アイドリング!!! 伊藤祐奈「卒業まで
にみんなとディズニーランドに行きた
い!」【ライブドキュメント&インタ
ビュー】

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 開演前、AKIBAカルチャーズ劇場に集まったNEO fromアイドリング!!!(以下、NEO)のファンたちは、この定期公演で発表された〝推しカラー〟のTシャツ、リストバンド、ペンライトを持って待機する。時々、壁の向こうから漏れてくる女の子たちの騒ぎ声に耳を傾けていた人もいたかも知れない。

 その頃、白い壁に多くのアイドルたちのサインが色とりどりに書かれているAKIBAカルチャーズ劇場のバックヤードは、何を話しているのかも判別できないほどの大騒ぎだったのだが、これ自体はいつものことだ。



 誰かの「かおるんさんから電話だ!」という声が聞こえた。昨年6月に同グループを卒業した伊藤祐奈の親友、後藤郁からの電話が掛かってきたようだ。さらに、アイドリング!!!メンバーの長野せりな、三宅ひとみ、高橋胡桃、玉川来夢が訪れると、喧騒はさらにヒートアップ。アイドリング!!!の仲間たちと抱擁を交わす伊藤の目には涙が浮かんでいた。

「(メイクを)直さなきゃ!」と、伊藤。このような光景は、いつもとは少し違った。
 会場が暗転し、NEOのオープニングアタックが流れると、せきを切ったように一気に歓声が飛び交う。照明の落ちているステージに、7人のシルエットが浮かぶ。1曲目はハイスピードなテンポで攻めまくるナンバー『Sakuraホライズン』で幕を開ける。立て続けに『RESISTANCE”in my pocket”』、『プリ♡きゅんサバイバル』とアゲ曲の攻勢。

 最初のMCで自己紹介が終わると、関谷真由が「この定期公演では、いつも何か新しい挑戦をしてきたんですけど、今回はDoll☆Elementsさんとのコラボ曲『ショコラ☆ロマンティック』をNEOの7人バージョンで披露したいと思います」と曲振り。NEOもさることながら、Doll☆Elementsメンバーのキャラクターや声色の個性が存分に引き出された楽曲だけに、各パートを任されたNEOメンバーも緊張感をもって臨んだようだ。

 そして、次の挑戦は『寝乙女X'mas Night』の担当シャッフルバージョン。考えるよりも先に動けるほどに、自身のパートを体に染みこませているだけに、メンバーたちは、こちらも苦戦したようだ。



 MCを挟んでライブは後半戦へと差しかかり『mero mero』、『波打ち際のリフレイン』、『突進少女』と連続で披露。そして『キミといたナツ』に繋がる。


[LIVE PHOTO]■次のページは「突然の卒業発表」4曲連続の最後を飾る『キミといたナツ』の意味


「キミといたナツが今 遠ざかっていく……」。まるでこれから起こる出来事を暗示していたかのような、思い出に後ろ髪を引かれながらも、前に進む決意を歌う旅立ちの曲。メンバーたちも、そして伊藤祐奈も、これまでにない感情を込めてパフォーマンスしているように見えた。「たくさん 思い出くれたよね ずっと忘れない」——。

「皆さんに報告があります」と一歩前に出た伊藤祐奈が涙をこらえる。客席から「マジかよ……」と呟く声が聞こえる。

「頭が割れるくらい悩んで出した決断です」。何度も溢れる涙に遮られながら、卒業の意志をファンに伝えた伊藤祐奈。言葉に詰まった静寂が起こるたび、多くのファンの鼻をすする音が、言葉にならない声が漏れているのが聞こえてくる。

 放心状態の観客たちに、いま何を思うべきかを関谷真由が教えてくれた。「祐奈ちゃんが私たちNEOのことをしっかりまとめてくれて、色んなことを教えてくれたから、ここまでやってこれました。だから、今度はみんなで祐奈ちゃんのことを、精一杯応援したいと思います。残り1ヶ月、祐奈ちゃんと一つひとつの時間を大切にして、思い出を作っていきたいと思います」。 ライブ最後の曲は『Someday,Somewhere』。NEO楽曲でも異色な、まるで会話のように歌われるバラード。それだけに、メンバーの込み上げる感情よりストレートにぶつかってくる。「いつかまたどこかで」と、別れと同時に再開を約束する歌詞は、ファンの気持ちそのものだろう。

「まだ実感がわかないけど、前からずっと決めていたことで、こんなバタバタしている中でタイミングは悪いんですけど、それも伊藤祐奈らしいなと思っていただけたら嬉しいです」。とスピーチして、ステージを降りようとすると、客席からは「ゆうな」コールが自然発生する。感謝と照れが入り交じった伊藤は、ミケーラに「絶対泣かないと思ってたけど、泣いてる?」と水を向けるのが精一杯。するとミケーラがステージ袖のスタッフに何やら言付けを受けてステージに戻る。

「さっき、祐奈ちゃん4月3日をもって卒業って言ったけど、4月5日の『アイドリング!!!FES』が最後ですよ!」と訂正する。

 他のメンバーたちも「実は気づいてた……」と言うと、会場も暖かい空気で和む。卒業が2日延期した、というお得感と言うべきか。

「こういうところを直していきたいですね。洗濯物をたたむ。キャップは締める。ちゃんとした大人になれうるように。それに、これは明るい卒業で、何も問題を起こしてないですからね! これだけは言っておきたいんですけど、何も撮られてません! 明るい一歩を踏みだすのでみなさんよろしくお願いします!」

 絶妙なコスりを入れてくるリップサービスは、やはり伊藤祐奈の面目躍如。この日の事を、2014年2月にグループを卒業した事務所の先輩でもある遠藤舞に話していたという伊藤は「今までの卒業生の気持ちが分かった。まいぷるさんと電話して、すごく緊張するから気をつけな、と(笑)。せりにゃんからは、発表の前にニヤニヤするなと言われて」と告白すると、その様子を見守りに来ていた長野せりながサプライズでステージに登場。ミケーラが「卒業の先輩じゃないですか!」と歓迎する。

「おめでとう! いまバタバタしてるけど(笑)、(3月28日に卒業するから)最後まで見れなくてゴメンね」と長野が言葉をかける。

「ひぃーちゃんにくるみん、らむも来ていて、ほんとにいいグループだなぁって」と言うと、伊藤は思いきり泣いてみせた。忠告通り、ニヤニヤはしていなかったことを確認すると、長野を含めた8人で「NEOでした!」と締めてステージを後にした。


[LIVE PHOTO]■次ページは「公演直後インタビュー」■公演直後インタビュー


——発表、してしまいましたね。

伊藤 一度、決めてから前しか見てなかったので、すっきりしたという気持ちもあるけど、いざファンの方たちを目の前にすると、後ろ髪を引かれるというか、やっぱり込み上げるものがありましたね。でも、私がウジウジしてしまったら、ファンの皆さんも納得いかないと思うので。

——あえて「何も撮られてない」と言ったくらいですからね。

伊藤 ほんと! そこだけは押しておこうとかなと。

——ほかの皆さんが伊藤さんの卒業を知ったのはいつ頃なんですか?

橋本 おとといのライブリハーサルのときです。

——その瞬間の空気というのは、想像もつかないですが……。

伊藤 みんな放心状態だったよね。

ミケーラ だって怖かったもん。スタッフの偉い人たちが来て、何を話すのかと思ったら「じゃあ話してください」って祐奈ちゃんに言うから。

橋本 祐奈ちゃんと佳蓮ちゃんがニヤニヤしてて!

——理由やいきさつなどは、いずれじっくり聞きたいと思いますが、グループを去るにあたって、やり残したことなどはありますか?

伊藤 それはないですね。悔いもありません。だから決意できた卒業なんです。

——それでは、リーダーを務めていたこのNEOに何が伝えられたと思いますか?

伊藤 え~、何だろう? 何も、ない(笑)。

——メンバーの皆さんに聞いてみましょうか。

橋本 瑠果にとっては、全部。だって、入って来たとき、最初にNEOに来てくれた先輩が祐奈ちゃんで、何もかも祐奈ちゃんがやっているのを見て覚えたんです。リハーサルに対する考え方とか、全部。瑠果たちがここまで来れたのは、祐奈ちゃんのおかげでなんです。

古橋 本当にそうなんですよ。

——では古橋さんが個人的に学んだことは?

伊藤 折れない心!

古橋 あはは(笑)。確かにあります。私、最近、バレてしまってますけど、心が折れやすいんです(笑)。それでいて、自分から「折れてます」ってアピールできないほうなので、そういうときに祐奈ちゃんが察してくれて「大丈夫?」って、相談に乗ってくれたりもしました。「私も、同じだったよ」って。いまの古橋を支えていたのは祐奈ちゃんです。

伊藤 ですのでー、授業料を頂いてもいいですか?

古橋 うそー(笑)。じゃあ、卒業までに何かお返しできるように頑張りますので許してくださいっ!!

——佐藤さんはいかがですか?

麗奈 やっぱりトークですね。MCの内容って、楽屋でみんな決めてるんですけど、祐奈ちゃんはいつもリードしてくれたし、どういう話がいいのかとか、教えてもらえたなって思います。

——これまでもインタビューしていて感じていましたが、伊藤さんは質問に対しての返しが早いんですよね。

伊藤 私、適当なんで(笑)。

佐藤 うん。ちょうどいい適当さ(笑)。

伊藤 麗奈ちゃんも適当だもんね。似たものを感じるよ(笑)。

ミケーラ 切り替えもすごいんです。ライブではアクシデントや急な変更が多いんです。ミケは、本番5分前に急に言われたらパニックになってしまうけど、祐奈ちゃんは「はい、わかりましたー」って。もうロボットですよ! みんなを代表して、細かいことを聞いてきて、「了解しましたー」ですもん(笑)。状況での切り返しがすごい!

——関谷さんはありますか?

関谷 私は祐奈ちゃんと同い年なんですけど、本当に同じ19年を生きてきたとは思えないくらいしっかりしていて。色んなところで甘えちゃったり、任せたりしちゃいました。ずっと好きだった歌やダンスも、仕事としてやることの大変さとか、グループとして活動することの難しさを学べたと思います。

——石田さんは皆さんとは少し立場が違いますが。

石田 私はアイドリング!!!でのイメージが強いですけど、NEOに来てからは、これまで見たことがない、祐奈ちゃんがみんなの先頭に立っているところを見て、改めてすごいなって。みんなをまとめる立場になったら、どうすべきかというような事を間近で見られたことが大きいですね。

——なるほど。では最後、残されたあと1ヶ月。それまでに伊藤さんとしたいことは?

古橋 はいはいはいっ!! みんなでディズニーランドに行きたいです!

橋本 行きたーい!

麗奈 わーい!

伊藤 昨日、ミケーラと一緒にいるとき、旅行に行こうよって言ったら、「行こう!」って返したのに、ディズニーランドにって言ったら、急にシュンって。

古橋 えっ! なんで?

ミケーラ だって、いきなりディズニーランドだと……まずがご飯あたりから。

橋本 旅行ならいいのに、なんでよ~!

佐藤 行こうよ!

伊藤 まあ、7人だと1人だけ、1列2人乗りの乗り物とかで余っちゃうけどね(笑)。

(ここで神原Pから、ご飯なら奢ると約束が)

古橋 やったー!

——心強いスポンサーが登場しましたので(笑)、まずは食事に行っていただいて、その後にディズニーランドに行ってきてください。ミケーラさん。

ミケーラ わかりました~(笑)。



 この後、ライブ会場に来ていたファンたちと交流をしたNEOメンバー。直接、言葉を交わしながら、何度となく涙を拭いながらも、最後まで笑顔を絶やさない伊藤祐奈だった。(文・写真/石渡 稔)



<INFORMATION>
3月18日発売
6thアルバム『ロデオマシーン』

<LIVE>
■アイドリング!!!13号長野せりな卒業ライブ
ぷにぷに・またね・だいすき
2015年3月28日(土)\開場18:00/開演19:00
@渋谷公会堂
■アイドリング!!!FES 2015
2015年4月5日(日)\開場13:00/開演14:00
@豊洲PIT

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