3年ぶりの声出し解禁ワンマンライブ
を開催したflumpool、『Real』再現ラ
イブでツアー完結 中野サンプラザ公
演のオフィシャルレポート到着

flumpoolが6月16日(金)に中野サンプラザで『さよなら中野サンプラザ音楽祭 supported by コカ・コーラボトラーズジャパン〜flumpool Get Back Live「Real 2023」〜』を開催した。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

flumpoolが6月16日(金)、ワンマン公演としては約3年ぶりとなる念願の声出し解禁ライヴを行なった。コロナ禍の真っ只中だった2020年10月にスタートさせ、幾つかの公演は延期・振替となりながら2021年7月に完走した『flumpool 10th Tour「Real」』。そのリベンジを果たす再現ライヴというコンセプトの下、未発表の新曲も披露した約2時間のステージ。会場は、再開発に伴い7月2日に開業50年の歴史にピリオドを打つ聖地・中野サンプラザである。ライヴは白熱したものとなり、コロナ禍以前の熱気が戻って来た、というよりは更にパワーアップした印象。デビュー15周年のアニバーサリーイヤーに向けて大いに弾みを付ける一夜となった。
開演直前、メンバーの阪井一生(Gt)による影アナウンスが会場に響き、観客が沸き立った。コロナ禍で声が出せない状況で行なったツアーとは異なり、この再現ライヴではMCでも笑ってOK。「声も出して、大笑いしてもらっていいので。皆さん、声をください!」と呼び掛け、会場を温めていく。「PEPEパラダイス」という曲を披露する際には山村隆太(Vo)の「出して!」という呼び掛けに従い、PEPEンライトReal(※スマートフォンを振ると次々と色が変わっていく、ライヴ専用に開発された応援アプリ)を使用してほしい、との事前説明をして期待を煽った。
flumpool
SEに乗せて登場したメンバーの白い衣装が暗闇に浮かび上がる。ステージが突如明るくなり、メンバーの姿が露わになって「NEW DAY DREAMER」が始まるとファンは大歓声。2020年5月にリリースしたオリジナルアルバム『Real』の実質的な1曲目、幕開けにふさわしいナンバーである。山村は「会いたかったぜ中野、声出して行こう!」と叫び、飛び跳ねながら生き生きと歌唱。尼川元気(Ba)と阪井は力強くコーラスを重ねていく。小倉誠司(Dr)が繰り出す四つ打ちのキック音が身体に響き、鼓動のように響き渡った。このたび久しぶりにサポートを務めるのは磯貝サイモン。眩い光の中、ライヴはエネルギッシュに滑り出していった。
メジャー1stシングル「星に願いを」、そして「Calling」(1stフルアルバム『What‘s flumpool?』収録)と初期の名曲を連打。山村の歌声もメンバーの演奏もテンション高く、生命力に溢れている。ファンはコール&レスポンスを楽しみ、時には野太い「oi!」コールを上げて拳を天に突き立て、曲間にはメンバーの名前を大声で叫んだ。その凄まじい盛り上がりは、山村が「皆さん、ブレーキがおかしくなってませんか(笑)?」と驚くほど。「この声が聴きたくて僕たちはライヴをやってます、音楽をやってます。皆さんの声を聴けて本当にうれしい。ありがとうございます!」(山村)と感謝を述べ、喜びを噛み締めた。
flumpool
中野サンプラザの音の良さが好きだ、と熱弁を振るった山村。コロナ禍の真っ只中で決行した2年前の『Real』ツアー(※中野サンプラザでは2020年12月に2Daysを実施)について、「(観客が)声を出せなくて、『出したいな』と思ってもグッと我慢しなければいけない歯がゆさがあった。声が響くこんなにいい会場なのに、(観客の)声が聴こえないのは残念だった記憶がある」と振り返った。続いて、コロナ禍で余儀なくされたアクリル板越しのコミュニケーションに言及しながら、「アクリル越しにする恋の話」(山村)と紹介して披露したのは「ディスカス」。『Real』に収録されている気怠いR&Bナンバーで、歌詞に出てくる<水槽>という言葉から広がるイメージが、寒色系の美しい照明で表現されていた。続く「素晴らしき嘘」(※ドラマ主題歌として書き下ろされたヒット曲)も、バンドの成熟を実感する見事なパフォーマンス。エモーショナルな歌唱と演奏で惹き込み、ドラマティックな照明演出との相乗効果で圧倒する。シリアスなこの2曲は、flumpoolというバンドの表現力の深まりを実証する場面となっていた。打って変わって、ライヴ初披露の「ビギナーズノート」ではファンのクラップに乗せて思い切り楽しく、朗らかに。2021年、FM802とのコラボレーションで“高校生の本音”を募り、寄せられたメッセージを基に書き下ろした応援ソングである。このように曲調も誕生の経緯も様々で、ヴァリエーション豊か。起伏に富んだセットリストを繰り広げていく。
山村隆太(Vo)
阪井一生(Gt)
和気藹々としたメンバー紹介MCを挟み、披露したのは「ほうれん草のソテー」。『Real』収録曲であり、バンドの原点にある情景や心情を刻み込んだ大切なアコースティックナンバーである。降りしきる雨音から始まった、同アルバム曲「虹の傘」は、ラストの♪ラララで観客に声を求め、『Real』ツアーでは不可能だった合唱を実現。コロナ禍という長い雨の末に、ようやく出会えたのがこの光景なのだ、と体感。胸を打たれる瞬間が次々と訪れる。ピアノ伴奏に乗せ、「一番今届けたい歌です」と語り始めた山村。「10周年は活動休止とかでお祝いできなかった分、15周年が本当にうれしい。15年も今のこの世の中で、趣味で始めた音楽を続けられるのは、今日来てくれた皆さん一人一人の支えのお陰です。本当にどうもありがとう」と感謝を述べると、ひときわ大きな拍手が送られた。「支え続けてくれた皆がいたからここまで来られました。こういう感謝を15周年も近いから歌にしたいなと。皆さんがいなければ生まれなかった歌です」との言葉から、新曲「Magic」を初披露。温かさ、優しさに溢れた真っ直ぐでピュアな歌という印象で、切なさを微かに含みつつも穏やで、どこまでも力強いメロディーは、数々の試練を乗り越えてきた2023年の彼らのイメージそのもの。「今までどうもありがとう!」と山村は曲の最後に叫んだ。
<なくした声は 取り戻せないんだ>と赤裸々に歌い、歌唱時機能性発声障害に苦悩する山村の心の内を思わせる「不透明人間」は、エレクトロなサウンドで抑制的に始まり、やがて魂震えるバンド・アンサンブルへと突っ走っていくダークナンバー。セッションからの「アップデイト」は、同じくエレクトロなエッセンスを取り入れた新機軸曲で、ピンスポットを効果的に使いメンバーを代わる代わる映し出していく光の演出が堪らなくスリリングだった。深く曲の世界に惹き込んだ後は、開演前の影アナウンスで予告していた「PEPEパラダイス」でパーティータイムへ。PEPEンライトRealの使用をいよいよ山村が呼び掛け、メンバーがジャムセッションをする音に乗せ、スマートフォンを振って色を切り替える練習を実施。前回のツアーでは出来なかったコール&レスポンスも練習し、いよいよ楽曲を披露。ダンサブルなリズムに乗せて山村は身体を揺らし、阪井と尼川は向き合ってプレイ、小倉はスティックを持った両手を思い切り高く掲げた。声を出せない環境下でも盛り上がりたい、ファンを楽しませたい、という考えの下生み出された応援アプリと、復活した大きな声援。二つの形の応援を受けながら、メンバーはパワフルなパフォーマンスを繰り広げていた。
「まだまだ行けますか?」と問い掛ける山村の声は、裏返ってしまうほどのテンションの昂りよう。疾走感に溢れる「HELLO」をガッチリと歯車が嚙み合った歌と演奏によって届け、続いてイントロの一音目で悲鳴が起きたほどの代表曲「君に届け」を放つと、爆発的な盛り上がりの中本編は終了した。
尼川元気(Ba)
小倉誠司(Dr)
アンコールでは、メンバー全員黒のライヴTシャツに着替えて登場。コロナ禍の中で行なうこととなった『Real』ツアーを改めて回想し、山村は、その礎となったアルバム『Real』について「声を出してほしくて、皆の声を想定してワクワクしながらつくっていたアルバムなんですけれども。皆の声が聴けない中でのツアーが続いて、どこか歯がゆかったけれども……その時はその時で、タイトル通り、それが“現実(Real)”。僕らも皆もお互いにそうだし、ライヴに参加しない人も“行けない”歯がゆさとか悲しさとか、そういうものを共有できた」と想いを熱く語っていく。「だけど今日、聴けなかった皆の歓声が想像を超えていて、皆が背中を押してくれて……また新しい『Real』というアルバムが今日、完成したんじゃないかな?と思います。皆さんのお陰です、どうもありがとう!」と感謝を述べると、大きな拍手が送られた。
「いつも僕たちのそばに寄り添ってくれて、苦しい時に助けてくれた皆に贈りたい曲です」との紹介から「HELP」へ。ファンの熱い手拍子が刻むリズムに支えられるようにして歌い出す山村。阪井、尼川のコーラスにも力がこもり、大地を踏みしめるような小倉のドラミングが頼もしい。2019年5月、活動休止から復帰を遂げたシングル曲が、今また新たな意味を帯びて聴こえてくる。これは長いキャリアを積み重ね、紆余曲折を乗り越えて来たアーティストにしか起きない現象である。終盤、目も眩むような白い光が放たれる中、ファンもシンガロング。ラストは山村、阪井、尼川と順にヴォーカルをリレーしていくライヴの人気曲「Hydrangea」で盛り上がり、熱狂の中で締め括った。
flumpool
ステージ前方に一列に並ぶと、山村は「ヤバいな。もう、本当に最高でした!」と興奮冷めやらない様子を見せ、「ここでうれしいお知らせがあります。7月にシングルをリリースします!」と発表。客席からは大歓声が起きる。「皆の声を存分に出してもらえるような、爽やかな夏らしいキャッチーな曲が出来たので楽しみにしていてください」(山村)と期待を煽った。更には、既に決定している10月6日の日本武道館公演に先立ち、バンドが15周年のデビュー日当日の10月1日にLINE CUBE SHIBUYAでライヴを開催すると発表。その内容について「14年前の『Unclose』ツアーのセットリスト、本当に初期の曲だけを集めたライヴ」(山村)であることを明かすとこの日一番の大歓声が会場に鳴り響き、「すごい反響ですね」(山村)「うれしいな~」(阪井)と喜び合った。加えて、詳細はまだ明かせないと断りつつも、ベストアルバムも10月にリリースするとの告知も。次々と発表されるビッグニュースの数々にファンは喜びの声を上げ続けていた。「15周年に向けて皆がワクワクドキドキできるような、『応援してきて良かったな』と思ってくれるような企画を考えていますので、15周年に向けて、その先もよろしくお願いします。今日は最高のライヴをありがとうございました! 中野サンプラザもありがとう、お疲れ様!」(山村)と労いを込めた挨拶で締め括った。最後、ステージの去り際に小倉がTシャツを脱いで客席に投げ入れると、「久しぶりに見た(笑)」と山村。コロナ禍ではこういったファンサービスも規制されていたため、声出し解禁と共に“戻ってきた”ライヴの光景だった。
flumpool
10周年のタイミングでは活動休止を余儀なくされ、復帰したかと思えばコロナ禍に直面するという、受難の日々を乗り越えてきたflumpool。この声出し解禁ワンマンは、『Real』ツアーを再現し完結させただけでなく、怒涛の展開を見せる15周年アニバーサリーの始まりを告げる、未来への高らかなファンファーレとなった。

文=大前多恵
撮影=関口佳代

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