「まばたきも、息遣いも、伝わるはず
」音月桂×阿久津仁愛×白樹栞P『そ
れを言っちゃお終い』座談会

2023年2月24日(金)~26日(日)、3月3日(金)~5日(日)に東京・六本木トリコロールシアターにて、『それを言っちゃお終い』が上演される。
原作は、パリのTheatre De La Renaissanceにて7ヶ月以上ロングランを続け、現在もフランス各地にて上演中の『Salome Lelouch ~Fallait pas le dire~』(邦題『それを言っちゃお終い』)。六本木トリコロールシアターでは、本作を今後、ドラマ・リーディングやストレートプレイ・ ミュージカルなどさまざまな形で上演していく作品として捉えており、これがその日本初演となる。
翻訳はアヌイ『アンチゴーヌ』やラシーヌ『フェードル』の岩切正一郎。演出は映画『アイ・アムまきもと』や舞台『7人くらいの兵士』、テレビドラマ『mother』などの演出を手がけた水田伸生。
稽古初日に、プロデューサーの白樹栞、出演者の音月桂、阿久津仁愛に話を聞いた。
劇中のふたりのやり取りで価値観が変化した。
――今日は稽古初日だったそうですね。
音月:そうです。阿久津くんとお会いするのも初めてで。
阿久津:緊張しました。
――いかがでしたか?
音月:お芝居をするということへの感覚が少し変わるというか。監督(演出を手がける水田伸生)から教えていただくことが新鮮で。まだまだ新しいヒントがこんなにあるのだなと知ることのできる、贅沢な時間でした。
阿久津:読み合わせする前に監督からいろいろなお話を聞かせていただいたのですが、「そうなんだ!」「なるほど!」と思うことしかなくて。その後、いざ読むとなったときに少し自分の気持ちが変わっていることを実感しました。これからの稽古が楽しみです。
――本作は、一組の男女のやり取りを描く15景から成る戯曲で、昨年末に上演されたプレビュー公演は、2 名の演出家(週替わり)と6名のキャスト(日替わり)が参加するというユニークなドラマリーディングになりました。今回はどんなふうにつくられるのでしょうか?
白樹:いろんなつくり方ができる戯曲なので、今回は前半・後半で違う3名のキャスト(前半:音月桂+大谷亮介+瀬戸利樹/後半:音月桂+阿久津仁愛+山口森広)が出演し、1景ごとにいろいろな組み合わせの2名で演じてもらいます。椅子に座って行う朗読劇ではなく、片手に台本を持ちながらいろいろな動きをするリーディングなので、一般的にイメージされる朗読劇とはまた違うものになりますよ。
――一組の男女をいろいろなふたりが演じるということですね。実際に上演するのは15景全てではなく、その時の公演に合った組み合わせになるそうですが、音月さんと阿久津さんはこの戯曲をどう読まれましたか?
阿久津:日本の人は議論の場でも相手に合わせることが多いと思うのですが、この脚本の出てくる二人は、自分の意見を持っていて、それをぶつけあうんです。だから最初に読んだときは、「すごく言い合うな」とか「フランスは男女でこんなふうに話すんだ」と新鮮でした。でもそれって、お互いにリスペクトがあるからできることなんだと思うので、憧れも感じます。観てくださったお客さんにも、意見をぶつけあっても相手のことを好きでいたり、いい関係でいられるんだってことを発見したり改めて感じていただけたら、嬉しいなと思いました。
音月 阿久津くんも言ったように、戯曲だけを読むと言い合いの喧嘩をしているように見えて、私も今日の稽古まで「相手のことを嫌いになっちゃわないかな!?」なんて心配も少ししていました(笑)。でも実際に演じると、信頼し合っているから議論できるのであって、決して相手のことを嫌いじゃないんだということがわかってきて。お互いのことを認めているから意見が言えるんですよね。そこで自分の中に今までなかった血液が流れ始めたので、逆に話すことが楽しく感じています。
――おふたりとも普段は言い合ったりしないですか?
阿久津:僕はあまり言い合うようなことはないですね。特に男女だとそうかもしれないです。
音月:私も議論をするよりは相手に同調するのがいいのでは?と思うところがありました。でもこの作品に出てくるふたりはただ自分の意見を言っているだけで、相手を痛めようとか傷つけようとして言っているわけじゃないんですよね。そこに芝居の中で触れることができて、自分の価値観も変わるなと思いました。意見を言わないことが誠意ではないというか、ちゃんと自分の思いを届けることも誠意だと感じられたので。
白樹:日本には女性が意見を言うという文化があまりないんですよね。特に年配の女性はそうだと思います。だけどフランスには逆に言わないという文化がないんですよ(笑)。それと、フランスの夫婦の半分くらいは籍を入れずに事実婚のようなカタチで一緒にいます。つまり「愛し合っているから一緒にいる」という前提がある。それをわかって観ると「あんなこと言ってるけど、愛しているんだな」と感じられて、また見え方が変わったりするのでは?
音月:ああ、ほんとうですね!
何度でも楽しんでもらいたい作品。
――フランスのコメディ作品ですが、どの辺りがおもしろくなりそうですか?
阿久津:台詞がおもしろいというよりは、ふたりのやり取りがおもしろいという感じです。だからやっている側は大真面目で。
音月:そうそう、そうですよね。
白樹:けっこう笑わせますよ。フランスならではの、おしゃれで品のあるコメディ。ゲラゲラ笑うというのではなく、ウフッ!という感じ??
音月:ただそのフランスの感覚って日本の日常にはないものなので、実は今回私も脚本を読んでわからなかったユーモアを調べてみたりもしました。そう考えると、客席に届ける私たちはそういう部分をしっかり咀嚼して噛み砕いて丁寧にお届けしないといけないなと思っています。ただ、演じていて楽しいですけどね。
阿久津:はい、僕も楽しいです。
音月:阿久津くんは演じる中でどんどん反応が変わっていきましたよね。それはつまり、純粋にものごとを受け取っていらっしゃるんだと思います。
阿久津:それは音月さんがきちんと受け取ってくださるからこそです。僕は自分のお芝居に集中しすぎてしまうことがあるので、今日監督から「ちゃんと相手を見て受け取る」ということを言っていただいて、それをやってみました。
音月:いえいえ、私も阿久津くんが反応してくれるから自分も変化していく、という感覚でした。それってお芝居の基本中の基本でもあって、そこにある醍醐味やライブ感は生の舞台じゃないと楽しめないことだなと思います。
白樹:今日の読み合わせだけでも毎回違いましたよね。きっと本番でもそうなると思う。だからお客様にはぜひ何度でも観ていただきたいですね。
――そういう変化がダイレクトに伝わってきそうな六本木トリコロールシアターの距離感も魅力ですね。
白樹:音月さんのまばたきも、阿久津さんの息遣いも、伝わる劇場ですから。
音月:物理的にお客様との距離が近いぶん、心の距離も近くなって、本当にダイレクトに届くと思います。なので普段だったら客席のお客さまは笑うときも我慢して「ククッ」と笑ってくださるのですが、今回はぜひ我慢せずに解放して観ていただきたいです。舞台上と客席で、同じ空気、同じ場を共有しているような感覚で観ていただける劇場だと思いますし、そのお客様のリアクションを受けて私たちも変化していくので。楽しんでいただけたら嬉しいです。
――音月さんが男性役をされるという噂も聞きました。
白樹:そうなんです。音月さんが久しぶりに男性役をしてくださるので。ファンの方も喜んでくださるのではないかなと思っています。
音月:宝塚歌劇団で男役をしていたのは10年以上前なので、私はドキドキしています。退団以降、メンズライクな役はあっても男性役はしたことがなかったし、どうなるだろうって。
――相手役の男性が女性を演じるのですか?
音月:そうなんですよ。
白樹:誰が演じるかはまだ内緒ですけどね(笑)。
――阿久津さんはやられるのでしょうか?
阿久津:どうですかね(笑)。
白樹:……“それを言っちゃお終い”です!
一同:(笑)
白樹:あと、これも誰かは言えないんですけど、ダンスシーンがあります。
――そうなんですか!
音月:だから“朗読劇”と思ってご覧になると……
阿久津:全然違いますよね。
音月:新感覚のものになると思います。
白樹:うん。絶対おもしろい舞台になりますよ!
取材・文=中川實穗

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