「これからもよろしく」ーー音楽の海
をタフに旅する現在の姿を見せたGal
ileo Galilei、7年ぶりのツアーを完

Galileo Galilei “Bee and The Whales” Tour 2023

2023.6.24 Zepp Haneda
夢よりも美しい現実というものが存在することを実感したライブだった。昨年10月のwarbearのライブで6年ぶりにGalileo Galileiの始動をアナウンスしてから8ヶ月。メンバーそのものはその時のwarbearと同じだが、音楽が立ち上げる感情も色合いも当然ながら全く違う。さらに昨年7月には同じ場所でBBHFのライブを見たが、その感触とももちろん違う。復活を待ち望んでいたファンや不在の期間にファンになった人も多いGalileo Galileiという存在と楽曲の唯一無二っぷりは現在のライブーー演奏はもちろん、照明や演出を含むチームとしての総合力で完全に証明されていた。長らく復活を待ち望まれていたからといって、不在の時期に必ずしも深化を果たすバンドばかりが現実にいる訳じゃない。Galileo Galileiはここに繋がる人生を生きていたのだ。そうでなければ現実が夢を超えてくるはずなんてないのだ。
Galileo Galilei
ステージの背景には開演前から左右のスクリーンに海の映像が映し出され、波の音が少しずつ大きくなるとともにゆっくり場内も暗転。日常と地続きでライブがスタートした感じだ。サポートの大久保淳也(Sax/Fl/Key)を含むメンバーが登場すると映像は外国人のオーケストラに。1曲目はパッシヴに「ヘイヘイ」からスタートした。岩井郁人(Gt)のザUKロックなソロ、大久保のサックスのロングトーンが力強い尾崎雄貴(Vo/Gt/Key)を盛り立てる。楽器の分離がよくリッチな音像が素晴らしい。雄貴がハンドマイクで歌う「死んでくれ」と、新曲が続くがフロアの反応は上々、というか歓喜に溢れている。波の音のSEが流れ、テクノテイストなインスト「Swimming」へ。さらに雄貴の弾くトイピアノの音には明らかな歓声が上がり「リジー」につなげていく。“どうだい、もうおつかいには慣れた?”という歌い出しの暖かさが今現在を示しているように聴こえる。イノセンスの塊のような映像にもGGの帰還を感じた。
Galileo Galilei
スクリーンが一旦降り、後方の6つのライトが強烈に明るい光を放つと、まるでステージ上の演者の魂のように見えるのが不思議なのだが、その強烈な明るさの中で尾崎和樹(Dr)の確かな8ビートが響き、岩井のフレーズが流れ出すと、ファンの感情も溢れ出して輝くようにシンクロした「恋の寿命」。ファンの“待ってました”感がストレートにステージに環流していく。日本のロックバンドでこれほど洗練された音像を聴いたことがないぐらい研ぎ澄まされている。曲が終わると即座に野太い男性の声で「おざきー!」と声が上がった。
コーラスとアコギに日向文が加わっての「車輪の軸」は、オリジナルのアメリカンロックテイストに加え、大久保のサックスにEストリートバンドのようなスケールの大きさを見たのだが、歌メロが持つ世界にとても似合っていた。さらに今回のセットリストの中でも最も驚きを持って歓迎されていたのが「くそったれども」だったように思う。豊かになったアンサンブルの中でもこの曲を今回のツアーから弾いている岡崎真輝(Ba)の主張しすぎない曲に献身するプレイが冴えていた。岩井と雄貴、そして大久保のフルートのユニゾンが独特の浮遊するアトモスフィアを立ち上げる「ウェンズデイ」。冷たく熱い性と死の匂いを放つこの曲の演奏が、会場ごとさらに深いところへ連れていくような感覚に陥る。再びスクリーンが上昇してメンバーの影が交差されるように投影され、初期ナンバー「僕から君へ」のイントロが鳴ると、この日一番の大きな歓声が起こる。強さを増した雄貴の声も、どこまでも澄み切った音像も、続けてきたからこそ手にしたものなのだと、この曲でつくづく感じ入る。
Galileo Galilei
もはや楽曲の新旧を忘れるほど同じ土俵に今の演奏が並んだ感覚を得たところで、全員が今回のツアーについて述べる。雄貴は「最初は自分とメンバーのために始動したけれど、皆さんが見にきてくれて、お客さんの前で見せるために始動したんだなと思います」と述べ、和樹は「お客さんがいて、みんなで爆発を起こしている」と言い、岡崎は「僕自身、Galileo Galileiは初めてなのでこれからもよろしくお願いします」と、彼ならではの感謝を述べ、岩井は門司港から横浜への船の中で思ったことだと言い、「今が照明もサウンドも最強のGalileo Galileiだなと思う」と、このツアーの手応えを話した。さらに雄貴が「小学生男子みたいにやってしまう喜びが溢れてて、この先休みたくてもたぶん止まらない」と偽らざる胸中を告白、ファンを沸かせた。
尾崎雄貴
思いが具体的に共有されたことでさらにグルーヴが生まれたフロアに流れ出すエレクトロニックサウンドとサックス。Mei Takahashi(LAUSBUB)のコーラスも色を加えた「ピーターへ愛を込めて」、自然にクラップが起きた「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」へのリアクションも大きい。そして新曲の中でもライブでこの曲があって良かった!と膝を打った「あそぼ」。自然と体を揺らせるビートでステージの上もフロアも解放され、ステップを踏みながらハンドマイクで歌う雄貴はアクションカメラを持ってステージ上を撮影。メンバー紹介も挟んで楽しさが増幅する。一転して透き通るようなグリーンの照明に岩井の奏でるループが流れ込んで「燃える森と氷河」へ。そして丁寧なアルペジオが染み込む「サークルゲーム」では雄貴と岩井が顔を見合わせて演奏する場面に暖かな気持ちが去来した。
岩井郁人
再びのMCで雄貴は、自分達の不在期間にもGGの音楽を聴き続けたり、新たに出会った人がいることが「僕として、壊れないで立っていられる」根拠だと話し、さらに「一つ夢があって、聴いた人がぶっ飛ぶ、最強のアルバムを作りたい。そこまで一緒に歩いて行けたら」と締めくくった。聴き手とともに自分達の音楽があるという認識、それこそがこの期間に手に入れたバンドの強さなんじゃないかと思った。
この場のエネルギーを全て反映するように「色彩」の歌い出しは伸びやかで強かった。人を愛することへの畏怖は、その根源でもある命に関わる「Birthday」にも見事につながり、喜びと不安が常に背中合わせにあることを表現せざるを得ない尾崎雄貴というアーティストの替えの効かなさを改めて知る。岩井のシューゲイズなギターが長く尾を引く流れ星のように響き渡り、幼い野心がそのまま息づくような「星を落とす」の意志が音になって放たれる。そこにジャンルとしてのシューゲイザーは存在していなかった。こんなバンド、世界でも稀有だと思う。
岡崎真輝
「今日はありがとう。最後の曲です」という雄貴の謝辞にフロアからも感謝の拍手が起こる。ここまでの流れを受けて「えー?」なんて返す方が予定調和な感じだろう。ブルーのライトがフロアを照らす中、「Sea and The DarknessII」がこの日はこれからに続く決意のように鳴らされ、発声されていたように思う。彼らにとって音楽は冒険の場であり、時に恐怖の対象でもある海のようなものなのだろう。それが実際の音像や演出が後押しする素晴らしい本編だった。
尾崎和樹
アンコールではGGとこの曲で出会った人も多いであろう「青い栞」を現在の演奏で届け、若き日の屈託と少し身につけた強さをそれぞれの心の中で感じたことだろう。そして次なるツアーも発表。“冬の収穫祭”と名付けられたツアーに思いを飛ばしながら、最後はこれからの季節を予感する「夏空」をメンバーだけの演奏で締めくくった。雄貴の「Galileo Galileiでした。これからもよろしく!」という挨拶に「こちらこそ」という心の声が聴こえるようだった。
やまないアンコールに応えて2016年10月の日本武道館公演以来のダブルアンコール。雄貴が「ずっと楽団みたいなバンドを目指してて、活動終了前からバイオリンを練習したりしてたけど、今回、大久保さんのおかげで僕の大きな夢がいました」と話すと、ファンからも大きな拍手が起きた。ラストは始動のタイミングで最初にできた「4匹のくじら」を大久保のフルートも加えて披露。続いていく旅でどんな出会いやハプニングがあっても、今のGalileo Galileiは栄養にしていきそうな予感しかない。
Galileo Galilei

文=石角友香
撮影=横山マサト

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