成長した神戸セーラーボーイズ、エー
ステの劇中劇を好演ーー定期公演vol
.1『ロミオとジュリアス』『Water m
e! ~我らが水を求めて~』

神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.1『ロミオとジュリアス』『Water me! 〜我らが⽔を求めて〜』

2023.11.17(Fri)〜11.26(SUN)AiiA 2.5 Theater Kobe
11月17日(金)に、AiiA 2.5 Theater Kobeにて神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)の定期公演vol.1 『ロミオとジュリアス』『Water me! ~我らが水を求めて~』が開幕した。神戸セラボは2023年4月に結成された、関西発の10人組ティーンエイジャー演劇ユニットで6月、8月と等身大の自分たちを投影した「SF(セミフィクション)公演」を上演してきた。今回は彼らの活動のもうひとつの軸となる、著名な物語を神戸セラボ風にアレンジした「定期公演」が初めて行われた。結論から言うと、10人の成長ぶりは素晴らしく、ステージに立つ者としての意識がはっきりと伝わる上に、エンタメ性も強く、誰もが楽しめるステージが出来上がっていた。これまで取り組んでいた歌と合唱、ダンス、お芝居に加え、今回は殺陣やコメディにも初挑戦。稽古前は不安も口にしていたメンバーだが、堂々とステージに立つ彼らからは自信がみなぎっていた。
迫力ある殺陣を自分のものにする
『ロミオとジュリアス』と『Water me! ~我らが水を求めて~』は、戯曲 MANKAI STAGE『A3!』~SPRING & SUMMER 2018~の劇中劇として上演されたもの。そこに神戸セラボ独自のアレンジを加えた台本での上演となる。
演出を手がけるのは、MANKAI STAGE『A3!』(以下、エーステ)にも長年関わってきた古谷大和。さらに脚本は松崎史也、音楽は音楽ユニット・vagueのYu、振付は日本のダンスパフォーマンス集団・梅棒の楢木和也、アクションは加藤学と、エーステに携わるプロフェッショナルたちが集結した。
『ロミオとジュリアス』
第1部は『ロミオとジュリアス』。シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』をベースに、男同士の友情を描いたストーリーだ。出演する中城碧月(演:中川月碧)、塚本晴人(塚木芭琉)、奥田頼(奥村頼斗)、中田颯真(田中幸真)、崎フランツ(崎元リスト)が客席から登場。中世ヨーロッパ風の衣装に身を包み、真っ赤な緞帳を見つめる。
BGMが流れるとメンバーはステージに上がり、作品の説明と、それぞれが稽古を通して彼らが感じたことや意気込みを述べる。要注目なのは、ロミオを演じるのは中城、ジュリアスを演じるのは塚本、というように「セミフィクション」の役の彼らが、さらに役を演じるという点だ。
座長をつとめた中城は「座長として、皆をどうやってまとめていこうかすごく悩みました。自分のスキルや内面と向き合う時間も増えて、苦しいことも多かったですが、最後まで悩んでもがいて、ようやくこの場に立てていると思います」と堂々と挨拶した。
ジュリアス:塚本晴人 役 / 塚木芭琉とロミオ:中城碧月 役 / 中川月碧
物語は、ロザラインという女性にそれぞれ恋をしたロミオ(中城)とジュリアス(塚本)がいきなり恋に敗れるところから始まる。同じ女性に恋をして、同時に振られる2人はすっかり意気投合。しかし2人はモンタギュー家とキャピュレット家という、敵対する家同士の出自だった。ロミオの幼馴染であるマキューシオ(中田)と、ジュリアスの乳兄弟であるティボルト(奥田)は、2人が仲良くすることが許せず、度々衝突。しかしどうしても親友ジュリアスと旅に出たいロミオは、ロレンス神父(崎)に相談するーー。
マキューシオ:中田颯真 役 / 田中幸真、ロレンス神父:崎 フランツ 役 / 崎元リスト、ティボルト:奥田 頼 役 / 奥村頼斗
第1部で見られる殺陣やダイナミックなダンスは、これまでの神戸セラボのフレッシュで可愛らしいイメージを吹き飛ばした。1人ひとりの演技が際立ち、感情をあらわにするシーンや剣を抜く仕草、視線の運び方、声量、堂々とした立ち姿。以前の彼らとは比べ物にならないくらい、段違いにレベルアップしていた。大きく動く中城、塚本、中田、奥田の演技と、静の演技を見せる崎の対比は要注目。コンテンポラリーダンスやミュージカルの要素も盛り込まれ、物語の世界観をより広げていた。
コメディとラップにも初挑戦
『Water me! ~我らが水を求めて~』
第2部は『Water me! ~我らが水を求めて~』。第1部と同様に、明石田侑(明石侑成)、石川幸斗(石原月斗)、摂津士郎(津山晄士朗)、細貝奏(細見奏仁)、大橋虎ノ介(髙橋龍ノ介)が客席から登場。彼らは中世アラビアの煌びやかな衣装に身を包む。
『Water me! ~我らが水を求めて~』は、イスラム世界の説話集『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』をモチーフに、アリババがおとぎ話の主人公たちを巻き込み、オアシスを探しに行くストーリー。
座長の明石田は「僕は今回アリババという大役をいただいて、最初に聞いた時は嬉しくて楽しくて仕方ありませんでした。でも、お芝居の経験としては僕が1番少なくて、稽古が始まってからは皆の足を引っ張ってるんじゃないかと不安になりました。座長として自分は足りなかったと思います。でもこの物語の登場人物のように、皆がいつも明るく、時には厳しく励ましてくれて、少しずつ自信を持つことができました。この演目だったからこそ、僕は成長できたのかなと思います」と顔を輝かせた。
シェヘラザード:摂津士郎 役 / 津山晄士朗、アリババ:明石田 侑 役 / 明石侑成
億万長者を夢見るアリババ(明石田)は、幼馴染のシェヘラザード(摂津)から、この世のどこかにあるオアシスの存在を聞き、幻の楽園探しの旅に出る。シェヘラザードの言葉を手がかりに、洞窟で魔法のランプを見つけたアリババとアラジン(細貝)はランプの魔人(石川)を呼び出し、願いをえてもらおうとする。次にシンドバッド(大橋)の元を訪れたアリババは、一体何を魔人に願うのかーー。
アラジン:細貝 奏 役 / 細見奏仁、アリババ:明石田 侑 役 / 明石侑成
序盤からダンスと歌が満載の第2部は、テンポ感も良くサクサクと進むストーリー展開が気持ち良い。石川のアクロバットも随所に盛り込まれ、華やかな世界観が気分を高揚させてくれた。特にこれまでと全く違う役柄に挑んだ細貝のラップや、ストーリーテラーを担った摂津の演技にも注目したい。作品全体を通してクスッと笑えるコミカルな演技も、彼らにとっては新境地だろう。
アラジン:細貝 奏 役 / 細見奏仁、ランプの魔人:石川幸斗 役 / 石原月斗、シンドバッド:大橋⻁ノ介 役 / 髙橋龍ノ介
どちらの演目もチームワークが感じられる仕上がりで、それぞれの得意分野はこれまで以上に活かしながら、新たな一面を引き出す挑戦も取り入れて、可能性を広げていた。個々の成長ぶりがとにかく素晴らしく、きっと必死に食らいついたのだろうなと、彼らの努力にも思いを馳せた。また、座長を中心に、各ユニットでも絆が生まれているのだろうなということが感じられる良い空気感だった。
力強いハーモニーが会場に響き渡る
神戸セーラーボーイズ
第3部はライブパート。『ロミオとジュリアス』チームが、先にいつもの神戸セラボの制服を着て登場し、トークで楽しませながら「『いろいろ ドルフェス2023』での東京遠征でお客さんにやってもらって嬉しかった」として、名前のコール&レスポンスを練習する。やがて全員揃って自己紹介。客席とのコミュニケーションも慣れてきた10人は、皆キラキラした表情でステージを楽しんでいた。
神戸セーラーボーイズ
スタンダードな合唱曲「心の瞳」に続いては、細貝がグランドピアノで伴奏を担った「宇宙戦艦ヤマト」、そこから「ハイスクールララバイ」〜「サウスポー」〜「学園天国」と、今Z世代の中でリバイバル・ヒットしている昭和歌謡メドレーで盛り上げる。そして最後はオリジナル曲「ボクラカラー」を、元気いっぱいに披露した。歌唱力も格段に上がり、歌唱中のフォーメーションにもグッと幅が出た。フレッシュで美しい大橋と崎のソプラノの歌声はやはり、存在感を放っていた。
たった数ヶ月で見違えるほどの急成長を遂げた神戸セーラーボーイズ。これまで神戸セラボを見守り、応援してきた人たちはもちろん、初めて神戸セラボを観るという人も楽しめる今回の定期公演vol.1となっている。多感な10代、少し目を離すと置いていかれるほどの目まぐるしい変化と成長スピードの中で生きている彼らの全力を、目撃しに来てみてはいかがだろう。
演出を手掛ける古谷大和、全公演のアフタートークに登場
なお、全公演の終演後、演出の古谷大和がMCとなり、神戸セーラーボーイズメンバーとともにスペシャルゲストを招いてアフタートークを行う。スペシャルゲストにはエーステ出演俳優や、脚本や音楽を担当した制作陣も登壇する。9月の『いろいろ ドルフェス 2023』をはじめ、他のアイドルや先輩俳優との共演が彼らの刺激になっていることは間違いない。彼らの交流を目にできる貴重なチャンスだ。詳しくは神戸セラボのHPやSNSをチェックしてほしい。
客席降りも
さらに12月22日(金)~12月25日(月)には、次回SF(セミフィクション)公演『Boys✕Voice 312』がAiiA 2.5 Theater Kobeで行われることが決定している。ゲストには山田ジェームス武と川上将大が出演する。
神戸セーラーボーイズ定期公演vol.1『ロミオとジュリアス』『Water me! ~我らが水を求めて~』は、神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeで11月26日(日)まで上演中。
取材・文=久保田瑛理 撮影=高村直希

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