初の全編顔出しライブ開催!MyGO!!!
!!の5th LIVE『迷うことに迷わない』
レポート

2023年8月12日(土)、KT Zepp Yokohamaにて、MyGO!!!!!(マイゴ)の5th LIVE『迷うことに迷わない』が開催された。
MyGO!!!!!は、ブシロードの「BanG Dream!」(バンドリ!)プロジェクトから生まれた、ボーカル・高松燈役の羊宮妃那、サイドギター・千早愛音役の立石凛、リードギター・要楽奈役の青木陽菜、ベース・長崎そよ役の小日向美香、ドラム・椎名立希役の林鼓子からなる5人組ガールズバンドだ。結成の2022年春から、いわゆる「覆面バンド」のごとく、役を務めるキャストは不明のまま活動を開始したが、2023年の4月に開催された4th LIVE『前へ進む音の中で』のアンコールパートでそのキャストがついに発表され、顔出し解禁となった。
全編においてキャストの顔が見えるライブは今回が初めてであり、フルキャパシティで2,000人規模となる会場のチケットもSOLD OUTしたという。
もちろん、それ以上の規模の会場での演奏実績もある彼女たちだ。筆者も今年の2月、有明アリーナにて開催された『BanG Dream! 11th☆LIVE』では、彼女たちが前座として登場した瞬間に立ち会った。15,000人規模の会場で顔を隠したままMCを披露するボーカル・燈のたどたどしい様子は、役柄に沿った演技も入っているとはいえ、規模の大きすぎる会場を前にして実際に怯えているようにも思えた。
それから4回目を経て、5回目の単独ライブへ挑んだ今回。6月からはアニメ新シリーズ『BanG Dream! It’ s MyGO!!!!!』も放送開始となり、それぞれのキャラクターの関係性や個性、過去なども明らかにされていく中で、より彼女たちの存在をしっかり感じられる舞台となっていたように思う。一人ひとりが抱える痛みや切なさ、そしてそれを乗り越えようとする力強い希望が、ダイレクトに伝わってくるようだった。

1曲目からアニメのテーマソングともなっている「壱雫空」、2曲目に1st Single「迷星叫」、さらに3曲目に配信シングルとしてリリースした「無路矢」と既存のオリジナル楽曲で畳みかけたあと、4曲目にPoppin'Partyのカバー「Time Lapse」を披露すれば、会場はバンドリーマー(ファン)たちの熱気で一気に埋め尽くされる。
楽曲の合間のMCはたどたどしく、メンバー同士もギクシャクした様子はある。ボーカルの燈は言葉が途中で続かなくなり、後ろにいるベースのそよに助けを求めてしまう。ドラムの立希は、燈に対して「水、ちゃんと飲んでね」と優しいが、サイドギターの愛音が「いいなー、私も水飲んじゃお」と言えば、「いいな、って何?勝手に飲めばいいじゃん」と冷たい。そしてリードギターの楽奈は、愛音から「頑張ろうね」と声をかけられても「うん」と反応が薄い。まさしくアニメから飛び出してきたままのようなバラバラな彼女達の姿に微笑ましさも感じつつ、ひとたび演奏が始まれば、そのバンドとして一体感のある演奏や歌声に自然と聴き惚れてしまう。
4曲を終えて場面転換と共に詩の朗読を挟むと、5曲目からは5人がそれぞれ舞台の中央に集まって各々イスに座り、ギターやベースもアコースティックに、そしてドラムもカホンとシンバルというシンプルな構成へ変わる。アニメのエンディングテーマの「栞」、さらにアコースティックバージョンで「音一会」と「迷星叫」を演奏した。穏やかに、しかしより切なく、一つひとつの曲を奏でていく。
アコースティックは誤魔化しがきかない分、まだまだ不慣れのような、初々しく感じてしまう部分もある。しかし同時にそれが、今の彼女たちの魅力ともなっているようにも見える。
8曲目からは再びエレクトリックなバンド編成に戻り、 ボカロ曲カバーの「君の神様になりたい。 」、オリジナル楽曲の「潜在表明」と「影色舞」を披露した。感情を叫ぶ楽曲、心の声を振り絞る楽曲、あらゆる不安を忘れ去るかのごとく軽快に踊る楽曲。個性も様々な楽曲を披露しながら、すべてMyGO!!!!!らしいステージにまとめ上げるのは、さすがもう5つ目ともなる単独ライブに進んできたバンドという印象も受ける。片やアニメの方では、まだピンチヒッターとして1つのライブにしか出ていない彼女たち。いま舞台で見ているのは、アニメで描かれていた彼女たちの未来の姿なのだろうか。
そして彼女たちのやりとりも、アニメの姿とは少し先を感じさせるものがある。曲の合間のMCで、観客から「可愛い」と言われた立希が「可愛いのは燈でしょ」と返せば、「リッキー(立希)、私にも可愛いって言ってよ」と愛音がおねだりする場面が。「はぁ!何で?」と苛立つ立希に、燈やそよまで「立希ちゃん、お願い」「言ってあげなよ」とせがむ。それで立希もしぶしぶ「まあ…、かわいい……方なんじゃない?」と愛音に対してようやくデレたような台詞を口にすると、客席もこの日一番ではと思えるほど一気に湧き上がった。
早くもライブは終盤へ。04 Limited Sazabysのカバー曲「swim」を11曲目に披露した後は、ライブ初披露となる新曲「碧天伴走」と「焚音打」の2曲を披露し、5人揃って舞台を後にした。アニメではバラバラな彼女たちがいかにしてひとつになったのか。『迷うことに迷わない』というライブのサブタイトルからも想像はめぐらせられるが、「焚音打」の歌詞にある「それぞれの拳の中に握っているものは違ったっていいんだよ」からもより強く、彼女たちが選び取ったのであろう未来を感じられる気がした。
その後、「アンコール!」ならぬ「マーイーゴ!」コールの後は、ライブTシャツに着替えたメンバーが再び舞台へ戻ってきて、アンコール1曲目に「名無声」を披露。そしてようやく、キャラクターではなくそれぞれの声優自身としてのMCを始めた。
その中では、小日向美香がアニメの現時点での最新話である9話の展開について触れ、自身が演じる長崎そよの状況に涙する瞬間もあった。「やってしまったー!今日は泣かないつもりが……」と叫びながらも、メンバーたちに励まされながら語ったのは、こんな言葉だ。
「そよちゃんを、どういう気持ちでステージに立たせてあげたらいいんだろうって凄く迷ったんですけど、メンバーのみんなが『美香ちゃんが考えるそよちゃんの思いを持って、ステージに立てばいいんだよ』って背中を押してくれました。メンバーがいたから、迷うことに迷わなくていいって私も思うことができました」
キャラクターはあくまで役だが、それにずっと寄り添い、演じ続けている彼女たちにとってみればリアルそのものだ。そして、そんな彼女たちに惹かれて応援する我々にとっても、現実とほぼ大差がない。MyGO!!!!!に関しては特にそれが強く、深く感じられる気がする。迷いながら、常に必至でメンバー同士や音楽と向き合っているからこそ、よりリアルで等身大の存在なのだと思う。
最後は再びキャラクターに戻って「音一会」を熱唱し、その圧巻の舞台を終えた彼女たち。先に4人が手を振りながら舞台を離れた後、最後はドラムの立希こと林鼓子が深々と頭を下げ、笑顔で去っていった。

その林鼓子が、MCの際に「MyGO!!!!!を見つけてくれてありがとうございます」と言っていたのも印象に残っている。ある少年漫画の設定のようだが、迷子と迷子は惹かれ合う性質を持っているように思う。バラバラの彼女たち5人がバンドに引き寄せられたのも、やはり一人ひとりが生きることに悩める「迷子」だったからなのではないか。
そしてこの社会で必死に生きている、迷子である我々聴き手も、彼女たちに引き寄せられたのだろう。だからこそ、その演奏や歌声を「自分たちのための音楽だ」と感じ、推さずにはいられない。
人生とは、どうする、どうしよう、どうしたいの連続であり、ときには何を選択するのも怖くなってしまって前に進めなくなることもある。けれど、どんなに迷っても彼女たちは、前へ進むことを選んだ。できれば誰も傷つかないような最良を選び取りたい。だが、それでも傷つくことはあるだろう。「何も迷わない」という選択をすれば、自分ひとりで道を切り開く強さを得られる代わりに、付いてこれない仲間の気持ちに気づけなくなることもあるかもしれない。
だから「迷うことに迷わない」というのは、人と人が接していくうちに必ず起こる衝突やトラブル、それすら引き受け、寄り添ってしっかり受け止めて、ゆっくりでも確実に前へ進むという意味に思える。そう考えるならば、「迷うことに迷わない」とは、なんと強い信念なのだろうと感じられる。
傷を負い、苦しみや悲しみを抱え、それでもバンドを続けていきたい、音楽を届けていきたいと願う彼女たち。そしてその思いを受け止める我らバンドリーマーの面々。アニメの彼女たちがどんな結末をたどるのか、最後まで見届けたい。やがてリアルで活動する彼女たちが、今後どんな音楽を奏でていくのかも。
8月27日(日)にはアニサマ、そして11月4日(土)には『BanG Dream! 12th☆LIVE』3DAYS公演の2日目に単独ライブ「ちいさな一瞬」を開催することが決まっている彼女たち。迷いながら進む彼女たちの成長を目の当たりにできる今は、もう二度とこない貴重な瞬間だ。今という時こそ、彼女たちの生き様をその目に焼き付ける、絶好の機会なのかもしれない。
取材・文:平原 学

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