セントラル愛知交響楽団、角田鋼亮が
音楽監督に就任 & 2024年度主催公演
ラインナップを発表

2023年4月に創立40周年を迎えたセントラル愛知交響楽団の常任指揮者 角田鋼亮が、2024年のシーズンから音楽監督に就任する。2024度主催公演ラインナップの発表と合わせて、就任披露の記者発表会が11月6日(月)に名古屋市内で行われた。会見には角田鋼亮のほか、理事長の山田貞夫、副理事長の中西政男、常務理事の瀬戸和夫が同席した。
常務理事の瀬戸和夫は、角田の音楽監督就任に至る経緯を説明。「角田さんとは2005年の初共演の後も共演を重ね、関係を深めていき、2019年には常任指揮者に就任していただきました。厳しいコロナ禍を楽員、事務局一体となって乗り越え、今年が常任指揮者5年目のシーズンです。楽員との意思の疎通がしっかり図れていて、楽団のアンサンブル能力が格段に高められました。そういった実績を受けて、来シーズンから音楽監督に就任していただき、楽団の演奏技術だけでなく、集客やマーケティング、経営的な事にも関わっていただき、セントラル愛知ならではのパフォーマンスをより発揮していただこうと思っています」

常務理事の瀬戸和夫氏

挨拶に立った常任指揮者 角田鋼亮は力強く語った。「セントラル愛知とは、長い間のお付き合いの中で、音楽的な関係を深めて来ました。これまでも、進化し続けるアンサンブルで幅広いプログラムを演奏することが出来、個人的にはとても充実感がありましたが、音楽監督へ就任となり、今まで以上に楽団の魅力を高める事を期待されていると感じています。ちょうど2024年度からは、しらかわホールから愛知県芸術劇場コンサートホールに本拠地を移す事となり、そのテーマを『新しい景色、新しい音世界』と定めたところでした。私自身も新たな立場となり、楽員やファンの皆さんと、どんな新しい景色が見られるのか楽しみにしています。色々と変わりゆくセントラル愛知交響楽団にご期待ください」
以前から愛知県芸術劇場コンサートホールで定期演奏会を開催して来た名古屋フィルに加え、2024年シーズンからセントラル愛知交響楽団と愛知室内オーケストラの本拠地も愛知県芸術劇場コンサートホールになることで、名古屋のプロオーケストラが同じ会場で競合する。角田は「オーケストラの活動の差別化を図る事も大事ですが、まず私たちとして、やらなければいけない事は、オーケストラの編成の拡充です。現在しらかわホールでは10型で演奏していますが、12型を基本の形にしなくてはなりません。演奏する作品によっては14型も必要かもしれません。そのサイズアップのために、現在団員のオーディションを行い、同時に契約団員も増やそうと動き始めています。また、客席数が700席から1800席になるので、定期会員を増やす事も急務です。私も率先して企業や行政をはじめ、お客様の元へ出向いて行く覚悟です。音楽面、演奏面では、プログラムやサウンドでオーケストラの特色を出し、SNSを駆使して楽団の魅力を幅広く伝えていきたいと思っています。」と語った。
以下、発表会で語られたポイントをQ&A形式でまとめてみた。
――音楽監督の任期は何年ですか。
角田鋼亮:5年です。これまではコロナ禍での対応もあり、どちらかと言うと目の前の演奏会一つ一つにフォーカスして来ましたが、今後は中長期的なビジョンも持ちながら、オーケストラの運営にも携わっていこうと思っています。
――主催公演の聴きどころを教えてください。
角田:本拠地が愛知県芸術劇場に移すという事で、定期演奏会のテーマを『新しい景色。新しい音世界』と決めました。定期演奏会は全7回で、その内4回を私が指揮します。残りの3回を大友直人さん、名誉音楽監督のレオシュ・スワロフスキーさん、広上淳一さんに指揮していただきます。以下、簡単に7回のポイントを説明します。
シーズン初回の第203回定期は、『新しい音色』として、既存の作品の独奏楽器を変えたもの、あるいは管弦楽編曲版を取り上げ、その新たな音の出会いを楽しんで頂こうと思います。メインとなるのは、今年のテーマでもあったブラームスの、ピアノ四重奏曲第1番をシェーンベルクが管弦楽版に編曲した作品です。ベートーヴェンのソリストは人気と実力を兼ね備えた愛知県ご出身のピアニスト務川慧悟さんです。第204回から第206回定期までは、作曲家の国ごとに回をまとめました。第204回は2023年の熱演が好評だった大友直人さん、私たちにいつも感動を与えて下さる辻彩奈さんに御登壇頂き、お二人が得意とするシベリウスのヴァイオリン協奏曲と交響曲第2番をお聴き頂きます。第205回は、久し振りの登場となる名誉音楽監督のスワロフスキーさんに、お国モノのドヴォルザークとスメタナを指揮していただきます。2024年はスメタナ生誕200年のメモリアルイヤーでもありますね。
――9月の第206回定期、アーサー・ブリス「色彩交響曲」は、あまり馴染みの無い曲ですね。
角田:年間テーマの『景色』という言葉には、「色」という文字が含まれており、様々な音による色を感じて頂きたいと思い、年間全曲の中で真っ先に頭に浮かんだのがこの作品です。この曲は、楽章ごとテーマカラーが設定されています。若手実力派チェリスト上野通明さんイチオシの作品、ウォルトンのチェロ協奏曲、他と合わせてお楽しみください。第207回と第208回は「夢」の情景がテーマになります。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」全曲では、素晴らしいオーケストレーションによる情景と色彩をお楽しみ下さい。広上淳一さんの指揮のベルリオーズの「幻想交響曲」も必聴です。神尾真由子さん独奏のチャイコフスキーの協奏曲もどんな世界が広がるのか楽しみです。そしてシーズン最後を飾る第209回は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」をメインに、前半に3曲が並ぶ豪華なプログラムです。「新世界より」では新たにドヴォルザークの自筆譜を読み直し、シン・新世界を提示できたらと思っています。前半は、愛知県ご出身の若手作曲家中瀬絢音さんに委嘱した作品の世界初演から始まります。そしてピグドンの「ブルー・カテドラル」演奏した後、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を若手ジャズピアニスト奥田弦さんのソロでお届けします。この回もブルーという色がタイトルに入っています。
――定期演奏会以外にも主催公演は沢山ありますね。来年から始まるのが「オペラハイライトシリーズ」です。
常務理事 瀬戸和夫:コンサート前半では名作オペラをハイライトで上演して、後半は豪華ソリストによるアリアをお聴きいただきます。来年度はプッチーニ『トスカ』、ヴェルディ『椿姫』、ビゼー『カルメン』と、3回実施します。この内、『トスカ』と『椿姫』は角田さんが指揮をし、『カルメン』は特別客演指揮者の松尾葉子さんが指揮をします。ソリストは二期会所属の素晴らしい歌手を揃えました。ご期待ください。
――「超!有名曲シリーズ」と「Wコンチェルトシリーズ」は人気で、引き続き来シーズンも行われます。
瀬戸:来シーズン、「超!有名曲シリーズ」は4回実施します。このシリーズを指揮するのは特別客演指揮者の松尾葉子さん。各公演を6月「イギリス」、7月「アメリカ」、10月「スペイン」、2025年1月「ウィーン」と題して、その国に所縁の有る作品をお聴き頂きます。現在決っているのは、「イギリス」ではホルストの組曲『惑星』、「アメリカ」ではガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」(ピアノ/外山啓介)、「スペイン」ではロドリーゴ「アランフェス協奏曲」(ギター/村治佳織)、「ウィーン」ではヨハン・シュトラウス二世「美しき青きドナウ」です。
「Wコンチェルトシリーズ」は一人の演奏家が2曲の協奏曲を演奏するシリーズで、3回実施します。齊藤一郎さん(首席客演指揮者)の指揮で松田華音さんはラフマニノフのピアノ協奏曲の第2番と第4番と、成田達輝さんはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチの第1番。小松長正さん(桂冠指揮者)の指揮で金子三勇士さんにはショパンのピアノ協奏曲第1番とリストの『死と舞踏』を演奏して頂きます。どちらも会場は愛知県芸術劇場コンサートホールです。
――このほかにも「第九」をはじめとした演奏会が数多くあります。
瀬戸:主催公演と依頼公演なども合わせて100公演程の予定です。実は来シーズン、9月の第206回定期演奏会以降、開演時間を従来の平日の夜では無く、土、日の昼間に変更します。(4月の第203回定期は14:30開演)。ファンの皆様の声を精査して、そうする事にしました。なので「超!有名曲シリーズ」、「Wコンチェルトシリーズ」に加え、新しく始まる「オペラハイライトシリーズ」も、セントラル愛知交響楽団の演奏会は土、日の昼間に愛知県芸術劇場コンサートホールで行われると思って頂けるとありがたいです。
――「セントラル愛知の演奏会は、愛知県芸劇コンサートホールで土、日のマチネ!」で固定されると、ファンの皆様には分かりやすいですね。それでは角田さん、最後にメッセージをお願いします。
角田:本拠地を愛知県芸術劇場コンサートホールに替え、思いを新たにスタートするセントラル愛知交響楽団にご期待ください。私たちは年間のテーマにこだわってプログラミングしているので、続けて聴いて頂けるとまた見えてくる新しい世界があるのではないかと思います。ここ数年はオペラやバレエ公演などにも積極的に取り組んでいます。そこで求めれる柔軟性を持ちながらも、私たちの音はこれといったものも探し続けています。私たちの音、音楽の変化を楽しみながら長い目で見守って頂けますよう、努力を続けたいと思います。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
取材・文 = 磯島浩彰

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