足立佳奈、デビュー5周年でニューア
ルバム『Seeker』をリリース 探究者
は何を探し求めど こへ向かうのか、
23歳の本音に迫る

2022年、デビュー5周年を迎えた足立佳奈が挑んだ新たな試み。4月から始まった毎月連続配信リリースは、自らの作詞作曲を中心に、Tani Yuuki、Shin Sakiuraらをコラボ相手に迎え、5年間で大きく成長した足立佳奈の世界を聴かせてくれた。ニューアルバム『Seeker』はその連続配信リリース9曲に、セルフプロデュースを含む新曲を加えた全12曲。Seeker=探究者は何を探し求め、どこへ向かうのか。23歳の本音を聞いてみよう。
――5周年おめでとうございます。17歳からの5年間というのは、とても大きな変化の時期だったと思いますけど、どんなことを感じていますか。たとえば、聴く音楽が変わってきたとか。
聴く音楽は、根底にあるものはあんまり変わってないです。シンガーソングライターを目指すきっかけになったのが、アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ~」という曲なんですけど、今でもそこからパワーをもらって頑張る、ということがあるので。普段聴く音楽は本当に変わっていなくて、制作をする時に、どういう曲にしたいかな?ということで、自分の引き出し以外のところからリファレンスを持ってきて、この曲に近づけたいなと思ったら、そういうふうに作ります。曲作りで、新しい曲を知ることが多いです。
――服の趣味とか、好きなカラーとかは?
服の趣味は、そうですね、昔は服にあんまり興味がなかったんですけど今はちゃんと興味を持って、こういうブランドの服だったら似合いそうだなと思ったりすることも増えてきてます。
――ちなみに最近は、どんなスタイルが好みですか。
最近は、緑一択ですね。
――まさに『Seeker』のジャケットですね。とてもきれいなグリーンの服と、グリーンの背景。
私はもともと緑が好きで、アルバムタイトルを『Seeker』=探究者にして、何を探し求めていくか?と思った時に、曲では愛、自由、自分自身を求めていったりしてるんですけど、プライベートでは緑を探しもとめて、これからも頑張っていこうかなと思うので、そういうところも掛け合わせて、緑にしました。
――食べ物の趣味とかは、どうでしょう。
基本は変わらないですけど、白米が不動の一番だったのが、焼き鳥に変わりました(笑)。おうちでご飯を作る時も、鶏ばっかり調理してます。
――それはひょっとして、お酒を飲めるようになったから?
それもあります(笑)。初めは焼き鳥メインだったんですけど、最近はお酒のおつまみとして焼き鳥を食べます(笑)。アルバムの9曲目に入ってる「WALK」という楽曲や、12曲目に収録されている「カンパイ」という楽曲には、そういう雰囲気が入ってますね。「WALK」では“千鳥足で歩くくらいがいいよな”と歌っていて、自分の日常の中の変化としては、そうやって大人の階段を上ってるんだなって感じます。
――男性を見る時に、こういうところが気になる、とかは?
えー、なんだろう? 男性に限らず、外見だけで判断しないようになった気がします。昔はやっぱり、“うわー、かわいい”“かっこいい”で判断していたものが、今は“この人がこういうファッションをしているのは、どういう過程を経てこうなったんだろう?”とか、その人の生きざまが気になって、そこで新しい友達ができることが多いです。
足立佳奈
――音楽で言うと、レコーディングのやり方や、スタジオでのふるまいとかも、きっと変わって来てますよね。作品へのコミットの度合いや、スタッフとのコミュニケーションの取り方とかも。
それはありますね。デビューした時には、まだライブもしたことがなくて、もちろん楽曲制作も、レコーディングスタジオで歌ったことはなかったので。それぞれのスタッフさんにはこういう役割があって曲ができあがるんだ、ということもあるし、歌い方もデビュー当時とはだいぶ変わって来て、力の抜き方、入れ方も、自分の中で“これくらいだったらこういうニュアンスが出せるかな”とか、なんとなく意識できている気がするので、それは成長だと思います。
――その、5年間の最高到達点としてのアルバムが『Seeker』だと思います。去年の4月。毎月連続配信リリースを始める時点で、曲はどれくらい揃っていたんですか。ひょっとして、いわゆる録って出し?
4月と5月の曲は、その前のツアーでもうある程度出来ていた曲だったんですけど、6月からはずっと、月ごとに曲を書いてました。
――それはすごい。忙しかったでしょう。
すごく楽しかったです。楽曲を制作してリリースすることは、日常的なことではないですけど、今回は“連続リリースするよ”と言っていたので。1か月で曲を作るために、自分に向き合うことができたので、“私、シンガーソングライターだな”と思うことができました。
――充実の9か月。一度もスランプはなく?
はい。書きたい気持ちがそうさせてくれたというか。やっぱり変化というのは1日1日していくもので、1か月の中で自分が一番心動いた時の曲を書いてみて、“いいね”と言われたら制作に入るという感じでした。
――いろんなテーマがありますよね。恋の歌、自分の生き方の歌、恋の歌もハッピーだったりせつなかったり、応援歌っぽいものもあって。自分の中のいろんな面を出せたという手ごたえがあるんじゃないですか。
あります。この連続リリースを通して、こんなにいろんな色の曲がアルバムに収録できるんだということで、『Seeker』というタイトルをつけて、いろんなことを求めて書いていったんだなって、自分でも納得できました。
足立佳奈
――タイトルチューンの「Seeker」は、連続リリースには入ってないので。最後のほうにできた新曲ですか。
「Seeker」は、レコーディングとしては最後にできた曲ですね。でもアルバムを作るタイミングで『Seeker』というタイトルは決めていたので、タイトルになるリード曲を作ってみたいと思って、中村泰輔さんにお願いして、一緒に作らせてもらいました。
――強いメッセージのこもった曲になりましたよね。“時代に流されず”とか、“自分色に染めていくのさ”とか。
アルバムのコンセプトの『Seeker』と、曲の「Seeker」とは、ちょっと意味合いが違っていて。「Seeker」という曲は、自分のあこがれの人をSeekerと呼んでるんですけど、私の友達に、楽しむことを人生で一番大事にしている子がいて、どこにいても、誰といても一人でもしっかり楽しんで、キラキラしてる人生を送ってる子がいるんですけど、自分もそうなりたいなと思う反面、なれないなって、もがいている自分もいて。そのさまを曲に残しておきたいなと思って書きました。
――その人紹介してほしい(笑)。どういうコツがあるんだろう。
その子には、“一人を楽しむことが、佳奈にとって一番のミッションだね”と言われました。一人の時間を、寂しいと思わずに、いかに充実させるか。何でも挑戦でいたらいいと思うよって、よく言われました。
――なるほど。実践できてます?
そうですね、着々と(笑)。彼女の気持ちを受け止めながらも、なかなかそうはなれない自分もいるので、それは正直に歌詞に書いてあります。
――絶賛Seeker中。あと、アルバム初出の新曲が「今が一番ここちいい」と「カンパイ」。この2曲は、等身大の佳奈さんって感じがします。物語じゃなくて、すごくリアル。
「今が一番ここちいい」という曲は、自分で作詞作曲編曲をさせてもらって、本当にこの曲が、今が一番心地いいなと思えるようなアレンジだったり、シンプルなんだけど深い、心温まるものになったらいいなと思います。ピアノとバイオリンを入れたくて、でもバイオリンのルールがわからないので、ファーストバイオリン、セカンドバイオリンの役割とか、そういうものはガン無視して(笑)。ここちいい音を自分なりに入れました。歌詞もすごく好きで、本当に「今が一番ここちいい」と思います。何をしててもそう思うし、未来しかないなっていう感じです。
――素晴らしい。「カンパイ」は?
「カンパイ」は、地元の友達が誕生日をお祝いしてくれた時に、この瞬間がとっても心地いいな、うれしいなと思って作った歌です。10月15日に、初めて岐阜県に帰って凱旋ライブをして、そのあとに友達と会って、この歌詞になる出来事があったんですけど。そのライブの時のバンドメンバーにレコーディングもお願いしたくて、一緒にスタジオに入って録りました。
――にぎやかで、ナチュラルで、バンド感、すごく出てます。“いつだって君といれば青春”という歌詞も、すごくみずみずしくて。
岐阜という場所と、友達が、青春というものを呼び起こしてくれるというか、元に戻してくれるからこそ、“まだまだ終わらない青春”だよねっていうふうに歌ってます。
――そういう場所が持てているのは、素敵なことじゃないですか。
そうですね。ありがたいです。

足立佳奈

――個人的に、一番チャレンジしたなと思う曲は、どれだったりします?
チャレンジというか、すごくうれしかった…それもチャレンジですけど、Tani Yuukiくんと一緒に作った楽曲「ゆらりふたり」は、友人であるTaniくんと初めて音楽制作という形で携わることができて、しかも等身大の、自分たちの年代の子たちを応援できるようなラブソングに仕上げることができたので、うれしかったです。
――どういう作り方をしたんですか。二人で顔をつきあわせて?
というよりは、まず私がサビと自分のパートを完成させて、Taniくんにアンサーという形で書いてもらって、レコーディングも別々だったんですけど、Taniくんのレコーディングに私もお邪魔して、仕上げました。Taniくんが思っている男目線の歌詞がとてもリアルで、歌詞を受け取った時にはTaniくんと文通しているような感覚になって、歌入れやメロディ作りも“こんなふうになるんだ”と思ってうれしかったです。
――コラボって面白いですよね。いい意味で、予想外のことが起こったりして。佳奈さん、過去にもwacciと一緒にやったり、ルード(Rude-α)くんともやってるし、やっぱり毎回やり方は違いますか。
そうですね。ルードくんの時(「Like it feat. Rude-α」/2020年)は、ルードくんの雰囲気に私も乗っかりたいなと思って、二人で楽しく、みんなにハッピーを届けられる楽曲で、ちょっとラブソングっぽいテイストにしたんですけど。wacciさんとやらせてもらった時(足立佳奈&wacci「キミとなら」/2021年)は、橋口さん主導で動いてもらって、私は歌詞にちょっと参加させてもらって歌う、という感じで、みなさんそれぞれタイプが違うので。でもそうやってフィーチャリングさせてもらうと、“こういうふうに歌詞を書かれるんだ”“こういうレコーディングの仕方をされるんだ”とか、ほかの現場を見ることがなかなかないので、たくさん勉強になりました。
――もっとやりたいですね。いろんな人と。
そうですね。やりたいです。
――フィーチャリングとは少し違うけれど、今回は、今すごく注目されているプロデューサーの、Shin Sakiuraさんが活躍してますね。3曲も一緒にやってます。
5月に配信した「Me」という楽曲で、Shinさんと初めてコラボさせてもらいました。「Me」はバンドサウンドでは完成していたんですけど、リリースするにあたって、Shinさんにゆだねたというか、“この曲が化けたらいいな”と思ってお願いして。それが本当に、自分の想像もつかないような雰囲気の曲調で生まれ変わってくれたので、それに味を占めて(笑)。うれしくて、「WALK」と「Life Goes On」をお願いしました。
――Shinさんの編曲もそうですけど、緻密な打ち込みのトラックも多くて、これまでのバンドサウンドのイメージからはかなり変化してきましたよね。なんでもできるというか。
そうですね。私の好みもそうだし、あと、みなさんが聴いている、時代の流れというものもあるとは思うんですけど。いつも耳にする音楽だから、それが必然的に好みになってきてる、ということかなと思います。
足立佳奈
――今回は通常盤(CDのみ)と完全生産限定盤があって、生産限定盤のほうのCD2は、これ、ベスト盤と言っていいですかね。
そうですね。まだ“ベスト”ではないですけど。
――これまでの代表曲がずらり。デビュー曲の「笑顔の作り方~キムチ~」を今聴くと、何を思います?
元気だなと思います(笑)。17歳の時にデビューして、今は23歳で、こうして変化していくものなんだなと思いました。
――17歳の自分って、もう戻れない過去なのか、それともこの歌を歌うとその頃に自分に戻れるのか。どんな感覚がありますか。
その頃の自分が今の自分を作ってくれているので、戻ろうと思ったら戻れるところにいるので。ライブでこの曲をやる時は全力で歌いますし、これからも歌い続けていきたいなと思います。久々に聴くと、本当に元気だなーって、びっくりしたりもするんですけど(笑)。永遠にしゃべってるんだろうなーとか、いろんな想像ができるくらいの元気さですけど、それも私の魅力の一つだなと思うので。
――でもその元気さやパワーやエナジーは、一番新しい「カンパイ」にもちゃんと繋がってる気がします。
そうですね。地元にいる時に「笑顔の作り方~キムチ~」という曲ができて、地元に帰って来て「カンパイ」という曲ができると、やっぱり戻って来るんだなっていう気はします。
――通して聴いていくと、「話がある」(2019年)の頃ですかね、声がグッと大人っぽくなったなと思うポイントがあるような気がして。
あると思います。自分ではそこのタイミングは意識できてはいなかったんですけど、この間、CD2の曲を全部聴かせてもらった時、本当に同じことをマネージャーさんと話してました。「話がある」で声がだいぶ変わってきたよねって。私はその声が好きなので、今の感覚と、その時変わろうとしていた自分が、ちゃんと正解だったんだなと思います。
――ブレスがすごくきれいに響くんですよね、生々しく。耳元で歌われるような。それって歌の勉強をして変えていったことなんだろうか。
いえ、変えていくというか、元気すぎずに一回落ち着いて歌うというのは、今でもするんですけど。気持ちが高まりすぎたまま歌っちゃうと、自分が前のめりになって、聴く側がなかなかゆっくり聴けなかったりして、私はそういうタイプなので、ハッピーな曲でも応援歌でも、一回落ち着いて客観的に歌ってみて、そこから足していくことが多いです、最近は。
――なるほど。こうして話をしている声はとても穏やかで落ち着いているのに、歌うとなると、つい気持ちが入っちゃう。
そうかもしれないです(笑)。
――あと、ブルーレイの映像も豪華ですよ。すごいボリューム。
ツアーのダイジェスト的な感じで、2本のツアーの映像が入っているんですけど、特に見てほしいのは「5th Anniversary History Movie」です。これこそまさに、足立佳奈の変化を一番感じてもらえるんじゃないかな?というくらい、人が違うので、驚かないでほしいです(笑)。“デビュー当時ってこんな感じだったな。でもあれも本当に思ってた気持ちだったな”って、あれからだいぶ肩の力が抜けてきている感じはあります。あと、映像だけじゃなくて、この「5周年ヒストリーブック」も見てほしいんです。
――はい。生産限定盤にはCD2枚、ブルーレイ、そしてブックレットも入ってる。
今回、写真を撮ってもらいたい人がいて、そのカメラマンさんにオファーさせてもらって、自分のカラーを表現できてうれしかったです(フォトグラファー/東 京祐)。あとは5年間の年表があるんですけど、いろんなふうに過ごさせてもらっていたんだなって、あらためて振り返って、うれしかったですね。あとはプライベートのQ&Aだったり、朝のルーティンだったり、レシピも入っていたり、本当に私の日常を詰め込んでいるので、この完全生産限定盤をゲットするのは、ファンの方だけじゃなく、はじめましての人こそ受け取ってほしいし、これで足立佳奈を全部知ってもらえると思うので、そうやってまた6年目から好きでいてもらえたらうれしいなって思います。
――そういうふうにセルフプロデュースできるようになったことも、この5年間の成長ですよねと思ったりします。
そうですね。歌以外のところにも目を向けれるようになったりとか、ちゃんと欲が出てきたこととか、それって勇気のいることだし、でもやりがいのあることなので、続けていきたいと思います。
足立佳奈
――これから、6年目以降の足立佳奈を、セルフプロデュース目線でいうと、どういう活動をしていくのがいいと思ってますか。
まずは、歌い続けること。あと、合唱曲を作りたいです。自分のルーツが合唱団で、アンジェラ・アキさんの「手紙」を歌ってから、シンガーソングライターになりたいと思ったので、自分もそのスタートラインに立ちたいと思ってます。自分なりに、アンジェラさんが私に届けてくれたものを、今度は私が未来の誰かに届けられたら、夢がったというか、今の私の夢はそれです。
――素敵な夢だと思います。
私はまだハモリだったり、心地いいところを見つけられなくて、いつもアレンジャーの方と一緒にやっているので、そういうことも全部、今の音楽のジャンルの中で身に着けてから、経験値を上げて、説得力のある深みのある言葉と音楽を生み出せるようになってから、合唱曲にチャレンジしたいですね。
――それ、書いちゃっていいですか。プレッシャーにしたくはないですけど。
いえ、全然。それはプレッシャーじゃなく、自分が持っている、キラキラと輝いているものなので。書いてください。
――未来を楽しみにしています。そして、みなさん、こっちの完全生産限定盤のほうを、ぜひ。
そうですね(笑)。お得感、あると思います。ぜひ受け取ってほしいです。でも通常盤のほうも、ジャケットとブックレットの写真も違ってたりするので、それも楽しんでもらえたらうれしいです。
――最後にライブの話をしましょう。アルバムのリリースツアーは、3月2日の大阪から、4月16日の東京まで、全7公演。どんなツアーにしたいですか。
『Seeker』というアルバムを引っ提げてのツアーなので。アルバム曲を聴き込んできてもらって、変化を楽しんでほしいなと思います。バンドサウンドだったり、いろんな変化があると思うので。音を抜いたり足したり、ピアノだけでやってもいいかなとか、いろいろ考えているので、楽しみに待っていてください。

取材・文=宮本英夫 撮影=大塚秀美

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