ヤユヨの挑戦と成長、そして転機ーー
感動のシンガロングで締め括った、バ
ンド史上最大規模のワンマンツアーフ
ァイナル公演

青い愛とぐるぐるワンマンツアー2023』2023.7.16(SUN)東京・Shibuya eggman
3月15日にリリースした3rdミニアルバム『SPIRAL』をひっさげ、全国を回ったヤユヨ史上最大規模のワンマンツアー『青い愛とぐるぐるワンマンツアー2023』が7月16日(日)、東京・Shibuya eggmanでツアーファイナルを迎えた。
「今回のツアーは3rdミニアルバム『SPIRAL』をひっさげて回っているんですけど、去年まで出してきたアルバムよりも成長しようっていろいろなことに挑戦できたアルバムだって思うんです」
この日、中盤のMCでリコ(Vo.Gt)が語ったとおり、『SPIRAL』の大きなテーマが成長とその為の挑戦だったことを考えるなら、ファイナル公演の見どころは彼女達がライブで体現した成長だったに違いない。しかし、それだけに止まらず、ヤユヨが今持っているあらゆる魅力を見せつけたところにこそ長尺のセットリストに挑むワンマンライブならではの見応えがあったと思う。
そんな今の彼女達の集大成とも言えるライブは、『SPIRAL』収録の真夏にふさわしいポップなロックンロール「ここいちばんの恋」から始まった。「東京、元気いいね!」と客席の反応に対して、思わずリコが言った言葉から、観客がこの日をどれだけ心待ちにしていたかが想像できる。
「東京! ツアーファイナル! 絶対いい日にしましょう!」(リコ)
そこからバンドは「いい日になりそう」「星に願いを」とロックンロール·ナンバーを繋げ、逸る観客の気持ちをしっかりと受け止めながら、カリスマを持つ奔放なボーカリストとリード·フレーズをエモーショナルに奏でるギタリスト、そしてそんな2人をグルーヴィかつタイトなプレイで支えるリズム隊というアンサンブルの魅力もアピールしていく。
そして、「踊れますか?」(リコ)と披露した「Yellow wave」がフロアを揺らす。すーちゃん(Dr.Cho)が鳴らす跳ねるビートに合わせ、ハジけるような笑顔で演奏する4人の姿は、彼女達が掲げる「ジャンルに縛られずに音楽がしたい。日常を音にしたい。音楽は永遠に楽しい!」というモットーを、その言葉通りに表していたと思う。
そんなふうにヤユヨがどんなバンドなのか、まず印象づけた序盤から一転、中盤では新境地に挑戦した『SPIRAL』の「聞こえないの」「POOL」「このままじゃ」に加え、『SPIRAL』リリースの1週間後に配信したシングル「アイラブ」を披露。同期に頼らず、ぺっぺ(Gt.Cho)が1曲の中でギターと使い分けながら弾いたキーボードの音色とともにヤユヨサウンドにおける成長をアピールする。
中でも「POOL」は以前のヤユヨにはなかったアーバンな魅力を打ち出したこともさることながら、リコのラップ、ワウを使ったぺっぺのファンキーなカッティング、グルービーなフレーズに加えたはな(Ba.Cho)のスラップといったメンバーそれぞれのプレイにおける挑戦という聴きどころも。
「ラップは難しかったけど、いい挑戦になった。挑戦していく姿を見せられてよかったです」(リコ)
「今までとはちょっと変わった感じがある。新しいヤユヨと言うか、階段を上っていく感じの曲になった」(はな)
挑戦を振り返るメンバー達の言葉にも自信が窺える。そこに繋げた「アイラブ」と「このままじゃ」もミッドテンポの演奏に乗せて、同期のキーボードや、ディレイを掛けたギターの音色を使いながら鳴らしたアトモスフェリックな音像が新たなサウンドを求めるバンドの意欲を雄弁に物語っていた。作品を重ねるごとに、ぺっぺが奏でるギターの音色もかなり多彩になってきた。そうだ。リコの歌と掛け合う「このままじゃ」のすーちゃんのコーラスワークも聴きどころだったことも忘れずに書いておかなければ。
「やっとこの歌を歌えることがうれしいと思います。ツアーファイナルだから、大きな声で歌えますか?」
リコのリクエストに応え、ユー!ユー!ユー!ユー!と観客がシンガロングの声を上げ、最後は「せーの!」というリコの掛け声に合わせ、イエー!と叫んだ「ユー!」からの後半戦は、間に「うるさい!」「ピンク」といったタイトなアンサンブルで聴かせるロックンロールを挟みながら、ヤユヨのアンセムを観客とともに歌い、一体感を作り上げる。
「愛ということを1つテーマにして、今日までツアーしてきたんですけど、あいかわらず愛の意味を言葉で表現するのは難しい。でも、ライブハウスでライブをやっていると、お客さん1人1人から愛情が感じられ、それがうれしかった。私自身も音楽、メンバー、お客さん1人1人、ライブハウスという好きなものが勢揃いしている環境で好きなことをやらせてもらっていると、愛しているという感情を言葉で表現したくなる。そんなことを思ったツアーでした。これからも私達なりの音楽という愛を、みんなの心に渡しつづけていけたらいいなと思っておりますので、この歌を、心を込めて一生懸命歌いたいと思います」(リコ)
そんなふうに語ってから演奏したのは、『SPIRAL』収録の「愛をつかまえて」。そういう思いを込めた曲だから、リコが1人で歌いきるのかと思いきや、「大好きなあなたと一緒に歌っていいですか?」とラスサビ前に言ったリコの言葉に応え、観客がシンガロング! 狙ってもなかなかできないそんな展開を、この日のハイライトと言うことに異論がある人はいないのでは。
「まだまだ一緒に歌ってくれますか?」(リコ)
続く「キャンディ」も観客のシンガロングの声が響き渡る。その光景はファン1人1人の中にヤユヨの楽曲が染みわたっていることを物語るものだったと思う。そして、駆け抜けるように演奏した本編最後の「futtou!!!!」、バラードに歌の凄みを込めたアンコールの「あばよ、」を挟んで、ツアーファイナルの大団円を飾ったのもヤユヨのアンセムーーどこかノスタルジックなメロディを持つ「さよなら前夜」だった。
「最後、一番でかい声で歌って帰りますか。(ツアーで回った)12か所の中で一番大きな声を期待しています!」(リコ)
観客の反応が、リコの期待以上だったことは、「さすが!ありがとう!みんなの声を聞けてよかったです!」とリコが叫んだ快哉からも十二分に伝わるだろう。その「さよなら前夜」を演奏する前にバンドは9月から全国8か所を回るワンマン&対バンツアー『赤い愛でスタンドバイユー!ツアー』を開催することを発表した。
ご存じの通り、8月4日(金)の「ヤユヨの日」の企画ライブを最後にすーちゃんがバンドを離れることが報告されたばかりだっただけに、新たな発表はファンにとって、いつも以上にうれしいものになったに違いない。サポートを迎えた新体制で、初めて回る同ツアーのファイナルは、ヤユヨ史上最大規模となる渋谷WWWXワンマンにも挑戦する。キャパ700人というからeggmanの倍。伸び盛りのバンドらしい挑戦が頼もしい。
ヤユヨは成長とともに転機も迎えたようだ。そんなことを最後に印象づけた今回のツアーファイナルをステップに彼女達はさらなる飛躍を目指す。
取材・文=山口智男 写真=オフィシャル提供(撮影:るふぃ)

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