三浦瑠麗

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意味不明な炎上について語ろうか:箕
輪厚介「今月これにムカついた」 連
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箕輪厚介の「今月これにムカついた」
第1回 意味不明な炎上について語ろうか 縁あって、今月から『実話BUNKAタブー』で連載する機会をもらった。普段から行きつけのサウナ(アダムアンドイブとか。最近は行けてない笑)で熟読していた雑誌に自分が連載するとは思ってなかったが、僕なりにムカついたことや気に入らないことなんかをテーマに世間に物申していこうと思う。
 最近のSNSでマジで嫌いなのは一方的に何かを批判してから、最後にわざわざ「知らんけど」と、とってつけたように呟く人だ。だったら「最初から言うなよ」といつも思う。あと特に何もないのに朝になるたび「おはようございます」って言う人も意味がわからない。僕のツイッターにリプライを送ってくる人も、的外れな意見や文脈を読み取れない人が多くてときどきムカついてしまう。
 SNS絡みでムカついたことといえば、今から4年ほど前にあった意味不明な炎上騒ぎだ。
 ことの発端は、当時、幻冬舎で文庫化する予定だった津原泰水さんの小説がハヤカワ書房から出版されることになり、その担当編集者の塩澤快浩さんが次のようにツイートしたことだった。
「というわけで、僕の文芸編集者としての矜持をこめて、津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』文庫版には、次のようなコピーをつけさせていただくことにしました。『この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。早川書房 塩澤快浩』。よろしくお願いします」
 そのツイートを見た僕は、「文庫化しただけでよくそんなことが言えるなあ。辞めますとか宣言する暇があるならプロモーション活動に力を入れればいいのに」と思い、つい呟いてしまった。
「なんだそれ。笑 祈ってないで届けるための方法を死ぬ気で考えて必死で実行すればいいのに」
 今振り返ると、同業の先輩に対して余計な口出しでしかなく礼節を欠くものだったと思う。実際、塩澤さんにはそのあとに知人経由で謝罪した。
 ここではそのことを蒸し返したいわけではない。本題はそのあと自分が体験した特殊な炎上体験だ。
 ツイート後、僕は相当なバッシングをネット上で受けた。その少し前に、幻冬舎が百田尚樹さんの『日本国紀』を発売していたこともあって、リベラル派の人たちから新たなターゲットと見なされたのだ。
 しかし、そのバッシングの論点は、僕が塩澤さんを批判したことではなかった。
「箕輪厚介は『矜持』を『祈祷』と読み間違えたから『祈ってないで』とツイートしたはずだ」
 バッシングはなぜか無理筋な解釈による〝読み間違え問題〟に集中したのだった。
 正直言って最初は意味がわからなかった。
 そもそも「矜持」が読めないなら「祈祷」も読めないだろうし、ツイートの文脈を読み取れば、実際に宣伝なり営業なりの販売促進の対比として「祈ってないで」と言っていることはわかるはずだからだ。
 しかし、僕のことを叩けるネタであればデマでもなんでも良かったのだろう。能町みね子さんや、吉田豪さんをはじめとした多くの人たちが「漢字を知らないなんて編集者失格だ」とばかりに〝読み間違え問題〟に飛びつき、嬉々として拡散し、炎上を煽りはじめた(編集部注:吉田豪さんは否定されております)。
 ベストセラーを連発し、多くのメディアに出版界の革命児として取り上げられていた僕を「矜持」と「祈祷」を読み間違えるバカと見下して、嘲笑することが気持ち良かったのだろうか。政治家の失言問題で、メディアが発言の内容そのものより、言い間違いばかりを取り上げることがあるが、それに近い感覚なのかもしれない。「どこかにバカにできる人はいないか」という気持ちでSNSを覗いている人たちの願望を満たすバズりやすいネタでもあったのだろう。
 しかし、能町さんのような知識人たちから〝読み間違え問題〟などで集中攻撃されるとは思ってもいなかった僕は、初の炎上騒動だったこともあって、めちゃめちゃ凹んでしまった。
 この渦中、格闘家の青木真也の応援でシンガポールに滞在していたのだが、異国の情景に心を躍らせることもできずに、ご飯も喉を通らなかった。

三浦瑠麗さんを絶対に救いたい だが、まさに捨てる神あれば拾う神あり。
 親切なフォロワーの一人が、たった一つのリプライで謎の炎上に苦しむ僕を救ってくれた。
「箕輪さん、自分の本で『矜持』って書いてますよ」
 なんと、その前年に出版した僕の自叙伝『死ぬこと以外かすり傷』に矜持について言及した部分があるという。
「良かった。これ以上の証明はないだろう」
 そう思い、胸を撫でおろした僕はそのリプライをリツイート。すると〝読み間違え問題〟についての批判は波が引いていくように去っていった。
 しかし、火を点けて騒いでいた人たちから謝罪されることは一度もなかった。僕は「彼らは振る舞いそのものがクズなんだな」とはっきり思った。
 ちなみに、その時必死に反論したかった僕だが、『死ぬこと以外かすり傷』で矜持について言及した部分をスクショしてネットに上げるようなことはしなかった。というよりも、できなかったというのが正確だろう。なぜなら、その部分はその部分で、拡散されたら炎上必至だったからだ。
「ディズニーアニメ『リメンバー・ミー』を映画館で観ている真っ最中に、事件は起きた。ラストのクライマックスシーンだというのに、強烈な尿意に襲われたのだ。僕は暗闇の映画館で密かにチャックを下げ、手元のコップにした。
 すすり泣きがあちこちから聴こえる中、最後の感動的なシーンで席を立ってこの感動をジャマするくらいなら、自分一人だけ恥をかけばいい。編集者としての最後の矜持である」
 要するに映画館で尿意が我慢できなくて、とっさにハイボールのコップにオシッコしただけの話を、冗談めかして編集者のプライドと言い張っただけなのである。
「本来なら火を消せるはずのオシッコだけど、この場合はさらなる燃料になってしまう。〝読み間違い問題〟の代わりに〝映画上映中にオシッコ問題〟をここで急浮上させるわけにはいかない」
 そう判断した僕はアップするのを断念したのである。
とはいえ、本連載の第1回ではこの話を披露してしまったわけだが……。
 話は変わるけど、現在炎上中の三浦瑠麗さんはめちゃめちゃ良い人。ここだけの話だけど、僕が文春砲をくらった時も、「遊んでもいいけど女は選びな」と超カッコ良く励ましてくれた人。絶対救います。
写真/三浦瑠麗・2021年5月6日『第13回ベストマザー賞2021』初出/実話BUNKAタブー2023年5月号
PROFILE:
箕輪厚介(みのわ・こうすけ)1985年東京都生まれ、早稲田大学卒。2010年双葉社に入社。広告営業などに携わった後、編集部へ。『たった一人の熱狂』見城徹/『逆転の仕事論』堀江貴文などを手がける。2015年幻冬舎に入社、書籍レーベル「NewsPicksBook」を立ち上げ、編集長に就任。『多動力』堀江貴文、『日本再興戦略』落合陽一、2019年に一番売れたビジネス書『メモの魔力』前田裕二など次々とベストセラーを手がける。自著『死ぬこと以外かすり傷』は14万部を突破。クラウドファンディングにて1000万円を集め、雑誌『サウナランド』創刊。様々なブランドとコラボレーションをおこなったり、各地でサウナランドフェスを開催。2021年のSaunner of the Yearを受賞。

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