコラボレーションがとにかく多い。今年の入ってからのものだけでも、以下の通りだ。
多岐にわたるコラボレーション
ほぼ毎月のように、誰かのアルバムに参加したり、フィーチャリングしたりされたりしている。他のバンドならこの内のひとつでも十分に大きなニュースとなりそうであるが、スカパラの場合はそれが当たり前のようであるのが面白い。公式サイトの“ニュース”はこれにとどまることなく、茂木欣一が映画『リメンバー・ミー』で声優に初挑戦したこと、メンバー出演のCMのこと、キャンペーンのお知らせや募金活動の報告と、バラエティー豊かなネタが紹介されている。彼らほどのキャリアあるアーティストとしては異例な感じがするのは筆者だけだろうか。周年記念の節目の年ならまだしも、2018年はスカパラにとって特に節目というわけでもなさそうなので、誤解を恐れずに言えば、“スカパラ、よく働くなぁ”という印象である(ちなみにスカパラの結成は1985年、メジャーデビューが1990年なので、今年は結成33周年、メジャーデビュー29周年。来年がデビュー30周年となる)。現在のメンバーは9名。それぞれスカパラ以外の活動もあるだろうから、スケジュール調整だけでも大変であろうに、これだけ精力的に活動しているスカパラは日本で最強のバンドではなかろうかと、かなりマジに思う。
精力的にライヴを展開するスカパラ
詳しくは、それこそ公式サイトをご覧になっていただきたいが、東京都内はサンパール荒川とオリンパスホール八王子、北海道ではわくわくホリデーホール(札幌市民ホール)はともかくとして、富良野文化会館、根室市総合文化会館といった会場で開催。県庁所在地も避ける方向のようで、広島県三原市、新潟県村上市、徳島県鳴門市、島根県安来市といった地名が並んでいる。地方都市で県庁所在地ではないということは、それほどアクセスが良くないことも想像に難くないし、動員も容易ではないかもしれない。何よりもメンバーの移動が大変なところもあるだろう。それでも、“めんどくさいのが愛だろっ?”というタイトルからすると、“でもやるんだよ!”とばかりに、普段、他のアーティストが行かないような、初めてスカパラを見る観客もいるであろう会場へ彼らは行くのだ。これを称えずして何を称えよう。少なくとも、今、日本の音楽シーンにおいて、スカパラは最強のバンドのひとつだ。五指、いや三本指に入ると言っても過言ではないだろう。
最高位12位を記録したデビュー作
らしさを強調した理想的なカバー曲
しかも、(当然と言えば当然なのだが)しっかりとスカパラ流にカバーしているのだ。例えば、M4「仔象の行進」。原曲は金管楽器と木管楽器とでファニーな雰囲気を醸し出しているが、スカパラ版では楽しさはそのままに、シャープかつスリリングな加味したロックな「仔象の行進」に仕上げている。M6「TIN TIN DEO」もまさにロックで、ホーンセクションが主旋律を奏でる様子、特に後半のブレイクからのそれは鳥肌ものに素晴らしい。中盤で聴かせるアーバンなピアノやフリーキーなトランペットなど聴きどころも多く、実にカッコ良いテイクだ。しっかりとロックしているのはM11「HIT THE ROAD JACK」も同様。M8「にがい涙」にしても、The Three Degreesが慣れない日本語で歌っている様子までもしっかり再現しつつ、パンチの効いたカバーに仕上げている。いずれにしても、原曲の良さを損なうことなく、ちゃんとスカパラらしさも強調した理想的なカバーと言える。
ロック魂を感じる楽曲がズラリ
しかも、それぞれに小技も効いている。例えば、スパイ映画のテーマ曲っぽいスリリングさから始まるM2「バンパイア」は、Shakatak風サウンドから鳴きのトランペット、ギターへと展開。狼の遠吠え風なヴォイスも重なるなど、映像が観えてくるような作り。M5「ウーハンの女」もそう。随所にドラの音が配されている上に、ブルース・リーの怪鳥音を模したヴォイスも聴こえ、明らかにカンフー映画的な雰囲気がある。何よりもM13「君と僕」のインパクトは強い。大編成のスカパラのようなバンドのメジャーデビュー作、そのラストがアコーディオンと口笛というのは何とも洒落が効いている。サウンドのダイナミズム、躍動感という意味でのポップさも十分にロックではあるが、こうしたバラエティー豊かな楽曲に挑戦する姿勢に何よりもスカパラのロック魂を感じるところである。
TEXT:帆苅智之
アーティスト
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