syrup16g、アルバム『Les Misé blu
e』のリリース・ツアーを開催 横浜
KT Zepp Yokohama公演のオフィシャル
レポート到着

syrup16gがニューアルバム『Les Misé blue』のリリース・ツアーを開催した。本記事では、12月8日(木)横浜KT Zepp Yokohama公演のオフィシャルレポートをお届けする。

2022年11月23日に、5年ぶりのニューアルバム『Les Misé blue』を発表したsyrup16gが、そのリリース・ツアーを12月2日(金)大阪Zepp Nambaと、12月8日(木)・9日(金)横浜KT Zepp Yokohamaで行った。
syrup16gは、2021年11月4日(木)に東京ガーデンシアターで、未発表の新曲を10曲やる、と宣言した上で、ライブ『20210』を開催した。当時のコロナ感染予防対策ルールに則って、8000人キャパの約半分のオーディエンスを入れて行われた当日に初披露された新曲は、10曲ではなく、12曲だった。
そして、2022年になって、その12曲の歌詞を大幅に書き直し、さらに新曲を2曲加えた14曲をレコーディングし、完成したのが『Les Misé blue』である。
コロナ禍前のsyrup16gは、2017年から2018年にかけて、ファーストアルバム『COPY』のリリース16周年を記念してと全16公演のツアー『十六夜〈IZAYOI〉』を行ったり、2019年秋から2020年1月にかけて東京・福岡・名古屋・大阪・仙台をかぶり曲なしの2デイズずつで回るツアーを回ったりと、精力的にライブ活動を行っていた。
なので、今回は大阪と横浜の3本だけ、というのは、コロナによって世の中がどうなっているか、ツアーを切った時点ではまだわからなかったためではないか、と推測する。
では以下、その横浜2デイズの1日目=12月8日(木)のレポ。
いつものように……いや、再始動直後の頃ほどではないが、照明暗めなステージに3人が立ち、「I Will Come (before new dawn)」「明かりを灯せ」「Everything With You」の3曲を続ける形でスタート。
『Les Misé blue』の頭3曲と同じだったので、本編はこのまま曲順通りにやり通すのか、と思ったが、「こんばんは、どうも、我々です。syrup16gを観に来た、ってことですよね?」(中畑大樹)なんてすっとぼけたことを言いつつ、今日の感染予防のガイドラインを説明する、中畑大樹(ds)のMCをはさんでからの4曲目が、アルバムでは6曲目の「診断書」だったので、そうではないことがわかる。
syrup16g
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そこからは「Don’ t Think Twice (It’ s not over)」「深緑のMorning glow」というふうに、アルバムと曲順を変えつつ『Les Misé blue』の曲がプレイされていく。再始動後のツアーを観るたびに感じることだが、キタダマキと中畑大樹のリズム隊が作り出すリズムやグルーヴ、ロック・バンドとしては、もう日本有数のレベルにまで来ていると思う。キタダマキはsyrup16g参加以前から、中畑大樹はsyrup16g解散以降、あちこちからひっぱりだこのサポート・ミュージシャンとして活動しているが、syrup16gが動く時に、外で得た何かを確実に持ち帰っている、そういう音を出している。
そういえば数年前に五十嵐隆にインタビューした時、「ツアーのリハでスタジオに入ると、ふたりともうまいからすぐ終わっちゃって時間が余る、だから新曲を作ったりする」と言っていた。この屈強なリズム隊で歌ってギターを弾ける五十嵐は幸せだと思うが、このリズム隊に食われない歌を歌ってギターを弾かなきゃいけないというのは、大変だとも思う。
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7曲目の「深緑のMorning glow」を終えたところで、中畑大樹、「1年ぶりに日本に戻って来られました。よく来た!よく来たねえ。明日も、みんな来るんだよね?」とオーディエンスに問いかける。
キタダマキ、中畑に「明日も来んの?」と訊き、中畑「明日も俺、来ます」と答え、五十嵐が「えー」と漏らす。キタダ「五十嵐くん、来るわけ? 明日ちゃんと来る?」五十嵐「ああ、来ます来ます」キタダ「心配なんだよ」。
3人が、こんなリラックスしたやりとりをするところも、昔のsyrup16gだったら見られなかった光景だと思う。その会話の末に五十嵐、「でも、いいこと言うつもりないですけど、明日がないくらいのつもりでやりますんで」と言って、拍手を浴びる。
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この日のライブの最初のピーク・ポイント、だと自分が思ったのは、9曲目の「In The Air, In The Error」と10曲目の「In My Hurts Again」、アルバムの11曲目と10曲目が逆に並んだブロック。
2020年2月末から、つまりコロナ禍以降を生きてきて、五十嵐隆が考えたこと、感じたことをメロディにのせた「In The Air, In The Error」と、アルバムのタイトル曲「Les Misé blue」と同じくらい、アルバムにとって重要な位置付け「In My Hurts Again」の流れが、今現在のsyrup16gが何であるかを、特にクリアに表していたように感じた。
その2曲に「うつして」と「Maybe Understood」、ギターの響きと歌メロの寄り添い方が耳を奪う2曲が続いて、本編は終了。
「矛盾で絡まった線を夢中で巻き直すのがミッション」や「喜びも 苦しみ尽くしたその先にあるって 確かに」など、歌詞が必殺の一行だらけである「Maybe Understood」を聴いていると、この曲を本編最後に持って来た理由がわかる気がする。
ここまでで、『Les Misé blue』の14曲中12曲が、演奏された。最初にアルバムを聴いた時は、syrup16gの作品を「ライブ向け」と「リスニング向け」にざっくり分けるなら、これは後者だな、と思ったが、撤回する。ライブで非常に輝く、このバンドならではのダイナミズムを持った曲だった。ということを噛み締めながら、アンコールを待つ。
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アンコールは『Les Misé blue』からの「Dinosaur」で始まり、『Hurt』(2014年)から「Stop brain」、ファースト・アルバム『COPY』(2001年)から「Drawn the light」、初出は最初のミニアルバム『Free Throw』(1999年)だった「明日を落としても」──と、もっとも新しい曲、再結成した時の曲、もっとも古い曲が並ぶ構成。
じわじわと明るくなっていたステージの照明が、一層光量を増し、3人の動きや表情がよりはっきり見えるようになる。それに伴ってオーディエンスの反応も大きくなる。
ダブル・アンコールは、最初の「前頭葉」「神のカルマ」「天才」「リアル」と、イントロが鳴った瞬間にオーディエンスが狂喜する、syrup16gのライブの定番曲が、続けざまに……いや、「神のカルマ」「天才」「リアル」はそうだけど、「前頭葉」はちょっとレアか。いずれにせよ、ラウド&ファストな演奏と、ほぼ叫びのような五十嵐のボーカルを受けて、フロアの温度がさらに上がる。
そして今回、トリプル・アンコールがあった。まず中畑がひとりで8ビートを叩き始め、キタダが登場してそれに合わせ、五十嵐が走って出て来て演奏に加わり、『Les Misé blue』収録曲で唯一残っていたアルバムタイトル曲、「Les Misé blue」をやる。デモテープみたいな素朴な音で録られた、アルバム音源のあの感じが、ライブでも再現された。
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「天才」が終わったところで、「もっとライブやってー!」という声がフロアから飛んだ。それに対し、五十嵐「あっ、いいこと言った。全然やるよ。ほんとに。やれたらね」と返した。翌日のライブを観た人にきいたのだが、翌日は「来年はいっぱいライブやるから来てね、おじいちゃんになっちゃうから」と言ったそうだ。
もう2022年の12月なんだから、むこう1年のライブのスケジュールなんて、発表されていないだけでとっくに切られているだろうから(どこのバンドでもそういうものです)、五十嵐がそう言うということは、期待していいのだと思う。
あ、でも五十嵐、「全然やるよ、ほんとに」と言ったあとに、「やれたらね」と足した。その「やれたらね」、ほんとにいらない。とも思う。

文=兵庫慎司 撮影=小林一真

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