まらしぃ、完全生音で繰り広げられた
2024年初ステージでさらなる飛躍の始
まりを告げる

marasy piano live tour『生音』 2024.01.05(fri)サントリーホール
昨年11月からスタートした、まらしぃの全国ツアー「marasy piano live tour『生音』」。まらしぃのライブといえば、映像やステージセットなど、趣向を凝らした演出が組み込まれたものになっているが、今回のツアーはタイトルにある通り、スピーカーは一切使用せず、グランドピアノから発せられる“生音のみ”で繰り広げられる、全編完全生音ライブ。東京公演は、1月5日(金)、サントリーホールにて行なわれた。まらしぃがサントリーホールに立つのは、これで2度目。前回は、東方Project楽曲のみでセットリストが組まれた「まらしぃ 幻想遊戯演奏会 2022」だったのだが、今回の生音ツアーは、前回のサントリーホールでライブをした際に、「もっと生の音を聴いてもらいたいと思った」ことがキッカケだったと、この日のライブで明かしていた。
場内の明かりがゆっくりと落ちていくと、暗闇の中にスポットライトを浴びたグランドピアノが浮かび上がる。そこへまらしぃが登場。客席から大きな拍手が沸き起こる中、彼はステージをぐるりと囲んでいるオーディエンスに一礼し、柔らかくピアノを奏で始めた。1曲目に選ばれたのは、堀江昌太(kemu)との共作曲「88☆彡」。穏やかな始まりから徐々に熱を帯び、力強く躍動していく鍵盤の音色に、改めて客席から万雷の拍手が送られる。1曲目からかなりドラマティックな演奏だったのだが、曲を終えると「みなさん、こんばんはー」とラフなテンションで話しかけ、客席の緊張を和らげるまらしぃ。「今日はみなさんにピアノの音をゆっくり聴いてもらって満足して帰ってもらえたらと思いますし、僕もそれ以上に満足して帰ろうと思います」と、自作ボカロ曲の「アマツキツネ」と「SnowMix♪」を披露。心の赴くままに鍵盤に指を走らせ、音を客席に届けていく。
まらしぃ
セットリストは大まかなブロック分けがされていて、ボカロ曲ブロックでは、「千本桜」を皮切りに、「magnet」「地球最後の告白を」を披露。いつもの彼のライブであれば、「千本桜」は、まらしぃのピアノに合わせて観客が手拍子をし、コミュニケーションを取るように演奏されるのだが、この日は手拍子なし。その代わり、まらしぃが情感豊かに奏でていく音に、全オーディエンスが神経を集中させ、ステージを食い入るように見つめていた。続くアニソンブロックでは、キタニタツヤ「青のすみか」、YOASOBI「アイドル」と、2023年に話題を集めた2曲をチョイス。さらに、まらしぃがキーピアニストとして参加している、クラシック音楽をモチーフにしたメディアミックス作品『takt op.』の楽曲も演奏された。ショパンの「幻想即興曲」を華麗ながらも重厚に弾き上げると、5曲をメドレーで披露。盛り上がりを何ヵ所か設けつつも、滑らかに曲を繋げていくという展開になっていて、弾き終えたまらしぃは「正直に言って、ここが今日一番緊張した(笑)」と安堵の表情を浮かべていた。
まらしぃ
続いて、まらしぃの自作曲ブロックへ。鶴をイメージして制作された優雅で幻想的な「tadu」や、儚げな旋律を奏でた「メロウライト」、そして、今回のツアーのために制作された「KAGUYA」が届けられた。まらしぃの話によると、今回のツアーは演出を設けない予定だったのだが、「光っているものがすごく好きなので(笑)、ちょっとだけ賑やかしてほしい」と要望をしたそう。それもあって、ステージには竹の切り株の形をしたライトが設置されていたのだが、「KAGUYA」はそこからイメージを膨らませて作っていたとのこと。ときに激しくスピーディーに、ときにメランコリックにゆったりと音を紡いでいき、客席を魅了していた。
まらしぃ
そこから東方Project楽曲ブロック、「僕の人生を変えてくれた、本当に大切な曲」と、まらしぃがピアノを再開するきっかけとなった「ネイティブフェイス」へ。力強く、ダイナミックに鍵盤を叩くその姿と音色から、彼の思いを一際強く感じさせる熱演に、客席からは惜しみない拍手が送られていた。
「こうやって自分の人生を変えてくれたゲームの曲とか、ボーカロイド曲とかアニメの曲とかオリジナル曲とか、自分が好きで弾いていたら、みなさんの目の前でも弾かせてもらえるようになっていて、気付いたら15年経っていたという感じなんですけども。それが今日みなさんに聴いてもらえた、繋がれたことが嬉しいです」と話すまらしぃ。そして、次が最後の曲であることを告げると、「えー!」と観客が残念そうな声をあげる。
まらしぃ
アンコールでは、会場にいる誕生日の観客を祝う恒例の「Happy Birthday to You」も。サントリーホールという特別な空間でも、いつものまらしぃのステージをしっかりと繰り広げていた。
「2024年は、チャレンジというとかっこつけた表現になってしまうけど、新しいこともやっていきつつ、ピアノを聴いてもらうという地に足をつけた活動もして、去年よりもっとワクワクする1年にしたいなと思っています」と、今年の抱負を語り、名残惜しそうにラストナンバーを披露。温かく、柔らかな余韻を残して2024年初ステージを締め括った。
今回のツアーは、当初は今年1月で閉幕の予定だったものの、上海、台北公演を含んだ全7会場での追加公演が決定。彼のピアノを生音で浴びることができる貴重な機会を、ぜひとも多くの方達に体感していただきたい。

取材・文=山口哲生 撮影=伊東裕太
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