「未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター」黒木奈々(文藝春秋)

「未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター」黒木奈々(文藝春秋)

32歳の若すぎる死、黒木奈々さんが自
ら記した闘病記をご紹介

フリーアナウンサーの黒木奈々さんが、9月19日にがんで亡くなりました。32歳の早すぎる死でした。最初に異変が訪れたのは去年の7月27日。親しい友人たちとワインバーで楽しくお酒を飲んでいた時、突然の胃の激痛に倒れ、救急車で病院に運ばれたのです。

アナウンサーは小学校からの夢

黒木さんは、1982年11月12日に鹿児島市で生まれました。小さい頃は、極度の人見知りで甘えん坊だったそうです。しかし、小学校の図工の時間に描いた「将来の自分」という絵には、すでにカメラの前に座ってニュースを伝えている自分の姿が描かれています。父親が観ていたニュース番組のアナウンサーの姿に、「私もこんな風になりたい!」と憧れたのです。
その後、その想いをますます強めた黒木さんは、当時活躍していた多くのアナウンサーが上智大学出身だったことから、同大学のフランス語学科に進学。フランスのグルノーブル政治学院への留学を経て、いよいよアナウンサー試験に臨んだ黒木さんでしたが、東京都に本社を置く、いわゆる“在京キー局”は全滅。
大阪の毎日放送(MBS)の試験も不採用でしたが、人事部から「うちには、報道記者から夕方のニュースのキャスターになった子がいる。あなたも報道記者職を受けてみませんか」と提案され、将来、報道キャスターへの道が開けているのならと、面接を受けて合格。無事に大学も卒業し、2006年4月にMBSに入社しました。

ようやく掴んだメインキャスターの座。
その矢先の“がん宣告”

夢を叶える第一歩として、まずはMBSの報道記者になった黒木さんでしたが、記者を続けていくうちに、「このままでいいのだろうか、私がやりたいのはこの仕事だろうか」と焦りはじめます。そして24歳の冬、黒木さんは会社を辞めてフリーのアナウンサーになります。
『TBSニュースバード』のオーディションを受け、見事合格。黒木さんは小学校からの夢を叶え、念願のニュースキャスターになりました。さらに7年かけて、ついにNHK BSの報道番組、『国際報道2014』のメインキャスターの座を掴んだのが去年の4月。それからたった数か月後の8月に、黒木さんは番組を休養することになってしまうのです。

「今この瞬間というのは、みなさんにとっても、本当に大切な大切な時間です」
この「未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター」では、ようやく掴んだメインキャスターの座から一転、心身ともに苦しい闘病生活に入らざるを得なくなった黒木さんが、それでもあきらめずに番組復帰を目指して必死に戦う姿が克明に記録されています。
黒木さんはこの自身の手記を刊行するに際し、
「今この瞬間というのは、みなさんにとっても、本当に大切な大切な時間です。そのことを、この本を通して、少しでも考えて頂けるきっかけになると良いなと思います」
とコメントしています。
今は“人生80年”と言われる時代です。しかしそれは、誰もがみんな80歳まで生きられるという意味ではない。そんな当たり前のことを、少しどころか、とても深く考えさせられる手記になっています。大変な時にこそ、その人の真の人間性が問われると言いますが、自分自身が誰よりも辛い時に、他の人のことまで考えられるというのは、本当にすごいことですよね。この手記は現在、健康な方にこそ、読んで頂きたいです。
「未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター」黒木奈々(文藝春秋)

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