坂口有望、変わったこと・変わらなか
ったこと デビュー5周年ツアーを前
に語る21歳の胸の内

デビュー曲「好-じょしー」で同世代のハートをぎゅっと掴み、元気ハツラツのライブパフォーマンスで絆を深め、近年はSNSでのカバー動画シリーズでさらに幅広いリスナーにアピール中。メジャーデビュー5周年を迎えた坂口有望が、5年間の進化と成長を記録した最新EP『XL』を引っ提げて、デビュー5周年記念「XL Tour」を開催する。全国ツアーはおよそ3年振り、バンドと弾き語りの2形態で全国8か所を回るツアーは、コロナ禍で会えない日々の隙間を埋め、彼女とファンとの絆を結び直す最高の機会だ。最新作について、ツアーについて、そして5年間の思い出について、21歳になった彼女の心の内を確かめてみよう。
――5年間で変わったこと、変わらないこと。振り返ると、どんな思いがありますか。
今は大学4年生で、来年卒業なんですけど。常に「勉強してるか音楽してるか」みたいな感じで、それはずっと変わらないんですけど、高校の時はあんまりその二つが結びついてなかったんですよ。でも大学の文学部、英文学科に入って、授業で英語を訳さなくちゃいけなくて、英語以上に日本語と向き合う時間が増えて、和訳の時にめちゃめちゃセンスが問われるんですよ。
――ああー。なるほど。
SNSにカバー動画を上げてるんですけど、洋楽のカバーをした時に、自分なりに和訳してみたりとか、詞を書く時も、日本語と常に向き合っていることが書く原動力になっていて。勉強と音楽の二つが中心であることは変わらないんですけど、どんどん結びついていったのが、変わったことですね。あとは、デビューした時は大阪の高校生だったのが、上京して、環境も変わって、大阪にいる時はライブがすべてだったというか、来てくれた人に向けて歌うだけだったんですけど、メジャーデビューして、全国に広まるスピードも全然変わったし、自分の曲を聴いてくれる人が全国に入るということを、5年間を通してじっくり知って行くような時間でした。デビューした時から全国ツアーはやっていたんですけど、大都市以外の場所は最近になって行く機会も増えて、コロナで止まらなきゃいけないこともあったけど、SNSを通じて知ってくれる人もすごく増えたので。悪いことも全部プラスになっていったんじゃないかなってとらえるようにしてますね。
――ちなみに、5年前と聴く音楽は変わって来たりしてますか。
大阪に住んでいた3,4年前までは邦ロックをたくさん聴いて、自分もバンドしてるような気持ちで歌ってるところがあったんですけど、バンドサウンドを飛び越えて、パソコンで曲を作ってみたりとか、邦楽、洋楽、K-POP、中国のバンドとか、いろいろ掘り出して聴くようになって。自分もいろんなジャンルに挑戦してみたいと思うようになりましたね。
坂口有望
――新しいEPの『XL』は、まさにそんな感じでしたよね。エレクトロポップあり、バンドロックあり、アコースティックあり。
今回から新しいスタッフさんと一緒にやって行く形になって、「もうちょっとオケに隙間があったほうが、もっと歌が映えるんじゃないか」みたいな話になって。今までは生音で、バンドで、その中に私がいて、というイメージがあったけど、別にそこにとらわれなくてもいいと思って、今回はわざとチープ感のあるオケにしてみたりとか、全部打ち込みの曲とか、新たなフェーズに行った感じがありますね。
――デビュー曲の「好-じょしー」をリアレンジした新バージョンも、5年間の進化が見えるようで、興味深かったです。
大阪でレギュラーラジオをやっていて、毎週自分の曲をかけてるんですけど、今になって「好-じょしー」を聴くと、すっごい幼く感じるんですよ。歌い回しも声も「めちゃめちゃ子供やん」って思う(笑)。それで最新の私をパッケージしたい気持ちで、聴き比べができたら面白いと思ってやってみました。
――あと、タイトル曲の「XL」で、“貴方(あなた)”という二人称を使ってますよね。前のアルバムの時に確か、あなたという言葉は大人っぽすぎてまだ使えない、と言っていたと思うんですけど。ついに使いましたね。
そうなんですよ。そこはけっこう意識して、21にもなったし、もう解禁してもいいんじゃないかな?って。 “あなた”もそうですし、“愛してる”という言葉を歌うのも、けっこうためらいがあったんですね。十代の私が“愛してる”って歌うのもちょっと違う気がしていて、でも今回のEPは一貫して、最新の私を見せることと、5年前に知ってくれてた人にも、大人の女性になったんだぞというところをパッケージしたいと思っていたので、一つの挑戦として歌詞に入れました。
坂口有望
――すごくハマってると思いますよ。歌詞の内容としても。
「XL」みたいにド直球なラブソングは、わりと珍しいほうなんですけど。私の曲は普遍的なテーマが多いので、「XL」がリード曲になるというのは自分でも新鮮でした。
――余る袖を握って、というフレーズがありますけど、「XL」を着てる彼氏ってかなりでかいですよね(笑)。身長差がある。
そうですね(笑)。これはライブであたためてた曲で、CDにするまで1年ぐらいかけて、いろんな会場で歌ってました。ライブで初めて聴くということは、私の身長とか、私が歌ってる姿を見ながら聴くじゃないですか。絶対XSやん、みたいな子が「XL」を歌っている、ライブ映えを意識した曲でもあったんですよ。
――ああー。それはすごく面白い。
ちゃんと私という人物ありきで成り立ってる曲なのかなと思います。私の身長が170センチだったら、「XL」を歌ってもあんまり伝わらないと思うんですけど、今回5周年という節目に出す作品ということで、私という人物をちゃんと知ってほしいという思いも込めて。今まで日本にどれだけラブソングがあったとしても、同じことを歌ってたとしても、わたし節で行きたいというか、新たな表現で歌いたいというのは、詞を書く時にいつも意識していることなので、それがうまく表現できたかなと思ってる曲ですね。「XL」は。
坂口有望
――あと、さっきも話に出ましたけど、ここ2年くらいはSNSにカバー動画をたくさん上げていて。その成果の一つが、今回のEPに入ってるマカロニえんぴつのカバー「恋人ごっこ」だったりするわけで。カバー動画を上げるということも、最近の活動の中では大きな出来事と思うんですね。その後の曲作りにも影響しただろうし。
弾き語りでカバーするので、歌詞もそうなんですけど、コード感やメロディや、一つ一つが勉強になりました。でもカバー曲を歌おうと思ったきっかけは、勉強のためじゃなくて、とにかく自分の声をみんなに聴いてもらって、親近感のあるものにしたいと思ったからなんですよ。私より若い世代の人って、ちょっと聴いたことがある、ちょっと親近感が湧く、そういうものがサブスクとかで曲を選んでもらうきっかけになるということが、実感としてあったので。そのための仕掛け作りというか、コロナ禍でたくさん上げるようになったんですけど、その前からずっとやってました。
――そうなんですよね。結果的に、タイミングが合ったというか。
伏線回収みたいになってますよね(笑)。
――ほかにも「#ボクナツ」とか、コロナ禍の今の思いをリアルに綴った歌詞もあります。
歌い始めた時から、同世代の子が聴いてくれることが多くて、私のSNSに「今日はこういうことがあったよ」とか送ってくれて、わりと距離感が近いと思うんですよ。だから「#ボクナツ」も、今その子たちのために何ができるんだろう?ということが、曲を書くモチベーションになったりするので、そういう曲ができたのかなと思います。自分の表現したいことというよりも、聴いてもらう人たちに何を訴えかけようかみたいな。
――自分に向けて日記のように書いていたものが、この子たちのために何ができるんだろうと思って書くようになった。大人になりましたね。
そうですね(笑)。そこが一番変わったところかもしれない。
坂口有望
――そんな、最新の坂口有望のすべてがわかるEP『XL』。リリース中です。そしていよいよツアーが、9月30日の大阪からスタートします。大阪、名古屋、東京と続くクアトロツアー。全国ツアーということになると、3年振りですか。
そうですね。東京と大阪とかで、弾き語りはやってたんですけど。
――コロナ禍以降はライブの大切さや貴重さに気づいたということをみなさん言いますけど、やっぱりそう感じてますか。
そうですね。SNSでたくさん発信はしてたんですけど、自分が発信するだけで、どういうふうに受け止めてくれたのかはわからなかったりするので。でも今回、CDを出して、ツアーを回るということで、「これ、持ってきたよ」とう感じで行きつつ、ライブでもう一段階上のものを見せれるようにしたいなと思ってます。『XL』を出したタイミングで、全国のCDショップでインストアイベントをやったんですけど、今まではライブはフリー観覧で、特典会はCDを買った人が参加できるということだったんですけど、今回はCDを買ってくれた人はライブが見れるというイベントだったので、私の音楽を好きな人たちが集まってくれて。コロナ禍で3年空いたものの、「ずっと聴き続けてました」とか、特典会で一人一人としゃべれたので、リリースイベントを回る中で、みなさんの愛情に飢えていたぶんの何倍もの愛情をいただいたんですよ。だから今回のツアーは、もう一度私から発信するみたいな、短い期間でちゃんとキャッチボールができたらなと思ってます。
――ライブに関して言うと、5年前と今とでは、何か変化は感じてますか。
正直、デビューして2,3年、コロナ前までは、上手なライブの仕方がよくわかってなくて、とにかく全力で挑むことを心掛けていたというか、それしかできなかったので。当たって砕けろみたいな気持ちでステージに出て行く感じだったんですけど、コロナ禍の間に配信ライブをしたり、自分の映像を見返すことが増えて、ちゃんと分析する力を身に付けられたんですよ。だから、もちろん全力投球ではあるんですけど、ウォーミングアップ的な部分でも、テクニック的な部分でも、計算してライブを作れるようになったので、それは本当に大きな変化ですね。デビュー当時のライブのやり方は、今思うと、あほなんちゃうかっていうぐらいで(笑)。ウォーミングアップも全然してなかったし、やり方もわかってなくて、終わったあとも、その日のライブの良し悪しはわかるけど、その原因がわからないみたいな状態でずっとやってたので。今はライブ映像を見直す前に、なんとなくわかるんですよ。今日はこれが駄目だったからこうなったんだ、とか、手に取るようにわかってきました。5年目にして。
――最近なんですね。
そうです。分析力がついて、客観的に見れるようになりました。ようやく。
――何だったら、中学時代からライブをやっていた人でも、今やっと気づくことがある。ライブって深いです。
路上ライブをやってた時には、お客さんは不特定多数じゃないですか。とにかく足を止めてほしいから、何で楽しませるかを考える前に、自分のベストを尽くすしかなかったというか。でもそのおかげで、ずっと見に来てくれるお客さんがついて、ライブとしてのエンタテインメント性とか、どういう曲順で組んだら楽しんでもらえるのかとか、何が聴きたいんだろうとかまで、考えられるようになったのが最近です。頑張りました(笑)。
――頑張りましたね(笑)。
よくわかってなかった時期には、自分の手応えとお客さんの感想にズレがあるとか、頻繁に起きてたんですよ。それって本当に良くないなと思って、やっぱり自分が一番理解していたいので。コロナ禍でライブができない悔しさもありつつ、うしろ向きなことばかりも言ってられないし、ライブに復帰した時により良いものが見せれるようにと思って、そういうふうに見直すようになりました。
坂口有望
――『XL』の初回限定盤に付いてくるBlu-rayの、去年の秋にやったツアーの映像は、ライブの作り方に目覚めた以降のライブですよね。
そうですね。セトリもめちゃめちゃ話し合いました。それに収録されているのは東京公演なんですけど、そのあとの大阪公演までにもいろいろ試行錯誤して、編成を変えたりして、ライブごとに成長していく感じでした。時期的なものというよりは、一回一回経験して次に繋げるということができるようになりましたね。
――このあとのツアーがますます楽しみです。今回は前半の大阪、名古屋、東京がバンド編成で、後半の10月15日の仙台から5本が弾き語りということですね。あらためて、どんなツアーにしたいですか。
東名阪の弾き語りは、コロナ禍でもけっこうやっていたので、今回はバンドで見せつつ、久しぶりに行ける地方は弾き語りをちゃんと見てもらおうと思います。新譜を届けるツアーなんですけど、5周年記念という名目でやってるので、久しぶりに昔の曲を引っ張り出してきたりとか、新曲もお届けしようと思ってますし、たぶん5年間のいろんな時期に知ってくれた人がいると思うんですけど、ちゃんとまとめて感謝を伝えられる内容になってるんじゃないかなと思います。
――あと、学園祭やイベントもいくつかあるので、お近くの方はそちらもぜひ。10月10日に鳥取大学、10月30日には長崎の遠藤周作文学館…って、これすごく気になるんですけど。
あはは。私の一番好きな作家さんは遠藤周作ですということを、いろんなSNSで書きまくってたら、目に留まってくれたみたいで、本当にうれしいです。言ったもん勝ちやなと思いました。
――遠藤周作を一番に挙げる21歳女子。素敵です。
本って面白いなと思ったきっかけが遠藤さんでした。最初は「海と毒薬」で、エッセイも好きで読んでます。私は人としゃべるのが好きで、亡くなった人とはしゃべれないけど、本って、その人の話を聞いてるみたいだなっていう感覚を、遠藤さんの本を読んでいる時に思って、そこからずっと好きですね。
――それは、音楽にもそういう一面があると思いませんか。その人の話を聞くように聴く、あるいは誰かに話しかけるように歌う。
そうですね。自分が音楽を志したきっかけが、自分がしんどい時とかに、いつも音楽に助けられる部分が多かったので。BGMというよりは、人と繋がるツールという面での音楽をしようと思って始めてるので、曲を作ろうと思った時も、メッセージが先にあって、それをどうメロディや歌詞に還元するかみたいな感じです。常に人に向かって訴えかけてますね。
――初期の頃の、「14才の唄」とか、年齢シリーズがあったじゃないですか。15歳、16歳までありましたっけ。あれもそういう感じでしたよね。
最初は日記みたいな気持ちで書いてたんですよ。14歳、15歳、16歳とかの自分がその時に思ってたことを、ちゃんとパッケージして、大きくなった自分に聴かせようみたいな。あの頃はリスナーさんにというよりは、未来の自分に聴いてもらおうみたいな感じでした。
――ああー、そうか。なるほど。
今は年齢シリーズはないですけど、それこそ今回のEPもそうですけど、一つの作品の中に必ず1曲、「今の私はこういうことを考えてます」という曲が入ってますね。どの作品にも。だから初期の初期の「おはなし」という曲とか、恥ずかしくなるんですよ。当時はこんなこと思ってたんだって、恥ずかしい気持ちでいつもライブで歌う(笑)。その時は、昔の自分に戻って歌うというよりは、今の気持ちで、ライブでどんどん歌い方が変わってるのもそういうことだと思いますし、ライブは今の自分を歌いたいという気持ちでやっているので、今のリアルな私を見てもらえると思います。
――話がうまくライブに戻ったところで。ツアー、本当に楽しみにしています。
はい。ぜひ来てください。

取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希

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