spiが語る『シュレック・ザ・ミュー
ジカル』~役への共感ポイントや作品
の見どころとは?

2001年にドリームワークスが製作したアドベンチャーコメディ映画『シュレック』。史上初のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞し、2008年にはブロードウェイでミュージカル化された。大好評を博した本作がついに日本に上陸するにあたり、全キャストのオーディションが行われ、1300通を超える応募の中から歌唱力・演技力を兼ね備えたメンバーが選ばれた。2022年8月15日(月)からの『シュレック・ザ・ミュージカル』トライアウト公演に向け、主演・シュレック役を務めるspiにインタビューを行った。
自分の殻を破ることができた瞬間があった
――まずは本作の見どころを3つほど教えていただけますか。
1つ目は、世の中にあまり馴染めないと思っている人、孤独を選ばざるを得なかった人が共感できる物語だということ。友達に出会ったり、夢を追いかけたり、でも現実を見つめたり。シュレックがこの冒険で直面することに共感できると思います。2つ目はファークアード卿をはじめとするキャラクターの面白さ。メイン4人が絡むのも最高に面白いし、他のキャラクターも、みなさん抜群のセンスで役に向き合っています。3つ目はオナラとゲップ。原作通りしっかりやります(笑)。
――映画版の中で一番のお気に入りは。
やっぱりシュレックですかね。声を担当しているマイク・マイヤーズが好きで。ドンキーのエディ・マーフィも大好きなんです。エディはスタンドアップコメディをしていた時期から好きで、(マイク・マイヤーズは)『オースティン・パワーズ』とかもずっと見ていました。ロビン・ウィリアムズとかジョニー・デップとか、コメディができる俳優さんがすごく好きなので、お芝居や声優さんの仕事っていいなと思っていました。キャラクター的には、シュレックに恋心が芽生えた瞬間が好きですね。そんなかわいいところがあるんだと思った記憶があります。
――オーディションは激戦だったということですが、印象に残っていることはありますか?
演出家からディレクションをしてもらって歌う中で、「どうなってもいいや」と思った瞬間があったんです。どうやって歌うとかシュレックらしさとかじゃなく、「もういいや、楽しんじゃえ」みたいな。自分が今この音楽を楽しむことだけに集中して、終わった時に「大丈夫かな」と恥ずかしくなるくらい自由に歌って踊りました。でも、それを演出家さんにいいと思ってもらえて、自分の殻を破った瞬間があったのが良かったのかもしれないと思います。
――稽古の手応えはいかがでしょう。
稽古が終わった時、思わず「これ絶対面白い!」って言っちゃいました。めちゃくちゃいい感じですね。みんなセンスがあるので、形になるのがすごく早いし、思いや考えを汲み取ってくれるスタッフさんが揃っているのでいい空気で進んでいます。キャストみんな、歌も抜群にうまいので、お客さんにも超楽しんでもらえると思いますね。
>(NEXT)シュレックは“世間に馴染めない人”の代表格
シュレックは“世間に馴染めない人”の代表格
――改めて、シュレックとはどんなキャラクターだと思いますか?
世間一般とは美的感覚や好きなものが違う。例えばコンビニで気に入って買っていた食べ物、自販機で好きだった飲み物がそのうちなくなっちゃうみたいな小さな絶望は、ありがちだと思っているんです。シュレックはその究極で、自分が好きなもの・美しいと思うものが世間では汚いと言われていたり、嫌がられていたりする。そのせいで普通の社会とは別のところで住まないといけなくなる。良いと思うものが世間に受け入れてもらえない代表みたいなキャラクターなのかなと思います。
――人と違うことや多様性をすごく肯定している作品です。spiさんが考える自分と他者の違い、自分の強みはどこでしょう。
多様性が大事とか個性を持つべきという世の中だとは分かっていますが、僕は究極みんな一緒だと思っているんです。みんなバラバラでみんないいっていうのは、結局みんな一つだからというか。僕が持っているものを実はみんなも持っていて、ただそれが色濃く出ているかどうか。自分の強みは、単純に答えると歌声とか声かな。歌やスピーチ能力、声という楽器から特殊な音がするんじゃないかと思います。
――作中でシュレックがドンキーに「なりたいもの」を聞かれるシーンがありますが、spiさんがなりたいもの、役者としてのビジョンはありますか?
なりたい自分にはなれているので、そこの葛藤や歪みはあまりないですね。みんなに勇気や希望、笑顔を与えられる存在であり続けたいと思っています。もっと単純な答えだと、海賊とか屋台の焼きそば屋のおっちゃん(笑)。なんか格好良いから。でも花屋さんとかパティシエとかも良いな。
>(NEXT)大人にも子供にも響く作品だと思う
大人にも子供にも響く作品だと思う
――上演期間は夏休みで、初めて劇場に来るお子さんもいらっしゃると思います。
そうですね。多分、大人が「子供たちに観せよう」と軽い気持ちで劇場に来たら、子供たちは超笑ってるし大人たちはちょっと感動しちゃうみたいな現象が起きると思います。ビジュアルのインパクトも歌もすごいし、ファークアード卿とかも面白いし、オナラもゲップもあるし、子供はケタケタ笑うと思うんです。悪役がいて変なヒーローがいてお姫様を助けて……っていうストーリーだけで子供たちは笑うし、大人たちはその笑いの中に多様性やコンプレックスなど、実は深いテーマが盛り込まれていることに気付く。大人も子供もすごく楽しめるミュージカルじゃないかと思いますね。
――先ほどからファークアード卿がすごく面白いという話が出ていますが、アンサンブルを含めたキャストのみなさんの印象を教えていただけますか。
物語が単純だからこそ要求されるレベルが超高いんです。シュレックはコメディなのに絵本みたいなシンプルさをどうやって面白く、絶妙なラインで伝えるかっていうのは難しい。ここは大味にした方がいいのか、繊細にした方が面白いのかというセンスを問われるんですが、本当に全員が抜群のセンスでクリアしています。あとはヤングフィオナがひたすら可愛くて最高です。これは一見の価値がありますよ!
――役作りについてはどう考えていますか?
シュレックはイケてない独身で、自分はもう社会に馴染めないから孤独を選びましたという人物だと思って作っています。僕自身、今はすごく環境に恵まれていますが、幼少期はみにくいアヒルの子みたいな感じだったんです。周りと違う、なんで違うか分からない、みんなと一緒がよかったというコンプレックスを持っていた。シュレックもそういうコンプレックスがありつつ、どうしようもなくて現実を受け止めて生きている。でもみんなと繋がりたいとどこかで思っているし、ドンキーがいうように一人で大丈夫なやつなんていない。絶対誰かが必要だけど強がっている姿にはすごく共感できます。役作りというか、僕の一部を増幅させる感じですね。
本作は8月15日(月)より、東京建物Brillia HALLにて上演される。
取材・文=吉田沙奈 撮影=敷地沙織

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着