『印象派 モネからアメリカへ ウス
ター美術館所蔵』鈴鹿央士インタビュ
ー 一瞬を切り取る印象派に共感する
表現者としての想い

俳優・モデルとして活躍する鈴鹿央士が、『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』のオフィシャルサポーターに就任した。2024年1月27日(土)から4月7日(日)まで東京都美術館(東京・上野公園)にて開催される本展は、印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる構成となっており、アメリカ・ボストン近郊に位置するウスター美術館より、ほとんどが初来日となるコレクションがお披露目される。

オフィシャルサポーターのほか音声ガイドのスペシャルトラックのナレーターも務める鈴鹿へのインタビューでは、印象派の作品への想いや、本展への期待、さらには印象派について知識を深めていく中で気づいた自身との共通点まで、ゆっくりと丁寧に語ってくれた。
作品を眺めながらストーリーを聴いてほしい
――鈴鹿さんはオフィシャルサポーターならびに音声ガイドのスペシャルトラックのナレーターに初挑戦されました。普段の俳優業とは勝手が違いましたか?
そうですね。俳優の仕事は映像なので顔や体も映りますけど、今回は声だけを媒介するので、その難しさはあったかなと思います。けど、ずっと楽しく臨めました! 聴いてくださる皆さんと、いかに一緒に楽しめるかにこだわって録りました。音声ガイドでは僕からクイズを出題するパートもあるので、そちらも楽しんでいただきたいです。
――収録をされている中で、特に印象に残っているセリフやストーリーはありましたか?
印象派を日本に持ち込む上でキーパーソンとなった黒田清輝さんという日本人の方がいらして、黒田さんの言葉がすごく印象に残りました。黒田さんは「印象派というものがほかの土地にいったとき、その土地のものになる」とおっしゃっていて。つまり、フランスで生まれた印象派がアメリカに行ったら、それはもうアメリカの印象派というものになる、という意味なんです。その考えは今にも通じることだな、と思いました。
僕はいろいろと無駄なことを考えるのが好きなんですけど……(笑)、例えば「お寿司」なら、日本人からしたらシャリの上にネタが乗っているという認識だけど、アメリカに行ったらカリフォルニアロールとかがお寿司になりますよね。現地の人からすれば「これがお寿司」となっているわけで。僕らもそういうものを受け入れる心が今は大事なんだろうなと、黒田さんの言葉から感じました。ぜひ作品を眺めながら、イヤホンでストーリーを聴いてもらいたいです。
――鈴鹿さんが注目している作品、実際に見るのを楽しみにしている作品は何ですか?
デウィット・パーシャルさんのグランドキャニオンの作品です! 全体的にすごく明るい印象を受け取りました。太陽の光が淡いピンクやオレンジで描かれていて、朝なのか夕方なのかわからないのもすごく魅力で。この絵にまつわるエピソードもすごく好きなんです。パーシャルさんは「絵を描いてください」と言われて、グランドキャニオンまで目隠しをされて連れて行かれたそうなんです。なんでそんなことされたんだろうとは思うけど(笑)、ついて目隠しをパッと取られて見た景色が、その絵なんだそうです。感動して何時間もいたと聞きました。すごく素敵な絵なので見たいです。
僕、実はアメリカに行ったことがないんです。ずっと行きたいと思っていたんですけど、なかなか行ける機会がなくて。でも、今回関わることができましたし、ウスター美術館の場所やどんな成り立ちなのかも調べてすごく興味が湧いたので、いつか現地にも行ってみたいです。
――鈴鹿さんが調べていった中で、ウスター美術館とはどんな場所という印象ですか?
音声ガイドの中でもお伝えしていることなんですが、ウスター美術館の展示物がどうやって集まったか、どうやって美術館ができたかは、その地域の人がひとつになって作ったそうなんです。本当に地域と密着した美術館だと聞きました。そこに足を運ぶって、言ったら公民館ぐらいの気軽さかもしれないな、と思ったんです。ウスター美術館は、きっと身近に美術やアートに触れることができる美術館なんだろうな、というイメージです。
一瞬を切り取る印象派に興味を惹かれた
――印象派に関しては、もともと持っていたイメージから、お勉強をして実際音声ガイドも終えた今では、印象の変化もありましたか?
はい。印象派と言うと、最初は「モネ、睡蓮」くらいの知識しかありませんでした。あとは何となく淡い絵……みたいなイメージで。勉強していく中で、特に歴史的背景に興味を持ちました。それまでの風景画は、宗教で取り上げられたり、歴史上何かが起こった場所を下書きして、アトリエに持って帰ってから描くという手法だったんです。けれど、印象派はその場で見た色や景色をありのままで描くんですよね。一瞬を切り取るということが、すごく素敵だなと思いました。
当時、粗いタッチで描くものは評価されなかったらしいんです。どれだけきれいに描くかが重要視されていたけれど、そのときの一瞬の自然――草の色は緑と決めつけずに、いろいろな色がその一瞬一瞬にあるよ――というものを込めた絵なわけですよね。社会に対してその絵を突きつけることは、すごく勇気がいるものだったと想像します。結果、印象派は世界中に広がっていったわけで、それくらい力と勢いがあったなんてすごい衝撃だったんだろうなと。そうした歴史にもすごく興味を惹かれました。
――鈴鹿さんご自身に照らし合わせても、共感したり発見したところもありましたか?
ありました! 僕はカメラで風景を撮るのが好きなんですけど、フィルムで撮って現像して振り返ってみると、そのときのその場所の空気感、においとか温度とかまで思い出すんです。きれいにきれいにその場所を切り取るんじゃなくて、そのときの自分の感覚も含めてその1枚を大切にする、みたいなことが何となくあって。一瞬を切り取るところは「少しだけ通じるのかな? ああ、こんなに面白いんだなあ」と共感しました。
モネの「睡蓮」は連作じゃないですか。同じ場所ではあるけれど、色も全然違いますし、いろいろな水面の映り方をされてもいて。「ああ、写真と似ているのかな」と改めて思いました。
――普段、表現者としての立場もあるわけですが、演技や表現においてもつながりを感じたりも?
僕らはカメラの前に立ってお芝居をする側で、その一瞬を切り取るのはカメラマンさんなわけですよね。最近カメラマンさんとしゃべっていたときに、僕が一瞬ぱっと目線を誰かに向けたとき、カメラマンさんはそれを見てくれていたんです。「そういうのを切り取っていくのが僕らの仕事だから、いろいろなことを考えてやってみて」と言われたんですね。そうやって目線をぱっと動かすその瞬間さえも意味につながるから、「一瞬」という言葉もつながるところかもしれないです。
一人暮らしを始めたらやりたいと思っていたこと
――最後に、ウスター美術館が積極的に印象派作品を収集していることにちなんで……鈴鹿さんも何か収集しているものはありますか?
今はレコードです。好きなアーティストのアルバムを買ったり、レコード屋さんに行ってジャケ買いしたり、ついつい買っていますね。
――何かきっかけはあったのですか?
上京してきたとき、最初は事務所の男3人でシェアハウスをしていたんです。そのとき住んでいた部屋が4.5畳で、レコードを置くような場所もなかったんですね。その中のひとりと「一人暮らしを始めたら、レコード置きたいよね……!」という夢の話をずっとしていて(笑)。いざ一人暮らしが始まったので、レコードを置いてみたというのがきっかけです。
今は配信やデータもありますけど、好きな音楽やアーティストのアルバムを形としてちゃんと自分の部屋に置いておきたいというか、リスペクト的な意味も含めて置いておこうと思って始めたのもあります。
鈴鹿央士がオフィシャルサポーターを務める『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』は、2024年1月27日(土)から4月7日(日)まで、東京都美術館にて開催。その後、各地へと巡回予定。

取材、文=赤山恭子 撮影=大橋祐希

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