春奈るな 10周年を迎えて「立ち止ま
らずに進み続けていきたい」フリーに
なって語るファンへの思い

デビューから10周年を迎え、大阪、名古屋、東京で「HARUNA LUNA 10th Anniversary Live Tour "MOON CIRCUS" 」を開催する春奈るな。そしてフリーへの転向と10年の節目にさらなる活動を求め、動き始めた。そんなフリーになる経緯から、この先は何を目指し、何をしたいのか。彼女の想いを赤裸々に語ってもらった。

――SPICEでは2年ぶりのインタビュー、春奈るなさんです。
お久しぶりです。
――10周年ライブが10月1日に大阪、2日に名古屋、9日に東京と決定しておりますが、その前に長年所属した所属事務所を辞められ、フリーになられました。そのあたりの経緯もお聞きしないといけないと思うんです。
気になっていますよね、本当に急な発表だったと思うので。
――そうですね、話せる範囲でいいので、話してもらえるなら是非。
自分としてはいい節目だなと思っていて。年齢も30歳になりましたし、今年デビュー10周年というのもあって、色々やりたいことがある中で、「今の自分って進めてないな」って。なんというか、凄く時間が惜しいというか、環境を変えないと始まらないなと思ったんです。凄く悩んだんですけど……。
――悩みはあったんですね。
凄く葛藤はありました。それこそ不安だったし、10年事務所にサポートしていただいて、自分の中でそれが当たり前になっていましたし。でもそれではいけないというのも物凄く感じて。自分のやりたい事をえるには、環境を1回ガラっと変えないとダメだっていう事に気付いて……だったら自分の力でやりたい事をやろうと思って決断しました。
――歯車がうまく回っていない感じがあったと。
ありましたね。音楽が出来ないっていうのがとにかく歯がゆくて。コロナによる状況も勿論そうなんですけど、足踏みしかしてないというか……それがもう通用しないって感じたんです。るな充(ファンの通称)も、こんなに足踏みしてる中でも凄く応援してくれる事が物凄くありがたくて。前に比べてイベントとかも少ない中、発信する事をちゃんと受け止めてくれて、これは自分の中で失ってはいけない物だなって凄く感じたんです。るな充の為にも変わろうっていう決心をしたというか。
――確かに活動としてはなかなか派手には動けてなかったかもしれませんね。でも「LUNAMARIA」の方で展開しているウェディングドレスのデザインなどは定期的にずっとやられていますよね。
そうなんですよ。本当にそれがありがた過ぎて。ウェディングドレスもそうですし、私元々『KERA』(ファッション誌)の読者モデルでもあったので、ブランドさんと一緒にコラボさせてもらったりとか、生配信に出させていただいたりとか、そういうところの活動はむしろ前より出来ていて。それがあったからこそ前に踏み出せたというか……それすら無かったらとても踏み出せなかったとも思いますし、ひとりじゃないっていうか、言い方が凄く難しいんですけど。
――実際フリーになって、自分の中で景色は変わったりしましたか。
やりたいことのビジョンが一気に明確になってくるというか。前までは「こういうことしたいけど、どうなんだろう?」みたいな事はいくつかあったんですけど、今は無理かもって思ってた事も「頑張れば出来るのでは?」っていうワクワク感の方が強くて。
――そこに伴ってフリーになるって事は、会社に守られてないということでもあります。何かやるに関しても自分の責任、それは金銭的な面も精神的な面もそうだと思うんですが。
それはもう不安しかないですね(笑)。でも遅かれ早かれいつかこうなってたんじゃないかっていうのを感じてて、だったらもう今やるしかないだろ! みたいな。不安は勿論あるし、だからこそ葛藤もあったし、どうなっちゃうんだろうっていうのもあるけど、やりたい事への気持ちの方がやっぱり大きかったんです。音楽もやりたい、ファッションもやりたい、好きな事や好きな気持ちを表現する活動を絶対にやめたくないっていう思いがあったので、今は自分ができる事を精一杯やろうと思っています。
――発表した時のSNSなどの反応はどうでしたか。
みんな凄く前向きというか暖かくて。でも中には音楽をやめてしまうと思ってる人もいたんです。最近はお洋服のお仕事の方が多くやらせていただいているので、そう思った人もいるかもしれないんですけど、春奈るなは音楽をやるために一歩踏み出したんです、っていう根底が自分の中にはちゃんとあるんです。もちろんお洋服とかロリータも大好きなので、それを発信するモデル活動もやりつつ、音楽活動を取り戻せて行けたらいいなって。
――ファンの応援がありがたいですね。
本当に心強くて、それが物凄く気持ちの支えになっているというか。いろんな人に支えられて、春奈るなって存在してるんだなっていうのを改めて感じましたね。
――そして今春奈るな10周年という節目です。この10年を振り返っていかがでしたか。
わからん!(笑) 本当にあっという間すぎてわからんです。本当に好きな事しかやってないなっていうのは感じていますね。音楽が好きでアニメや二次元が好きで、それを音楽で発信することが出来て、動画では痛バッグを作って、全てを包み隠さずに発信が出来る10年だったので、もどかしい時期は勿論ありましたけど、だとしても凄く贅沢で充実した10年だったなと感じますし、やってこれたんだなっていう気持ちがありますね。
――確かに好きなものを隠さずそのまま発信されてますよね。
デビュー当時はやめた方がいいのかな? みたいな不安はめちゃくちゃあったんです。いざデビューが決まると、いろんな人に向けて私が発信していかなくちゃいけない責任っていうのが生まれて、“春奈るな”っていう存在も自分で作って行かなくちゃいけないし、それを凄く怖く感じてしまって。
――春奈るなを作ることに対する恐怖、ですか。
例えばライブをやったら最初から最後まで自分の力で終わらせなくちゃいけない。勿論バンドさんにもサポートしていただいてライブは成立するけど、自分が歌えなかったら、MCで次の曲に繋げなかったら、ライブはそこで止まっちゃうわけじゃないですか。
――それはそうですね。
ライブをやった時に最後まで走りきれるのかなとか、そういった漠然とした不安が襲ってきて。夢は叶って物凄く嬉しかったんですけど、同時にちょっと逃げたいっていう気持ちもあって。でも活動をしていく中でライブやイベントでるな充と会ったりしていくうちに、“春奈るな”がどんどん形成されていくというか。私はこの人たちに向けて音楽や言葉を発信していけばいいのか! っていうのが湧きあがってくる瞬間があったんです。それを感じた時に自分の中で「始めたからには絶対10年は続けたい」って目標が生まれたんです。
――10年続ける、という目標ですね。
そうですね、せっかく夢が叶ったのにそんな事考えるのはダメだなって。始めたからには絶対逃げずに10年続けられるように頑張ろう!っていう気持ちが芽生えて、今日に至るっていう感じですね。今はやって来れたっていう達成感やありがたさを感じますけど、だからと言ってもういっか! っていう気持ちにはまるでなりませんでしたね。もう10年! みたいな気持ちが更新されていくのかな。10年経ったけどまだまだやりたいこともあるし、まだ走っていきたいですね。
――あえて10年振り返るとして印象的な出来事とかありますか。
結構いろんなところで話してはいるんですけど、1回マイクトラブルがあって、歌っても音声がスピーカーから出てこない時があって。
――香港での初ワンマン『Luna Haruna Mini Live in Hong Kong 2016』ですね。
そうです! そのとき香港では初めてのワンマンだったんですけど、みんなが代わりに日本語で歌ってくれたんですよ。言葉も通じないのに、私の曲を知っててくれて、しかもそのトラブルを拭い去ってくれるというか、国境を越えた繋がりみたいなものを物凄く感じて、それが衝撃的でした。アニソンならではなのかなっていう気がしてて、みんなが当たり前のように日本語で歌ってくれてる! と思って、それはもう忘れられないですね。
――確かにるな氏は海外でしっかり歌っているっていう印象がありますね。
そうですね。海外は結構色んな所に行かせていただきました。
――海外のライブを乗り越えてきてるから、春奈るなって、ほわほわしてるけどめちゃくちゃ芯が強いっていう印象がありますね。やりたい事は絶対やるっていうタイプの人というか。
そうかもしれない(笑)。
――今度の10周年のライブは、みなさんの力を借りてるとは言え、自分が全部指揮して自己責任で行うわけじゃないですか。今立場上フリーになって、どんなライブにしたいですか。
昨日バンドリハだったんですけど。とにかく今までのシングル曲は全部やろうと思ってます。みんなに感謝を伝えつつ、これからもるな充していきましょうっていうものに出来れば。
――シングル全部は10周年にふさわしいですね。
どうしても不安に思っているるな充もいると思うんですよ。フリーになったって言ってるけど、ツアーファイナルで辞めるとか言い出すんじゃないの? とか思ってる人だってもしかしたらいるかもしれないじゃないですか。でもそんなことないんだよって、るな氏は今物凄くやる気に満ち溢れていて、これからもみんなと一緒にるな充をしていきたいんだよって伝えられるライブにできたらいいなと思います。
――伝えてほしいですね、それは。
2018年の『"LUNAtic Typhoon"』ぶりに、デビュー当時からお世話になっているバンドメンバーさんたちが集結するライブになるので、そこも見どころかな。やっぱり安心感ありますね。
――昨日バンドリハがあったということですけど、バンドの皆さんはどうでしたか。
リハのスピードが異様に早いんですよ。みんな「曲を体が覚えてる」って言ってくれてて。いろんなアーティストさんのバックバンドやってらっしゃる方達なので、「るな氏の曲忘れちゃったわ」って言われてもおかしくないと思うんですけど、「体に染み付いてるんだな」みたいなことをおっしゃっていて嬉しかったです。
次ページで春奈るなのデビューから10年間を振り返ります!
――改めてこの10年で、シンガーとして成長したなと思う部分はあったりします?
昔から消極的で、何かがやりたくても「私はこれがやりたい」って言える子ではなかったし、歌う時もやっぱり誰かに届けるとかじゃなくて、自分が楽しいからただ歌ってるって感じだったんです。でもいろんな人に支えてもらって、「これがやりたい」「こういう風に伝えたい」って積極的に思えるようになったところが変わってきたなっていうのは感じますね。
――自分の中でターニングポイントになった曲とかってあるんですか。例えば「Overfly」(アニメ『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編エンディングテーマ)は代表曲の一つでもあると思いますが。
「Overfly」も私にとって本当に大切な楽曲で、「Overfly」がきっかけで海外に呼んでいただく事とかも増えたし、『ソードアート・オンライン』を通じて、私の事を知ってくれた方も多いと思うんですけど、改めて10年を振り返ってみると、「君色シグナル」なのかなって。
――アニメ『冴えない彼女の育てかた』のオープニングテーマですね。
わりと等身大の気持ちを歌う曲が、『冴えカノ』の曲は多くて。「君色シグナル」も自分を包み隠さず表現する楽曲ですし。それまでリリースしてきた曲とはガラッと変わったポップな感じの楽曲ではあったんですけど、そういう曲をそれまであまり聴いてこなかったんですよ。その頃ってちょっと非現実的なシチュエーションの曲を好んで聴くことが多くて、そういうものを表現していたことが多かったんです。「空は高く風は歌う」(アニメ『Fate/Zero』2ndシーズンエンディングテーマ)とかもそうなんですけど。
――それがちょっと変わったのが「君色シグナル」だと。
「君色シグナル」を歌った事によって、等身大のありのままの気持ちを伝える事も凄く楽しいんだなっていうことに気付いて。入り込んで情緒をミュージックビデオで表現するのも勿論素敵なんだけど、「君色シグナル」みたいにポップな気持ちでカメラに向かって見てる人に何かを伝える訴えかけるみたいな、そういうものの楽しさみたいなものをそこから凄く感じるようになって。
――シングル一覧を見ると、確かに世界感強めの曲が最初の頃は多いかもしれないですね。
そうですね。等身大の気持ちを表現した楽曲という意味では、「君がくれた世界」(音楽番組『ミュージックドラゴン』エンディングテーマ)とか「アイヲウタエ」(アニメ『〈物語〉シリーズ セカンドシーズン』「猫物語(白)」「傾物語」エンディングテーマ)とかもあるんですけど、「君色シグナル」は特に印象深いですね。
――そう言ったら、『冴えカノ』シリーズの「ステラブリーズ」(アニメ『冴えない彼女の育てかた♭』オープニングテーマ)も等身大というかリアルな女の子目線だし。
こういう曲の楽しさもあるんだなっていうのを凄く感じましたね。それまで表現方法とかも比較的偏ってたと思うんですけど、ちょっとだけ幅が増えたというか、こういうのも楽しいと思えるようになったのが、自分の中ではターニングポイントになったし、やっぱりミュージックビデオとかを見返していると明らかに「君色シグナル」から変わってるんですよね。表情とかが何かに気付いたのかみたいな客観的に見てても凄く感じるというか。
――この話踏まえてもう一回みんなに見て欲しいですね。
そうですね!YouTubeチャンネルにも全曲フルサイズ公開されてるので、歴史順に見てほしいですね。
――僕の印象としては「ルパとアリエス」とか「回転木馬」とかも世界観が強い雰囲気ですけど、今はそれも春奈るなの幅の1つなんだなと思って見れるようになったかもしれないですね。
それは嬉しいです!
――こういう人なんだっていうよりは、こういう表現もできるようになったんだっていう風に感じられるというか。ここからの春奈るなは凄く面白そうですね。
面白くしていきたいですね!
――やりたいこととかあるんですか。やりたい事は今比較的自分が頑張ればどうにかなるじゃないですか。逆に言うと自分で頑張らないと何もできないかもしれませんが。
そうなんですよ! とにかく私今ライブがやりたくてしょうがなくて。ライブをやりつつ、今後はよりみんなと近いところで繋がっていきたいというか……ただ歌うだけじゃなくてありのままの自分を発信したいというか、やりたいことは溢れてますね。
――これはちょっとセンシティブな質問になっちゃうかもしれないんですけど、アニソンタイアップって普通に曲を出すよりもよっぽど難しいと僕らは思うんです。まずアニメがありきじゃないとアニソンにならないし、色々な会社や人たちが組み合わさって出来ている複雑な流れの中にアニソンって存在しているじゃないですか。
そうですね。
――フリーになるって凄く自由だけど、アニソンを歌う、ってことに対してのアプローチって実は結構簡単じゃなくなるのかなと。凄くアニメが好きでオタ活してて、アニソンシンガーとしての矜持を凄く持ってる春奈るなは、フリーになる事でそこのところをどう思ってるのかを聞いてみたいなと思ったんです。今のタイミングでしか聞けない気がしたんで。
そうですね……正直私もアニソンタイアップが欲しいし、CDを出したいです。それはもう一番に思っています。
――凄く変な話、もしタイアップが無いとしても、歌い続けたいって思いは強いままですか?
それは思います。でも、やっぱりアニソンありきというか。私はアニソンが歌いたくてアニソンアーティストになったので、曲が出せれば良いという話じゃなくて、アニメの世界観に沿ったものを、自分なりに解釈して、作詞したり、歌い方のニュアンスで表現したりして届けていきたいというのがあるので、凄く難しい話ではあると思うんですけど、アニソンを歌っていきたいですね。
――僕らもSPICEの中で今このアニメというジャンルを担当していますから、なんて難しいジャンルなんだろうって思うときがあります。アニソンシンガーって前に比べると減っている気がしていて。るな氏が“アニソンシンガー”でいるためにどう思ってるのかは聞きたいなと思ったんです。
とにかく私は自分にできることを自分らしくやっていくしかないのかなっていう気がしています。勿論アニソンを歌いたいですけど、そればっかり気にして活動するのもつまんないと思うんですよね。だから、とにかく私の中では立ち止まらずに進み続けなくてはっていう方が今は強いですね。時間を出来る限り無駄にしたくないというか。
――時間を無駄にしてしまうかもしれない、という焦りがあると。
もの凄くありますね。それが嫌だからフリーになったので。例えば痛バッグもそうだけど、自分の好きな事を発信したら、コラボの痛バッグを発売できる事になったりと、発信する事が、何かを引き寄せたりする。
――そうですね、痛バッグ発売はびっくりしました(笑)。
ですよね(笑)。そういうのって狙ってると逆に叶わなくて。それこそ『KERA』とかも中学生の頃に凄く出たくて、オーディションとか探してた時期があったんですよ。でも全然そのきっかけが掴めなくて、高校生になった時に街角でたまたま『KERA』のスナップの人に声をかけていただいて、それがきっかけで読者モデルとして出させていただくようになって。なんか狙い過ぎると意外と掴めないなっていうものも感じているんですよね。だから今は、少し力を抜いて、自分らしく発信しながら進み続けたいです。
――そう考えると今度のライブはその想いが凝縮されてるものになりそうですね。
ほんと来て~!(笑)とにかく音楽がやりたい!ライブがやりたい!って想いが爆発してるライブだと思うので、るな充の不安を拭いされるライブにできたらいいなと。
――春奈るなについて来い! って言うしかないですもんね、今は。
本当にそうなんですよ。ライブってそれこそみんなに直接言葉を伝えられるので、凄く良い機会というか、早く会いたいなって思いますね。今フリーにはなってますけど、それこそるな氏は変わらずにこれからもみんなと一緒にるな充していきたいなと思ってるので、不安になる必要なんてないです。これから先も変わらず応援していただけたら嬉しいです。
インタビュー・文=加東岳史 撮影=大塚正明
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