水瀬いのり

水瀬いのり

【水瀬いのり インタビュー】
“スクラップアート”という
言葉でしか表現できない

くらりの歌だったら
大胆なことも言える

カップリングには水瀬さんが生み出したキャラクターくらりちゃんのテーマソング「くらりのうた」を収録されていますが、くらりはいつできたキャラクターなのですか?

3rdアルバム『Catch the Rainbow!』(2019年4月発表)の制作の中で、自分のキャラクターがあったらいいんじゃないかと思って歌詞の裏にえんぴつで描きました。最初は私が亥年産まれだし、名前から“いの”を取ってイノシシを描いていたのですが、あまり可愛く描けなくて。それで自分の好きな生きものをモチーフにしようということで、クラゲにして。

クラゲはずっと好きなのですか?

はい。小さい時から水族館に行くと、魚はほぼスルーしてクラゲとタカアシガニばかり観ている子供でした(笑)。普通の魚は急に口を開けてパクパクしたり、突然動いたりしてびっくりするじゃないですか。そういうのは苦手で。でも、クラゲは触手が絡まっても絡まったままだし、喧嘩もしないし、見ていて穏やかな気持ちになれるところが好きです。

でも、どうしてくらりの歌を作ろうと?

プロデューサーさんの発案で、くらりはキャラクターとしてグッズは出ているけど曲はなかったので、作ったら面白いんじゃないかと。でも、“それって絶対に私が作詞をするパターンだよな”ってちょっとドキドキしたんですが、自分の中で想像してみたらいろいろ浮かぶものがあったので、挑戦してみようと思って書きました。

《のらりくらり》とか言葉遊びもあって、きっと作詞の作業が楽しかったんだろうなと。

すごく楽しかったです! キャラクターソングを書く気持ちだったし、くらりのことはファンの方は知っているけど、まだまだ無限の可能性があるので、そういう意味では何を書いてもOKみたいな。ちょっと大胆なことだったり、自分の曲なら採用しないだろう可愛い表現も“くらりのことだからいいじゃん!”と思って書けました(笑)。個人的には、くらげは漢字では“海月”と書くから《海に浮かぶお月様》というフレーズは絶対に入れたいと思っていたし。《泡》とか《パール》など海にまつわる言葉もたくさん使っていて、それもくらりじゃなければ書けない世界観だし、実は広くて高い青空を泳いでみたいと思っているというところも可愛く書けたと思っています。

音も楽しいですね。

はい。“パッパッ”というコーラスとか、ゴボゴボっていう泡の音とかも入っていて、さらに海の深いところに入っていくような音からオチサビに入って、《くらり これがわたしの名前だよ》と自己紹介するところは海の中で待っている雰囲気が出せているのではないかと思います。

そして、「While We Walk」は「スクラップアート」と同じく栁舘周平さんの作詞・作曲・編曲ですね。

頭文字が“WWW”の曲は3曲目で、私が栁舘さんに初めて書いていただいた曲が「Winter Wonder Wander」(2017年11月発表のシングル「Ready Steady Go!」収録曲)で、その時にはまさか続編があるとは思ってもみませんでした。その後、「Well Wishing Word」(2020年2月発表のシングル「ココロソマリ」収録曲)が誕生し、その時は3曲目があることをおっしゃっていたと思います。何年か前のファンクラブイベントで「Winter Wonder Wander」のアニメーションのMVを公開したのですが、それは栁舘さんが絵も全部書かれていて、その中にも各曲とシンクロした要素がふんだんに描かれていました。そんな流れを経て、満を持して3曲目が誕生したという感じです。

ミュージカルみたいな楽曲で、ディズニープリンセスが歌っていそうです。

まさにイメージはディズニーのようなファンタジー感で、三拍子が突然入ってきたりするのもポイントだとおっしゃっていました。“物語を読むようなテンションで歌ってください”というディレクションだったので、歌い上げるというよりかは窓辺で小鳥に囁きかけているような、ちょっとファンタジックな世界観で、大都会ではなく、物語然とした森の中をイメージして歌いました。

そんな“WWW”シリーズの特徴と言うと?

栁舘さんが書いてくださる曲は明るいメロディーなのにどこか胸が締めつけられるようなフレーズがあったり、終わりがあることを書いていることが多くて。今回も《「さよなら」してもずっと》というフレーズがあるし。でも、それが決してネガティブなものではなく、終わりがあって、また始まりがあって、また君を見つけるっていう、確固たる愛みたいなものが歌われているんです。それが“WWW”シリーズの共通点のひとつですね。

「スクラップアート」と同じく伏線が多数あるし。

アウトロの“ラララ”で歌うコーラスは1曲目の「Winter Wonder Wander」につながるようになっていて、間奏にも「Winter Wonder Wander」と「Well Wishing Word」のコーラスが出てきたり、3部作の集大成といったかたちです。シリーズはこれでおしまいという寂しさはありますけど、終わりがあれば新しい始まりがあるというメッセージを柳館さんもくださっているので、この先また新しい何かを考えてくださっているのではないかと思っています。

これで終わっちゃうんですね。でも、また“M”シリーズとか、“S”シリーズとか。

毎回一球入魂で作ってくださっているので、しばらくは無理なんじゃないかと思いますね(笑)。でも、個人的には、今回のレコーディングで柳舘さんの涙を見ることができたのが嬉しかったです。コーラスを録っていた時に、ボロボロと泣いてディレクションができなくなってしまって。きっとこれまでの曲のことやつらかった経験などを思い出されたのだと思います。そんな姿を見て“どこまでもピュアな方なんだなぁ”と思って、私の心も洗われましたね。それに作ってくださった方がこれほど泣くような曲を歌えることの喜びとか、その瞬間に立ち会えたことがいかに光栄であるかを感じました。

「スクラップアート」を提げたツアーを開催されますが、今回はどんなツアーになっていますか?

前回までは“みんなと一緒にライヴを作っているんだ”という気持ちでステージに立っていましたが、今回は楽曲のイメージや表現をステージ上でがっつり完成させて、それをみんなに観ていただく気持ちです。今までは1本のライヴを通した流れで演出されていましたが、今回は1曲ごとの世界観を演出していくかたちになっています。言うなれば、美術館でいろんなアートを鑑賞していただくような。ぜひ私たちが作る「スクラップアート」の世界を楽しんでいただきたいです。

では、最後に「スクラップアート」のコーラスの歌詞である《制裁か救済か》について思うことを教えてください。

最近は恋が冷める瞬間をグリム童話の『かえるの王様』になぞらえて“カエル化現象”と言ったりしますが、男性に対して“どこまでもスマートであれ”みたいな風潮が以前よりも高まっているように感じます。彼女の頭をぶつけないように手でガードしたり、小さなバッグでも持ってあげたり。それは韓ドラの影響も大きくて、実際に私も韓ドラにハマりすぎていて、“やりすぎだな”と思う反面、“そういうのもいいなぁ”とときめく自分もいたりして。こんな私は“制裁”でしょうか? “救済”でしょうか?(笑)

それはSNSでアンケートをとってください(笑)。ちなみに“制裁”だと思う行動は?

モラルを欠いた行動です。その人の家の中だったら何をしていてもいいけど、“公共の空間であることをお忘れなきように”と言いたくなることをされている方は制裁です。その光景を見たほうもテンションが下がるし。みんな余裕を持って過ごしましょう!

取材:榑林史章

シングル「スクラップアート」2023年9月13日発売 KING RECORDS
    • KICM-2138
    • ¥1,430(税込)
    • 初回封入特典:特製トレカ

ライヴ・イベント情報

『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART』
9/17(日) 兵庫・ワールド記念ホール
9/24(日) 宮城・仙台サンプラザホール
10/08(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
10/14(土) 福岡・北九州ソレイユホール
10/28(土) 神奈川・ぴあアリーナMM
10/29(日) 神奈川・ぴあアリーナMM

『水瀬いのり MELODY FLAG』公開録音イベント
12/02(土) 神奈川・パシフィコ横浜

水瀬いのり プロフィール

ミナセイノリ:2010年に『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビュー。中学⽣の時、オーディション『アニストテレス』に参加し、第1回⽬のグランプリを受賞。その後、2010年にTVアニメ『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビューを果たす。2013年に出演したTVアニメ『恋愛ラボ』をきっかけに演技⼒の⾼さや役幅の広さが⾼く評価されるようになり、10代にして話題作のメインヒロイン役に次々と抜擢されるようになる。そして、キャラクターソングやアニメ・ゲームイベントでのパフォーマンスで、ジャンルを選ばずあらゆる楽曲を歌いこなす歌唱⼒が多くのアニメ/声優ファンを魅了し、歌⼿としての活動にも⼤きな期待が寄せられていた中、15年12⽉2⽇、⼆⼗歳の誕⽣⽇を迎えた記念すべき⽇に、シングル「夢のつぼみ」で待望の歌⼿デビューを果たす。日本武道館、横浜アリーナ、ぴあアリーナMMなどアリーナクラスの大会場で単独公演を成功させ、音楽活動の面でも常に大きな注目が寄せられている。水瀬いのり オフィシャルHP

「スクラップアート」MV

OKMusic編集部

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