Saucy Dog、「同世代で一番かっけえ
と思っているバンド」ハルカミライを
迎えた対バンツアーファイナルの公式
レポート到着
2022年10月から全11公演で全国を巡ったSaucy Dogの『対バンツアー2022 SUNNY BOX』は、12月7日、東京Zepp DiverCityでファイナルを迎えた。各地で激アツな対バン相手を迎えたツアーで、Saucy Dogがファイナルの対バン相手に選んだのは、音楽性こそ違えども、互いに長くシンパシーを感じ合い、親交をあたためてきたハルカミライ。Saucy Dogは2021年に行った日本武道館での対バンイベントでも彼らに出演を依頼している。バンドマンならば記念すべき「武道館初ステージ」は自身のワンマンで達成するのが本望であるはずのところを、ハルカミライは他ならぬ盟友からの依頼に迷いなく出演を快諾。素晴らしいライブを繰り広げたことも記憶に新しい。今回のツアーファイナルではそんな2組が「対バン」の意義をあらためて強烈に突きつけるような、素晴らしくエモーショナルなライブを見せてくれた。
ハルカミライ
ハルカミライ
そんな激情の「ライブ」では学のMCもグッとくる。「2017年9月17日、あいつらは俺達を対バンに呼んでくれて」と、Saucy Dogとの出会いを語り、「だから俺たちは一番の古参のサポーターです」と、彼らに対する変わらぬ愛とリスペクトを言葉にした。そして「ピンクムーン」で力強くあたたかい歌声を届けながら、「音楽のかっこよさって何だと思う?」と問いかけ、「それはやさしさだよ」と続けたのにもグッときた。「こんなギュウギュウのライブハウスに慣れていないやつもいる。でも乱暴に教えてやるんじゃなくて、やさしく教えてあげよう。ライブハウスって超楽しい場所だって。この2マンで!」というメッセージは、この日、音楽性の違う2バンドが共演する意義の表明でもあったと思う。さらに学は畳み掛けるように「音楽で心躍らせて、“魔法にかけられて”、なんだかわからない、胸に抱えたモヤモヤを“ゴーストバスター”して、今日は打ち上げもあるから旨いメシ食って飲んで、0時をまわって“シンデレラボーイ”になって帰ります」と、Saucy Dogの名曲タイトルを引用した粋なMCで会場を沸かせた。
ハルカミライ
Saucy Dog
せとはあらためて、今回のツアーファイナルの対バン相手にハルカミライを選んだことに言及し「同世代で一番かっけえと思っているバンド」と言えば、石原も「メンバー3人一致の意見」と続ける。そしてせとは「負けたくないなと思うので、違う手札で一生懸命戦っていきたい。出てくれてほんとにありがとう」と告げた。その言葉をステージ袖で聴いているハルカミライのメンバー。せとは思わず「しゃべりづらい(笑)」。そんなリラックスムードのMCにも熱い想いが見え隠れし、そのエモーションは演奏に、歌に表現されていく。「雀ノ欠伸」では石原は珍しいほどに観客を煽り、明日声が枯れるのも厭わないとでもいうように全身全霊の歌を響かせる。その熱がフロアにも伝わり、 演奏後の拍手も、思わず漏れる歓声もどんどん大きくなっていく。実は喉の調子に不安を抱えていたと石原はその後のMCで語っていた。しかし病院で「がなっても大丈夫」と医師のお墨付きをもらったことを明かし、石原はギミックなしのむき出しの歌声で観客を魅了する。「シンデレラボーイ」ではアルペジオからカッティング、そしてソロへと展開するギターサウンドが、いつにも増してロックバンドとしての存在感を見せつけていた。一方「東京」では切なくも美しいファルセットに耳を奪われ、続く「メトロノウム」は圧巻のアンサンブルだった。3ピースサウンドがロックの衝動を生々しく描き出し、さらに「雷に打たれて」では客席のクラップも最高潮に膨れ上がり、ギターをかき鳴らす石原の佇まいはまるでギターキッズのようだった。そして「今、俺たちが一番歌いたい歌」と言って始まった「ノンフィクション」は、彼らの音楽への純粋な情熱が豊かなアンサンブルに昇華されたかのような、見事な演奏だった。ラスト2曲はコードストロークひとつにもありったけの想いがこもるかのような「いつか」。とても丁寧に、けれど最高にエモーショナルに石原は歌を届けた。そして「みんな自分らしく楽しめた? これからも自分らしく生きていきましょう」と言って始まった「Be Yourself」。ゆったりとしたロックのグルーヴがバンドの充実感を表していた。とても素晴らしい「対バン」の大団円だった。
文=杉浦美恵 撮影=白石達也
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