TOWA TEI

TOWA TEI

【TOWA TEI インタビュー】
“まだ聴いたことがない
音を聴きたい”という
欲が非常に強い

1stアルバム『FUTURE LISTENING!』が
自分の選手宣誓

“似て非なるもの”という言い方でいいのかどうか分かりませんが、 『TOUCH』の「O.P.A.」はメロディーはきれいで、ブルーアイドソウルっぽくもあり、スムースジャズっぽくもあるんですけど、全体的に音がザラついていて、聴き進めていくと、そられとは根本的に違うものであることが分かる。そんな面白さもありますよね。

分析は間違ってないと思います。ぼんやりとR&Bというか、ソウルフルなテイストもありつつも、何だろうな…何とも言えないな(苦笑)。

単なるお洒落なナンバーではないですよね。

そうですね。僕は単なるお洒落なナンバーは作れないんじゃないかな? だから、“HAND HABBIT(=手癖)”というタイトルをつけたように、言っちゃうと手癖っぽいんですよ。ああいう曲は作りやすい。だけど、DJとしてのファンクションというか、サウンドトラックメーカーとしては、ああいう曲を作ってもどこにも出すところがない。なので、封印気味だったんですね。「HAND HABBIT」は『ZOUNDTRACKS』のほうに入っていても全然おかしくないんです。最終的に『ZOUNDTRACKS』をどういうふうに線引きしたかと言うと、まったく他のミュージシャンを迎え入れていない曲だけ、ほぼ自分だけで仕上げまでやったものという縛りにしたんですね。そういうふうにしていくと、「HAND HABBIT」は僕が自分で作ったメロディーをMETAFIVEで一緒だったゴンちゃん(ゴンドウトモヒコの愛称)に弾いてもらいたくて…もちろん彼のインプットも欲しくて、ソロの部分でわざわざ彼のスタジオに行ってコミュニケーションを取ったんです。そういうタッチも楽しかったんですよ。メールのやりとりだけじゃなくてね。わざわざ新幹線に乗って東京へ会いに行って、彼のスタジオで酒とか呑みながらいろんな話して、“じゃあ、こういう感じでやってね”って言ったら、次の日には“テイさんが帰ったあと、こんなのも足しました”って、そのリンリックが足されたものが送られてきて。やっぱりそういう面白さとか、やる気とかっていうのが一番大事なのかなと。

他者と一緒にやることで何かが生まれることも音楽の楽しさのひとつであるということですね。

そうです。ただ、近年は圧倒的に自分だけで作るパートが増えていっていて。だから、「HAND HABBIT」にしても僕の作ったメロディーをあえてシンセじゃなくて、ゴンちゃんのユーフォニアムに吹き直してもらって。やっぱりそれで大きく変わるわけですよ。なので、「HAND HABBIT」は『ZOUNDTRACKS』ではなく『TOUCH』に入れました。

楽曲に他者の手触りがあるから“TOUCH”というタイトルというのは言い得て妙だなと今思いました。

“TOUCH”を漢字で直訳すると“濃厚接触”ってことなんですけどね(笑)。

あぁ、この3年間、“濃厚接触”はいろいろ揶揄されたましたから。

そうそう。あとは、音楽との濃厚接触ですね。前作を“LP”というタイトルにした時、“何てぴったりなんだろう”と思ったんです。“LP=ロングプレイ”ということで、“自分も音楽をずっとやっているな”って。で、特に次の予定が何もなく、サラッとその次のアルバムの制作に入っていったから、最初は連作になるようなタイトルがいいと思って、「BEAUTIFUL」って曲から作り始めたので、今の自分なりのビューティフルということで“BEAUTIFUL”というタイトルがいいかなと思ったんですが、やっているうちにレコードを触っていることが多いんで“TOUCH”と。届いたレコードを開けたり、拭いたり、整理したり。で、“あんなちっちゃい数ミリの針から部屋を満たす音が流れるわけで、そこが面白いよな”と思って。“触れる音楽”みたいな。

針がレコードに触れて音を出すという意味もありそうですね。

そうですね。なので、完成したレコードジャケットを見てもらうときっと“なるほど”と思うと思うんですけどね。

今、「BEAUTIFUL」が今作で最初に作られたという話をとても興味深く思いました。というのは、「BEAUTIFUL」の冒頭で“Welcome to a new kind of listening experience”と台詞がサンプリングされていますよね。“新しいリスニング体験”、これはまさにテイさんの音楽そのものを象徴している言葉だと思ってアルバムを聴いていたんです。

他人が言っているのを見つけてきたんですけど(笑)、ぴったりだと思ったのと、もっと言っちゃえば、来年でデビュー30年ですけど、1stアルバム『FUTURE LISTENING!』(1994年10月発表)を作った時、それが自分の選手宣誓というか、“これから俺はFuture Listeningを作っていくぞ!”ってことだったんでね。だから、これは今お話ししてて思ったけど、やっぱりまだ1stアルバム、2ndアルバムの時は、もともとDeee-Liteで世の中に出た人というのがあったんで、やっぱり、Deee-Liteとは違いつつ、Deee-Liteでやってきたことも残しつつ…みたいなところが多少あったわけです。だけども、それがどんどん薄れてきた。あの頃は“まだハウスのソサイティーにいたい”とか“まだドラムンベースのソサイティーにいたい”という気持ちがあったけど、自分は“まんま”というのは嫌で。自分なりに消化した2ステップやドラムンベース、あとはエレクトロニカをやりたい気持ちがあったんですね。だけど、それを最後に、2002年5月に出したSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEの2ndアルバム『TOWA TEI』ぐらいから、もうどんどんノンカテゴリーのほうに興味が行っていますね。だから、ノンカテ具合が増えているんじゃないですかね。

ノンカテゴリーというところで言えば、『TOUCH』の「AKASAKA」は完全にノンカテゴリーですよね。あのメロディーがどこに流れていくのかも分かりませんし。“AKASAKA”は日本の地名の“赤坂”だと思うんですけど、そのメロディーは何か中国風な感じもするし。

エキゾですよね。“失われた高度成長期”という感じ(笑)。最近、映画『AKIRA』を初めて観たんですけど、『AKIRA』的(笑)。間違ったというか、現実とは違っちゃった昔のサイエンスフィクションとか。

マルチバース的な?

あぁ、そうだよね。『TOUCH』と『ZOUNDTRACKS』自体にマルチバース感がある。二卵性双生児的なね。僕がニューヨークに行ってDJとかになっていなくて、日本にずっといて、本業はデザインか何かをやりながら、片手間で家に帰ったらやっている打ち込みが楽しくて仕方がない…みたいなことをずっとやっていたら、『ZOUNDTRACKS』みたいな曲ばっかりになっていたと思いますね。

OKMusic編集部

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