27本目・『ビューティ・ペア　真赤な
青春』（シン・仮面ライダー入り）:
杉作J太郎のDVDレンタル屋の棚に残し
たい100本の映画…連載54

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画

27本目・『ビューティ・ペア　真赤な青春』　今回はビューティ・ペア主演『真赤な青春』の続きだがその前に。見たばかりの『シン・仮面ライダー』について軽く記しておきたい。軽く、でなければ『真赤な青春』の話にならないかもしれないからだ。

　安心して見ていられる映画だった。
　やさしさに包まれていたと言ってもいい。

　それは監督の庵野さんの視点である。庵野さんの視点、ものの考え方がたいせつに練り込まれている。言うに言えない労作の脚本であると言える。すばらしい。これが芸術だ。芸術に限らず創作物は個人的でなければうそだ。ただ、苦労するのが性に合う人と合わない人がいる。庵野さんには苦労が似合う。もしかしたらそこが同世代の感覚なのかもしれない。

　あとひとつ。ちゃんと東映三角マークの映画だった。涙がこぼれた。

　で東映三角マークの大先輩映画、ビューティ・ペア主演『真赤な青春』だが佐藤允のおおらかな雰囲気とか、近藤宏の小気味いい力の入り具合とか、ビューティ・ペアのライバル、というより敵、ブラック・ペアのマネージャー役、内田勝正の絵にかいたような悪辣ぶりとか、すべてが面白く、あたたかい。人間味がある。マキ上田が劇中憧れるバレーボール部の先生、岡田裕介もよかったなー。前回も書いたかもだがジャッキー佐藤を襲う不良高校生役の町田政則もよかったー。この世に生まれてきたみやげものである。いいもの見た。これがこの世だ。

　で、その手慣れたフィクション、プロが撮った物語の世界に、実際のプロレスの試合がたっぷりくっついてる。

　さらにビューティ・ペアのヒット曲をフルサイズで二曲、聞くことができる。

　展開がどうこうとか、ドキュメントなのかフィクションなのかとか、作り方としてこれでいいのかとか、そんな話ではない。

　断言する。
　映画に定型なんかない。
　おもしろければいいのだ。
　お客が満足すればいいのだ。
　お客はそれぞれである。
　いろんな映画があっていい。
　なんやかんやケチつける連中は常にいるが人の作ったものをなんやかんや壊したいだけだ。スキャンダルやゴシップが好きな連中。意味のない競争社会がそういう人間を産んだ。彼ら彼女らも競争社会の被害者ではあるのだ。

『ビューティ・ペア　真赤な青春』（1977年・東映京都）
出演/ジャッキー佐藤、マキ上田、赤城マリ子、池下ユミ、阿蘇しのぶ、ナンシー久美、小宮山忠子、ビクトリア富士美、松永俊国、相沢健一、ジミー加山、小貫千恵子、小栗正史、益田哲夫、酒井努、高橋利通、大倉晶、大森不二香、町田政則、河合絃司、内田勝正、石井富子、近藤宏、岡田裕介、佐藤允
企画/吉峰甲子夫、松永高司
撮影/花沢鎮男
録音/宗方弘好
照明/大野忠三郎
編集/鈴木宏始
助監督/渡辺寿
進行主任/瀬戸恒夫
協力/全日本女子プロレス興業
主題歌/「真赤な青春」ビューティ・ペア
挿入歌/「かけめぐる青春」ビューティ・ペア
音楽/八木正生とエレクトリック・ファミリー
脚本/中島信昭
監督/内藤誠

＜隔週金曜日掲載＞
画像：上記作品　ポスター

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【プロフィール】
杉作J太郎（すぎさく・じぇいたろう）
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める（男の墓場改め）狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。