「音が生まれる瞬間を感じて」~期待
の女性メンバー米山水木と渡辺ちひろ
が語る、『鼓童ワン・アース・ツアー
2022~ミチカケ』

新潟県の佐渡島を活動の拠点とし、日本全国・世界各国で公演を行う太鼓芸能集団の「鼓童」。今年11月〜12月に『鼓童ワン・アース・ツアー2022〜ミチカケ』が全国11会場で上演される。
夜明けから深夜まで変わり続ける自然界のリズム「日の出日の入り」「潮の満ち引き」「月の満ち欠け」。その長い周期感や、「数」に秘められた律動を太鼓音楽で探求する新作だという。本作に出演予定で、鼓童のメンバーである米山水木(28)と渡辺ちひろ(26)に話を聞いた。
【鼓童】2022年新作「ミチカケ」PV | Kodo One Earth Tour “Cycles” Promotion Video

ーーまず作品のお話をうかがう前に、お二人の自己紹介も含めて、鼓童に入られたきっかけを教えてください。
米山水木(以下、米山):私はメンバー7年目の米山水木と申します。主に舞台では太鼓を叩いています。私は地元で2歳の頃から和太鼓を始めていて、鼓童に入ったきっかけは小学生のときに鼓童の舞台を見たことでした。今はもういらっしゃらないんですけど、ある女性プレイヤーに憧れて、その方と同じ舞台に立ちたいと思い、鼓童に入りました。
鼓童はだんだん女性メンバーも増えてきました。今までは男性らしい力強い表現が中心だったのですが、最近では、女性ならではの柔らかさを活かした作品も増えてきて、女性メンバーも活躍をしているんですよ。
米山水木
渡辺ちひろ(以下、渡辺):私はメンバーになって5年目の渡辺ちひろと申します。私は地元の東京の太鼓チームに入っていたのですが、小学3年生のときに誘われて鼓童の公演を見に行きました。迫力のある太鼓の音に衝撃を受けましたし、メンバーの皆さんが輝いていて。私も鼓童に入りたいという一心で、小学校、中学校、高校生活を送り、高校を卒業してすぐ鼓童の研修所に入りました。舞台では、主に太鼓と笛をメインに演奏させてもらっています。
ーーお二人とも鼓童に対して強い思いがあって入られたと思うのですが、女性メンバーが増えている点についてはどうお考えですか? メンバー同士の関係性や女性メンバーの活躍などについて教えてください。
米山:鼓童は今、世代がガラッと変わってきていまして、20代前半から後半の女性メンバーが活躍しています。大きな転機は、住吉佑太(31)が2018年に演出した『巡-MEGURU-』だったと思います。
鼓童は長年、三宅島に伝わる伝統芸能の三宅太鼓を演目として演奏しています。鼓童に入るため2年間修行する研修所でよく演奏する演目なのですが、私は鼓童に入る前から三宅太鼓が大好きで、教室で習っていました。そのことを住吉に伝えると「三宅太鼓をやってみないか」と。三宅太鼓は腰を低くして演奏するので、下半身がすごくしんどいんです。だから筋肉的には男性に絶対に負けちゃうんですけど、例えばばち回しだったり、女性ならではの表現を加えて、新しい三宅太鼓を『巡-MEGURU-』では演奏させていただきました。
また、毎年夏に佐渡で「アース・セレブレーション」というお祭りがあるんですけど、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で映像配信を行いました。女性メンバーだけの楽曲も作曲して演奏しました。
渡辺ちひろ
渡辺:昔の鼓童の公演では、女性は浴衣を着て歌って踊っているような存在でした。今は女性メンバーも半纏衣装で太鼓をバシバシ打たせてもらっています。
昔からの鼓童の舞台に立ち続けている世代の先輩は、今も3名いるんですけど、やはり女性らしさや品があって。それはその世代特有の素敵な持ち物だなと思っています。今も憧れますね。どれだけ太鼓をバシバシ打っていても、そうした女性らしさは忘れずに。女性にしかできない表現は必ずあると思うので、そこを常に追求・探求しているところです。
ーー今回の『ミチカケ』という作品は絶賛クリエイション中だと思いますが、どんな作品になりそうですか? どんな点が見どころになるのでしょう?
米山:『ミチカケ』はポスターを見ただけではなかなか想像しにくく、普段の鼓童の公演のように半纏を着て、ハチマキを巻いて演奏するイメージをお持ちになるかもしれません。でも今回はクラシカルな鼓童の作品とは違い、2018年の『巡-MEGURU-』のような新しい作品になると思います。
日の出や日の入り、月の満ち欠けを表そうとしたとき、リズムを手放していくことから始めたんです。今までは、演出家がいろいろな曲を作ってきて、それを私たちに楽譜で渡してくれて、そこから作品を作っていたのですが、今回はそうではなく、音が立ち上がるところから、ゼロの状態からみんなで作っています。
つまり、正解や間違いがないんです。楽譜上のかっちりと決まったリズムやフレーズではなく、そのときその空間で、お客様と出会ったときの1音が演者一人ひとりから出てくるというイメージでしょうか。もちろん鼓童が今まで40年間培ってきた音楽性や技術も盛り込まれているのですが、今までにない、面白い舞台になるなぁという予感があります。
また、パイプチャイムなど空間が音で揺れることを肌で感じていただけるような舞台装置も見どころだと思います。今までの鼓童の作風とはまた違って、音が生まれる瞬間をお客様に感じていただけたらなと思っています。
米山水木
渡辺:そうですね、本当に今米山が言った通りなんですが、すべて新しい曲なんです。最初に稽古が始まったときは、まず「何でもいいから音を鳴らしてみよう」というところからスタートしました。日の出や日の入り、月の満ち欠けというイメージに沿う音をそれぞれがとりあえず鳴らしてみるという音探し。そのクリエイションの中で、音楽監督の住吉らがどんどん引き出して、1曲に集約して、形作っているのですが、全員がいろいろなアイディアを持ち合って作っている作品だなと思っています。
譜面も何もない状態から、一人ひとりの音を持ち寄って、一人ひとりの感性や思いを乗せていける作品ですね。まだ全て形になっているわけではないんですけど、今も稽古しながら、そういった舞台をつくる空間がとても心地良いなと感じています。メンバーの新しい一面も垣間見えます。
私たちにとってもこの『ミチカケ』という作品は新しい挑戦なので、これからどうなっていくか、楽しみなんです。
ーー最後に公演を楽しみにされてるお客様にメッセージをお願いします!
米山:自然界の周期というものが今回の作品のコンセプトですが、私たち一人ひとりの人生にも周期のようなものを感じることがあります。1日1日、もしくはもっと長い人の一生。鼓童の演奏者それぞれの魂の音が、皆さんの人生に繋がっていく音になったら素敵だなと思っています。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
渡辺ちひろ
渡辺:今までの鼓童の舞台とは一味も二味も違った作品です。パイプチャイムが揺れていたり、いろいろな仕掛けがあるので、見ても面白いですし、音を聞いていても不思議な空間に引き込まれていく。そんな世界観のある作品です。いろいろな視点があると思うので、見ている方も結構頭を使うと思いますし、演奏している私たちもそれをどう解釈してもらえるか。全身で表現して、伝えていきたいと思っています。
劇場で生で体感していただかないと分からない面白さが詰まっているので、ぜひ見に来ていただきたいと思っています!
(左から)米山水木、渡辺ちひろ
取材・文=五月女菜穂

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