INTERVIEW / Yo-SeaYo-Seaが目指した
本質的表現。自身と向き合い制作した
『Sea Of Love』 Yo-Seaが目指した本
質的表現。自身と向き合い制作した『
Sea Of Love』

沖縄出身のSSW、Yo-Seaが1stアルバム『Sea Of Love』をリリースした。
数々のクラブ・ヒットや客演/コラボレーション、そして自身名義でもEPを複数作リリースするなどして着実にキャリアを重ねてきたYo-Sea。2019年にはSpotifyが飛躍を期待する国内アーティスト『Early Noise Artist 2019』にも選出された。
2018年に「I think she is」でのデビューから数えればおよそ5年、まさにファン待望のフルレングス・アルバムとなった『Sea Of Love』。個人的に先行シングル「Moonlight」を聴いたときに感じた、より広いところへと羽ばたいていくようなポテンシャル、それはアルバム全体を通して聴くことでより強固な確信へと変わった。
今回は長い年月をかけて生み出したアルバム『Sea Of Love』の制作背景を紐解くべくYo-Seaにインタビューを敢行。制作過程で起きた心境の変化、そしてGottz、C.O.S.A.、Daichi Yamamoto、Matt Cab、そして地元の盟友・TOMi、Ketungらとのコラボレーションについて、じっくりと語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Ryo Sato(https://www.ryosato.website/)
「自分に一番期待しているのは自分自身」
――過去のインタビューを遡ってみると、2020年頃からアルバム制作の話は出てましたよね。そこからおよそ3年という月日が経ち、まさに待望のアルバム・リリースになりました。
Yo-Sea:実は制作途中の作品を一度ボツにして、イチから作り直すことにしたんです。コンセプトやリリックをもう少し大事に突き詰めたいなと思うようになって、時間をかけて制作しました。
――その心境の変化には何かきっかけがあるのでしょうか。
Yo-Sea:色々あるんですけど、敢えてひとつ挙げるとしたら、藤井風さんの作品から受けた影響が大きいです。日本語で、その人にしか出せない言葉で、リアルな感情を伝えているという点にすごく感銘を受けましたし、個人的にも藤井風さんの音楽に“救われた”という感覚があって。「自分もこういう音楽を作りたい」と思うようになりました。
――今作は波の音で始まり波の音で終わる構成や、『Sea Of Love』というタイトル、そして各楽曲のリリックなどから、自身の出発点からここまでの道のりを振り返るような印象も感じました。今のお話を聞いて、それは“自分にしか出せない言葉”を追求していった結果なのかなと。
Yo-Sea:僕の作品は最初から何かを思い描いて作ることはなくて、プロデューサーさんをはじめとした様々な人との出会いや、制作しながら気づいたこと、新しい発見などが反映されていると思うんです。言ってしまえば、制作過程自体が曲のストーリーになっているというか。
ただ、今回のアルバムはその中でも変化していく部分もあって、結果としては海とか沖縄とか、自分の故郷からこの大都会・東京にいるっていう物語、感情の揺れ動きを落とし込みたいって思うようになりました。そうしないと、次の作品に進めないんじゃないかっていう感覚もあった。なので、リリックもよりリアルな感情が込められていると思います。
――『Sea Of Love』というタイトル、言葉はどのようにして出てきたのですか?
Yo-Sea:アルバムが7〜8割くらい完成してきた頃に、母親と会話している中で出てきた言葉なんです。これまでもよく母親と話している中で、色々なアイディアをもらうことが多くて。自分の活動を一番厳しく見てきてくれたのも母親なので、曲を聴いてもらって、2人で話してるうちにパッと『Sea Of Love』というタイトルが出てきました。
――アルバムを新たに作り直す工程で、それまでの制作方法から変化はありましたか?
Yo-Sea:これまでの僕の作り方は、基本的には1曲毎に一回のセッションで、その場でメロディ、リリックまで書き上げていたんです。でも、今回は敢えてそうせず。一度持ち帰って、じっくりと見つめ直す時間を設けるようにしました。家で考え直したり、もしくは外に出たときにふと感じたこと、考えたことなどをメモしておいて、それを落とし込んでいく。スタジオで完結していたところから、それ以外の場所──特にひとりで考える時間が増えた。それが大きな変化かもしれません。
――これまでの作品を聴き返して、後から修正したくなることはありますか?
Yo-Sea:僕、あまり自分の過去作を聴き返さないんですよね。制作中に何回も聴いているし、リリースしたらバトンを渡したような感覚になって、自分は次の作品に意識が向かってしまう。ただ、過去作をふとしたときに耳にしたとき、今の自分のマインドと、過去のマインドを照らし合わせることで、次の制作のヒントになったりすることはあります。
――個人的に、アルバムを通して聴いたときに、「Actor」や「Someday」といった楽曲に出てくる《孤独》、《Lonely》といった言葉が耳に残りました。これはひとりで考える時間が増えたことが影響していると思いますか?
Yo-Sea:そうですね。自分に一番期待しているのは自分自身なので、自分と向き合うときはずっと孤独との戦いみたいな感じです。制作中もそうですし「なぜ自分はあのステージに立てないのか」とか、もどかしく感じてた時期もありました。でも、結局は自分で判断して、自分が進む道に責任を持たないとダメだと思って。このアルバムの制作中は、特にそういったことを考えることが多かったかもしれません。
「世の中に自分の作品を残す意味」
――アルバム全体を通したテーマやコンセプトのようなものは考えていましたか?
Yo-Sea:制作中に考えていたのは、“聴く人に寄り添う”作品にしたいということ。決してわかりやすい作品にするということではなくて、自分の言いたいことは妥協せず詰め込む。名誉やお金、そういったことよりももっと大切なことを伝えたい。もしかしたら難しい作品だと思われるかもしれないけど、僕が感銘を受けてきた音楽もそういうタイプの作品ばかりだったので、やっぱり自分もそこを目指したい。
アルバムを作り始める前からぼんやりとそういったことを考えてたんですけど、曲が完成していくにつれて、より確信に変わっていきました。「自分の考えは間違ってなかった」って。
――より本質的な表現を追い求めるようになったと。
Yo-Sea:そういうことだと思います。
――それこそ最後の2曲、「Mighty Long Way」や「Someday」にはこれまで以上に自身の感情をストレートに表現されているように感じました。
Yo-Sea:「Mighty Long Way」はほとんどフリースタイルで書いた曲なんです。《22から25》って歌ってるんですけど、実際に25歳のとき、今から3年前に作った曲で。もちろん何箇所か後からブラッシュアップした部分もあるんですけど、それでも大半が即興なので、正直恥ずかしい気持ちもありました。でも、このタイミングでこの曲を発表することに、一種の使命感みたいなものも感じたんです。
今の世の中って……特に日本は政治的にも社会的にも決して良い流れとは言えない状況だと感じていて。僕自身もファンの方から色々なメッセージを頂くんですけど、生きづらさや悩みを抱える人もきっと多くいるはずで。この曲はそんな人たちの力になればなと思ったんです。
――3年前と違って、恥ずかしい気持ちもなくなり素直に発表することができたと。
Yo-Sea:どちらかというと、3年前は少しカッコつけていた感覚があって。目に見えるもの、再生数やフォロワー数といった数字を気にしちゃってる自分がいた。そこから3年経って、ようやく振り切れたというか。もちろん今でも数字が伸びたらすごく嬉しいですけど、世の中に自分の作品を残していく意味を考えたときに、もっとありのままを歌いたいって思いました。
――だからこそ、アルバムに収録することにした。
Yo-Sea:そうです。自分自身もこの曲にすごく救われたので。サウンド感も含めて、アルバムの中では結構変化球というか、好みは分かれそうだなとも思いつつ、アルバムに収録することにしました。
――アルバムのラストを飾る「Someday」はMatt Cabさんとの共作曲ですよね。
Yo-Sea:この曲もアルバムの中では早めにできた曲ですね。リリックはエモーショナルなだけじゃなくて、色々な想いを開放するようなイメージで書きました。頭には母親との電話の音声が入っているんですけど、あれはMatt Cabさんと話している内に出てきたアイディアで、実際にブースに入りながら電話しました。母には「Someday」というタイトルを伝えてないのに、「Someday Soon(またすぐ会おう)」って言ってくれて。不思議なリンクがあったので、そこを切り取って使いました。
――リリック面で言えば、C.O.S.A.さんを迎えた「Inori」も印象的でした。この曲もこれまでにはなかったような内容というか。
Yo-Sea:Dope OnigiriとDJ Yutoからこのトラックを頂いて、一発で気に入ったんですけど、アプローチの仕方をしばらく模索していたんです。元々は違うフックがあったんですけど、録ってるうちに「何か違うな」って思って作り替えました。リリックはそのときなんとなく感じていたモヤモヤとした気持ちを空に飛ばして、「自分たちは心が動くままに生きていこう」といういう気持ちをりました。
――C.O.S.A.さんには何かテーマなどをお伝えしたんですか?
Yo-Sea:自分の作品に誰かをフィーチャリングで迎えるとき、全体のイメージはお伝えしつつも基本的にはお任せするんです。その方を信頼しているからこそお声掛けしているので、曲を聴いて、僕のヴァースやフックから感じたことを自由に書いてもらえればって思っています。
「Inori」に関しては、僕とC.O.S.A.さんが一緒に参加しているSTUTSさんの「Pretenders」のMV撮影で沖縄に行ったんですけど、C.O.S.A.さんが「この沖縄滞在で感じたことを書く」って言ってくれて。沖縄ではみんなでお酒を飲みに行ったり、深夜にジムに行ったり、密な時間を過ごさせてもらいました。撮影が終わって、みんなが帰ってから自分だけは実家に延泊してたんですけど、そのときにC.O.S.A.さんからヴァースが送られてきて、その場で聴いて泣きましたね。「本当にこの人にお願いしてよかった」って思いました。
Yo-Sea:C.O.S.A.さんは何がカッコいいかをはっきりと示してくれるお兄さんみたいな存在で。自然体でいるのにカッコいいし、そのスタンスに憧れますね。普通にヘッズみたいな気持ちになります(笑)。最初にお話した、アルバム制作に際しての心境の変化も、C.O.S.A.さんだけでなく出会った人たちからの影響も大きいと思います。
――客演を迎える曲に関しては、最初から誰かにオファーしようと考えていることが多いのでしょうか?
Yo-Sea:大部分の曲はひとりで制作を始めて、その中でふと「これ、〇〇さんに入ってもらった方がいいかも」って思いつく感じですね。ただ、「Inori」に関してはトラック聴いた瞬間に「誰かに入ってもらいたい」「これはC.O.S.A.さんだな」ってなりました。トラックが特徴的だと、誰かを呼びたくなることが多いですね。
「制限をかけずに、より自由に」
――残りの客演曲に関してはいかがですか?
Yo-Sea:「Body&Soul」はKANDYTOWNのNeetzさんがプロデュースしてくれたんですけど、スタジオで一緒に制作しているときに、Gottzくんが遊びに来てくれて。「どんな感じ?」って話してるうちに、「Gottzくん、残りのヴァース蹴ってくれませんか?」ってその場でお願いしたらすぐにレコーディングしてくれました。
「Nana」は僕が音楽を始めた最初期からお世話になっている沖縄のNGONGさんのトラックで、制作している途中で「Daichi Yamamotoさんに入ってもらいたい」って思い、オファーしました。なんていうか、Daichi Yamamotoさんのリリックやフロウって、すごく独特で唯一無二だなって感じていて。連絡したらすぐに承諾してくれて、渋谷のスタジオでレコーディングにも同席させてもらいました。
――残るは同郷のKethugさんをフィーチャーした「Grateful」。
Yo-Sea:後から知ったんですけど、僕と彼は大学が一緒だったんですよ。ライブDJのTOMiが作ってくれたトラックがR&B色の強いものだったので、Kethugに入ってもらいたいなと思って。自分のスタジオに来てもらって、TOMiと3人でアイディアを出し合いながら完成させましたね。
あと、自分がこうして沖縄から飛び出せたのは、唾奇さんとかAwichさん、レオクマ(OZworld)とか、色々な方々が自分をフックアップしてくれた、チャンスをくれたからだと思っていて。だからこそ、僕も自分だけのために走りたくないっていう気持ちが強くなってきたんです。みんなで交差しながら、交わりながら進んでいきたい。なので、今後も新しい人とどんどんコラボしていきたいなって思っています。
――先ほどお話しした「Someday」と、先行シングル「Moonlight」はMatt Cabさんプロデュースによる楽曲ですよね。オーバーグラウンドのポップスも手がけるMatt Cabさんとの共同作業から、何か感じることはありましたか?
Yo-Sea:一番最初にご一緒したのはKAHOHちゃんとの共作曲「Rendezvous」(2020年)なんですけど、Matt Cabさんとご一緒して一番感じたのは、自分の幅や世界を広げてくれたということ。「こういう曲もやってみたら?」「Yo-Seaがこういうトラックで歌っているのを聴いてみたい」って言ってくれて。自分を変えてくれたっていう感じではなくて、自然と導かれた感覚。僕のオリジナリティを出せる余白の部分は用意してくれていて、その上で新たな挑戦をさせてくれる。「Moonlight」でいうとコーラスを多く入れているんですけど、それもMatt Cabさんプロデュースならではの試みでした。
――「Moonlight」はこれまで以上に開けた作風で、おっしゃる通りYo-Seaさんの幅がグッと広がったような印象を受けました。
Yo-Sea:自分は今もヒップホップ、R&Bが一番カッコいいと思ってるし、そこを離れるつもりはないんですけど、「それだけじゃなくてもいいんだ」って気づかせてくれたのが大きかったですね。ブレない意志と核があれば、もっとオーバーグラウンドに挑戦してみてもいいんだって。
……正直言うと、(「Moonlight」を)リリースする前は少し恥ずかしい気持ちもあったんです。「これまでのYo-Seaじゃない」って言われたらどうしようって思ったり(笑)。でも、Matt Cabさんと話したり、(自身が所属するレーベル/プロダクションである)〈AOTL〉のみんなの意見とかを聞いて、少しずつ自信を持てるようになっていきました。
――とてもいいチームに囲まれているんですね。
Yo-Sea:ありがたいです。これも本当の意味で孤独だったら、中々自信を持つことは難しかったと思います。孤独はあくまでも自分と向き合っているときだけで、一歩外へ出てみれば温かい言葉を掛けてくれる仲間がいる。だからこそ、こうやって胸を張って今回のアルバムを発表できたんだなって。
――なるほど。今後の活動については何か考えていることはありますか?
Yo-Sea:まずはこのアルバムの楽曲たちをライブで披露するにあたって、もっとスキルを上げたいなと思っています。声の出し方やパフォーマンス、世界観の作り込み方も含めて。あと、行く行くはバンド・セットでライブをしてみたいとも思っています。
制作に関して言うと、すでに新しいトラックを色々な方から頂いているので、自分としてはすでに次の作品のことを考えています。もっと踊れる曲も作りたいし、もっと黒いサウンドにもトライしたい。自分に制限をかけずに、より自由に。「このトラックで歌いたい」って感じたら、そのタイミングを逃さないようにしたいですね。
【リリース情報】
02. Flower
Lyrics by Yo-Sea / Composed by STUTS
03. Without You
Lyrics by Yo-Sea / Composed by TOMi

04. Moonlight

Lyrics by Yo-Sea
Composed by Matt Cab, Petra Sihombing, Enrico Octaviano, Tat Tong
05. Body&Soul (feat. Gottz & Neetz)
Lyrics by Yo-Sea, Gottz / Composed by Neetz
06. Waiting
Lyrics by Yo-Sea / Composed by TOMi
07. Nana (feat. Daichi Yamamoto)
Lyrics by Yo-Sea, Daichi Yamamoto / Composed by NGONG
08. Aruto
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
09. Inori (feat. C.O.S.A.)
Lyrics by Yo-Sea, C.O.S.A. / Composed by Dope Onigiri, Yuto
10. Actor
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
11. Grateful (feat. Kethug)
Lyrics by Yo-Sea, Kethug / Composed by TOMi
12. Mighty Long Way
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
13. Someday
Lyrics by Yo-Sea / Composed by Matt Cab
■ 配信リンク(https://aotl.lnk.to/SeaofLove)
■Yo-Sea: X(Twitter)(https://twitter.com/yoooo7878) / Instagram(https://www.instagram.com/yo_sea7878/)
沖縄出身のSSW、Yo-Seaが1stアルバム『Sea Of Love』をリリースした。
数々のクラブ・ヒットや客演/コラボレーション、そして自身名義でもEPを複数作リリースするなどして着実にキャリアを重ねてきたYo-Sea。2019年にはSpotifyが飛躍を期待する国内アーティスト『Early Noise Artist 2019』にも選出された。
2018年に「I think she is」でのデビューから数えればおよそ5年、まさにファン待望のフルレングス・アルバムとなった『Sea Of Love』。個人的に先行シングル「Moonlight」を聴いたときに感じた、より広いところへと羽ばたいていくようなポテンシャル、それはアルバム全体を通して聴くことでより強固な確信へと変わった。
今回は長い年月をかけて生み出したアルバム『Sea Of Love』の制作背景を紐解くべくYo-Seaにインタビューを敢行。制作過程で起きた心境の変化、そしてGottz、C.O.S.A.、Daichi Yamamoto、Matt Cab、そして地元の盟友・TOMi、Ketungらとのコラボレーションについて、じっくりと語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Ryo Sato(https://www.ryosato.website/)
「自分に一番期待しているのは自分自身」
――過去のインタビューを遡ってみると、2020年頃からアルバム制作の話は出てましたよね。そこからおよそ3年という月日が経ち、まさに待望のアルバム・リリースになりました。
Yo-Sea:実は制作途中の作品を一度ボツにして、イチから作り直すことにしたんです。コンセプトやリリックをもう少し大事に突き詰めたいなと思うようになって、時間をかけて制作しました。
――その心境の変化には何かきっかけがあるのでしょうか。
Yo-Sea:色々あるんですけど、敢えてひとつ挙げるとしたら、藤井風さんの作品から受けた影響が大きいです。日本語で、その人にしか出せない言葉で、リアルな感情を伝えているという点にすごく感銘を受けましたし、個人的にも藤井風さんの音楽に“救われた”という感覚があって。「自分もこういう音楽を作りたい」と思うようになりました。
――今作は波の音で始まり波の音で終わる構成や、『Sea Of Love』というタイトル、そして各楽曲のリリックなどから、自身の出発点からここまでの道のりを振り返るような印象も感じました。今のお話を聞いて、それは“自分にしか出せない言葉”を追求していった結果なのかなと。
Yo-Sea:僕の作品は最初から何かを思い描いて作ることはなくて、プロデューサーさんをはじめとした様々な人との出会いや、制作しながら気づいたこと、新しい発見などが反映されていると思うんです。言ってしまえば、制作過程自体が曲のストーリーになっているというか。
ただ、今回のアルバムはその中でも変化していく部分もあって、結果としては海とか沖縄とか、自分の故郷からこの大都会・東京にいるっていう物語、感情の揺れ動きを落とし込みたいって思うようになりました。そうしないと、次の作品に進めないんじゃないかっていう感覚もあった。なので、リリックもよりリアルな感情が込められていると思います。
――『Sea Of Love』というタイトル、言葉はどのようにして出てきたのですか?
Yo-Sea:アルバムが7〜8割くらい完成してきた頃に、母親と会話している中で出てきた言葉なんです。これまでもよく母親と話している中で、色々なアイディアをもらうことが多くて。自分の活動を一番厳しく見てきてくれたのも母親なので、曲を聴いてもらって、2人で話してるうちにパッと『Sea Of Love』というタイトルが出てきました。
――アルバムを新たに作り直す工程で、それまでの制作方法から変化はありましたか?
Yo-Sea:これまでの僕の作り方は、基本的には1曲毎に一回のセッションで、その場でメロディ、リリックまで書き上げていたんです。でも、今回は敢えてそうせず。一度持ち帰って、じっくりと見つめ直す時間を設けるようにしました。家で考え直したり、もしくは外に出たときにふと感じたこと、考えたことなどをメモしておいて、それを落とし込んでいく。スタジオで完結していたところから、それ以外の場所──特にひとりで考える時間が増えた。それが大きな変化かもしれません。
――これまでの作品を聴き返して、後から修正したくなることはありますか?
Yo-Sea:僕、あまり自分の過去作を聴き返さないんですよね。制作中に何回も聴いているし、リリースしたらバトンを渡したような感覚になって、自分は次の作品に意識が向かってしまう。ただ、過去作をふとしたときに耳にしたとき、今の自分のマインドと、過去のマインドを照らし合わせることで、次の制作のヒントになったりすることはあります。
――個人的に、アルバムを通して聴いたときに、「Actor」や「Someday」といった楽曲に出てくる《孤独》、《Lonely》といった言葉が耳に残りました。これはひとりで考える時間が増えたことが影響していると思いますか?
Yo-Sea:そうですね。自分に一番期待しているのは自分自身なので、自分と向き合うときはずっと孤独との戦いみたいな感じです。制作中もそうですし「なぜ自分はあのステージに立てないのか」とか、もどかしく感じてた時期もありました。でも、結局は自分で判断して、自分が進む道に責任を持たないとダメだと思って。このアルバムの制作中は、特にそういったことを考えることが多かったかもしれません。
「世の中に自分の作品を残す意味」
――アルバム全体を通したテーマやコンセプトのようなものは考えていましたか?
Yo-Sea:制作中に考えていたのは、“聴く人に寄り添う”作品にしたいということ。決してわかりやすい作品にするということではなくて、自分の言いたいことは妥協せず詰め込む。名誉やお金、そういったことよりももっと大切なことを伝えたい。もしかしたら難しい作品だと思われるかもしれないけど、僕が感銘を受けてきた音楽もそういうタイプの作品ばかりだったので、やっぱり自分もそこを目指したい。
アルバムを作り始める前からぼんやりとそういったことを考えてたんですけど、曲が完成していくにつれて、より確信に変わっていきました。「自分の考えは間違ってなかった」って。
――より本質的な表現を追い求めるようになったと。
Yo-Sea:そういうことだと思います。
――それこそ最後の2曲、「Mighty Long Way」や「Someday」にはこれまで以上に自身の感情をストレートに表現されているように感じました。
Yo-Sea:「Mighty Long Way」はほとんどフリースタイルで書いた曲なんです。《22から25》って歌ってるんですけど、実際に25歳のとき、今から3年前に作った曲で。もちろん何箇所か後からブラッシュアップした部分もあるんですけど、それでも大半が即興なので、正直恥ずかしい気持ちもありました。でも、このタイミングでこの曲を発表することに、一種の使命感みたいなものも感じたんです。
今の世の中って……特に日本は政治的にも社会的にも決して良い流れとは言えない状況だと感じていて。僕自身もファンの方から色々なメッセージを頂くんですけど、生きづらさや悩みを抱える人もきっと多くいるはずで。この曲はそんな人たちの力になればなと思ったんです。
――3年前と違って、恥ずかしい気持ちもなくなり素直に発表することができたと。
Yo-Sea:どちらかというと、3年前は少しカッコつけていた感覚があって。目に見えるもの、再生数やフォロワー数といった数字を気にしちゃってる自分がいた。そこから3年経って、ようやく振り切れたというか。もちろん今でも数字が伸びたらすごく嬉しいですけど、世の中に自分の作品を残していく意味を考えたときに、もっとありのままを歌いたいって思いました。
――だからこそ、アルバムに収録することにした。
Yo-Sea:そうです。自分自身もこの曲にすごく救われたので。サウンド感も含めて、アルバムの中では結構変化球というか、好みは分かれそうだなとも思いつつ、アルバムに収録することにしました。
――アルバムのラストを飾る「Someday」はMatt Cabさんとの共作曲ですよね。
Yo-Sea:この曲もアルバムの中では早めにできた曲ですね。リリックはエモーショナルなだけじゃなくて、色々な想いを開放するようなイメージで書きました。頭には母親との電話の音声が入っているんですけど、あれはMatt Cabさんと話している内に出てきたアイディアで、実際にブースに入りながら電話しました。母には「Someday」というタイトルを伝えてないのに、「Someday Soon(またすぐ会おう)」って言ってくれて。不思議なリンクがあったので、そこを切り取って使いました。
――リリック面で言えば、C.O.S.A.さんを迎えた「Inori」も印象的でした。この曲もこれまでにはなかったような内容というか。
Yo-Sea:Dope OnigiriとDJ Yutoからこのトラックを頂いて、一発で気に入ったんですけど、アプローチの仕方をしばらく模索していたんです。元々は違うフックがあったんですけど、録ってるうちに「何か違うな」って思って作り替えました。リリックはそのときなんとなく感じていたモヤモヤとした気持ちを空に飛ばして、「自分たちは心が動くままに生きていこう」といういう気持ちを綴りました。
――C.O.S.A.さんには何かテーマなどをお伝えしたんですか?
Yo-Sea:自分の作品に誰かをフィーチャリングで迎えるとき、全体のイメージはお伝えしつつも基本的にはお任せするんです。その方を信頼しているからこそお声掛けしているので、曲を聴いて、僕のヴァースやフックから感じたことを自由に書いてもらえればって思っています。
「Inori」に関しては、僕とC.O.S.A.さんが一緒に参加しているSTUTSさんの「Pretenders」のMV撮影で沖縄に行ったんですけど、C.O.S.A.さんが「この沖縄滞在で感じたことを書く」って言ってくれて。沖縄ではみんなでお酒を飲みに行ったり、深夜にジムに行ったり、密な時間を過ごさせてもらいました。撮影が終わって、みんなが帰ってから自分だけは実家に延泊してたんですけど、そのときにC.O.S.A.さんからヴァースが送られてきて、その場で聴いて泣きましたね。「本当にこの人にお願いしてよかった」って思いました。
Yo-Sea:C.O.S.A.さんは何がカッコいいかをはっきりと示してくれるお兄さんみたいな存在で。自然体でいるのにカッコいいし、そのスタンスに憧れますね。普通にヘッズみたいな気持ちになります(笑)。最初にお話した、アルバム制作に際しての心境の変化も、C.O.S.A.さんだけでなく出会った人たちからの影響も大きいと思います。
――客演を迎える曲に関しては、最初から誰かにオファーしようと考えていることが多いのでしょうか?
Yo-Sea:大部分の曲はひとりで制作を始めて、その中でふと「これ、〇〇さんに入ってもらった方がいいかも」って思いつく感じですね。ただ、「Inori」に関してはトラック聴いた瞬間に「誰かに入ってもらいたい」「これはC.O.S.A.さんだな」ってなりました。トラックが特徴的だと、誰かを呼びたくなることが多いですね。
「制限をかけずに、より自由に」
――残りの客演曲に関してはいかがですか?
Yo-Sea:「Body&Soul」はKANDYTOWNのNeetzさんがプロデュースしてくれたんですけど、スタジオで一緒に制作しているときに、Gottzくんが遊びに来てくれて。「どんな感じ?」って話してるうちに、「Gottzくん、残りのヴァース蹴ってくれませんか?」ってその場でお願いしたらすぐにレコーディングしてくれました。
「Nana」は僕が音楽を始めた最初期からお世話になっている沖縄のNGONGさんのトラックで、制作している途中で「Daichi Yamamotoさんに入ってもらいたい」って思い、オファーしました。なんていうか、Daichi Yamamotoさんのリリックやフロウって、すごく独特で唯一無二だなって感じていて。連絡したらすぐに承諾してくれて、渋谷のスタジオでレコーディングにも同席させてもらいました。
――残るは同郷のKethugさんをフィーチャーした「Grateful」。
Yo-Sea:後から知ったんですけど、僕と彼は大学が一緒だったんですよ。ライブDJのTOMiが作ってくれたトラックがR&B色の強いものだったので、Kethugに入ってもらいたいなと思って。自分のスタジオに来てもらって、TOMiと3人でアイディアを出し合いながら完成させましたね。
あと、自分がこうして沖縄から飛び出せたのは、唾奇さんとかAwichさん、レオクマ(OZworld)とか、色々な方々が自分をフックアップしてくれた、チャンスをくれたからだと思っていて。だからこそ、僕も自分だけのために走りたくないっていう気持ちが強くなってきたんです。みんなで交差しながら、交わりながら進んでいきたい。なので、今後も新しい人とどんどんコラボしていきたいなって思っています。
――先ほどお話しした「Someday」と、先行シングル「Moonlight」はMatt Cabさんプロデュースによる楽曲ですよね。オーバーグラウンドのポップスも手がけるMatt Cabさんとの共同作業から、何か感じることはありましたか?
Yo-Sea:一番最初にご一緒したのはKAHOHちゃんとの共作曲「Rendezvous」(2020年)なんですけど、Matt Cabさんとご一緒して一番感じたのは、自分の幅や世界を広げてくれたということ。「こういう曲もやってみたら?」「Yo-Seaがこういうトラックで歌っているのを聴いてみたい」って言ってくれて。自分を変えてくれたっていう感じではなくて、自然と導かれた感覚。僕のオリジナリティを出せる余白の部分は用意してくれていて、その上で新たな挑戦をさせてくれる。「Moonlight」でいうとコーラスを多く入れているんですけど、それもMatt Cabさんプロデュースならではの試みでした。
――「Moonlight」はこれまで以上に開けた作風で、おっしゃる通りYo-Seaさんの幅がグッと広がったような印象を受けました。
Yo-Sea:自分は今もヒップホップ、R&Bが一番カッコいいと思ってるし、そこを離れるつもりはないんですけど、「それだけじゃなくてもいいんだ」って気づかせてくれたのが大きかったですね。ブレない意志と核があれば、もっとオーバーグラウンドに挑戦してみてもいいんだって。
……正直言うと、(「Moonlight」を)リリースする前は少し恥ずかしい気持ちもあったんです。「これまでのYo-Seaじゃない」って言われたらどうしようって思ったり(笑)。でも、Matt Cabさんと話したり、(自身が所属するレーベル/プロダクションである)〈AOTL〉のみんなの意見とかを聞いて、少しずつ自信を持てるようになっていきました。
――とてもいいチームに囲まれているんですね。
Yo-Sea:ありがたいです。これも本当の意味で孤独だったら、中々自信を持つことは難しかったと思います。孤独はあくまでも自分と向き合っているときだけで、一歩外へ出てみれば温かい言葉を掛けてくれる仲間がいる。だからこそ、こうやって胸を張って今回のアルバムを発表できたんだなって。
――なるほど。今後の活動については何か考えていることはありますか?
Yo-Sea:まずはこのアルバムの楽曲たちをライブで披露するにあたって、もっとスキルを上げたいなと思っています。声の出し方やパフォーマンス、世界観の作り込み方も含めて。あと、行く行くはバンド・セットでライブをしてみたいとも思っています。
制作に関して言うと、すでに新しいトラックを色々な方から頂いているので、自分としてはすでに次の作品のことを考えています。もっと踊れる曲も作りたいし、もっと黒いサウンドにもトライしたい。自分に制限をかけずに、より自由に。「このトラックで歌いたい」って感じたら、そのタイミングを逃さないようにしたいですね。
【リリース情報】
02. Flower
Lyrics by Yo-Sea / Composed by STUTS
03. Without You
Lyrics by Yo-Sea / Composed by TOMi

04. Moonlight

Lyrics by Yo-Sea
Composed by Matt Cab, Petra Sihombing, Enrico Octaviano, Tat Tong
05. Body&Soul (feat. Gottz & Neetz)
Lyrics by Yo-Sea, Gottz / Composed by Neetz
06. Waiting
Lyrics by Yo-Sea / Composed by TOMi
07. Nana (feat. Daichi Yamamoto)
Lyrics by Yo-Sea, Daichi Yamamoto / Composed by NGONG
08. Aruto
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
09. Inori (feat. C.O.S.A.)
Lyrics by Yo-Sea, C.O.S.A. / Composed by Dope Onigiri, Yuto
10. Actor
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
11. Grateful (feat. Kethug)
Lyrics by Yo-Sea, Kethug / Composed by TOMi
12. Mighty Long Way
Lyrics by Yo-Sea / Composed by GooDee
13. Someday
Lyrics by Yo-Sea / Composed by Matt Cab
■ 配信リンク(https://aotl.lnk.to/SeaofLove)

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