WHITE ASHが邦ロックに示す“王道”
とは? ギターリフが際立つ異色のク
リスマスソングを聞く

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 2010年にインディーズデビュー、2013年にメジャー移籍したWHITE ASHは、「のび太」という人を食ったようなフロントマンの名前、写真などでメンバーの顔をはっきりと明かさないイメージ戦略、そして何よりもそのずば抜けたソングライティング力と邦ロックらしからぬ重心の低いサウンドで、日本のロックシーンにおいて異色の存在であり続けてきた。そんな彼らは、本人たちもその影響を公言していたように、デビュー当初は「Arctic Monkeysへの日本からの回答」的な文脈で紹介されることも多かった。しかし、そのArctic Monkeysがアメリカに渡ってクラシックロック的なヘヴィネスを手にしていったように(いや、もはやそこのシンクロはそれほど重要ではないけど)、彼らもまた独自の道を歩んできている。

 一度でもライブを体験すればすぐにわかるように、彼らのサウンドには近年の日本の若手ロックバンドとしてはとても貴重なことに、ブラックミュージック的な横ノリのリズムが息づいている。画一化したビート(それはなにも四つ打ちに限った話ではない)の上でメロディのフックや意外なコードの展開や気の効いた歌詞で個性を競い合っている日本のロックシーンのメインストリームを尻目に、WHITE ASHは(今回の新曲「Xmas Party Rock Anthem」にも顕著なように)ギターのリフとリズムにひたすら磨きをかけている。で、これは言うまでもないことだけど敢えて言いますね。そもそも、ロックっていうのはギターのリフとリズムの音楽なんですよ。別にロックの歴史に忠実であることが正義だとここで主張をするつもりはないけれど、この2014年にWHITE ASHがやってること、それは王道が忘れられた時代の王道ロックと呼ぶべきものなのだ。

 そんなWHITE ASHが来年3月にリリースするニューアルバムのタイトルが『THE DARK BLACK GROOVE』と聞いて、思わず「おぉ」と声が出てしまった。軽くて明るく健やかでまったく「黒さ」のないタテノリのリズムがシーンを支配しているこの時代に、ダークでブラックなグルーヴを打ち出そうという心意気。そう考えると、今回リリースされた『The Best Nightmare For Xmas』が、映像作品ながら「ベスト」と銘打っていることにも合点がいく。彼らは、2015年以降の新たな戦闘態勢を整えるために、これまでの自分たちの歩みをここで一度まとめておきたかったのかもしれない。(宇野維正)

リアルサウンド

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