【sajou no hana インタビュー】
ずっとやりたかった
人間の裏の感情を一枚で表現
数多くのアニメソングを手がける渡辺 翔が率いるユニット、sajou no hanaがニューシングル「ニューサンス」を完成させた。表題曲はTVアニメ『スパイ教室』2nd seasonのエンディングテーマとして話題の楽曲で、スパイっぽいサウンドと妖艶さが秀逸。ヴォーカルのsanaが楽曲制作やMV制作の裏話や、今作で挑戦したことなどを話してくれた。
臆病な人ほど社会を
冷めた目で見ている
「ニューサンス」は『スパイ教室』2nd seasonのエンディングテーマですね。
sajou的に今までとは違った新しいテイストの曲に挑戦していきたいという話をしていて、渡辺 翔さんが制作していた何曲かのデモの中に、その時点で“スパイ”という名前の曲があったんですよ。聴いたらすごくカッコ良くて、歌詞は全部英語で少し洋楽チックだったんですけど、イントロが耳に残ったんです。それをKADOKAWAの方に聴いていただいたところ、“この曲にハマりそうなアニメ作品があるから、エンディングテーマをやりませんか?”とお声がけいただいたのが『スパイ教室』で。それから歌詞を日本語に書き直して、サウンド面的にも『スパイ教室』にマッチし、なおかつsajouっぽさも感じられるようにブラッシュアップしていきました。
スパイ映画を彷彿させるサウンドが、めちゃめちゃハマっています。
本当にそうなんです。私もあのイントロを聴くだけで、すごくテンションがアガります。これがアニメで流れたらと思うと、きっと盛り上がってくれるんじゃないかと思いました。
『スパイ教室』はシナリオを読まれたそうですね。いかがでしたか?
作品の内容を知る前にキャラクターの絵を先に見たんですが、みんなめちゃくちゃ可愛くて、お洋服もちょっとゴシック寄りのデザインで、それが自分的にすごく好きなテイストで! “すごく可愛い作品だな”と思ったところから入ったんですけど、いざシナリオを読ませていただいたら、なかなかエグい内容でびっくりしました。女の子たちそれぞれが背負っている過去は話を聞くだけでつらくなるようなものばかりだし、きっとそのエグさも作品の魅力だと思いましたし、それぞれ重い過去を背負った女の子たちが集まってスパイを目指すというストーリーが本当に面白いと思いました。
女の子たちの健気さにキュンとしますよね。
そうですね。キャラクターの中だと、私の推しはエルナちゃんです。一番幼い子なんですけど、不幸体質で、自分だけじゃなく周りも巻き込んで不幸にしてしまうんです。それで家族や友達を傷つけてしまうこともあって。それを思うと、抱えているもののエグさ的にはエルナちゃんが一番なんじゃないかと。きっとすごい孤独を感じていて、それをあんなに小さい子が抱えていると思うと、こちらもつらくなります。でも、仲間に支えられながら、ちょっとずつ心を開いていくところが私的には胸キュンポイントです。
“ニューサンス”というタイトルですけど、これはどういう意味ですか?
“厄介者”という意味です。歌詞としては自分自身を厄介者だと思っている人のことを歌っているのですが、とても挑発的で、聴いている人を煽るようなところがあって。そこはsajouとして新しいし、私としても挑戦でした。大胆なカッコ良さがありながら、ちょっとずつ人の心をチクチクと刺すみたいな。
歌詞で気になったところなどはありましたか?
私自身も孤独だったり臆病な部分が強い人間だと思っているので、歌詞のラストに出てくる《落書きだらけの曖昧な運命》というフレーズが胸に響きました。どう生きていいか分からない人には、きっと刺さるんじゃないかと思いますね。“本当にこのままでいいんだろうか?”といった潜在的に抱えている感情というか。臆病な人ほど社会を冷めた目で見ているので、そういう人にはより共感してもらえる部分が多いと思います。
sanaさんは臆病なんですか?
めちゃめちゃ臆病者ですよ。自分を取り巻く環境が良くても悪くても、今生きている世界にいるのが嫌で、遠くに行きたい願望が昔から強くて。それはきっと現実から逃げ出したいと、いつも思っているからなんだと思います。子供の時は遠くばかり見ていたのですが、今は大人になったから実際に遠くへ行ってみようと思って、少し前にフランスにひとりで行ったわけですけど(笑)。でも、実際に行動に移すかどうかは別としても、潜在的にそう思っている人はきっと多いと思います。そういう人の心をチクチクと刺激するので、翔さんの歌詞はやっぱりすごいなって思います。
歌い方でも挑戦がありましたか?
はい。しゃくり上げるように歌い上げたりとか挑発的な雰囲気で歌ったのは、私としては初挑戦でした。これまでのsajouは包み込むというか、温かい曲が続いていたので、今回はそれとは少しかけ離れた曲だと思っていて。翔さんから“ちょっと挑発的に煽るような感じで歌ってほしい”と言われた時は、“挑発的に歌うってどうやるんだろう?”って考えちゃいました。それでちょっと上から目線っていうか、自分にも刺さった歌詞なので“あぁ、つらいわよね。あなたもそうじゃない?”みたいな、“〜じゃない?”って雰囲気に重きを置くようなイメージで歌いました。
sanaさんはソロでも活躍されていますから、そういういろいろな経験がsajouに活かされているのでしょうね。
されているんですかね?(笑)
されていないんですか!?
ソロでかかわる楽曲は作品を第一に考えながら、結構自由に好き放題歌わせていただいているんですね。でも、sajouは私が“こうしよう”と思って歌っても、だいたいメンバーから“違う”って言われて、自分の考えを封じ込められるのがいつものことなんです。今回の「ニューサンス」でも封じ込められました(笑)。まぁ、自分の中の引き出しがなかっただけなんですけど、最初は結構ストレートにカッコ良く歌ってしまっていたので、翔さんから“違うな。もっと煽るように”と言われて、そこを考えることで新しい引き出しを開けてもらったみたいな。メンバーはプロ中のプロですし、楽曲の完成イメージも出来上がっているので、その期待に応えなきゃと思って私はいつも必死です。そういう意味では“sajouでの経験がソロのほうに活かされている”と言うほうが正しいかもしれません。
これはsajouならではだと思う部分はありますか?
歌詞の感情をすごく深掘りするところですかね。それがsajouの特徴であり、活動方針でもあると思います。ただ歌詞の感情にどんどん深入りしていくので、sajouのレコーディングはつらくなることが多いです。歌詞がすごく刺さってしまうので。
関連ニュース