高島健一郎(テノール)「最高のタイ
ミングと役で本当に幸運」 日本での
初出演舞台となったミュージカル『パ
ジャマ・ゲーム』を振り返る

『プリンスガラ』があと一ヶ月と迫った、ウィーン在住のテノール高島健一郎。2023年2月17日(金)からの3日間名古屋で行われたミュージカル『パジャマ・ゲーム』で、主役のシド・ソローキン役をつとめたが、その公演の模様をレポートしつつ、熱気と若さ溢れる公演の舞台裏も高島から直接に話を聞いた。

ミュージカル『パジャマ・ゲーム』は、1954年に初演、1955年トニー賞ミュージカル部門(最優秀作品賞/助演女優賞/振付賞)受賞した古典的な名作である。1957年にはジョン・レイドとドリス・デイ主演で映画化され、ミュージカル映画黄金期の傑作としてブロードウェイやウエストエンドでも度々再演されている。2006年にはキャサリン・マーシャル演出振付、ジャズ・シンガーとして知られたハリー・コニック・ジュニアとブロードウェイを代表する女優ケリー・オハラがタッグを組み、ブロードウェイにてリバイバルされ、トニー賞ミュージカル部門(リバイバル賞/振付賞)で受賞するという快挙を成し遂げた。
社長秘書役グラディスとのダンスシーン
.恋人役ベイブとのデュエットより
『くたばれ! ヤンキース』で知られるリチャード・アドラー&ジュリー・ロスの楽曲でつづり、パジャマ工場の工場長シドと労働組合の活動家ベイブが、意地を張りつつひかれ合う大人の恋模様がキュートに展開されてゆく。時代を超えて愛されるエポックメーキングな作品だ。振付家ボブ・フォッシーの出世作として名高い「Steam Heat」、タンゴの名曲「Hernando’ s Hideaway」など楽しいナンバーで溢れている本作は、日本でも2017年に、ベイブ役北翔海莉・シド役新納慎也で大きな話題を呼んだ。
名古屋市文化振興事業団2023年企画公演として名古屋初演された今回。角田鋼亮指揮セントラル愛知交響楽団による本格的なオーケストラ・サウンドがミュージカルの音楽的な魅力を高めた公演となっていた。若いキャストたちの中で、海外での経験豊かな高島が舞台をリードし、高い歌唱力がオーケストラのサウンドと見事なハーモニーを生み出していたように感じた。
社長秘書役グラディスとの駆け引きシーン
――実は、日本では初舞台だったんですね?
そうなんです。ヨーロッパではオペレッタのドイツツアーやミュージカルでのメルビッシュ湖上音楽祭出演などいろんな経験を積んできましたが、日本での舞台出演は初めてでした。
――いかがでしたか?日本での初舞台は?
やはりミュージカルもオペレッタもそうですが、舞台を仲間と製作していくのはとても楽しくて、刺激的な作業だなあと改めて感じられました。そして、終わった時の寂しさも同じですね。演出の中原和樹さんや指揮の角田鋼亮さん、キャストやアンサンブルの皆とまた是非どこかで一緒に仕事したいね、しようね、と言って名残を惜しみました。
――ヨーロッパと日本の違いみたいなものは何か感じられましたか?
まず稽古期間がとても長いと感じました。僕がヨーロッパで経験した舞台では一ヶ月半くらいで集中して稽古するんですが、今回は約三ヶ月間稽古したのでとても長く感じましたね。そのぶんカンパニーの皆ともとても仲良くなれたし、稽古で役の深いところまで演出の中原さんと詰めていけたのはとても貴重な経験でした。
恋人役ベイブとのラブシーンより
――パジャマ工場でのストーリーということもあって、アーリー・アメリカンな雰囲気のとてもカラフルな衣装が印象的でしたね。
そうですね。1950年代アメリカを再現したとてもカラフルでポップな衣装でした。僕自身は主役ですが工場長という役回りなので、最後のパジャマスタイル以外は、ジャケット・スーツの比較的固い衣装だったのですが、全体としてはすごくカラフルで視覚的にも楽しめる舞台だったと思います。
――今回は日本の各地から、ファンの方々が高島さんの舞台デビューを見届けに名古屋へ駆けつけましたが、舞台を終えた感想をお聞かせください。
11月のキャスト・スタッフの全体顔合わせで、「2月のパジャマ・ゲームの公演を楽しみに、日々の色んな事を犠牲にして毎日を過ごしている方がたくさんいる。その方達はチケット代と往復新幹線と宿泊費で高いお金を払って、多くの時間を使ってでも、この3時間の舞台を観たいと思っている。僕はその方達に名古屋まで来て良かったと思ってもらえる舞台にする義務がある」という事を全員に向けて話しました。劇場入りしてからも改めて全体に向けて同じメッセージを発信しましたが、公演が終わった後にたくさんの方に「名古屋まで観に行って本当に良かった」「夢のような舞台だった」という事を言って頂けて、そこではじめて舞台を終えてホッとしました。改めていつも応援して頂いている方がいるからこそ、こうして舞台に立っていられる事を心から感謝しています。
カーテンコール
――最後に、高島さんは以前メルビッシュでインタビューをさせて頂いた時に「この経験を日本の方にも舞台を通して伝える事が出来たらとても幸せだと思っています」とおっしゃっていましたが、早々にその夢を一つえられた感じですね。
そうですね。最高のタイミングで、僕の魅力を最大限出せる役を頂けたのは本当に幸運でした。日本の舞台デビューで演出の中原さん、指揮の角田さん、そしてセントラル愛知交響楽団というプロオーケストラと共演出来た事はとても幸せでした。まだまだやりたいことがいっぱいあるので、ひとつずつ無理せずに実現していきたいと思っています。まずは目の前の『プリンスガラ』を最高のコンサートにしたいと思っています。すでにピアノの藤川有樹くんと堺君と鳥尾君が先に3人でリハーサルをしてくれて、僕も公演が終わってすぐに藤川くんと合わせをしましたが、合わせの段階からすでにとても刺激的で本番が待ちきれないです。
取材・文=神山薫 撮影=中川幸作

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