【彩音 インタビュー】
失敗してもいいという気持ちで
前に進むことが大事
カップリングに詰め込まれた
『ひぐらし』の世界観
楽曲を聴いて面白いと思ったのは、1番と2番の構成が違うところです。1番は《Dream on》と歌うところが何カ所か出てきますが、2番ではまったく出てこなくて、最後にまとめて《Dream on》を連呼するところが良かったです。
嬉しいです! 私は音楽に正解はないと思っているので、こういう構成もすごくありだと思いました。メロディーもキャッチーで、AメロもBメロも出てくる全てのメロディーがサビなんじゃないかと思うくらいにインパクト抜群の楽曲なので、この構成を聴いた時はライヴで盛り上がる楽曲だと確信しました。ゲーム内ではゲームサイズの「Dream ON」が聴けますけど、私としてはやはりCDでフルサイズを聴いてほしいですね。構成が変わる2番にも《Dream on》は出てこないけど、コール&レスポンスができる部分がちゃんとあるので、両方聴いてもらってライヴを楽しみにしてもらえたらと思います。
ゲームでは1番の部分がまるまる流れるそうで。曲の魅力がギュギュっと詰まっていますね。
はい。その上で2番以降も聴いてもらうと、1番には出てこなかったメロディーも出てくるので、CDではゲームとはまた違ったこの楽曲の魅力をお届けできると思います。
Dメロに出てくる《もう一度その未来へ》や《生き残る為に戦う女神》など、歌詞には彩音さんの経験も込められているのかなと思ったのですが。
失敗ばかりで成功が全然見えなくて、挫折ばかりしていた時期もありましたけど(笑)。いろいろな解釈をしていただければと思います。
彩音さんの経験も含めた上で、この楽曲を通して感じてほしいメッセージはありますか?
人生を生きていく上で、誰もが成功を目指しているけど、その成功を掴むために失敗から学ぶことも多いと思っています。失敗することを恐れて一歩進むことを躊躇うのではなく、失敗してもいいという気持ちで前に進むことが大事だなと。そういうことを楽曲を通して感じてもらえたら嬉しいです。
彩音さんご自身の中で、“あの失敗は振り返るといい経験だったな”と思ったことは?
毎日が失敗の連続ですよ(笑)。この前のライヴもすごく楽しかったけど、“あそこを改善したら次はみんなにもっと楽しんでもらえるかな?”と考えてしまいます。まだまだ未完成な状態なので、“いつか成功するその日まで頑張るぞ!”みたいな感じですね。
その時は100パーセントなんですよね。
そうですね。“今日は最高!”と思って本人はやっているんですけど、終わって時間が経つと改善点が見えてくるんです。それに“今日は成功した!”と思ってしまうと、そこで成長が止まってしまう気がしていて。そうならないように、客観的な視点を持つことも心がけています。
目標とか辿り着きたい場所が明確にあるからこそでしょうね。
歌をずっと続けていくことが目標なので、毎回満足することなく、課題を見つけて前に進めたらと。例えば“今日はスカートの丈が少し長くて動きづらかったから、次回は少し短くしてもらおう”とか、そういう小さいこともそうで、きっと人それぞれでいろいろあると思います。
カップリングの「揺籃より愛を込めて」と「libra -AYANE SoloVer.-」については?
この2曲は昨年12月に配信されたEP『ひぐらしのなく頃にイメージソング~紡ぎ彩流~』に収録された楽曲で、『ひぐらしのなく頃に』と『うみねこのなく頃に』というシリーズの楽曲を手がけていらっしゃる、ひぐうみSoundさんが私のために書き下ろしてくださった楽曲です。これまでもひぐうみさんに楽曲をご提供いただいたことはありましたけど、今回のように深くご一緒させていただいたのは初めてで。音楽に正解がないことを実感させてくれましたし、私の中の新しい引き出しを開いてくれました。例えばレコーディングではひぐうみのみなさんが直接ヴォーカルディレクションをしてくださったのですが、“オケに合わせてどんどん力強くするのもありだけど、逆に吐息で語りかけるような歌い方にも挑戦してもらえませんか?”などのディレクションがあって。実際に指示のどおり歌うと“あっ、確かにこっちのほうがいいかもしれませんね!”となって。すごく勉強になりました。
「揺籃より愛を込めて」は歌詞がめちゃめちゃ怖いですね。
童謡っぽいところがあったり、《嘆きの森へ 振り返らず》というフレーズがあったり、『ひぐらし』のキーワードである“六月”とか、『ひぐらし』の世界観がたっぷり落とし込まれたものになっています。
ミディアムバラードの楽曲という部分では表題曲と対照的ですね。
個人的にはこういったテンポ感の楽曲は聴くのも歌うのも好きなんです。求められるのが「Dream ON」のようなアッパーでパワー感があるような曲が多いので、どうしてもそういうイメージになってしまっていますけど。実はいろいろと仕掛けがあって、私が2007年にリリースした「嘆きノ森」という曲があるのですが、ちょっと「嘆きノ森」っぽいと思ってもらえる箇所があるとかないとか(笑)。気づいてくれる方がいたら嬉しいですね。分からなくても興味を持ってもらって、遡って「嘆きノ森」を聴いてもらいたいです。
もう一方の「libra -AYANE SoloVer.-」は『~紡ぎ彩流~』に収録していた本木咲黒さんとのデュエットを彩音さんがソロで歌っていて。
本木さんのパートを私の声で新規収録しました。声がクロスしている部分があるので、ライヴで歌うのはちょっと厳しいのですが、その時はできれば本木さんにも来ていただいてぜひ一緒に歌えたらと思っています。
歌詞は本木さんが書かれていますが、最初に読んだ時にどんなふうに思いましたか?
『ひぐらし』には北条沙都子と古手梨花というキャラクターが出てくるのですが、そのふたりのバトルソングなんじゃないかと。《Trap 挑みなさい 私に》など作品を観ている方なら“あぁ、トラップね!”って絶対に分かるような歌詞になっています。『~紡ぎ彩流~』に収録されているオリジナルバージョンの時は、本木さんと一緒にブースに入ってレコーディングしたので、お互いの息づかいを感じながら歌ったオリジナルバージョンもぜひ聴いてほしいですね。ちなみにその時の様子は私のYouTube公式チャンネルに上がっているので、気になった方はぜひご覧ください。また、まだ『ひぐらしのなく頃に』シリーズをご存じない方は、この「揺籃より愛を込めて」と「libra -AYANE SoloVer.-」をきっかけに、『ひぐらし』シリーズに触れていただいて。私は『ひぐらし』シリーズでも数多くの楽曲も担当していますので、他の楽曲も聴いてもらいたいですね。
『ひぐらし』シリーズは彩音さんにとって大事な存在なんですね。
はい。日本だけじゃなく海外でも人気が高い作品で、海外でライヴを行なう時は「コンプレックス・イマージュ」という曲など、『ひぐらし』シリーズの楽曲が定番で人気です。また、それ以外にも今回の表題曲の『ネプテューヌ』シリーズや、『Memories Off』というシリーズもシンガーとしての私のキャリアを育んでくれたので、この3作品のシリーズが私の活動の中では大きな柱になっています。これらの作品の楽曲はこれからも大切に歌っていきたいです。
そんな彩音さんは来年はデビュー20周年ですね。
アニソン業界の先輩方に比べたら、本当にまだまだひよっこですけど(笑)。支えてくださるファンやスタッフのみなさんのおかげで20年続けることができています。何かお祝いのイベントができたらいいなと考えているので楽しみにしていてください。
取材:榑林史章