ポスト印象派の世界に没入し、ゴッホ
が描いた《ひまわり》の海に溺れる 
2023年のイマーシブミュージアムを体
験!

『Immersive Museum TOKYO 2023 “ポスト印象派” POST IMPRESSIONISM』(以下、イマーシブミュージアム)が東京・日本橋の日本橋三井ホールで2023年10月29日まで開催されている。最新テクノロジーを駆使した映像と音で名画に没入する新感覚体験が楽しめる本企画。20万人を動員した昨年に続き、第2弾となる今年は、ゴッホ、ゴーガン、セザンヌら「ポスト印象派」をテーマに前回以上のスケールで来場者を魅了する。ここでは開幕前日の7月6日に行われた内覧会の様子をもとに、本イベントの魅力を伝えていく。
それは印象派の終焉から始まる新しいお話
昨年20万人を動員したイマーシブミュージアムが今年も日本橋にやってきた。今回も会場となるのはCOREDO室町1・4階にある日本橋三井ホール。入場口に設けられた解説でポスト印象派の概略を掴んだら、いざイマーシブ(没入感)の世界へ!
高さ6メートル、約700平方メートルのホールに一歩足を踏み入れると、そこはゴッホの《ひまわり》が四方に描かれた圧倒的空間。夏の花が作り出す爽快さに包まれて、さっそくワクワクが止まらない。
しばらくすると上映がスタート。1879、1880、1881……と、印象派が隆盛を極めた時代の年号がカウントダウンのように刻まれていき、荘厳な音楽と「POST IMPRESSIONISM」の言葉でバシッと幕が上がる。
イマーシブミュージアムは作品そのものだけでなく、その背景に流れるストーリーもリスペクトしているところがポイントだ。例えば、一人の男性がとある建物の扉を開ける最初のシーンは、実はポスト印象派が生まれる前のお話。この男性は、1886年に初めて訪れたパリで、この年に開かれた“最後の印象派展”を訪れたであろう若き日のフィンセント・ファン・ゴッホだ。続いて映し出された館内には、ゴッホの眼差しから見た印象派絵画の数々が。彼の影を追いながら、まずは私たちも印象派からの時代の変化を追体験することになるのである。前回からのリピーターであれば、印象派がテーマだった前回から続く“ひとつなぎのストーリー”を感じられる演出といえる。
なお、イマーシブミュージアムは、どの位置からでも没入感が等しく味わえるように設計されている。立って見るのもよし、座ってみるのもよし。時に正面だけでなく左右や背後にも視点を移しながら、会場全体の雰囲気を楽しんでみてはいかがだろう。
スーラとシニャックが繰り出す点描の舞を見よ!
印象派絵画とゴッホの邂逅を経て、ついにポスト印象派のストーリーが始まる。そこまで穏やかだった音もEDM風の音楽に転換し、ズキューンとおなかに轟く響きとともに新時代の幕開けを告げる。
そして視界には無数のカラフルな粒が弾け出し、まるで打ちあう波のように複雑に色が混ざりあっていく。一つひとつの粒は、印象派絵画の光を科学的に分析したジョルジュ・スーラによる色の点描たちだ。やがてそれらは一枚の絵に集積し、彼の代表作である《グランド・ジャット島の日曜日の午後》が構成されていく。
スクリーンには、日傘をさしたご夫人たちがドーン!
一枚の絵として見た時も、描かれた当時のフランスの豊かさや賑わいを大いに想像させる本作だが、ここでは没入感の力がプラスされ、まるで自分たちも一緒にピクニックを楽しんでいるかのような気分になる。
続いて再び点描が渦巻き、次の「スーラとシニャック」のシーンに移っていく。ポスト印象派の画家たちは、印象派絵画を濫觴としながら、それぞれ独自の道を進んでいった。ただ、その中には画家同士の交流もあり、時にキャンバスを並べて技術を磨き合うこともあった。若くして亡くなったスーラと、彼の点描絵画を受け継いだポール・シニャックのように、そうした関係性を対比の形で見せてくれるのもイマーシブミュージアムの特徴だ。
次のシーンにも、カミーユ・ピサロとポール・セザンヌという2人の画家の親交に着目したストーリーが描かれる。若き日にパリに上京し、一旦は挫折を味わったセザンヌだが、その時の経験は後に師と仰ぐピサロとの出会いをもたらした。セザンヌがピサロのもとを訪ねては、二人はキャンバスを並べている。
ここでは両側のスクリーンに両者の肖像が表れ、同じ風景をそれぞれの視点で描いた作品が中央から左右へと流れていく。自然の中でも光や色に着目したピサロと、形に着目したセザンヌ。師弟関係にありながら両者には明確な違いがあった。兄弟のような歳の差にあり、人格者と偏屈者という性格的にも大きな違いがあった彼らが、互いの作品を見てどういう会話を交わしていたのか。いろいろな想像が膨らんでくる。
そして、さらに次のシーンへと移り、今度は化学の教科書に出てきそうな立体形が浮かぶモノトーンの世界へ…。そう、これは「自然を球体、円錐、円筒で捉えよ」と提唱し、近代絵画の父と呼ばれて構成の画家に影響を与えたセザンヌの技法を具現的に表したものだ。
やがて立体物は色づき始めて《ガルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山》に集約されていく。そこから再び立体物に分解されて別の作品が描かれていく。それはまるで、セザンヌの頭の中をのぞいているかのような体験が味わえる瞬間だ。一方で音に合わせて明暗を繰り返し、まばゆい作品への没入が次々展開される流れは、魂が洗われるかのようで心地よい。
バ、バカでかい《ひまわり》がこっちに迫ってくる……
後半のシーンは、ゴッホとポール・ゴーガンという二人の巨匠が主役だ。
まずはゴーガンのクロワゾニスムを表すかのように彫刻のような輪郭が表れ、その中に色が加わって彼の代表作のひとつ《説教のあとの幻影》が描かれていく。
続いて同じように彼の名作が表れては消え、その流れで、一時期共同生活をしていたゴッホとゴーガンのシーンへ。さらに終盤のゴッホの世界へとストーリーが展開されていく。
冒頭のシーンで印象派絵画と邂逅したゴッホ。ここでは、その後の彼の代表作をフルスクリーンで投影した圧倒的な映像体験が楽しめる。特に花びらがとめどなく溢れ出し、波のようにこちらへ迫ってくる《ひまわり》は言葉を失うような美しさ。そして川面がゆらめく《ローヌ川の星月夜》は、作品ではなく我々の体が流されているような錯覚すら感じる、最高の没入感だった。
このようにいろいろ書いてきたが、やっぱり今年も言葉だけでは感動を伝えきれないイマーシブミュージアム。ぜひ会場を訪れてポスト印象派絵画への没入体験を楽しんでほしい。
AIゴッホ先生がそっくり似顔絵を描いてくれる!
最後に少しだけ没入体験以外の楽しみも紹介しておこう。
プログラムの中ではゴッホの《自画像》が驚きの演出で表れるのだが、今回の会場内には、その名も「AIゴッホ」があなたの似顔絵を描いてくれるコーナーが登場(1回500円)。あなたの顔を見たゴッホ先生が、ふむふむとつぶやきながら、慣れた手つきでささっと世界で一枚だけの作品を仕上げてくれる。
発券されるQRコードからスマホに取り込めるので、待受画面にしてもいいし、プリントして家宝にするのもよし。SNSのネタにしても大いに盛り上がるはず。
名画をイメージしたドリンクなど、ミュージアムカフェのメニューも充実
アートにあまり詳しくない……という方には、7月で日向坂46を卒業する影山優佳がガイド役を務める音声ガイドの利用がおすすめ。さらに子どもの来場者には、女性誌「VERY」とコラボで制作された「ポスト印象派の巨匠が先生のおえかき教室BOOK」のプレゼントも。小学生以下の来場は無料なので、ファミリーでのおでかけにもぴったりなイベントだ。
「Immersive Museum TOKYO 2023 “ポスト印象派” POST IMPRESSIONISM」は、10月29日まで東京・日本橋の日本橋三井ホールで開催中。暑い夏、日本橋で最高の爽快感を味わって!

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