生まれ変わった「演劇の殿堂」が歌舞
伎や上方喜劇、OSK、関西ジャニーズ
Jr.らと描く未来ーー『松竹座の未来
予想図』大阪松竹座コラム(梅)

開場100周年という大きな節目を、今年迎えた大阪松竹座。「映画と実演」を柱にスタートした劇場が、時代の流れやニーズを受け、「演劇の殿堂」に生まれ変わったのは平成9(1997)年の春である。コラム最終回となる今回は、1997年から現在までを振り返っていく。(松)はこちら、(竹)はこちら
新築開場を記念した歌舞伎興行『松竹座新築開場記念杮葺落公演』が、3月から2カ月連続で行われ、豪華な顔ぶれによる賑々しい公演が道頓堀の街を活気づけた。その年は9カ月のうち6カ月が歌舞伎公演で、東西の重鎮や花形、若手俳優が出演する大歌舞伎あり、市川猿翁(当時・三代目猿之助)主演のスーパー歌舞伎ありという多彩な内容。4月には生粋の上方歌舞伎俳優を育成する「松竹・上方歌舞伎塾」も劇場内に開塾され、大阪における歌舞伎の発信拠点の誕生を強く印象づけた。
『古式顔寄せ席手打式』 (c)松竹
翌年は2カ月にわたる十五代目片岡仁左衛門の襲名披露興行を含め、年間7カ月の歌舞伎公演が催され、6月に中村芝翫(当時・橋之助)が出演した『華岡青洲の妻』、8月に松本幸四郎(当時・市川染五郎)主演の『ハムレット』も上演。歌舞伎俳優の活躍が際立つ華やかな舞台が続いた。そして、3年目の1999年には、歌舞伎の三大名作に数えられる『仮名手本忠臣蔵』の通し上演が、四世坂田藤十郎(当時・三代目中村鴈治郎)や仁左衛門らによって3月に行われ、上方歌舞伎塾の1期生たちが本名で初舞台を踏んでいる。また、改築後の初年から開催されてきたジャニーズ事務所のメンバーによる12月の公演で、後の関ジャニ∞の面々が中心になった関西ジャニーズJr.のコンサート『松竹座 Xmas present KANSAI Jr. CONCERT』が行われたのも、この年だ。
大阪松竹座の藤田孝支配人は、「杮葺落の3カ月連続の歌舞伎興行をはじめ、力を注いだ豪華なラインナップで、上方歌舞伎塾も開塾し、上方の歌舞伎を重要視する方向性が強く打ち出されました。それに加えて、絶対にブレイクすると確信して関ジャニ∞の皆さんにたびたび活躍していただきましたし、2007年9月には当時、大阪出身の若手花形俳優として歌舞伎界で売り出し中であった片岡愛之助さんに『蟬しぐれ』で初主演の舞台を務めてもらっています。次代を担うスターをどうやって生み出すか。劇場として、種をまく取り組みは、今後も続けていくべきだと思います」と話す。
大阪松竹座の開場前年の大正11(1922)年に結成された同劇場専属の松竹楽劇部が前身であるOSK日本歌劇団が、紆余曲折の末、2004年4月にNewOSK日本歌劇団(当時)として古巣で66年ぶりに『レビュー 春のおどり』を上演し、劇団復活の狼煙を上げたのも話題を集めた出来事だった。
新築開場以来、歌舞伎、松竹新喜劇などの上方喜劇、ジャニーズによる公演、OSKのレビュー、ミュージカルなど多様な舞台で、幅広い観客層にアピール。かつて芝居町だった道頓堀に現存する唯一の劇場として存在感を放ってきた。

大阪松竹座開場100周年記念公演一覧 (c)松竹
その集大成といえるのが、100周年のラインアップだ。記念の年の幕開きを飾るのが、坂東玉三郎と太鼓芸能集団 鼓童の共演により上演中の『幽玄』(~1月28日(土))で、2月には昨年創立100周年を迎えたOSK日本歌劇団の『レビュー 春のおどり』(4日(土)~12日(日))、東西ジャニーズJr.の『Spring Paradise』(18日(土)~4月2日(日))を上演。以降も、ミュージカル『ルーザーヴィル』(4月6日(木)~16日(日))、『垣根の魔女』(4月21日(金)~30日(日))、『道頓堀 松竹座 映画祭』(5月2日(火)~8日(月))、松竹新喜劇特別公演(5月13日(土)~25日(木))、『夜曲~ノクターン~』、『七月大歌舞伎』など100周年記念を冠した興行が予定されている。

大阪松竹座開場100周年記念公演一覧 (c)松竹
「伝統的な公演から海外ミュージカルの日本語版まで100周年記念仕様の興行が並びました。これからも歌舞伎を幅広く発信する基本スタンスに加え、上方喜劇、OSKにおいても次の時代を描いていきたいですし、光り輝くスターが次々生まれてくる関西ジャニーズJr.の活躍の場でもあって欲しいと願っています。2年後の『大阪・関西万博』に向け、歴史ある芝居町・道頓堀の劇場という文化発信拠点として、地域と連携しながら攻めていきたいですね。賑わいの中にも文化の香りや品格のある道頓堀であって欲しいので、文化芸術の力で大阪松竹座が街と一緒に発展していくイメージを持って、100年のその先を描きたいと思っています」と藤田支配人。
変化に富んだ100年の歩みを噛みしめて祝いつつ、次の100年に向けての新たな一歩を踏み出した大阪松竹座である。
文=坂東亜矢子

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