L→R ほりほり(Dr)、さわ(Ba&Vo)、ひらい(Gu&Vo)

L→R ほりほり(Dr)、さわ(Ba&Vo)、ひらい(Gu&Vo)

【LONGMAN インタビュー】
希望の中の絶望、絶望の中の希望、
それをアルバムの中で表したかった

「spiral」があったからこそ、
今回のアルバムができたという
気持ちは大きい

10月4日のいろいろな人の日記というアルバムのコンセプトは、さわさんの発案だったそうですね?

さわ
はい。SNSを見ていたら、同じタイミングでめちゃめちゃハッピーな人もいるし、めちゃめちゃどん底の人もいるし、いろいろな人がいると思ったんです。それをアルバムでも表せたら、最後まで飽きずにずっと楽しめる一枚になるんじゃないかと提案したら通りました。
ひらい
その日が楽しい人も、もしかしたら次の日は悲しいことがあるかもしれない。その日、悲しい人も次の日は元気になっているかもしれない。ほんまにいろいろな人がいるというのは、勇気づけられるきっかけになるんじゃないかと思って。希望の中の絶望、絶望の中の希望、そういうことをアルバムの中で表したかったというのがあります。
さわ
この世の終わりかと思うくらい落ち込んでいても、長い人生の中で見たらちょっとの時間だと思うんです。そう思ったら気持ちも少しは楽になる。そんな想いがあったので、このコンセプトでアルバムが完成できて良かったです。

楽しかったとおっしゃっていましたから、歌詞は書きやすかったということですか?

ひらい
これまでで一番書きやすかったです。

各曲のテーマやストーリーはどんなところから見つけたのですか?

ひらい
それこそ、いろいろな人のSNSを見たり、さわちゃんに提案してもらったり、とにかくいろいろな人を書きたかったんです。
さわ
「Red Scarf」を書く時はちょっと苦戦していたよね?
ひらい
重くなりすぎないようにね。

時事ネタですよね?

ひらい
そうですね。毎日世界のニュースを観ていると、こういう想いになりますよ。
ほりほり
ひらいさんの人生観としては、もともと持っているよね。
ひらい
そうですね。先祖たちの犠牲の上で僕らは生きているということはずっと思っていて、その意味でもこういうテーマで書きたかったんです。

その「Red Scarf」もサウンド面では新しい要素が加えられていますね。

ひらい
ずっとシンセが鳴っていたり、歌詞が男女の手紙のやりとりになっているので、さわちゃんと僕の歌も分かりやすくオクターブでハモっていたりするのが新しい要素ですね。今までは3度のハモりが多かったんですけど、最後のサビはふたりの気持ちが同じだということを物語るためにふたりで一緒に歌いました。そんなふうにストーリー仕立てで作ってみたんです。

いろいろな人の日記という意味では、「KOSSETSU!」でほりほりさんが足を骨折したことをネタにされてしまいました。

ほりほり
そうですね(笑)。これは“元気な状態が当たり前じゃないんだよ。だから、気をつけろよ”っていうメッセージソングです。軽い感じの曲なんですけど、何があるか分からないから備えようっていう。実際、めちゃくちゃ大変だったんですよ。骨折して。
ひらい
それを“大変だったね”で終わらせたくなかったんです(笑)。

2番を歌っているのは、ほりほりさんですよね?

ほりほり
そうなんですよ! 初めてヴォーカルを担当しました。それが自分の骨折の歌だなんて複雑ですよね。ライヴのことを考えると気が気じゃないです(笑)。

ライヴでの演奏を楽しみにしています(笑)。「I LOVE HIS SONG I COULD DIE」についても聞かせてください。この曲もめっちゃ好きです! 先日のライヴで聴いて、改めていい曲だと思いました。

ほりほり
この曲はLONGMANで初めて16ビートを入れたんですよ。このテンポで16ビートにすると疾走感が出るんです。メロディーラインやコードは、これまでの僕たちらしいものなんですけど、16ビートが入っていることで他の曲とは印象が違うものになったと思います。

そうか。LONGMANらしさはあるのに新しさも感じられると思ったのですが、16ビートというところが違うんですね。さわさんが“Oh Oh Oh”と入れるコーラスもいいですね。

ひらい
いいですよね!

あれがあるのとないのとでは曲の印象も全然違うと思います。

トレモロピッキングからチョーギングをするこの曲のギターソロは、きっちりとフレーズを作り上げたソロを弾くことが多いひらいさんが感情に任せて弾いているように感じるところもいいです。
ひらい
母ちゃんに“ずれてない?”と言われましたけど、あえて直さなかったですね。
ほりほり
シビアやなー。
ひらい
“確かにそうなんだけど、そういうギターソロやから!”って。
ほりほり
母ちゃんに言われるの嫌やな(笑)。

(笑)。そんなふうに聴きどころがいろいろとあるのですが、LONGMANらしいメロディックパンクナンバー、それこそルーツに立ち返りながら磨き上げたという印象がありました。

ひらい
今回は“ポップパンクをメインストリームに!”というスローガンのもと、前衛的だけど大衆との橋渡しになるようなアルバムにしたいと思っていました。コロナ禍でパンクもちょっと下火になったと思うんです。でも、僕らはやっぱりポップパンクが好きだし、届けるべき人はもっといるんじゃないかと思っているから、そこに届くような新しいパンクな作品を作りたいという想いが全体のテーマとしてありましたね。

「Chei」にはラップも出てきますね。

ひらい
SUM41とか、10-FEETとか、Zebraheadとか、ポップパンクでもちょっとミクスチャーが入っているバンドが昔から好きなんですよ。やっていても楽しいし、聴いていても飽きないので、ラップっぽいアプローチは結構入れますね。

「Break Up」「Time is Life」のようなマイナー調のエモい曲も聴きどころです。

ひらい
マイナー調の曲は英詞でやると勝手にルールを決めちゃっていたんですけど、「Break Up」はマイナー調の曲で初めて日本語に挑戦しました。ラブソングなのに曲はメロディックハードコアって、日本ではあんまりなかったと思うんですよ。だから、どんなふうに受け入れられるか楽しみです。

架空の人のことだから、ラブソングでも日本語で書けたと?

ひらい
書けましたね。架空だと何でも書けるので楽しいですね(笑)。

では、みなさんの推し曲を教えてもらえますか?

ひらい
何だろうな? 全曲いいからなぁ。その中から1曲選ぶとしたら、上京してきた身としては「spiral」が刺さっていますね。勇気を出さなきゃ仕方ない、強くならなきゃ仕方ないという歌詞を、自分に言い聞かせるように今は歌っています。メロディーもグッとくるものを作れたので、演奏していても楽しいし、新境地に行けた気もしていて。「spiral」があったからこそ、今回のアルバムができたという気持ちが大きいです。
さわ
私は「Red Scarf」です。この曲で男女ツインヴォーカルの強みを最大限に引き出せたと思います。1オクターブ上で歌うことによって、ちゃんと歌詞の中の夫と妻の人物像が表せたのが良かったです。映画を観終わったあとみたいな満足感を曲を聴いて味わえるところも好きですね。実は歌詞に感情移入しすぎたせいで、歌っていてつらかったんです。レコーディングの時に“しんどそうすぎ!”ってひらいさんに言われました(笑)。
ひらい
あくまでも希望はある曲なので、暗すぎると違うと思ったんです。最終的に歌詞の中のふたりには再会してほしいから、“希望を感じられる歌い方でお願いします。その歌い方だとだと会えなさそうだから(笑)”って言いました。
ほりほり
歌録りにめっちゃ時間をかけたよね。
ひらい
今回は歌だけ愛媛で録ったんです。自分らだけだったので、時間を気にせず納得いくまで録れたんですよ。なので、歌だけで100時間超えでした。
さわ
おかげでそれぞれに本気で納得できるものができたと思います。その中でも一番時間をかけて、いいテイクが録れたのが「Red Scarf」なんです。

ほりほりさんは?

ほりほり
今回のドラムの音作りでは、マシンガン・ケリーとも一緒にやっているBlink-182のトラヴィス・バーカーをイメージしたんです。それがかなり良かったですね。ドラムが前に出ることによって、迫力がすごく増して。曲を聴いたら身体でノレるアルバムになったという印象があります。
ひらい
で、どの曲なん?(笑)
ほりほり
「Festa」…いや、全体的にそういう音作りだから、「Festa」以外にもあるけど。
さわ
「Break Up」のドラム、めっちゃカッコ良いよね。
ひらい
一番トラヴィスっぽい。
ほりほり
そうかも。「Break Up」にします! 今までは歌を前に出すためにドラムは前に出ないほうがLONGMANのカラーには合うと思ってたんですけど、今作を聴いて、ドラムが前に出ても歌を邪魔するということはないというか、むしろ活きると気づけました。そういう意味でも、もう一段階上に上がれたアルバムになったと思います。ドラムがめちゃ聴こえるので、ドラマー視点でもすごく楽しい作品ですね。
さわ
曲によって音も全然違うしね。
ほりほり
スネアも曲ごとに変えています。それぞれに違うドラムの音になっているので、そういうところも楽しんでもらえたら嬉しいです。

なるほど。もちろん、ギターとベースも曲ごとに音色作りにこだわったんですよね?

ひらい
むしろレコーディングは演奏よりも音作りに時間をかけました。
ほりほり
音作りが7割、演奏が3割ぐらい?
ひらい
もっとじゃない? 9対1くらい。同期や打ち込みのドラムが入っているぶん、バンドサウンドでもちゃんと存在感が出せるように意識しました。
さわ
今回はベースの音を決める時、楽器のバランスじゃなくて、一曲一曲の主人公のイメージに合わせていったんです。そういう音作りは初めてだったので楽しかったですね。

「プロローグ」のベースがめちゃめちゃ歪んでいてカッコ良いです。

さわ
思いっきり歪ませました。主人公がギラギラした感じだったので、それを表現したかったんですよ。

《核となるものは犠牲にすんな》という歌詞も刺さります。

ひらい
ありがとうございます。自分の核となるものを捨ててまでやるべきことはないと思っているので、そのメッセージを入れさせていただきました。

それはやはり主人公の気持ちであると同時にLONGMANの気持ちでもあると?

ほりほり
主人公に代弁してもらっているんだよね。
ひらい
そうやね。今回のような歌詞の書き方をすると代弁してもらえるからいいですね(笑)。

取材:山口智男

アルバム『10/4』2023年10月4日発売 Sony Music Associated Records
    • 【初回生産限定盤】(CD+DVD)
    • AICL-4394~5
    • ¥3,800(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • AICL-4396
    • ¥3,000(税込)

ライヴ情報

『LONGMAN 2MANLIVE『寿司 2023』 ※振替公演』
11/07(火) 大阪・Music Club JANUS
w) KUZIRA
11/19(日) 愛媛・松山 WstudioRED
w) 四星球

LONGMAN プロフィール

ロングマン:四国・愛媛発の男女ツインヴォーカルパンクバンド。2012年より現在のメンバーで活動スタート。14年に1stフルアルバム『Neverland』を全国リリースし、15年8月には2ndミニアルバム『tick』発売。17年夏よりライヴ活動を休止していたが、18年に復活ライヴを行ないさまざまな大型フェスにも参戦。19年11月にTVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のEDテーマ「Wish on」でメジャーデビューを果たした。精力的にライヴ活動を続けながら、20年に1stフルアルバムを発表し、21年にミニアルバム『This is Youth』を発表。23年10月にアルバム『10/4』をリリースした。LONGMAN オフィシャルHP

「spiral」MV

「I LOVE HIS SONG I COULD DIE」
MV

「愛を信じたいんだ」MV

「ライラ」

『10/4』 Teaser

OKMusic編集部

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