ELLEGARDEN、ワンマンツアーファイナ
ル・ZOZOマリンスタジアム公演の公式
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ELLEGARDENのワンマンツアー『Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023』のファイナル公演が、2023年8月17日に千葉・ZOZOマリンスタジアムにて開催された。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

ELLEGARDENは人生である。4人にとってはもちろん、私にとっても、それから、彼らに関わる、彼らを愛する、たくさんの人にとっても。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、この表現がいちばん、あの日の感慨を伝えようとするとしっくりくる。日常で数多に開催されているライブのうちのひとつじゃないか――そう言う人もいるかもしれない。でもね、日常を積み重ねるのが人生だし、あの日は集まった3万5000人、そして会場の外や全国各地、世界各国で彼らに想いを馳せていた人たちの人生が鳴っていた。だからこそ、あんな奇跡的な光景や音像、空気を体感することができたのだ。
ELLEGARDEN 撮影=西槇太一
とは言え、同じ会場=千葉・ZOZOマリンスタジアムのライブとしては、彼らが10年ぶりに活動再開の狼煙をあげた『THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018』のファイナルだった2018年8月15日のライブのほうが、特別な意味合いはあったのかもしれない。今回はあくまで、7月から北海道・熊本・愛知・大阪とまわってきた『Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023』のファイナルという位置づけ。もっと言えば、活動再開してからフェス出演やツアーを重ね、2022年に16年ぶりのニューアルバム『The End of Yesterday』を発表し、今年3月からのリリースツアー『The End of Yesterday Tour 2023』を経て、名実ともに「現在進行形のバンド」となったELLEGARDENの、5年ぶりのZOZOマリンスタジアム公演となる。だからこそ、5年前の「特別感」という魔法を取っ払ったところで、ELLEGARDENの地力や、これまで積み上げてきたものが、どれだけ発揮できるかが試される機会だった。そんなライブで、彼らはいつもと地続きの現在進行形のパフォーマンスを見せながら、たしかに魔法のような、名状しがたい感動を巻き起こしたのだ。そこには、活動再開してから5年間をかけて再会や「初めまして」を交わした人たち、そして、今回のZOZOマリンでやっと会えた人たちの想いも関わっていたと思う。
ELLEGARDEN 撮影=三吉ツカサ (Showcase)
ELLEGARDEN 撮影=西槇太一
幕開けは『The End of Yesterday』収録の “Breathing”という、5年前にはなかった曲調をオープナーに持ってくるという勝負に出て、完璧なアンサンブルで圧倒。そして、これまでも多くの歌声で「僕らの歌」にしてきた “Space Sonic”“Supernova”を畳みかけたあと、その2曲に負けないくらいのシンガロングを《We get it,get it,go》と沸き起こした『The End of Yesterday』収録の“チーズケーキ・ファクトリー”も素晴らしかった。『The End of Yesterday』収録曲も、多くの人生を彩り始めていることの証だ。さらに、セットリストに入っていた楽曲の中でも“Stereoman”は、ELLEGARDENの楽曲が孤独に寄り添ってくれた経験を持つすべての人に染みたと思う。孤独は変わらないかもしれないけれど、仲間はこんなにいる。そんな喜びを、スタジアム・ライブだからこそ噛みしめることができた。
ELLEGARDEN 撮影=三吉ツカサ (Showcase)
ELLEGARDEN 撮影=三吉ツカサ (Showcase)
スタジアム・ライブは、ライブハウスが主戦場のバンドにとっては課題もあるけれど、この日は距離感もほとんど気にならなかった。強い風も味方につけて、音と想いを乗せて一体感を高めた “風の日”、“サンタクロース”の、プレゼントを手渡されたような温もり。さらには、生々しい歌声とギターのうねりに琴線が震えた“Sliding Door”も、いろいろなライブハウスを思い出すテンションだった“Salamander”も、本当に「すぐそば」に感じられたのだ。
楽曲と演奏と、想いがしっかりシンクロしていたところも大きい。生形真一(G)の「ELLEGARDENは誰にも負けないから」という言葉は、次に演奏された “Fire Cracker”の珠玉のアルペジオで体現されていた。さらに細美武士(Vo・G)の「今日が俺たちの人生のピーク」という言葉からはじまった“The Autumn Song”では、限りなくピークが続いていきそうなグルーヴを感じた。また、『The End of Yesterday』収録のテクニカルな四つ打ち曲“Perfect Summer”で、高橋宏貴(Dr)が華麗かつ楽し気にビートを刻み、そこに3人が見事に寄り添う、そのアンサンブルは今のELLEGARDENのムードを表しているようだった。
ELLEGARDEN 撮影=西槇太一
貫いてきたメッセージも、さらに強固に感じられた。ずっと彼らが歌い続けてきた「自分の道を迷わずに進んでいく」という意思をシンガロングしながら噛みしめた “ジターバグ”や、そんな彼らが歩んできた物語を実感する“虹”などハイライトが続くなか、細美にMCを促された高田雄一(B)。大舞台にも関わらずいつもの調子で「ほんとに言うことがないんですけど……」と戸惑いつつも、「またやりましょう」と宣言! 細美も「死ぬまでにもう一回ここでやりたい」と続ける。その後の“Make A Wish”では、再び会うための約束、それまで戦い続ける決意が、シンガロングやジャンプとなって、スタジアム全体にキラキラと輝いていた。続けて“Strawberry Margarita”がピースフルに響いたエンディングも最高だった。
アンコールでは、現在進行形のELLEGARDENにとって大切な一曲とも言える“Goodbye Los Angels”を披露。そしてダブルアンコールの “金星”では、ていねいに歌い鳴らされる一言、一音が心に刻まれていった。この《大事な事》を、いつまでも慈しんでいたい――その気持ちを、きっとあの場にいた誰もが感じていたことだろう。
ELLEGARDEN 撮影=西槇太一
自らカメラを持つ雄一、祈るように感謝する生形、両手を広げてありがとうを伝える高橋、掌が千切れそうなほど拍手する細美。それぞれの形で感謝を伝えた4人がステージを降りてから、大輪の花火が夜空を彩るなか頭をよぎった――「生きていてよかった」と。この5年間、さらに彼らと出会ってからの20年の中で自分や世界に起きたこと、そのたびに彼らの楽曲と重ね合わせて生きてきたことを、ライブ中の2時間で思い返していたのだ。なんで彼らの楽曲は、こんなにも人生そのものになるんだろう。きっと彼らが誰よりも人生をかけているからだろうし、それにたくさんの人が呼応しているからなのだと思う。
私は、それなりに年齢と経験を重ねた今も、彼らと出会った頃と同じく《最後に笑うのは正直な奴だけだ》と信じている。この日、奇跡が起きたのは、あの場所にいた全員がそう信じていたからだ。音楽の力、ELLEGARDENの力、一人ひとりの力を、ひしひしと感じずにはいられない、奇跡のようで奇跡じゃない、紛れもなく真実しかない夜だった。

文=高橋美穂

なお、この日のセットリスト・プレイリストが各配信サイトにて配信スタート。また、同公演のライブ特番が10月28日(土)20:30よりWOWOWにて放送される。

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