BTSの振付に参加したSota(GANMI)、
宝塚歌劇流に挑戦ーー元タカラジェン
ヌによる連載『早花まこの、「2STE
P、できますか?」』

三回目を迎えた早花まこによる連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』。宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花が、GANMI✕宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』に向けて出演者の様子をお届けしていく。宇月颯、湖月わたるに続き、GANMIのリーダー兼ディレクターであるSotaに話を訊いた。BTS「Butter」の振付に参加したり、SixTONES「Good Luck!」では振付だけでなく出演もしたりと、国内外問わず活躍の幅を広げるSota。初めて触れる宝塚歌劇の世界はどのように見えているのか。
●一歩、先へ
そのアーティストは、若いライオンのような瞳をしていた。動物園の檻の中でだらしなく腹を見せているライオンではない。灼熱の陽光と砂埃、酸を含んだ雨にさらされ、その身ひとつで自然を生き抜く一頭の獣だ。
ライオンは生きる理由を探したりはしないが、その眼差しを持つ唯一無二のアーティストには、踊る理由があった。
タカラヅカ・ライブ・ネクストによるDANCE LIVE『2STEP』、その舵を取るアーティストが、GANMIのSotaさんだ。
ダンスパフォーマンス、振付などを手掛け、幅広く活躍するダンスアーティストである「GANMI」。2023年5月26日(金)に日本青年館ホールにて初日を迎える『2STEP』は、そのGANMIと宝塚歌劇OGがコラボレーションするという挑戦的な公演となる。
振付及び構成、演出を担うSotaさんは、『2STEP』のために準備を重ねてきた。さらにはポスター撮影、出演メンバーによるダンスワークショップなどを経て、彼の内には新たなアイディアがどんどん生まれているという。
ひとつの作品を作る時、はじめに描いた構想を練り直すのは大切なプロセスだ。時には、完成した作品を全て壊して、もう一度作り直すことさえある。
時間を費やし作り上げたものを壊す時は、そこに懸ける思いが真剣であればあるほど、不安にかられる。しかし「もう一度、作り直す」からこそ、より良い作品が生まれるのが芸術の面白味なのだと、彼は語る。安定を最善の状態とは考えず、常に一歩を踏み出し続ける。
「究極のところ、「壊すために作る」。そういうことだと思います」
思わず「カッコ良い!」と呟いた私に、Sotaさんは笑って首を傾げた。
Sota
●ふたつのダンスが出会う舞台に
エンターテインメントの世界の第一線で、独自のダンスを追求してきたGANMIが、「宝塚歌劇OG」とコラボレーションする。一見、異色すぎる組み合わせだが、Sotaさんは迷うことなく「やってみよう」と決心した。宝塚歌劇OGとの初共演という挑戦に興味を惹かれ「心が熱くなったから」と、その理由を語る。こうして、未知のDANCE LIVE『2STEP』は始動した。
その制作に伴走する森脇さん(タカラヅカ・ライブ・ネクスト、元宝塚歌劇団雪組男役・真地佑果)は、本公演の担当プロデューサーであり、出演者の一人でもあるSotaさんに大きな期待を寄せている。
「たとえば宝塚歌劇では、演出家と生徒は立場がはっきりと分かれています。今回の舞台では、作り手のSotaさんと同じ舞台でパフォーマンスできる。それが、宝塚歌劇OGの皆さんにとってはすごく新鮮なのではないかと思います」
宝塚歌劇OGの出演者は、全員が元男役だ。タカラヅカの男役は、徹底的に訓練された踊り方が身についている。女性が男性として踊るためには、腕の使い方や歩幅、身体の重心の位置など、たくさんの工夫と技術が必要とされる。また、男性の体型に見えるような衣装と靴は、決して動きやすいとはいえない。
そういった様々な条件を乗り越え男役としてのダンスを磨いてきた宝塚歌劇OGが、GANMIと一緒に舞台に立てば、きっと新たな発見があるだろう。
そして、このコラボレーションがGANMIにも刺激を与えるはずだと、Sotaさんは確信している。
これまでGANMIは数多くのアーティストと共演し、振付を提供するなど、国内外で活躍を続けてきた。そんな皆さんだが、宝塚歌劇OGとの共演にはとても意欲的に臨んでいるという。充実した実績を積んでも、自分たちのスタイルに頑なにしがみつくことのないGANMIとは、どんなアーティスト集団なのだろうか。Sotaさんの答えは、私の心を強く揺さぶった。
「俺たちはずっと夢を見て踊ってきて……まだ誰一人、「満たされた感覚」がない、そんな人たちです」
日々ダンスを追求し、様々な振付を踊りこなしても、ゴールなんて見えない。だから「宝塚歌劇流のお稽古や舞台でのリハーサルにも、挑戦したい」と、Sotaさんは瞳を輝かせる。積み上げてきたキャリアに満足することなく、いつも柔軟な心で踊り続けられるのは、間違いなくGANMIの強さだと感じた。
取材・文=早花まこ
Sota(GANMI)
2015年結成された11人組ダンスアーティスト「GANMI」のリーダー兼ディレクター。
GANMIは2016年にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたダンスの世界大会「VIBE DANCE COMPETITION XXI」で日本チーム初の優勝を皮切りに、ライブ活動、アーティストの振付・ライブ演出、TVやCM出演、バックダンスと多岐にわたって活動中。国内外問わず数々のアーティストの振付を手掛けており、2021年BTS「Butter」の振付制作に参加し、最注目ダンスアーティストとなる。
【主な振付作品】
BTS「Butter」(振付参加)、AKB48「久しぶりのリップグロス」(振付)、SixTONES「Good Luck!」(振付・出演)、Nissy「Trippin」(振付・出演)、Tomorrow X Together「No Rules」(振付参加)、NCT U「Work It」(振付参加)など

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